Mind Palaceがない代わりに

来年には大学生じゃなくなるのでタイトル改めました。

ビーム&ラーマ神格化の表現方法が大正解 星組『RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~』『VIOLETOPIA』2/29 M 感想

東京宝塚劇場

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作品・公演概要/キャスト

『RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~』

原作: RRR (2022 movie)
脚本・演出: 谷貴矢
音楽: M. M. Keeravani(M・M・キーラヴァーニ)
作曲・編曲: 太田健、高橋恵

宝塚歌劇団の公式サイトに記載がないのですが、映画版の音楽も使用されているためキーラヴァーニ氏をクレジットに足しました。

キャスト
コムラム・ビーム: 礼真琴
A・ラーマ・ラージュ: 暁千星
ジェニファー: 舞空瞳
ジェイク: 極美慎
ペッダイヤ: 天華えま
スコット: 輝咲玲央
キャサリン: 小桜ほのか
シータ: 詩ちづる
マッリ: 瑠璃花夏
ラッチュ: 稀惺かずと
ヴェンカテシュワルル: ひろ香祐
SINGERRR男/バッジュ: 美稀千種
SINGERRR女: 都優奈
他25名

 

レビュー・シンドローム『VIOLETOPIA』

作・演出: 指田珠子
作曲・編曲: 青木朝子、玉朝尚一、多田里紗

※2024年3月現在、指田珠子氏は演出助手の方に対するパワーハラスメントがあったと告発されています。真偽のほどが明らかになっていない状況ですが、こうした告発があったときにはできるだけ告発をした方に寄り添いたいと考えているので、同氏が携わった作品にはひとまずこのような注釈を付けることとしています。

※私は現在、同様の注釈を小池修一郎氏、野口幸作氏が手掛けた作品の記事にも付けている状況です。真偽が明らかになっていないとはいえ、この状況は絶対に異常だと思います。劇団は告発を受けた演出家についてきちんとした調査をして事実関係を精査すべきですし、興行を続ける以上告発の受けての今後の方針を示すべきです。

 

『RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~』感想

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昨年の5月に映画館で見て圧倒された『RRR』が宝塚でミュージカル化!しかも星組で!と聞いた時からずっと楽しみにすると同時に「どうやって舞台で表現するんだろう」と気になってきた公演、ついに全貌を見ることができました。

 

今作はミュージカル化・舞台化に際して、映画のどのエピソードに重心を置いて、どこを取捨するかの選択がとても上手かったです。

ミュージカルとしては、Komuram Bheemudoが作品全体の山になっていたのがとても良かったです。映画に登場したプロテストソングがミュージカルの中で山場になるとそれはもう熱いですよね。礼さん(以下こっちゃん)の歌唱への信頼も感じられてとても良かったです。歌に鼓舞された民衆が雪崩れ込んでくるところも宝塚の演者の多さを活かした熱いステージングになっていました。

全体的に映画の楽曲を使ったシーンが演出も含めて上手くいっていたように思います。新曲はメロドラマっぽい宝塚オリジナル楽曲の雰囲気が強く、独特のキーラヴァーニ楽曲の中に入れると浮いているように感じました。キーラヴァーニが難しくとも、インド映画の作曲家に作ってもらえたらよかったかもしれません。

こっちゃんも暁さん(以下ありちゃん)も歌が上手いのでたくさん歌わせたくなりそうなところですがビームとラーマに歌わせすぎずに、SINGERRRを置いてBGM的に楽曲を使いながら物語を進める手法は好きでした。Dostiなんかはまさにそれだった気がします。2人が手を組むと市井の人々がたくさん出てきて歌を歌い、その中で2人が仲良くなっていく様子も描かれるのがよかったです。

「歌いながら踊るのか!」と話題になっていたナートゥ・ナートゥはやっぱり楽しくて楽しくて仕方がなかったです。楽曲とダンスの楽しさはもちろん、目の前で30人近い人がナートゥを踊っていることによる「圧」がすさまじくて圧倒されました。ジェニファーがガールズを引き連れてセンターから真ん中に出てくる場面の華やかさもすばらしくて叫びたくなりました。

 

宝塚で『RRR』を上演するときに真っ先に頭に浮かんだのが「森で神になる場面、絶対かっこいいやつじゃん」だった私、その場面が実際に大正解演出で提示されてテンション爆上がりでした。こっちゃんビームの登場場面ではWATERRRダンサーが光る羽根を持って光背を作りありちゃんラーマはFIRRREダンサーを引き連れて弓を背負って飛び込んでくる、舞台上で神性を表現する手法としても最終決戦における宝塚のスターの登場のさせ方としてもあまりにも大正解では!?と思いました。この瞬間に『RRR』を宝塚でミュージカル化した意義がぎゅっと詰まっていました。

そもそも炎と水をダンサーで表現できるのは舞台の強みだと思うのでそこも良かったです。後半のダンスが入り混じったアクションがかなりかっこよかったので、子どもを救出するシーンも思い切って舞台用に動きをアレンジしてしまってもよかったかもなと思います。できることならフライング(というかターザンロープ?)してほしいけれどそれは難しいと思うからこそ。今の表現だと映画を見ていないとなんのこっちゃになりそうな感じはありました。ビームの鞭打ち刑の場面でラーマがビームを脱走させることで、ラーマによるビームの救出のターンをまるっとカットしてアクションシーンを削ったのも舞台化にあたっては英断だったように思います。削る英断だけでなく追加の英断もありました。ジェニーの選択の理由がしっかり示されるのがいいし、シータの「ラーマを信じて待つのが私の戦いよ」が良すぎてガッツポーズが出そうになりました。

それでもラーマの内心が序盤ですぐに明かされたりと「忙しい人のための『RRR』感」はあったので、せっかくなら一本物で見たかったです!!フィナーレでナートゥに手拍子したかった!!!Etthara Jendaも良かったですけども!!!

今回はいつもよりも作品の形式の方に意識を注ぎ込んでいたので感想もそちら寄りになりましたが、キャストの皆さんもとても素敵でした。こっちゃんビームは私の好きなタイプのこっちゃんの詰め合わせという感じでしたし(拷問され芝居もだけど蹴られ殴られ芝居も最高ですね)、ありちゃんラーマはとんでもなくかっこいいし、舞空さん(以下ひっとん)ジェニーのきらめきは最高だし、極美慎ジェイクはビジュが強すぎて何言ってても好きになってしまいます。1つわがままがあるとすればビームも短髪が良かった!!!

 

『RRR』という作品を日本人キャストで上演することについては少し考えておきたいと思います。宝塚での上演にあたってバイオレンスな描写や政治的な文脈はかなり削られていますが、今作の主題は英国による植民地支配への抵抗なのは間違いありません。そして日本はアジアの国々を植民地支配した歴史があります。だからといって「日本人が『RRR』の登場人物を演じるべきではない」とは思いませんが、植民地支配した側の歴史を持つ国に生きていることは忘れずにいたいという自戒の念を込めてこの作品の感想を書き終えたいと思います。

 

 

レビュー・シンドローム『VIOLETOPIA』

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時代や場所を変えながら「劇場」での一場面を切り取っていく作品でした。私がこれまで見てきたショーと比べて歌が少なめだった気がします。こういうタイプのショーもあるんですね。

私が好きだったのはサーカスの場面とキャバレーの場面。

サーカスの場面は小桜ほのかさんによる少し怪しげな素敵な歌唱で始まり、興行主らしき極美慎と極美慎に飼われている生き物(ヘビらしいです)のこっちゃん、ヘビのこっちゃんに引き寄せられる少女ひっとんが見られます。

まず極美慎のビジュが良すぎてえぐい。しかもちょっと悪そうな笑顔を浮かべているのがやばくてやばいしか言えなくなりますね。顔面が美しすぎる。スタイルも鬼なので全身が圧倒的美。

そんな強すぎる極美慎に飼われているこっちゃんのヘビもまたやばい。ショートカットにボディスーツ姿でしなやかに踊るヘビはとても美しかったです。そんなヘビに惹かれて近づこうとするひっとんを笑顔で阻む極美慎。状況が妖艶すぎて「あれ、これ見ていいやつか?」ってなりました。ヘビと少女は心を通わせようとするけれど、サーカスが移動していってしまって寂しさだけが残るという終わり方も好きでした。

キャバレーの場面はなんといってもひっとんの男装ですね。稽古場映像で見た時からぶっ刺さりまくりでしたが、ちゃんとショーの中で見るとさらにぶっ刺さりました。最高にかっこよかったです。この場面はありちゃんの女装も見られるのが嬉しくて、てんやわんやでした。楽しかった~!!!

男役群舞のモザイクみたいなサングラスは謎でしたね。劇場のテーマとも被らない気がするし、どっから生えてきたんだろうか。

最後に、今回退団される天華えまさんのエトワールはとてもとても素敵でした。天華さんは本当に美しかったです!!!

 

P.S.

BTTF、RRRと映像作品原作の作品が続いたので、ブログ内に「映像作品原作」タグを設置してみました。

 

【4/6 追記】

3/19 Mと3/26 Mも見てきて思ったことを箇条書きで書いておきます。

・こっちゃんのアナウンス中からコーラスが入ってくるのがゾクゾクして好き

・『RRR』ビムラマが出会う火事の場面、表現がわかりにくいと書いたけれど、2階から見るとダンス表現として火と戦うビームがしっかり表現されていて美しい演出だったのだとわかった

・宝塚『RRR』では「ビームは初めから神」なんですよね。登場ソロ曲から虎だし。そしてラーマは「ビームのお陰で目覚める」。映画の前半ではビームはそこまで神々しくなかった気がするから(虎と戦う超人ではあったけども)映画を見て見比べたいなと思った

・『VIOLETOPIA』の後半、アタタタミュの無想転生みたいなところあるよね。こっちゃんがケンシロウ的ダンス覚醒するし。

・天華えまさんのAs Time Goes Byの少し気だるげな柔らかい歌声が刺さる。ちょっと後ろに倒れた音の取り方が心地よくて癖になります。

・群舞になるとこっちゃんとありちゃんの踊りのキレがすごすぎて浮いて見える。

・フィナーレでレベランスをしたあとにこっちゃんのお出迎えに間に合うように小股ダッシュで位置に着くひっとんがとっても好き。ひっとんの動きはいつも完璧。最高。大好き。

星組初観劇の母(なんにでも辛口)に「みんな歌うまかったね」「礼真琴さん、コンテンポラリーっぽい動きもできて踊りも上手」と言われてほくほくした。

 

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