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踊るヴァイオリニストと圧倒的な音楽の悪魔『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』4/28 M 感想

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2年前の初演時から気になっていたクロスロードに、気になり続けていた木内くんが出るということで行ってまいりました😈🎻

作品・公演概要

ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』
原作: 2012年初演の朗読劇『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』
原作・脚本・詞: 藤沢文翁
音楽: 村中俊之
編曲: 江草啓太
演出: 末永陽一
初演: 2022年 東京

劇場: シアタークリエ

 

キャスト

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アムドゥスキアス: 中川晃教
ニコロ・パガニーニ: 木内健人
アーシャ: 加藤梨里香
エリザ・ボナパルト元榮菜摘
コスタ/エクトル・ベルリオーズ: 坂元健児
アルマンド: 山寺宏一
テレーザ: 春野寿美礼
+アンサンブル 10名

 

作品感想

魅力を感じたところ

自分が天才でないとわかってしまう程度に才能のある青年ニコロが十字路の悪魔との契約により天才ヴァイオリニスト パガニーニになる物語。悪魔との契約に縛られ、世間からは称賛と憎悪を好き勝手に浴びせかけられたパガニーニが、それでもなお彼から離れない人たちとの関係を通して自分の道を選び取る姿が輝かしかったです。


序盤のニコロの苦悩には「才能を見極めるだけの才能」の話をしていた『ロックオペラ モーツァルト』のサリエリを思い出しました。芸術家が題材の作品でこの話が出てくると胃がキュッとなります。

 

今作でパガニーニと音楽の悪魔(初演時から皆さんが呼んでいた「アムちゃん」が可愛いと思うので私もそう呼びます)を取り巻く人物は主に、パガニーニを悪魔と捉えて攻撃したり蔑んだりする人々とパガニーニを1人の人間として愛する人々に分けられると思います。そして物語は「人間としてのパガニーニ」が輝く方向へ進む(コンサートでのテレーザとアムちゃんの応酬や100万曲目にそれがよく表れている)わけですが、それでもやっぱり「パガニーニは悪魔と契約している」という事実がベースにあるのが面白いと感じました。

パガニーニは「人間」として愛されるけど、彼は「(悪魔と契約した)人間」である。この物語には十字路で立ち止まり、悪魔と契約してしまった者も人間として愛すべきだと言い切る包容力がある気がします。パガニーニはアムちゃんとアーシャの間に入って取引を防ぎ、彼女に「十字路で立ち止まるな。お前の道は真っ直ぐだからそのまま走れ」と言うけれど、例えアーシャが十字路で止まったとしてもそのままのアーシャをこの物語は愛するんじゃないかなとも思います。パガニーニは「行こうか、地獄へ」と言いつつ最終的に階段を登る=天国へ行きましたしね。


そして作品の根幹となるアムちゃんが、どこまでも中川さん(以下あっきーさん)ロールなのも良かったです。キャスト感想はまた後ほど書きますが、音楽の悪魔が説得力をもって舞台上に存在するためにはあの音域、あの歌声、あの自由さが必要不可欠だったと思います。

 

腑に落ちないところ

見どころがたくさんあって楽しく観劇しましたが、ところどころ腑に落ちないところもありました。

 

まず、パガニーニの性格の一貫性が弱いように感じました。彼の表に出す/出さない性格自体が多面的かつ接する相手によって変わってくるというのはありますが、シーンごとに性格や態度がころころ変わりすぎる気がします。具体的な場面をあげるのは難しいものの、一緒に観劇していた友人もこの点について気になると言っていました。

登場人物の性格の一貫性に違和感があるとき、私は役者の責任にしがちなのですが、今回に関してはなんとなく戯曲の側にこの違和感の正体がある気がしています。「この場面があるからこの台詞が苦しい」みたいな、情緒の伏線やそれにより起こる感情の波も、題材とエピソードが良い分もっと作れるんじゃ・・・と思いますし、結末の光が強い分中盤でもっとどん底に叩き落とされたいとも思います。


それから気になったのがエリザに関するパート。アムちゃんはエリザを「魔性の女、ファムファタール。お前がこの男を堕落させた」と言うけれど私にはそうは思えませんでした。そもそもパガニーニは堕落しているのか?確かにギャンブルと酒が好きな様子はあるもののあまり深刻そうに見えませんでした。ストラディバリウスをすった話が出るのはアーシャとのややコミカルな場面ですし。

エリザが自ら言うように、パガニーニを死に追いやったという意味でなら理解はできます。エリザが仕事を取ってくるとパガニーニが演奏して寿命を縮めるということですよね。でもエリザに出会わなかったとしてもパガニーニは勝手に演奏して寿命を減らしていっただろうとも思えてしまいます。パガニーニ→エリザの感情もフィーチャーされない分、ここの2人の関係でなかなか感情が動いてこなかったです。

 

100万曲目について

パガニーニが「母の曲≒母のための曲」を演奏する

→アムちゃんはそれが「母のための曲」だと気が付かずに100万曲目として受理&契約終了

→アーシャに指摘されて100万曲目に「アムちゃんのため」でない曲が混ざったと知る

→契約が終了しているので「アムちゃんのため」以外で演奏したら周りの人間を苦しめるという脅しも実行に移せない

パガニーニは音楽のために命を売り渡し、アムちゃんは契約違反の音楽を楽しんでしまった→「人も悪魔も音楽の奴隷だ」

になるのかなと受け取りましたが、それで合っているのかはわかりません😂 お芝居の熱に乗せられて流されるまま「逆転」の高揚感に沸いちゃったけれど、終演後は「こういうこと・・・だよな?」とちょっと不安になりました。

 

超絶技巧の演奏を舞台でどう見せるか

今作ではヴァイオリンの演奏を弾き真似×ダンスで表現しています。これがミュージカル表現としては「全然あり」なのですが、作品序盤はなかなか慣れなくて違和感がありました。受け入れてしまえば、木内くんのダンスも綺麗なので楽しめます。

2022年の年始にクリエでヴァスコ・ヴァッシレフさんによる超絶技巧の24 Caprices for Solo Violinを聴いたときの記憶が鮮やかに残っているのも原因な気がします。パガニーニが楽器を構えると「聴きたい!」と思ってしまうんですよね。でもあまり弾き真似を長くしても滑稽だし、インスト曲を足しすぎると作品のテンポに影響しますしね。なくていいとも思います。

作曲家や楽器奏者をミュージカルの題材とする場合、演奏シーンをどう描くかは大きな課題なんだと思います。これまで見た作品がどうだったか思い出しながら今後も注視していきたい項目です。

 

キャスト感想

中川アムドゥスキアス

原作の朗読劇を全く知らない私ですが、当て書きにしか思えませんでした😂 楽曲は確実に当て書きですよね〜!1曲目からファルセットフル活用の全編女声キーはあっきーさん以外にできる人が思いつきません!凄まじい音域と多彩な歌声は人外の表現として大大大正解だと思います。

独特のテンポ感の台詞回しや自由気ままな振舞い、コロコロ変わる表情と声のトーンは「良い者」でも「悪い者」でもない(もしくはどちらでもある)、人間の感性に縛られない別次元の存在としての説得力がありました。パガニーニにジャケットを着せて身なりを整えてあげる場面で「ふんふん」言いながら気の済むまで整えるのをやめない感じとか、すごく人外っぽかったです。

 

木内パガニーニ

木内くんは2021年のレミゼでなぜか縁がなくてアンジョを見られず、見てきた友人が絶賛しているのを見て「来期こそ!」と思っているところに『ガイズ&ドールズ』があったけれど役柄的にあまりお芝居と歌を知ることができず・・・というところでやっと!しっかり拝見できました。

【公開当日追記】待って大嘘!スパミュで見てた!ソロはなかったしキャラ強めのモジャだったけど!!!

初めて見た木内くんは「ダンスの人」という噂通り、踊りも素敵でした。手足のポジションがきっちりしていて指先足先まで意識が感じられる綺麗な踊り方でした。振付の雰囲気とロングのウィッグが相まって宝塚の男役みも感じました。歌も丁寧なのですが、私は感情が歌を追い越しそうになるギリギリを攻める方々が好きなので、もうちょっと感情的に歌ってほしいな〜と思いました。声質などは好みなのでこれからも色んな役を聴いてみたいです。

ケンニティーニは全体的に可愛らしかったです。ジェノヴァでの内気な青年のイメージが強かったので、成功してからの横柄な態度も背伸びのように感じられました。教会での演奏場面での不適な笑み、アルマンドを困らせるときの悪戯な笑み、刺さりました。アーシャにぶん投げられ芸はダイナミックすぎて一瞬心配になりました😂 ナイスぶん投げられ!後半のベルリオーズやアーシャを助ける場面では「なんて光が似合う人なんだ!」と思いました。そうかいこの人がアンジョをやってたのか・・・来期続投ほんとに頼みますね。

そして階段で後ろから光を浴びながら振り返る姿を見て、邪な私には「木内アンリ」が見えてしまいました。ぜっっっっったい似合う。コットンクラブで君夢も歌ってるんですよね(動画に載ってた一部だけ何度も見てます😂)。帰宅してから「僕には親がいない〜」のところとかもシュミレーションしてしまいます。

 

加藤アーシャ

元気いっぱいで、真っ直ぐにパガニーニを見つめるリリーシャ。愛と生命力に溢れていて「これはパガニーニ先生も絆されますわ☺️」とほっこりしました。

梨里香ちゃんの歌声は今作でも冴え渡っていて素晴らしかったです。本当にかわいい声!そして上手い!!高い音まで美しくて大好きです。

 

他のキャストの方々もみんな役にハマっていて良かったです。特に春野寿美礼さんのテレーザにはお芝居でも歌でも心を掴まれました。カーサ・ノスタルジア😌✨

 

 

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