Mind Palaceがない代わりに

ミュージカル観劇レポの保管庫です

ビーム&ラーマ神格化の表現方法が大正解 星組『RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~』『VIOLETOPIA』2/29 M 感想

東京宝塚劇場

f:id:yadokarinko:20240303171013j:image

作品・公演概要/キャスト

『RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~』

原作: RRR (2022 movie)
脚本・演出: 谷貴矢
音楽: M. M. Keeravani(M・M・キーラヴァーニ)
作曲・編曲: 太田健、高橋恵

宝塚歌劇団の公式サイトに記載がないのですが、映画版の音楽も使用されているためキーラヴァーニ氏をクレジットに足しました。

キャスト
コムラム・ビーム: 礼真琴
A・ラーマ・ラージュ: 暁千星
ジェニファー: 舞空瞳
ジェイク: 極美慎
ペッダイヤ: 天華えま
スコット: 輝咲玲央
キャサリン: 小桜ほのか
シータ: 詩ちづる
マッリ: 瑠璃花夏
ラッチュ: 稀惺かずと
ヴェンカテシュワルル: ひろ香祐
SINGERRR男/バッジュ: 美稀千種
SINGERRR女: 都優奈
他25名

 

レビュー・シンドローム『VIOLETOPIA』

作・演出: 指田珠子
作曲・編曲: 青木朝子、玉朝尚一、多田里紗

※2024年3月現在、指田珠子氏は演出助手の方に対するパワーハラスメントがあったと告発されています。真偽のほどが明らかになっていない状況ですが、こうした告発があったときにはできるだけ告発をした方に寄り添いたいと考えているので、同氏が携わった作品にはひとまずこのような注釈を付けることとしています。

※私は現在、同様の注釈を小池修一郎氏、野口幸作氏が手掛けた作品の記事にも付けている状況です。真偽が明らかになっていないとはいえ、この状況は絶対に異常だと思います。劇団は告発を受けた演出家についてきちんとした調査をして事実関係を精査すべきですし、興行を続ける以上告発の受けての今後の方針を示すべきです。

 

『RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~』感想

f:id:yadokarinko:20240303171308j:image

昨年の5月に映画館で見て圧倒された『RRR』が宝塚でミュージカル化!しかも星組で!と聞いた時からずっと楽しみにすると同時に「どうやって舞台で表現するんだろう」と気になってきた公演、ついに全貌を見ることができました。

 

今作はミュージカル化・舞台化に際して、映画のどのエピソードに重心を置いて、どこを取捨するかの選択がとても上手かったです。

ミュージカルとしては、Komuram Bheemudoが作品全体の山になっていたのがとても良かったです。映画に登場したプロテストソングがミュージカルの中で山場になるとそれはもう熱いですよね。礼さん(以下こっちゃん)の歌唱への信頼も感じられてとても良かったです。歌に鼓舞された民衆が雪崩れ込んでくるところも宝塚の演者の多さを活かした熱いステージングになっていました。

全体的に映画の楽曲を使ったシーンが演出も含めて上手くいっていたように思います。新曲はメロドラマっぽい宝塚オリジナル楽曲の雰囲気が強く、独特のキーラヴァーニ楽曲の中に入れると浮いているように感じました。キーラヴァーニが難しくとも、インド映画の作曲家に作ってもらえたらよかったかもしれません。

こっちゃんも暁さん(以下ありちゃん)も歌が上手いのでたくさん歌わせたくなりそうなところですがビームとラーマに歌わせすぎずに、SINGERRRを置いてBGM的に楽曲を使いながら物語を進める手法は好きでした。Dostiなんかはまさにそれだった気がします。2人が手を組むと市井の人々がたくさん出てきて歌を歌い、その中で2人が仲良くなっていく様子も描かれるのがよかったです。

「歌いながら踊るのか!」と話題になっていたナートゥ・ナートゥはやっぱり楽しくて楽しくて仕方がなかったです。楽曲とダンスの楽しさはもちろん、目の前で30人近い人がナートゥを踊っていることによる「圧」がすさまじくて圧倒されました。ジェニファーがガールズを引き連れてセンターから真ん中に出てくる場面の華やかさもすばらしくて叫びたくなりました。

 

宝塚で『RRR』を上演するときに真っ先に頭に浮かんだのが「森で神になる場面、絶対かっこいいやつじゃん」だった私、その場面が実際に大正解演出で提示されてテンション爆上がりでした。こっちゃんビームの登場場面ではWATERRRダンサーが光る羽根を持って光背を作りありちゃんラーマはFIRRREダンサーを引き連れて弓を背負って飛び込んでくる、舞台上で神性を表現する手法としても最終決戦における宝塚のスターの登場のさせ方としてもあまりにも大正解では!?と思いました。この瞬間に『RRR』を宝塚でミュージカル化した意義がぎゅっと詰まっていました。

そもそも炎と水をダンサーで表現できるのは舞台の強みだと思うのでそこも良かったです。後半のダンスが入り混じったアクションがかなりかっこよかったので、子どもを救出するシーンも思い切って舞台用に動きをアレンジしてしまってもよかったかもなと思います。できることならフライング(というかターザンロープ?)してほしいけれどそれは難しいと思うからこそ。今の表現だと映画を見ていないとなんのこっちゃになりそうな感じはありました。ビームの鞭打ち刑の場面でラーマがビームを脱走させることで、ラーマによるビームの救出のターンをまるっとカットしてアクションシーンを削ったのも舞台化にあたっては英断だったように思います。削る英断だけでなく追加の英断もありました。ジェニーの選択の理由がしっかり示されるのがいいし、シータの「ラーマを信じて待つのが私の戦いよ」が良すぎてガッツポーズが出そうになりました。

それでもラーマの内心が序盤ですぐに明かされたりと「忙しい人のための『RRR』感」はあったので、せっかくなら一本物で見たかったです!!フィナーレでナートゥに手拍子したかった!!!Etthara Jendaも良かったですけども!!!

今回はいつもよりも作品の形式の方に意識を注ぎ込んでいたので感想もそちら寄りになりましたが、キャストの皆さんもとても素敵でした。こっちゃんビームは私の好きなタイプのこっちゃんの詰め合わせという感じでしたし(拷問され芝居もだけど蹴られ殴られ芝居も最高ですね)、ありちゃんラーマはとんでもなくかっこいいし、舞空さん(以下ひっとん)ジェニーのきらめきは最高だし、極美慎ジェイクはビジュが強すぎて何言ってても好きになってしまいます。1つわがままがあるとすればビームも短髪が良かった!!!

 

『RRR』という作品を日本人キャストで上演することについては少し考えておきたいと思います。宝塚での上演にあたってバイオレンスな描写や政治的な文脈はかなり削られていますが、今作の主題は英国による植民地支配への抵抗なのは間違いありません。そして日本はアジアの国々を植民地支配した歴史があります。だからといって「日本人が『RRR』の登場人物を演じるべきではない」とは思いませんが、植民地支配した側の歴史を持つ国に生きていることは忘れずにいたいという自戒の念を込めてこの作品の感想を書き終えたいと思います。

 

 

レビュー・シンドローム『VIOLETOPIA』

f:id:yadokarinko:20240303171325j:image

時代や場所を変えながら「劇場」での一場面を切り取っていく作品でした。私がこれまで見てきたショーと比べて歌が少なめだった気がします。こういうタイプのショーもあるんですね。

私が好きだったのはサーカスの場面とキャバレーの場面。

サーカスの場面は小桜ほのかさんによる少し怪しげな素敵な歌唱で始まり、興行主らしき極美慎と極美慎に飼われている生き物(ヘビらしいです)のこっちゃん、ヘビのこっちゃんに引き寄せられる少女ひっとんが見られます。

まず極美慎のビジュが良すぎてえぐい。しかもちょっと悪そうな笑顔を浮かべているのがやばくてやばいしか言えなくなりますね。顔面が美しすぎる。スタイルも鬼なので全身が圧倒的美。

そんな強すぎる極美慎に飼われているこっちゃんのヘビもまたやばい。ショートカットにボディスーツ姿でしなやかに踊るヘビはとても美しかったです。そんなヘビに惹かれて近づこうとするひっとんを笑顔で阻む極美慎。状況が妖艶すぎて「あれ、これ見ていいやつか?」ってなりました。ヘビと少女は心を通わせようとするけれど、サーカスが移動していってしまって寂しさだけが残るという終わり方も好きでした。

キャバレーの場面はなんといってもひっとんの男装ですね。稽古場映像で見た時からぶっ刺さりまくりでしたが、ちゃんとショーの中で見るとさらにぶっ刺さりました。最高にかっこよかったです。この場面はありちゃんの女装も見られるのが嬉しくて、てんやわんやでした。楽しかった~!!!

男役群舞のモザイクみたいなサングラスは謎でしたね。劇場のテーマとも被らない気がするし、どっから生えてきたんだろうか。

最後に、今回退団される天華えまさんのエトワールはとてもとても素敵でした。天華さんは本当に美しかったです!!!

 

P.S.

BTTF、RRRと映像作品原作の作品が続いたので、ブログ内に「映像作品原作」タグを設置してみました。

 

【4/6 追記】

3/19 Mと3/26 Mも見てきて思ったことを箇条書きで書いておきます。

・こっちゃんのアナウンス中からコーラスが入ってくるのがゾクゾクして好き

・『RRR』ビムラマが出会う火事の場面、表現がわかりにくいと書いたけれど、2階から見るとダンス表現として火と戦うビームがしっかり表現されていて美しい演出だったのだとわかった

・宝塚『RRR』では「ビームは初めから神」なんですよね。登場ソロ曲から虎だし。そしてラーマは「ビームのお陰で目覚める」。映画の前半ではビームはそこまで神々しくなかった気がするから(虎と戦う超人ではあったけども)映画を見て見比べたいなと思った

・『VIOLETOPIA』の後半、アタタタミュの無想転生みたいなところあるよね。こっちゃんがケンシロウ的ダンス覚醒するし。

・天華えまさんのAs Time Goes Byの少し気だるげな柔らかい歌声が刺さる。ちょっと後ろに倒れた音の取り方が心地よくて癖になります。

・群舞になるとこっちゃんとありちゃんの踊りのキレがすごすぎて浮いて見える。

・フィナーレでレベランスをしたあとにこっちゃんのお出迎えに間に合うように小股ダッシュで位置に着くひっとんがとっても好き。ひっとんの動きはいつも完璧。最高。大好き。

星組初観劇の母(なんにでも辛口)に「みんな歌うまかったね」「礼真琴さん、コンテンポラリーっぽい動きもできて踊りも上手」と言われてほくほくした。

 

星組関連】

 

【宝塚関連】

 

【🇺🇸BW観劇記1-3】爆沸きする観客も含めて『Back to the Future: The Musical』2/17 S 感想

BW観劇3本目は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にしました!

f:id:yadokarinko:20240302113630j:image

2022年にロンドンに行ったときはノーマークだったのですが、ちょうど渡航前の1月24日、2025年に劇団四季が今作を上演するとの発表がありまして、一気に興味が高まって観劇する運びとなりました。結果大興奮だったので、ご縁があったな~!と嬉しく思っています。

作品・公演概要

Back to the Future: The Musical

原作: Back to the Future (1985 film)
作曲: Alan Silvestriアラン・シルヴェストリ
作詞: Glen Ballard(グレン・バラード)
脚本: Bob Gale(ボブ・ゲイル)
演出: John Rando(ジョン・ランド)
初演: 2020年 マンチェスター
    2021年 ウエストエンド
         2023年 ブロードウェイ

劇場: Winter Garden Theatreウィンターガーデン劇場)
オープン日: 2023年8月3日

Back to the Future: The Musical

Back to the Future: The Musical

  • Original Cast of Back To The Future: The Musical
  • サウンドトラック
  • ¥1833

 

キャスト

マーティ・マクフライ: Casey Likes(ケイシー・ライツ)
ドク・ブラウン: Roger Bartロジャー・バート
ジョージ・マクフライ: Hugh Coles(ヒュー・コールズ)
ロレイン・マクフライ: Becca Petersen (U/S)
ゴールディー・ウィルソン/マーヴィン・ベリー: Joshua Kenneth Allen Johnson (U/S)
ビフ・タネン: Nathaniel Hackmann
ストリックランド校長: Merritt David Janes(メリット・デイヴィッド・ジェーンズ)
ジェニファー/アンサンブル: Mikaela Secada

+13名

新しい作品なので、ドクとジョージがマンチェスターからのオリジナルキャスト、マーティもブロードウェイ初演キャストで見られました!!!

 

チケット購入までのあれこれ(ラッシュ挑戦の記録)

この日も前日の『スウィーニー・トッド』に続き、朝8:00少し前からラッシュチケットの列に並びました。並んだ時点で前から3組目、合流などもあって人数的には前から5~6人目くらいになった気がします。

f:id:yadokarinko:20240302120529j:image

この日はまさかの雪で寒かったのですが、前日の教訓を活かして敷物を用意したのと入り口の前の庇が風除けになっていたのもあって前日ほどは凍えずに済みました。

また『スウィーニー』の日はホテルの部屋で朝ごはんにパンを食べてから劇場に向かいましたが、この日は待ち時間を活用して朝ごはんを食べることにしました。Googleマップで周辺の飲食店を調べて「Burger Man」というお店をチョイス。友人に列に残ってもらい、私が歩いて買いに行きました(この辺りは旅行記で詳しく書くことにしましょう)。

そしてこの日はチケットサイト「TodayTIX」のアプリで9:00から『& Juliet』のラッシュチケットがオンライン販売されるとのことだったので、こちらにもチャレンジしてみましたが一瞬で完売してあっさり負けました。正直日々のチケット争奪戦に慣れているのでいけるかとも思いましたが甘かったです。「誰が取れるの?」っていうスピードでなくなります。

10:00に劇場の扉が開いて建物の中に入ります。9:45くらいの時点で列は36人ほどまで伸びていましたので、すぐにボックスオフィスの前がいっぱいになっていました。

まず昼公演で$40のラッシュチケットはあるかと聞くと2階サイドの「Partial View(見切れ席)」ならあると言われました。初見演目で見切れは避けたいな~と思い、夜公演は?と聞くと、夜公演は連番のラッシュがないと言われました。ここで「バラバラでOKよ」と伝えると、Mezzanine(2階席)センターブロックの1列目と3列目に1席ずつなら用意できると言われました。$40でそんな良席が出ると思っていなかったので即決。大喜びでチケットを受け取りました。

欧米では1人で観劇する人はあまりいないようで、チケットサイトでも端から1つ内側の席が1番外側の席と2席セットでないと買えない仕様になっていたりもするので、もしかするとポツンと空いた1人席というのは安く売りだされやすいのかもしれません。

 

いざ、劇場へ

作品に合わせて全面青色になっているウィンターガーデン劇場はとてもかわいかったです。外壁には思わずにやにやしてしまうようなポスターも掛かっていました。そういうところがちょっとテーマパークっぽい!!


f:id:yadokarinko:20240302164758j:image

f:id:yadokarinko:20240302164755j:image

マーティとドクもいます。終演後にテンションが上がった私たちはこの前で腕時計ポーズで写真を撮ってもらい、撮影者の方にきゃっきゃされました笑

f:id:yadokarinko:20240302164829j:image

プレイビルをもらって席に着きます。

f:id:yadokarinko:20240302165005j:image

友人が譲ってくれまして、私は2階最前列に座ることができました。本当にこんな良席が$40でいいのだろうか?と思ってしまうような完璧な視界です。

f:id:yadokarinko:20240302165002j:image

ただ、メザニンの手すりが横にまっすぐではなく花びらのような形でちょっとしたカーブで前に飛び出している部分があり、私の席の前がちょうどそのでっぱりだったので手すりは舞台の前の方に少しかかりました。でも今作ではそこまで役者が前に出てはこなかったのでノーストレスです。

常に青い光が動いていて、スペースマウンテンの乗り場にいるような感覚がありました。客席に着いただけでわくわくが止まりませんでした。

 

感想

ネタバレありで書いていきますが、映画を見たことのある人でも舞台版をこれから見る予定のある人は事前情報を入れないで劇場に行くことをおすすめします。特に舞台映像は見ないで行くのを強くおすすめします(カテコ動画は楽しいのでいっぱい見たらいいと思います)!!!それを踏まえても読んでくださる方だけこの先にお進みください。

大興奮で爆沸きする観客が最高

とーーーーーーーっても楽しかったです!!!大興奮でした!!!

ミュージカル版を作った方々の「全人類、BTTFは好きだよな~!?」っていう圧が作品全体に沁み込みまくっていて、それに観客たちが大歓声で応えてとんでもない空間が生み出されていました。デロリアンが舞台上に滑り込んできた瞬間、ドクが現れた瞬間、マーティがデロリアンを走らせる瞬間、ジョージとロレインがキスした瞬間、そしてマーティの乗ったデロリアンが消えた瞬間、その瞬間ごとに観客みんなが初めてBTTFを見たときの興奮を呼び覚まして、それを劇場全体で共有し合うようなそんな熱い観劇体験。ジョージとロレインのキスで我を忘れたように「ふぉーーう!!!!!」って叫びまくる客席は本当に最高だし、マーティが消えて炎の残る道にドクが現れたのを見た瞬間、もう脳からアドレナリンがダバダバ出てきて完全に興奮状態になったし、思わず泣きそうになりました。

そして極めつけの The Power of Loveからの観客の頭上を飛ぶデロリアンですよ。映画ではCGだとわかるのでデロリアンが飛んだからといって「おお!」くらいにしか思わないんですけど、目の前で飛ばれるとやばいです。全く舞台映像を見たことがなくてこの演出は知らなかったので、私もみんなと一緒に絶叫してしまいました。「わわわ!飛んでる!!しかもマーティとドクが手振ってくる!!きゃーーー!回った!!!!」って大興奮でした。

 

舞台化の意義

一昨年に『千と千尋の神隠し』の舞台版を見たあたりから映像作品を舞台化する意義を考え始めまして、BTTFについてもやっぱり考えました。

今作は映画の内容に忠実ではあるものの、観客が映画を見ている前提のもとハイペースに話を進めていくような節があります(その点はちょっと2.5次元作品的でもあるかも)。もしも映画を全く見たことのない人が見たとしたら反応はどうだろうかとも思います。舞台オリジナル要素として新鮮なのはドクのソロナンバーがショーアップされていて派手なダンサーが出てくるところくらいかな。

元となった映像作品に忠実であるほどに私は「舞台化の意義」を探してしまうわけですが(映像作品の得意分野であるCGを使った強烈なビジュアルイメージや迫力のある移動シーンとはまた違った魅力を舞台版には求めたくなります)、今作については大興奮で叫ぶ観客の存在にその意義を見出すことができました。

体感としてブロードウェイの観客は「みんなでリアクションをするのも含めて観劇」として楽しんでいるような感覚がありました。シリアスな『スウィーニー・トッド』の冒頭場面でもスターが出てきたら歓声を上げるし、『キンバリー・アキンボ』でキンバリーが傷つく場面では「Oh....」と声に出してリアクションします。ブロードウェイの方がリアクションは大きい気がしましたが、ロンドンでも似たような感覚はありました。

そしてこの作品はみんなで大きなリアクションを取るのも楽しむ観客たちとの相性がとても良いんだと思います。まずは「目の前に」マーティが、ドクが、デロリアンが現れる興奮があって、1回目のタイムトラベルでは映像作品の臨場感は再現できずとも舞台上を走るデロリアンと手前のスクリーンへの映像投影で疾走感を出した上でおなじみの音楽を使うことでわくわく感を高めて、結末まで知っている観客に「新しいタイムトラベル」を見せる。ここで観客1人1人が舞台版の世界に完全に引き込まれて没入していくのがわかりましたし、1人1人があげる歓声が劇場中に溢れることで客席全体が感覚を共有していく一体感のようなものが生まれていました。もうこの後は見せ場ごとに盛り上がりが大きくなる一方です。ダンスパーティーの場面で2階席からシャボン玉が噴射されるとみんなパーティーの参加者みたいに盛り上がっていました。私も絶叫しました。この感覚にこそBTTFを舞台化する意義があったのではないかな思います。

「ミュージカル化の意義」となるとまた別の話になってくる気はします。今作は歌がなくても成立するだろうなと思うので。でも作品の持っている高揚感と熱狂する観客とミュージカルという表現手法は相性がいいとも思います。カーテンコールでマーティとドクがハンドマイクを持って歌って、ビフがタンバリンを叩きながら踊って、マーティの恰好をしたダンサーが大量に出てきたらそりゃ楽しいもん。

 

機材トラブルの記録

私が観劇した回はドクの家のセットの下手側半分が出てこないという機材トラブルが発生しました。下手の舞台袖を見ながらマーティが「ここはカリフォルニアだからね。家が半分なくなるなんてよくあることさ!」って笑っていました。ドクはそのまま芝居を続けようとしていたのですが、マーティがとにかく気にしまくるものだから芝居が続けられなくて、2人して笑い始めたのが面白かったです。芝居は止まったけれど劇中の雰囲気の延長線上にあるような2人を見られました笑

ちなみに翌日ソワレをおかわり観劇した友人によると、今度は終盤のタイムトラベルで機材トラブルがあったそうです。大がかりなセットが多い分、大変そうですね。

 

マーティがあまりにもマーティ

映画を久しく見ていないのでまた見たら違う感想を抱くかもしれませんが、マーティ役のケイシーがあまりにもマーティで笑いました。顔立ちがマイケル・J・フォックスに似ているかというとそうでもないんですけどね、声のトーン、話し方、動き、どれをとってもマーティで見ていてとても面白かったです。歌は上手いし、動きのキレもすごくて最高でした。

ジョージもものすごいジョージでした。どうやってあんなにジョージらしさ全開の方を見つけたのだろうか!ロジャー・バートのドクはクリストファー・ロイドのドクとはまた違った雰囲気の魅力がありました。見比べたいので近々映画を復習しようと思います。

 

 

【今回のBW観劇旅行の記事】

 

【映像作品の舞台化】

 

【🇺🇸BW観劇記1-2】詩人としての選択なのか『Hadestown』2/17 M 感想

ブロードウェイ観劇旅行、2本目は『ハデスタウン』になりました!

f:id:yadokarinko:20240226084915j:image

ちょうどミュージカル観劇を本格的に始めた2021年2月ごろに

ハミルトン、ムーランルージュを生で見るまでは死ねない!って思ってたけどそこにハデスタウンが追加されました

と投稿していた私、3年越しに夢を叶えていました。

作品・公演概要

Hadestown
原作: Ὀρφεύς, Εὐρυδίκη(Ancient Greek myth)
音楽・詞・脚本: Anaïs Mitchell(アナイス・ミッチェル)
初演: 2006年 バリバーモント州
    2010年 コンセプトアルバム
    2016年 オフ・ブロードウェイ
    2018年 ロンドン
    2019年 ブロードウェイ
劇場: Walter Kerr Theatre(ウォルター・カー劇場)
演出: Rachel Chavkin(レイチェル・チャフキン)
オープン日: 2019年4月17日

 

キャスト

オルフェウス: Jordan Fisher(ジョーダン・フィッシャー)
エウリディケ: Lola Tung(ローラ・タン)
ペルセフォネ: Ani Difranco(アニー・ディフランコ
ハデス: Phillip Boykin(フィリップ・ボイキン)
ヘルメス: Max Kumangai(Swing)
運命の三女神: Belén Moyano、Kay Trindad、Brit West
労働者: Emily Afton、Malcolm Armwood、Chibueze Ihuoma、Alex Puette、Grace Yoo

本役ヘルメスはLillias Whiteの女性ヘルメスだったと知ってちょっと悔しいですが、スウィングとは知らずに見たMaxのヘルメスは大変かっこよかったので良かったです。そろそろオルフェウスを女性にした女女ハデスタウンが見たい気もするんだけれどそうすると『燃ゆる女の肖像』に寄りすぎ?

Lola Tungは今年の3月17日にファイナルと予定されていました。

 

チケット購入までのあれこれ

この日の朝は『Back to the Future The Musical』のRush Ticketsの列に朝から並んでいて、もう1演目は何を見るか決めていない状態でした。『& Juliet』のRushがデジタルで9:00に売り出されたけど瞬殺すぎて取れず、またこの週末はどこの劇場も完売気味で残席の価格高騰も激しい。

そんな中、完売公演の『Hadestown』は$39の立ち見席が販売されるとのことだったので、BTTFのチケットを取り終わった後すぐにウォルター・カー劇場に向かいました。売り切れないか不安でしたが10:18には立ち見席のチケットを購入できました。

f:id:yadokarinko:20240226085529j:image

立ち見の9番は1番外側のポジションだったので、ギリギリ買えたという感じだったのかもしれません。ラッキー!

 

いざ、劇場へ

f:id:yadokarinko:20240226091025j:image

ウォルター・カー劇場は『ハデスタウン』に合わせて赤い花で装飾されていました。

f:id:yadokarinko:20240226091015j:image

f:id:yadokarinko:20240226091021j:image

ところどころに午前中に降った雪が積もっていてそれもまた可愛かったです。

f:id:yadokarinko:20240226091018j:image

立ち見9番からの眺め。「Partical View」表記があったとおり、天井によってハデスとペルセフォネがいる2階部分が見切れます。ただ立ち見で割と動ける分、その場で屈めば2階のセットも見ることはできました。劇場があまり大きくないので1階の1番後ろでも舞台はかなり近く感じました。

f:id:yadokarinko:20240226091011j:image

開演前に立ち見席向けの注意事項が説明されて、手すりを掴むのはOKだけど寄りかかるのはNG、手すりから離れて壁際まで下がるのもNGでした。寄りかかりは前に座っているお客さんに当たってしまう可能性があるからですね。壁際まで下がってはいけないのは、オルフェウスがエウリディケを迎えに行くシーンで客席から舞台に上がるためのスタンバイを1階の後ろでするからだと本編を見ていてわかりました。上手のドアから出てきたオルフェが私の後ろを駆け抜けていって準備のポジションに着くのが見えて楽しかったです。結構早めからギターを抱えて三角座りで待機しているジョーダンオルフェがかわいかったな。

 

感想

ずっとOBCを聴き込んできた『ハデスタウン』、やっと本編を生で見ることができて良かったです。とにかく音楽がかっこいいので生演奏で楽曲を浴びられたのが楽しかったのと、立ち見で横の人との間隔も多かった分ちょっとリズムに揺られながら見られたのが心地よかったです(横の方もちょい揺れしてた笑)。OBCメンバーのイメージが強すぎて、他のキャストで見て楽しめるかなという不安がありましたが、別キャストで見るとまた違った楽しさがありますね!

特にオルフェウスはオリキャスのリーヴ・カーニーの歌声ありきでは?みたいな楽曲なので、あれを歌いこなせる人はいるのだろうかと思っていましたがジョーダン・フィッシャーがそんな不安をあっさり飛び越えてきて笑っちゃいました。ジョーダンオルフェは高音が柔らかくて暖かく、本当に春を呼び戻しそうだなと思いました。Wait for Meなんかはかなり力強くてこれもまたリーヴオルフェとはまた違った魅力で聴いていてとても楽しかったです。歌が上手い人はどんどんオルフェウスをやったらええ。

そしてジョーダンオルフェは全体的に可愛らしかったです。Come Home with Meでは大爆笑が起っていましたが「やべえ奴」というよりかは「かわいいな☺️」ってなる雰囲気でした。本当に誠実で純粋でまっすぐなオルフェでした。

ローラエウリディケはもうちょっと歌にも芝居にもパンチが欲しいなと思いつつ、学園ドラマに出てくる警戒心強めで斜に構えたティーンエイジャー感が強くて愛おしかったです。エウリディケが寒さや飢餓によって受ける苦しみがヒリヒリと伝わってくるようでした。Flowersでは息をするのも苦しそうに言葉を紡ぎ出して床に崩れ落ちてしまう姿が強く印象に残りました。

アニーペルセフォネはほどよく酔いが回っているようなアンニュイな雰囲気が素敵で、フィリップハデスはとてもコミカルでハデスってこんなに笑いを取る役どころだったのか!?と驚きました。

そしてスウィングのマックスによるヘルメスがとても良かった〜!歌声が伸びやかでかなり心地よかったです。上手い!若めのヘルメスもまたホットでいいですね〜。ヘルメスという役は演じる役者に無限の幅がある気がします。本当に素敵でした。

この作品はこれまで音楽として楽しんできた側面が大きかったので、自分の頭の中にあったぼんやりとしたイメージが実際の上演を通してミュージカル作品として目の前に立ち上がってくる感覚があってそれもまた楽しかったです。

ビジュアル面では地下へと続く扉が開いて電飾の明かりが舞台上に差し込むのが強烈でした。オルフェが地上と地下を繋ぐ道を歩く場面で舞台上にモヤがかかって、モヤの中ならFatesがふっと現れては消えてを繰り返しながらオルフェに語りかけるのも幻想的で素晴らしかったです!神話の世界が目の前に広がりました。

 

オルフェウスはなぜ振り返ったのか」というのは永遠と考え続けられてきた問いですが、『ハデスタウン』ではどうなのかというのも今回生で観劇して初めて考え始めました。もちろんDoubt Comes Inという曲で表現されるように猜疑心に苛まれたからというのがあるとはいえ、やっぱり他にも理由を探してしまいます。この作品では冥界が外界との間に作られた壁とその中で働く労働者たちによって貧しさや飢え、寒さから解放された世界として描かれます。ハデスと契約関係を結んだ労働者たちは貧しさから解放される一方で日に日に自我を失っていきます。

ハデスタウンの性質を端的に表したWhy We Build the Wallを聴いて真っ先に頭に浮かぶのはトランプによる「移民の流入を防ぐためにアメリカとメキシコの国境に壁を作る」という発言でした。厳しい環境に置かれた人々を排除して自分のテリトリーの繁栄だけを追求する姿勢が重なります。そう考えるとハデスタウンは自国の利益を追求する資本主義国家に見えてくるのだけれど、そこで働く労働者たちは同じような服を着て個性を失っていくというところやハデスの後に続いて皆で同じ言葉を唱えるところなんかは共産主義国家っぽくもあり(突き詰めればどちらも画一的な労働者を欲するのかな)、ハデスタウンの特徴は過度な経済活動くらいに考えておくのがいいのかもしれません。過度な経済活動で発達した国と気候が厳しくなって飢える人々。しっかり現実世界の似姿が見えてきました。そしてハデスタウンの特徴を過度な経済活動とするならば、芸術家であるオルフェウスはそれに対立する存在だと考えられます。

ここで思い出したのが『燃ゆる女の肖像』でマリアンヌが言う«il ne fait pas le choix de l'amoureux, il fait le choix du poète.»というフレーズ。ここでは恋人としての選択と詩人としての選択を天秤にかけているけれど、あと少しで地上に辿り着きハデスとの取引を終えようとする場面で振り返った『ハデスタウン』のオルフェウスは契約や取引の中に組み込まれるのを拒んだようにも見えて、ここにも「詩人としての選択」「芸術家としての選択」を見て取れるんじゃないかなと考えました。

この問題はこれからもずっと考えることになりそうです。

 

【3/6 追記】

Fatesの写真が可愛かったので載せとく

 

 

【ブロードウェイ観劇旅行の記事】

【🇺🇸BW観劇記1-1】Aaron TveitとSutton Fosterが目の前に『Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street』2/16 S 感想

念願のブロードウェイ!1本目は『スウィーニー・トッド』にしました。今回の旅行のメインイベントです。なぜなら私がミュオタになるきっかけを作った1人であるアーロン・トヴェイトが出ているから!!きゃーーーー!!!!

f:id:yadokarinko:20240226011118j:image

作品・公演概要

Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street
原作: Sweeney Todd by Christopher Bond(1970 play)
作詞・作曲: Stephen Sondheim(スティーブン・ソンドハイム)
脚本: Hugh Wheeler(ヒュー・ウィーラー)
初演: 1979年 ブロードウェイ

 

Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street
劇場: Lunt-Fontanne Theatre(ルント・フォンテーヌ劇場)
演出: Thomas Kail(トーマス・カイル)
オープン日: 2023年3月26日
※アーロン・トヴェイトとサットン・フォスターの当番は2024年2月9日からの12週間限定

Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street (2023 Broadway Cast Recording)

Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street (2023 Broadway Cast Recording)

 

キャスト

スウィーニー・トッド: Aaron Tveit(アーロン・トヴェイト)
ミセス・ラヴェット: Sutton Foster(サットン・フォスター)
アンソニー: Felix Torrez-Ponce(Understudy)
トバイアス: Joe Locke(ジョー・ロック)
乞食女: Ruthie Ann Miles(ルーシー・アン・マイルズ)
ジョアンナ: Maria Bilbao
ターピン判事: Jamie Jackson
ビードル・バンフォード: Jonathan Christopher(Understudy)
ピレリ: Raymond J. Lee(Replacement)
小鳥売り: Dwayne Cooper(Swing)
通行人: Patricia Phillips
ジョナス・フォグ: Stephen Tewksbury

+アンサンブル 16名

 

チケット購入までのあれこれ(朝からRush Ticketsの列に)

作品によってチケットの売り方はまちまちなのですが、スウィーニーは公演当日の朝10:00から劇場のボックスオフィスでラッシュチケット(Rush Tickets)を販売するということだったのでこちらにチャレンジしてみました。何時から並ぶべきか迷いつつ「Reddit」というSNSで情報を集め、朝8:00ごろから並ぶのが良いだろうと判断して寒い中ホテルを後にしました。

結局8:10ごろに劇場の前に着くと7人ほど既に並んでいる人がいました。列のどちらが後ろか定かではなかったので、端にいたお姉さんに「これはラッシュの列?ここに並べばいい?」と尋ねると「そうだよ」と言ってくれました。気さくそうな方だったので「今日ってアーロンは出ると思う?」と聞いてみると「きっと出ると信じてる」と答えてくれて、朝から並んだのにアーロンがいないかもしれないという不安を少し和らげてくれました。

f:id:yadokarinko:20240226011238j:image

私たちは着の身着のまま並んだのですが、待っている人たちは敷物や毛布を持ってきていて寒さへの備えが万全でした。2つ前のお兄さんだけは薄着でぶるぶる震えながら待っていて心配でした。ここから2時間とにかく待ちます。手袋から手を出すと一瞬で手が凍えてしまうのでスマホを触り続けることもできず、とにかく寒さに震えながら10:00を待ちます。時間が過ぎるのがとんでもなく遅く感じました。

10:00を迎えると劇場のドアが開いてボックスオフィスの前に列が動きます。前の人の窓口でのやり取りを聞いているとどうやらラッシュがない模様。こんなに並んだのに!と絶望しつつ、前の2人に話しかけると「$49のラッシュはないみたいだね」と言われました。がーーーーん。でもめげずに窓口の会話を聞いていると、$79のラッシュチケットが販売されているとわかりました。

そしていよいよ私たちの番に。まずはアーロンが出演予定か聞くと「今晩はスケジュールされてるよ」と言われました!やったーーー!!!!念のため$49のラッシュの存在を聞くと「今日は売っていない」とのことでした。そしてやはり代わりに$79のラッシュがあるとのことだったので席を聞きます。するとオーケストラ(1階)の7列目、1番端の席と隣の車椅子席に劇場の椅子ではないダイニング用の椅子を置いて1人はそこ座る形があると言われました。まさかそんなに前のチケットを提示されると思わなかったので快諾。$79でその日の晩のチケットを手に入れました。

f:id:yadokarinko:20240226011321j:image

ちなみに2つ前のお兄さんはチケットを買わず、おそらく「立ち見待ち」と思われる列に並んでいました。スウィーニーの立ち見はチケット完売時にのみ売られるので「20分後になるか3時間後になるかわからないよ」と言われていたけれど了承していました。

 

いざ、劇場へ

この後は観光に出かけて、18:25ごろにルント・フォンテーヌ劇場に戻ってきました。

f:id:yadokarinko:20240226074649j:image

相場に比べてかなり安くて前の方の席だったので「見切れるかな」と思っていましたが、舞台が近い上に見切れもない素晴らしい席でした。スウィーニーは舞台が高めに作ってあるのと、2階部分を使った演出が多いので、前の方の列はかなり見づらそうな印象です。

f:id:yadokarinko:20240226011542j:image

念願のプレイビルを開くとアーロンとサットンの名前が!!わーーーーーーー!!!!!

f:id:yadokarinko:20240226011618j:image

車椅子席+ダイニングチェアには友人が座ってくれたのですが他の椅子よりも1段高くなっていて面白かったし、実際に座った友人は「なんか自分だけ上に飛び出ていてちょっと恥ずかしい」と言っていました。席自体は見やすかったそうです。

 

感想

幕が開いてすぐにアンサンブルの方々のかっこよさに心を掴まれました。不穏な雰囲気と熱量がものすごい。今作のアンサンブルパートは地の文を歌うみたいな不思議な役割を担っていて、ともすると退屈になってしまいそうでもあるのだけれど、Steven Heggette の振付とNatasha Katz 照明デザイン、そしてアンサンブルの方々のパワーによって一気に見どころにまで昇華していました。特にジョアンナとアンソニーの精神病院からの逃走の場面は光と影、アンサンブルの身体の使い方がとてつもなくかっこよくて興奮しました。

セットは2階建てで、2階にスウィーニーの理髪店、1階にラヴェット夫人のパイ屋さんとオーブンのセットがあります。スウィーニーが殺した人の遺体は(首から血糊あり!!!)椅子の下へと滑り落とされたあと客席の目には見えませんが、トバイアスがミートパイの正体に気づく場面ではダクトからビードルの死体が飛び出てくるという仕様になっていて面白かったです。作品としてはアンソニージョアンナのパートがちょっと眠いかな。それ以外は見せ方が上手いので見せ場になっていたように思います。

そしてアーロン演じるスウィーニーが飛び出してくるととんでもない歓声が!!!これがブロードウェイの雰囲気!!!私も憧れの人が目の前に現れた感動をそのまま声に乗せて思いっきり叫んでしまいました。まさかスウィーニーでこんなに叫ぶことになるとは笑 アーロンはキャスティングが発表されたときには「スウィーニーはテノールが演る役じゃない」とバッシングを受けていましたが、低音も歌いこなしていたし、何より声が良すぎて耳が溶けました。魔法の声ですよ。Epiphanyの気迫と歌声の迫力が特にものすごかったです。何度でも聴きたいです。

髭がもじゃもじゃで顔つきも険しくしているので無愛想に見えるのですが、歌い出すと声が甘いのとミセス・ラヴェットとの絡みの中でふとした瞬間に見せる柔和な雰囲気が相まって、事件が起きる前の若く幸せだったころのスウィーニーが垣間見えるのがすごく良かったし辛くもありました。ターピン判事と出会わなかったスウィーニーの人生を想像してしまいます。そしてこのアーロンスウィーニーの魅力はミセス・ラヴェットにとっても酷ですよね。そりゃどんどん好きになっちゃうわな。アーロンの夢を見させる力というか醸し出すロマンチックさみたいなものはオーブンの前でのワルツでも存分に発揮されていてただでさえ大好きな場面にまた違った魅力が乗っかってとても好きでしたね。

サットンのラヴェット夫人は可愛かったです。あのツインお団子スタイルが似合いすぎる!そしてとにかくやりたい放題なサットンでした。登場シーンからニンジンを口で切っていると思ったらニンジンを鼻の穴の中にまで入れてそこからフンフン吹き出していました。面白いし謎すぎる笑笑 1番やりたい放題だったのはBy the Seaですね。歌いながらアーロンスウィーニーにとにかく触りまくって、最終的にはサットンラヴェット夫人はスウィーニーの座る椅子の真下に仰向けに寝っ転がって足でアーロンスウィーニーの耳を弄ったり、スウィーニーのシャツの首元を開いて胸を捏ね回したりしていました。1幕ではサットンがやりたい放題すぎてアーロンが笑いそうになっている(笑わなかったけどちょっと顔が綻ぶ)雰囲気があったので「今度こそ笑ってしまうのでは!?」という謎な不安に駆られながら見守りましたがサットンの攻撃をなんとか笑わずにやり過ごしたアーロンでした。サットン怖すぎる😂

サットンのラヴェット夫人はとんでもなく明るくて暗くて陰鬱な作品の雰囲気と対照的なまでなのですが、このやたら明るくてコミカルなラヴェット夫人は今作の持っているコメディの性質をかなり広げていたのが面白かったです。ちょっとした言い回しでもドッカンドッカン笑いをさらっていて作品をカラッとさせていました。そこに若くして全てを失って鬱々としたアーロンスウィーニーが出てくると落差でグッと引き込まれるし、反対にスウィーニーがラヴェット夫人に乗ってくるような場面では2人がやたらキラキラして何か真っ当なことを成し遂げようとしているかのような雰囲気になるのも面白かったです。

歌唱力は皆さん素晴らしく、特に『ハートストッパー』で話題のJoe Locke演じるトバイアスが伸びやかな歌声で良かったのとビードル・バンフォードとピレリ役の2人が短いソロでとんでもない歌唱力を発揮していたのが印象に残っています。

昨年にティム・バートン監督の映画版を見ていたので話にはついていけましたが、ソンドハイム特有のおしゃれな韻の踏み方や言い回しはまだまだキャッチできていないので近々ジョシュ・グローバンの音源を聴きながら歌詞を読もうと思います。

 

SDの話

酷いと思ったのが、ファイナルシーンになると周りの人たちがガサガサ準備をし始めるんですよ。それでカーテンコール中に出ていってしまう。多分ステージドアに並ぶために。観劇している人にすごく迷惑だし、舞台上の役者にだって失礼だと思いました。私たちも終演後に急いでSDに向かいましたが既に大きな人だかりができていました。このうちの何人が途中で抜けたんだと思えて悲しかったです。

f:id:yadokarinko:20240226071121j:image

1番に出てきてくれたアーロンはめっちゃ遠い!遠巻きから写真を撮ることしかできませんでした。そのあとサットンとジョー・ロックが帰った雰囲気がありましたが気長に待っていると、アンソニーでU/Sを務めたFelix Torrez-Ponce、ターピン判事のJamie Jackson、ビードル・バンフォードのJonathan Christopher、
ピレリのRaymond J. Leeからサインをいただけました。皆さんペンは持ってきてくれていました。

f:id:yadokarinko:20240226071210j:image

そして最後に出てきた乞食女役のルーシー・アン・マイルズにサインと写真をいただきました。恐れ多くも写真を撮ってもらった後も私は彼女が『王様の私』でチャン王妃を務めていたルーシー・アン・マイルズ様だと気づいていませんでした!チャン王妃のメイクと髪型のイメージが強かったので家に帰ってきてから気がつきました。レジェンドにお写真を撮っていただいてしまったわけですね!!大切にします😌✨

f:id:yadokarinko:20240226071328j:image

SDの人だかりが捌けたあと、劇場に貼ってあるサットンのポスターの前で友人と写真を撮り合っているとタイムズスクエアにいた着ぐるみのミニーが写真に写り込もうとしてきました。怖かったしお金を取られても嫌なので追い払いたかった私から咄嗟に出たのは「I Love Sutton! So don't do that!!」笑笑 謎のサットン大好きアピに負けたのか偽物のミニーはすごすごと帰っていきました。

P.S.

実は今回の旅行を考え始めたときにはアーロンのスウィーニー登板は発表されておらず、私の旅行の目的は『メリリー・ウィー・ロール・アロング』を見ることでした。でもチケット代が高騰しすぎて、私はいくら好きな作品でジョナサン・グロフが出演しているとはいえ3階席に2万円は払えないと判断しました。Lotteryも試して外れました〜🙃

でもこうしてアーロンのスウィーニー登板が決まり、旅程もそこに合わせて後ろ倒して、ブロードウェイでソンドハイム作品を見ることができてとても幸せでした!!!

 

【今回の旅行記

 

【🇺🇸BW観劇記1-旅行記①】ユナイテッド航空でドキドキの初アメリカ旅行

昨年10月の旅行記をやっとこさ書き終えたばかりだし12月の韓国旅行もほぼほぼ手つかずですが、新たな旅行です。今回はニューヨーク&オーランド 10日間の旅。初のアメリカです!

今回の旅行記もだいたいの写真のクレジットはHappyでお送りしております。ありがたい。実用的な旅行情報を知りたい方には彼女のNoteがおすすめです。


2/15

出発(だいぶ個人的な記録)

家からリムジンバスの乗り場までは30分ほどあれば確実に着きますが、重いスーツケースを運ぶので1時間前には家を出ました。

前回、17kgのスーツケースを階段で家の下まで下ろすのがキツすぎて半泣きになったし、全身筋肉痛になって大変だったので、今回はスーツケースの中身を半分別の袋に入れて、母に持って降りてもらい、私は10kgほどになったスーツケースを持って降りる作戦に。家の下で家族に見送ってもらう機会はあんまりないので、嬉し恥ずかしな気持ちで家を出ました。

30分ほど早くバス停に着いたので、今朝の分の朝ドラ『ブギウギ』を見て過ごします(前回の旅行もバスで『ブギウギ』を見てたなと思い出しました)。

バスが着いて荷物を預ける時に運転手さんにターミナルを聞かれて焦りました。急いでチェックして「第3でした!」と伝えます。

車内では昨晩の『作りたい女と食べたい女』を見て、そのあとは『Helluva Boss』のシーズン2を見進めます。7話まで見終わって、ブリッツとフィズとアスモディアスの関係にうるうるし、8話を探すも見当たらずそこで調べて初めてS2の続きがまだ制作中だと知りました。ストラスが幸せになるのを見届けさせてくださいよ。。。まだ空港到着までかかりそうだったので『芳雄のミュー』の最新話を途中まで見ました。

 

羽田空港到着

予定通り羽田空港第3ターミナルに到着。友人との合流まで時間があったので両替所を探します。

これまでは事前にレートのいい街中の両替所で済ませておくことが多かったのですが、いかんせん卒論を書き終えた燃え尽き症候群で何もかもが億劫で準備をしていなかったもので空港で両替する運びとなりました。出発前日の夜に父の持っているドルをもらう手筈だったのですが、私がお風呂に入っている間に父が寝てしまい、書き置きとLINEで「ドルを置いていってね」と残したのですが、気づかず父は仕事に出かけてしまいドルを受け取り損ねました。無念。

第3ターミナル内の両替所のレートを調べるとみずほ銀行がおすすめと書いてあったので、1階のみずほ銀行に行ってみますがなんと閉店の張り紙が。これは一軒ずつ見てみるしかないと2階でローラーをかけようとしたところ、同じくみずほ銀行の両替所が2階にもありましたのでそこで両替をお願いしました。あまり現金は使わない予定なのでとりあえず1万円分だけ。レートは150$超えで辛かったですが細かくしてもらえて良かったです。やっぱりなんとかして自民党政権を打破しなくてはダメね。

友人との合流までまだ少し時間があったのでみずほ銀行の前のベンチで『芳雄のミュー』の残りを見ていると、友人が現れました。お腹が空いていたので、まずは腹ごしらえをします。訪れたのは友人おすすめのおにぎり屋さん「こんが」。有名な「ぼんご」の系列店です。ぼんご系おにぎりはずっと食べてみたかったので嬉しかったです!

f:id:yadokarinko:20240225172422j:image

味は悩みに悩んで卵黄の醤油漬け筋子をチョイス。ターミナル4階部分のテラスで食べました。齧るたびに反対側から具が溢れ出てきて速攻でおにぎりの形は崩壊しましたが、とても美味しかったです。風にお箸を飛ばされそうになりながらテラスの机でおにぎりを食べながらいつも通り昨今のミュージカルニュースについて喋りまくりました。

f:id:yadokarinko:20240225172457j:image

そのあとはちょっとテラスで写真撮影。テラスの上にあったはずの「TOKYO INTERNATIONAL AIRPORT」の文字がない!!と騒ぎましたが角度を変えたら見えました。

f:id:yadokarinko:20240225172818j:image

今回の旅行では「写ルンです」にチャレンジしようかということで1階のローソンで購入。ここのローソンはヘアアイロンなんかも売っていて衝撃でした。あとローソンはプライベートブランドがあるのでドリンクが空港価格じゃないところが良いですね。ちなみに4階のドンキも見ましたがドンキには写ルンですはなさそうでした。

チェックインまでもう少し時間があったので3階のベンチで休みます。この日は最高気温が20℃と2月にしてはだいぶあったかくて、上着をキャリーケースに仕舞っていたので、そのまま預けてしまわないようにここで取り出しました。ちょうどこの頃『ATTENTION PLEASE!2』真彩希帆ちゃんゲスト回が終演していて、希帆ちゃんがGOLDを歌ったとの情報をキャッチしまして「DIVAじゃん!!」と叫ぶなどしました。1幕ではDon't Rain On My Paradeを歌ったそうな。最高じゃんか。

そうこうしているうちにチェックイン時間を過ぎたのでカウンターに行くと誰も並んでいません。オンラインチェックインは済んでいたので荷物を預けるためのカウンターに行くと「荷物タグは発券しましたか?」と言われました。なんだそれは!「まだしてません」と言うと、スタッフさんが「一緒にやりましょう」と機械までついてきてくれてやり方を教えてくださいました。素敵でした。でもびっくりです!荷物タグも機械で出して自分で巻く時代なんですね。搭乗券はiPhoneのWalletにデジタルのものを持っていましたが、同じ機械で紙の搭乗券を印刷してもらうこともできました。旅の記念には嬉しいですね。


無事荷物を預けていよいよ荷物検査へ。カウンターだけでなくこちらもがら空きでびっくりです。うつるんですはX線の影響を受けることも無きにしも非ず(大体の場合は大丈夫)とのことだったので別で検査してもらいました。

 

搭乗口は141番。1番端っこでした。友人に「高校の修学旅行で台湾に行った時もこの辺の搭乗口だったよね〜」と言われましたが私は何も覚えていませんでした😂 ただ「Cafe 146」という店には見覚えがあったのでそれを伝えると、前回のイタリア&オーストリア旅行もこの辺から乗ったかもと言われました。それも覚えてません。

搭乗口前のベンチに座って落ち着き、交代でトイレに行くとあっという間に搭乗開始になりました。


飛行機で12時間の旅

今回は機内ががら空きで驚きました!これまでの旅行では満席の飛行機にばかり乗ってきたので、コロナ禍の2022年のヨーロッパ旅行のとき以来のがら空きの飛行機でした。航空会社は初めてのユナイテッド航空(United Airlines)です。ほぼ定刻で離陸しました。

f:id:yadokarinko:20240225185546j:image
客室の電池が切れそうなところがあったり毛布がペラペラすぎたりと笑ってしまうところもありましたが、快適な空の旅でした。無料Wi-Fiでメッセージアプリが使えるのも魅力です。メールとLINEはうまくいきませんでしたが、SMSは使えました。あと途中でslackの通知が来たのでこちらも使えるかもしれません。アナウンスでWhatsAppも使えると言っていました。

f:id:yadokarinko:20240225185641j:image
離陸後すぐにスナックが配布されます。まだおにぎりでお腹いっぱいなのでお持ち帰りに。

f:id:yadokarinko:20240225185709j:image
離陸後1時間ほどの19:40ごろに1回目の機内食が出ました。今回は事前に機内食を見られなかったのでドキドキしつつ、チキンorパスタのチキンを選びました。出てきたのは唐揚げ弁当です。付け合わせのおひたしが出汁の効いた味でとても美味しかったです。まさか離陸後にこんなにも日本の味付けを楽しめるとは!ただまだまだおにぎりで満腹なので無理やり食べる感じになりました。私は豆もあんこも苦手なので塩豆大福は友人にもらってもらいました。美味しかったらしいです。

f:id:yadokarinko:20240225185741j:image
この日はかなり揺れてて、離陸2時間後の20:20ごろまでシートベルトサインが消えませんでした。ドリンクもぐわんぐわんに揺れていて、カップホルダーの部分に知らぬ間にオレンジジュースが溜まっていました。

23:30ごろには軽食。私はまだまだお腹いっぱいですが頑張って食べます😂 チキンとチーズのサンドイッチとハムチーズのサンドイッチ、それからあられとキットカットが出てきました。サンドイッチにマヨネーズが入っていなかったのがとても嬉しかったです(マヨ嫌いなので)。

f:id:yadokarinko:20240225185817j:image
機内が快適すぎて最早到着したくなくなってきました(出不精)。

ちなみにここまでの旅行記はこのタイミングで書いています。旅行記も貯めると大変だと知ったので、暇な時間にその場で書いてしまおうというわけです。しばらくは何も起こらないはずなので寝ます。おやすみなさい。


5:00過ぎまで爆睡しました!途中喉が渇きすぎて起きてお茶を飲んだのと、外が明るくなったら急に暑くなってちょっと寝汗をかいた(薄いからとブランケットを3枚もかけてたから?)のを覚えています。


朝ごはんは5:30頃で、??うどんorオムレツでした。2列前と前列が聞かれている時うどんの方が全く聞き取れず、自分の番が来てやっと「うどん」だけ聞き取れましたが前半部分はリスニングできませんでした!でもせっかくなので「うどん」をチョイス。出てきたのはこちら。

f:id:yadokarinko:20240225190021j:image
「豆腐うどん」ですね!!上にはにんじん、パプリカ、豆腐が乗っています。味付けは和風出汁でもなく、中華風でもなく、美味しかったものの何味かはわかりませんでした。あとカトラリーがフォーク・スプーン・ナイフなので、フォークでうどんを巻きながら食べることになるのが面白かったです。全然巻けない😂

ユナイテッドの画面には「ご飯のときには起こして」という表示が出せるのがいいなと思いました。絶対に機内食を逃したくないけど爆睡する勢にはありがたいです。

f:id:yadokarinko:20240225190557j:image

着陸直前には薄っすら雪が積もってるのが見えました❄️ 現地時間16:35、ニューアーク・リバティー国際空港(Newark Liberty International Airport)に着陸です。

f:id:yadokarinko:20240225190328j:image


ドキドキの入国審査

人生初の(多分)対面入国審査です。「何日間どこに泊まるのか」「どこに行くのか」と強面の方に詰められて「ひ〜!!!」となりました。まあ旅程をちゃんと頭に入れてない私も悪いですが(数字がどうしても覚えられない🙃)、アクリル越しなのに相手があんまり声を張ってくれないから聞き取りづらくてお互いにまあまあ険しい顔をしながらやり取りしました。やり取りが終わると機械で全部の指の指紋を取られるのですが、それもなんともやりづらい高さにあって🙃🙃🙃

入国審査を抜けると素敵な自由の女神のアートワークが迎えてくれました🗽

f:id:yadokarinko:20240225191019j:image


バス停が怪しすぎる Newark Airport Express

友人が家でガイドブックの写真を撮ってきてくれて、そこに空港から市内へは Newark Airport Express というバスが便利とのことだったのでそれを採用。ターミナルCの到着ロビーの表示に従って建物の外に出て、横断歩道を渡り、指定のバス乗り場に着いたもののその場所にはタクシーが停まっているわ、職員もいないわで超不安な感じ

f:id:yadokarinko:20240225210755j:image

オンラインサイトでチケットの購入もできそうでしたが、いかんせん「本当に来るのか?」っていう怪しさだったので購入画面の直前で手続きを止めておいてバスが来た瞬間に決済することにしました。この間にも後ろのタクシー乗り場では職員とタクシー運転手らしき男性と乗客らしき女性が謎の口論を繰り広げていて怖かったです😂

不安なままバスを待っていると前を通りかかったユナイテッド航空の職員の方が「バスはここで待ってればいいよ!キャッシュが使えないからそこの看板のQRコードを読み取って事前にオンラインで買いな!」と声をかけてくれました。ありがたい!おかげで安心してサイトの決済を完了して、ゆったりとバスを待つことができました。

f:id:yadokarinko:20240225211423j:image

バスは乗車から40分ほどでニューヨーク41番街の Port Authority Bus Terminal に到着しました。

思ったより早くNY中心部に着いたので「ソワレぶち込む?」と考えたりもしましたが、流石にスーツケースもありますし、大人しくホテルに向かうことにしました。ホテルまでは地下鉄に乗ります。

 

地下鉄は携帯で乗る時代 OMNY

BWに行っていたミュオタのツイートで「地下鉄は携帯で乗れるらしい」と知っていたので、バスの中で調べてみると「OMNY」というサービスがあるとわかりました。

改札で携帯をかざすだけという乗車時の手軽さと1週間ごとに12回以上の乗車は自動的にフリーパス扱いになるという仕様が良いということで私たちも利用することにしました。フリーパスだと何回地下鉄に乗る予定か考えないと損になってしまう可能性がありますが、このOMNYではその心配がないのでいいですね!ネットの情報では1週間が月曜から日曜までの区切りと書いてあるものもありましたが、公式サイトを読むと使い始めてからの1週間に仕様変更があったようで、より便利になっていました。

ちなみに私は間違えてOMNYに登録したカードと別のカードで1回目の地下鉄に乗ってしまったのですが、1回目に使ったカードをOMNYに追加登録したところ1回目の乗車も12回のうちの1回に数えてくれていて感心しました

地下鉄の駅にはほとんどエスカレーターがないので、基本エレベーターを探し回って階を移動します。1ヶ所だけエレベーターが見つからなくて階段を降りましたが全身から汗が吹き出して大変でした😂

 

ホテルは42nd Stから電車で15分ほど

今回泊まったのは「Times Square - 42nd Street  /Port Authority Bus Terminal」から電車で15分ほど「96th Street」の駅のワンブロック先にある Night Hotel Broadway。緑の照明で怪しい感じになっていますが、周辺の治安も良さげで安心でした。

f:id:yadokarinko:20240225215827j:image

建物自体はかなり古そうでしたが、部屋はしっかり広いし清潔感もありました。

f:id:yadokarinko:20240225215831j:image

f:id:yadokarinko:20240225215834j:image

問題点は部屋に付いている暖房が信じられないくらいうるさかったところくらいですかね。友人は夜中に暖房の音で起きてしまったとか。爆発しやしないかと不安になる音でしたが、なんとか爆発せずに動いてくれていました。

部屋では翌日以降の予定を確認してダラダラ過ごしました。友人が廃棄予定の食品を安く買えるアプリ「To Good To Go」を入れてくれようとしたのですが、海外用のApple IDを作らないとダメということで断念。ホテルの向かいにあったピザ屋さんに行くことにしました。

 

ベッドでピザを食べるわくわく

ホテルの向かいは「94 Corner Cafe」。大きめのピザを1人1切れ、シェアするようにレモンヨーグルト味のマフィンを1個買って部屋に帰りました。

f:id:yadokarinko:20240225220823j:image

ピザは人間の顔くらいの大きさで食べ切れるか不安でしたがぺろっと完食でした。マフィンの方が見た目に反してずっしりしていて胃に来ましたね。味は両方美味しかったです!

 

このあとはまた翌日の予定を詰めたり、翌日に行く施設のチケット予約をしたりして、それが終わってからお風呂に入りました。海外のお風呂あるあるで、どう操作すればお湯になるのか、どこを押せば蛇口からシャワーになるのかわからずに5分ほど格闘しました。イタリアのホテルよりはわかりやすかったし、水の出も悪くなかったので良かったです。

この日はこれでおやすみ。。。したものの時差ボケか4:00ごろには目が覚めてしまいました。

 

 

【イタリア⇒オーストリア旅行の記録】

 

健全すぎたかもしれない『ウィリアムとウィリアムのウィリアムたち』2/12 S プレビュー公演 感想

f:id:yadokarinko:20240212155215j:image

昨年秋に韓国観光公社の無料配信があったけれど旅行中で見られなかったのと、劇場自体にちょっと思い入れがあったのと、あともう1個ご縁があって見て参りました。

作品・公演概要

윌리엄과 윌리엄의 윌리엄들

作曲: 남궁유진(ナムグン・ユジン)
脚本・作詞: 김연미(キム・ヨンミ)
製作: The Best Plays Inc./演劇列伝
初演: 2023年 ソウル

 

ミュージカル『ウィリアムとウィリアムのウィリアムたち』プレビュー公演 ※日本初演

劇場: パルテノン多摩 大ホール
演出: 元吉庸泰
上演台本・訳詞: 板垣恭一
企画・製作: サンライズプロデュース/WOWOW

 

キャスト

大内リオン
岡幸二郎
駒田一

今作は劇中劇的な構造をとるので明確に役名はありませんが、大内さんがヘンリー、岡さんがミスターH、駒田さんがサミュエルを感じています。

 

作品感想

今作では想像力が豊かすぎて学校には馴染めず、父親のサミュエルからも「ただ息をしていればいい」と言われてしまうほど期待されていないヘンリーが父親を振り向かせるために豊かな想像力と得意の筆跡模写で偽のシェイクスピアの遺品や作品を作り、嘘に嘘を重ねていくという話。ヘンリーはシェイクスピアの遺品をサミュエルに譲渡する紳士としてミスターHという存在を創作し、ミスターHとの対話を通して新たな偽シェイクスピア作品を生み出していきます。


私は悪意のないキャラクターが嘘を重ねていく展開が苦手なので、いまいち乗り切れなかったですね。。Dear Evan Hansenとかもそうだけれどこればかりはもう食べ物の好き嫌いみたいなものかもしれません。ただ題材自体に惹きつけられるのは間違いないので、もうちょっと物語に盛り上がりがあると好きだったかもな〜と思いました。


今作の主なテーマはサミュエル&ヘンリー Wiliamの父子関係、ヘンリーと架空の人物ミスターHの共犯関係、真偽についての議論といったところだと思います。


父子関係の話になるといつも思い出すのが韓ミュの『ルードヴィヒ』で、あのどろどろに煮詰まった連鎖する負の父子関係が強烈に焼き付いている分「もっと!もっと!」と思ってしまいます。

今作の父子関係はサミュエルから気にかけられたいヘンリーとヘンリーに興味がないサミュエルという構造でヘンリーが傷ついている状況なのですが、ヘンリーの傷つき方の描き込みが弱めなのとサミュエルがヘンリーに対して抱く感情があんまり描かれないので(行動ベースと言いますか)、そこのところであんまり父子関係で感情が動きませんでした。もっとパワーゲームっぽくなるのかと思ったら結構ど直球な展開で物足りなかったです。

父子関係の歪みを描き出したシーンで1番良かったのは、ミスターHの出廷を願うサミュエルとそれを断ろうとするミスターH(ヘンリー)が手紙のやり取りをする場面。ヘンリーのためには手紙など書くことがないサミュエルがミスターHに対しては熱心に手紙を送り、それを受け取るたびにヘンリーが傷つくという展開は辛くて好きでした。

後半、ヘンリーが偽ることをやめて、その結果サミュエルから離れた人生を前向きに歩み出すという展開も好きでした。判決が出る前にヘンリーが罪の告白をしたもののそれは偽証罪扱いになり、贋作はシェイクスピア作品と認定される。ヘンリーは法廷を侮辱した罪で街から追放され、父の元からも離れることになるがヘンリーの足取りは軽やかでという流れは鮮やかです。


ヘンリーとミスターHの関係も個人的には物足りなかったです。H氏は本当にただヘンリーを創作と偽造の世界で後押しするガイド役のような存在でヘンリーやサミュエルの心理をもっと抉ってくれ!と思ってしまいました。ただこの点に関しては配役バランス的な問題もあるかなと思っているので後述のキャスト感想のところでも考えます。


真偽についての考察という点では、今作の序盤で「私がサミュエル・ウィリアムを演じます」「私がヘンリー・ウィリアムを演じます」という台詞によって作品全体の「演劇性」みたいなものを押し出しながら、最終盤ではアイアランド事件の真相やその後も続いた偽造事件を取り上げることで、観客がたった今見た作品の真偽も問いただすような入れ子構造になっているのが面白いなと思いました。観劇中観客は役者をサミュエルやヘンリーだと「信じている」状態で、それが最後の場面でパッと裏切られて放り出されるんですよね。

それから、ヘンリーが初めて模写したシェイクスピアソネットの真偽を捉えた言葉の使い方も良かったです。シェイクスピアの遺品を所持していることで世間から評価されるようになり、それまでは散々こき下ろされていたサミュエルの作品が突然高評価されるようになり、そうした偽りの評価を父に授けたヘンリーが罪を告白するきっかけになるのが、ソネットの言葉であるというのはグッと来ました。

 

演出について

2月6日初日(のはずだった)ジョジョミュがあんなバタバタしてる中での演出掛け持ちで大変だったろうなと思いながら見ていました。

良かったのはミスターHの衣装が全身真っ白で、そこに背景と同じ映像をプロジェクターで当てることでミスターHが透けているみたいに見せていた点。ヘンリーの創造の産物にすぎない人物をこんな風に視覚的にも表現できるのかと感動しました!!!

あと前述した手紙の場面は演出も好きでした。1つの机を舞台の中央に置いて、その上手側からヘンリー、下手側からサミュエルが頭を突き合わせるように互いの方を向いて座っていて、ただその真ん中には線が映し出されていてそこが別室であることが示されるけれど、2人はその境界を超えて手紙を互いに渡すという見せ方。これは演劇にしかできない見せ方で好きでした。

気になったのはなんと言ってもカーテンですね。ミュージカル作品でカーテンを舞台上に置いて上手く使えた試しはあるのだろうかと思ってしまうほどカーテンには悪い印象があります笑笑 今回はメインのセットの前に人の身長より少し高いくらいの真っ白なカーテンがあって、セットを転換する間にカーテンが閉まり、そこに映し出された映像の前で岡さんが歌うという展開でした。映像は当時の貴族たちを描いた風俗画で、その中の人物と同じポーズを取りながらアイアランド家について広まる噂話を語るというのは面白かったのですが、カーテンがシャーっと閉まることで興を削がれるのは間違いないです。

あ、あとヘンリーの謎のダンスシークエンス!あれは謎!!!ちょっと『スラムドッグ$ミリオネア』の虚無無音ダンスを思い出しかけました。明確な意図なく主人公を踊らせるでない。

 

キャスト感想

大内ヘンリー

今回初めて拝見しました。旧ジャニーズJr.の方なのですね。ミュージカル初挑戦となことでしたが、音域はばっちりでしたし、ロングトーンもブレずに伸びますし、発声や声量もよかったです。もうちょっと曲のリズムやグルーブに音符を嵌めてほしいとは思いましたが、バラード以外ではそれも気になりませんでした。あと音の切り方とか、歌への感情の乗せ方の点は「もうちょっとほしい!」と思いましたが、その点はヘンリーというキャラクターの素朴さや幼さみたいなところに上手く結びついていて、すごく役に合っていると思いました。


駒田サミュエル

流石の上手さですね。自分勝手な男を演じさせたら他の追随を許さないレベルです。ただあまりにも完成されすぎていてサミュエルという役に合っていたかというと微妙かもとも思っています。人好きのする愛らしさがあるのでヘンリーが父と関わりたいと思うのは納得できるし、偽りのものを信じてそこに執着するサミュエルの醜さを描くのも上手かったけれど、サミュエルの抱えている弱さみたいなものがなんかもろもろが完成されすぎて見えづらかったなという感じです。


岡ミスターH

岡さんもまたあまりにも完成されていて、そしてゴージャスすぎてヘンリーとの共犯関係の緊張感が薄いかもと感じました。隙が無さすぎると言いますか。

パフォーマンス自体は見ていて「あっぱれ!」と叫びたくなるくらい素敵なんですけどね。1曲目から歌声バズーカで最高だし、何をしてても美しいし、裁判官の威厳もすごいしで。


駒田さんもそうですが、年齢層高めの男性俳優さんがバリバリに歌いまくる作品ってあんまり日本では見ないのでこの作品でこれでもかと2人の歌声を浴びれたのはとても幸せでした!!!

 

そんなこんなでWWW日本版の私の中での評価は「健全すぎる」というところに落ち着きました。もう少し危うさのある(技術的な面ではないですよ!?)配役で見たらまた印象は変わってくるかもしれません。

 

【韓ミュ関連】

 

【🇦🇹欧州観劇記1-旅行記⑪ウィーン→帰国編】クノールと機内食だらけ

この日は10日間に渡った欧州旅行の帰国日でした。

 

1/19

旅行中に寄るスーパーって楽しいよね

この日は特に予定を入れておらず、余裕があったので朝からウィーン中央駅(Wien Hauptbahnhof)に繰り出して、朝ご飯を食べつつお土産を探すことにしました。

f:id:yadokarinko:20240209233241j:image

f:id:yadokarinko:20240209233309j:image

朝ごはんは「Heberer」というパン屋さんに入りました。私はピザ的なパンを食べて満腹になりました。

パンを食べた後はスーパーマーケットの「Insterspar」へ。

ここで面白かったのが、クノール(Knorr)の商品がズラーっと並んでいて、その中にはオーストリアやドイツなど欧州の伝統料理の素もあったこと!牛肉を用意すれば作れるグヤーシュの素もあったので自宅で食べる用に買いました。マンナーも公式ショップよりスーパーの方が安いです!

f:id:yadokarinko:20240214015513j:image

後日こちらのグヤーシュを食べてみました!必須食材は牛肉だけなのですが、裏面におすすめの具材が他にも書いてあったのでそれを参考に母が作ってくれました。見た目は完全にトマトベースのシチューという感じなのですが、食べてみるとベースがパプリカなので「トマトかと思いきや違う!」と脳が大混乱になりました。日本ではなかなかパプリカベースの料理に出会わないので新鮮でした。とても美味しかったです!!近所のスーパーに売ってたらリピ買いしたいくらい!!

f:id:yadokarinko:20240214021448j:image

ここでお水を買ったのですが、まさかの炭酸水でした。私は炭酸が苦手なのでショックでした😂「mild」は「炭酸がmild」の意です。もったいないので頑張って炭酸を抜きながら飲みましたが真水になることはありませんでした😂😂

f:id:yadokarinko:20240214015559j:image

 

空港が市内から近い

ホテルに帰って荷物をまとめ、いよいよ日本に向けて出発です。ウィーン中央駅からウィーン国際空港(Flughafen Wien-Schwechat)まではレールジェット(Railjet)という直通列車に乗りました。市内から15分くらいで空港まで行けて快適でした。

f:id:yadokarinko:20240214020532j:image

f:id:yadokarinko:20240214020702j:image

荷物置き場のすぐ横の席に座れたのも安心でした。座ったのは「静かにする用の車両」だったのでおしゃべりせずに空港まで行きました。

f:id:yadokarinko:20240214020615j:image

 

空港散策でクノールに大興奮

空港に着いたらすぐに荷物を預けて、空港散策に繰り出しました。と言ってもウィーン国際空港はコンパクトですぐに一周できるサイズ感です。

まずはスーパー「BILLA CORSO」を物色。朝は見かけなかった東欧の郷土料理クノールが沢山あったので迷わず買い足しました。

私はポテトのグヤーシュ(ERDÄPFEL-GULASCH)とセルビア風のピラフ?(SERBISCHES REISFLEISCHf:id:yadokarinko:20240214021252j:image

こちらのポテトグヤーシュも食べてみました!思ったよりもスープが少なめでポテトをもりもり食べる料理という感じです。こちらもパプリカベースの優しい味でとても美味しかった!どちらのグヤーシュも香辛料がきついといったこともないのでお土産にもおすすめです!!ピラフはまだ食べられていないので早く食べたいです!

f:id:yadokarinko:20240214021750j:image

友人はクノールのカイザーシュマーレンの素を買っていました!

f:id:yadokarinko:20240214022006j:image

スーパーの横でシュニッツェルバーガーが売っていてあまりにも魅力的だったので食べました☺️ お肉がサクサクで美味しかったです!

f:id:yadokarinko:20240214022206j:image

空港内のベンチに座って食べていると、ヴィーナスがイタリア旅行をしている愉快な広告を見つけました。

f:id:yadokarinko:20240214022422j:image

 

ドバイ乗り継ぎ成田行き

帰りもエミレーツです。ここからは機内食の話くらいしかないです笑

f:id:yadokarinko:20240214134357j:image

1食目は「チキンのきのこクリーム煮」。きのこは嫌いなのですがもう一品も確か苦手食材だったんですよね。ハッシュドポテトが美味しかったです。

2食目はチョコレート菓子

f:id:yadokarinko:20240214134627j:image

ドバイでは行きと同様、飛行機から空港の建物までバスで輸送されました。現地時間の23:00頃で私はだいぶ眠かったのですが、車内のキッズたちがだいぶ元気で自由で見ているこちらも元気になりました。

次の搭乗まで2時間ほど時間があったもののドバイは物価が高すぎて何も買えず、ベンチに座って過ごしました。喉が渇いていたけど1本1400円くらいする水を買う気にはなれず、でもお腹も空いていたので口の中ぱっさぱさになりながら機内食でもらったクラッカーを食べました。

無事に搭乗したあと、私はすぐに寝てしまい知らなかったのですが、離陸まで1時間ほど遅延したそうです。私は気づいたら空の上でした。

1食目は「海老焼きそば」

f:id:yadokarinko:20240214135747j:image

2食目は「チキンカツ」

f:id:yadokarinko:20240214135901j:image

2食目は私たちの席に来るまでにビーフが売り切れてました。

 

そんなこんなで無事帰宅しました。

 

ここで今一度友人のブログを。いつも旅行のためにたくさん調べ物をしてくれて、私が巻き込まれる(巻き起こす?)トラブルにも動揺せず対応してくれて本当に頭が上がりません!明日からもよろしく💕