Mind Palaceがない代わりに

ミュージカル観劇レポの保管庫です

客席でみんなクリスティーヌになる『The Reunion』8/14 S セトリ&レポ&感想

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心待ちにしてきたリユニオン!とても楽しかったです!!

公演概要

『The Reunion

会場: サントリーホール
音楽監督: Adam Hoskins(アダム・ホスキンス)

今年の1月にラミンとアールが上海で出演していた『The Reunion』もロゴが同じなので同じプロダクションなのかもしれません🤔 

 

出演者

Ramin Karimloo(ラミン・カリムルー)
城田優
新妻聖子
Earl Carpenter(アール・カーペンター)
Bradley Jaden(ブラッドリー・ジェイデン)
Amelia Miloアメリア・マイロ)

指揮: Adam Hoskins

 

ブロードウェイ・イタリアの『オペラ座の怪人』キャストの再集結でしたね🫶

ミラノではブラッドリーが抜けてしまっていたので、遂に歌声を聴けて幸せでした。

エンタメに振り切った演出で、ツッコミどころ満載のイタリア版POTP、面白かったのでレポ置いときます。

25thのリユニオンも待ち続けてます。

 

セットリスト

第1部

  1. The Reunion Overture
  2. Man of La Mancha - Man of La Mancha(Raminドン・キホーテ、Bradleyサンチョパンサ)
  3. Think of Me - The Phantom of the Opera(Ameliaクリスティーヌ、Bradleyラウル)
  4. Who I'd Be - Shrek The Musical(Bradleyシュレック、Ameliaフィオナ、Earlドンキー)
  5. Stars - Les Misérables(Bradley)
  6. 城田優Love&Peace」(城田、新妻)
  7. Muddy Water - Big River(Raminジム、城田ハック)
  8. カラー・オブ・ザ・ウインド -『ポカホンタス』(新妻)
  9. Overture - Cats
  10. Last Night of the World - Miss Saigon(Raminクリス、新妻キム)
  11. Old Friends - Merrily We Roll Along
  12. The ConfrontationLes Misérables(Earlジャベール、Raminバルジャン)
  13. Sunset Boulevard - Sunset Boulevard(Ramin)
  14. This is the Moment - Jekyll & Hyde(Bradley、Ramin、Earl、城田)

 

第2部

  1. Into the Unknown - Frozen Ⅱ(Ameliaエルサ、新妻(声)、カンパニー)
  2. オン・マイ・オウン -『レ・ミゼラブル』(新妻)
  3. Mumford & Sons "Reminder"(Ramin、城田)
  4. Worlds' Apart - Big River(Raminジム、城田ハック)
  5. 闇が広がる -『エリザベート』(Raminトート、城田ルドルフ)
  6. Send in the Clowns - A Little Night Music
  7. I'm All Alone - Spamalot(Earlアーサー、Bradley&Raminパッツィ)
  8. For Good - Wicked(新妻グリンダ、Ameliaエルファバ)
  9. Overture - Phantom
  10. Home -『ファントム』(城田)
  11. All I Ask of You - The Phantom of the Opera(Bradleyラウル、Ameliaクリスティーヌ)
  12. Music of the NightThe Phantom of the Opera(Earl)
  13. Til I Hear You Sing - Love Never Dies(Ramin)
  14. From Now On - The Greatest Showman(全員)

 

感想&ちょっとしたレポ

サントリーホールのサイドは風呂場

こんなに素晴らしいコンサートのレポがいきなり愚痴で申し訳ないんですけど、後のレポにも影響してるので😂

サントリーホールに行ったのは今回が初めて!U25チケットを購入しまして、案内されたのは舞台サイドの席でした。座った時点で自分の座席に向かっているスピーカーが無かったので「これは音響はダメかも・・・」と思いつつ、「でも名高いサントリーホールだし」と諦め半分期待半分で開演を待っていました。

さて、どうだったでしょう。オケの音は綺麗に聴こえました(上手側だったのでドラムが強く聴こえすぎるけど)。肝心の歌声はだいぶぼやけていました。オケが盛り上がったりリズムの効いた曲調になったりすると歌声が徐々に埋もれていきます。MCは完全に風呂場!!!

初めは戸惑いましたが、だいぶお安いチケットなので受け入れて、頑張って耳の方をアジャストしていきました😂😂😂

そんなこんなでMCは正確に聞き取れていない可能性もありますが、忘れるのも寂しいし頑張って思い出しながら書き残します。間違えてたらこそっとコメントしてください。

 

第1部

The Reunion Overtureは『ラブ・ネバー・ダイ』と『オペラ座の怪人』のマッシュアップだったと思います。1部ではこの他にも『キャッツ』のOvertureと『メリリー・ウィー・ロール・アロング』のOld Friendsの演奏があって、ロイド・ウェバーとソンドハイムの異次元の天才ぶりを改めて感じました。

続いてラ・マンチャの男! 全体を通して1番モヤモヤ音響を感じたのはこの曲だったかもしれません(耳が音響に慣れてなかったのと、リズム隊が大活躍なのと、男声ボーカル2人という組み合わせが・・・)。ラミンもブラッドリーもバリバリに声を張り上げていたので、いい音響で聴きたかったという気持ちが強いですが、2人の歌声とオケの火力を楽しみました。

ラミンはブラッドリーを紹介するときに、2022年の『キャメロット』での共演の話をしていました。「彼はランスロットを演じたんだ。強くて、ハンサムで、若くて・・・僕では年を取りすぎだね笑」←2022年にウエストエンドで『レ・ミゼラブル』を見てきたんですけど、ちょうど『キャメロット』の周辺でブラッドリーがレミゼをお休みしていて見られなかったのを思い出しました。

そのあとブロードウェイ・イタリア版オペラ座の話も出して、「ラウルを探していて、彼は強くて、good-lookingでぴったりだった。これも僕では年を取りすぎだから・・・」という風にブラッドリーのビジュをしきりに褒めるラミンでした。そして全体的に「あれはそんなに前だったか!」みたいに過去を振り返って驚いているのも印象的でした。

そのままの流れでアメリアの話題に。「クリスティーヌを探して何本もの応募動画を見ていたんだけど、彼女の歌う動画を見たときに『彼女で決まり。これで終わりだ』ってなったんだ。彼女は美しい歌声の持ち主だし、人間的にも素晴らしい人だった。共演してきたクリスティーヌ役者の中でも最高峰だと思う」というラミンの紹介アメリア&ブラッドリーのThink of Meに。

ミラノで初めて聴いたときにも度肝を抜かれたアメリアのThink of Me。妖精のような可愛らしい姿から、ポップスっぽい曲にもハマりそうな強くて硬い歌声のヴァースが飛び出してきて心を掴まれます。その強い勢いをそぎ落とさないまま、音が広がりすぎずに高音域に駆け抜けていくのが本当に気持ちいいです。風呂場音響とも相性が良くて、空気を切り裂くように歌声が飛んできました。ブラッドリーのラウルは歌声がでかくて上手くて「パッション!」って感じですね。見たかったな~!!!!!

Who I'd Beは聴いていて『シュレック』の曲だと気づかず。今年はサットン・フォスターの凄さを噛み締めているところなので、OBCをちゃんと聴こうかなと思っています。

ブラッドリーのStarsもまた結構「パッション!」でした。とにかく熱い男なのかもしれません。オケの盛り上がりに負けず劣らず歌声で思いっきり曲を壮大に盛り立てていくのがかっこいいです。お団子ヘアもかっこいいです。「Mine is the way of the Lord」のところで空を見上げながら、片足を前に出して、腕を折り曲げるお辞儀をしているのがとてもとても好きでした。本役見た過ぎる!!ワールドツアーで絶対来てほしい。

ラミンと城田さんのMC。2人が本当に仲が良さそうでほっこりしながら見ていました。ラミンは城田さんを「歌手としても、役者としても、作曲家としても尊敬している」そうです。それを通訳として自分で客席に向かって説明しなければいけない城田さんも面白かったです。ラミンは城田さんのことを「優さん」と呼んでいて、積極的に日本語を話してくれます。

あと面白かったのが、遅れて入ってきた人に絡むラミン。「Hi!」「ゆっくりでいいよ~」と言いながら彼女たちが席に着くのを見守り、「今、ラ・マンチャオペラ座が終わったところだよ」などと解説し始めるのが面白かったです。多分3人くらいこれをやられていた笑笑笑

R「優さんとは『4Stars』で2回共演して、もう今は存在しないテレビ番組でも歌って・・・secu??』
Y「『スッキリ』ね。もう終わってしまった『スッキリ』という番組で『エリザベート』の闇が広がるという曲を歌ったんですよ。ラミンはいつも『securityじゃなくて』って聞いてくる」

城田さんの『LOVE&PEACE』という楽曲の話に。
R「この曲は素晴らしい楽曲だし、昔に作られた曲だけれど今の時代にも必要とされる曲だと思う」
Y「この曲は2011年の東日本大震災のときに作った曲です。多くの人の夢や希望が奪われた中で少しでも音楽で元気を届けられたらと思って作りました」
R「この曲はソロ楽曲だけれど今回はスペシャルにデュエットで。僕の日本語はまだおぼつかないから今回はもう1人の素晴らしい日本の友人に歌ってもらうね」

ここで聖子姐さんの入場です。2人のデュエットも素敵でした。聖子姐さんにはもっとハードな曲を歌わせたくなってしまうところはありますが。

R「彼女と共演するのは久しぶり。リハーサルで彼女の声を聴いて『わぁお』ってなってしまった。あんな声の持ち主は世界中どこにもいないよ」

『ビッグ・リバー』は作品自体も楽曲についても全く知らなかったのですが、カントリー風の曲調が心にスッと入ってきて心地よかったです。

聖子姐さんはまさかのポカホンタスで驚きました。「ああ、『あの』木の高さ」の『あの』を難なく上げてバチコーンと飛ばすところとか流石すぎました。これが日本のDIVAでございますと謎に誇らしい気持ちになってしまいました笑笑

日英本役によるThe Last Night of the Worldも楽しかったです。ラミンは「クリスを演じてたのは2004年だから・・・20年も前!?」と言っていました。

そして「こうして『リユニオン』できて嬉しい」という話から、Old Friendsの紹介。中止になってしまった『Musical Meets Symphony: Old Friends』の代わりの配信でハドリーと一緒に歌っていたのを思い出しました。あのリベンジも絶対してほしい。

アールさんを散々いじり倒すラミン。
E「僕たちはLes Misでジャン・バルジャンとジャベールとして共演してきて」
R「そうだったっけ?Nice to meet you. 『はじめまして』」
ここまでにもアールのことを忘れたふりをしてずっとボケていました笑

対決を歌うと言うと客席でフランス国旗を振った方がいて、2人で何か言っていました(聞き取れなかった!)。そこから少し距離を取って、砕けた雰囲気を拭うように顔の前で仮面を被るような仕草をして役に入っていく2人でした。そうして始まった対決の熱量は物凄くて、とてつもなく楽しかったです。容赦なくぶつかっていく歌声とオケで荒波に飲まれているような気分になりました。かっこよかった〜!!!

そしてそしてまさかのサンセット!ありがとうございます😊 ここまで耳に集中していてオペラグラスは手に持っているだけだったのですが、ここぞとばかりに使いました。ラミンのサンセットは迫力がとんでもないですよね。どんなギリスだったんだろう〜見てみたかったという気持ちがすごく強いです。

最後は時が来た。ワイホは強火歌唱力でやっぱり映えますね〜😂 4人とも楽しそうに生き生き歌っているのもよかったです!

 

第2部

2部冒頭のInto the Unknownは驚きでした。エメリアは強い歌声の中にちょっとした幼さがあるからエルサにぴったりだし、聖子姐さんの「The Voice」は豪華すぎます!!

そして、On My Ownですよ。この猛者の集まるコンサートで私の心を1番揺さぶったのは聖子姐さんのOMOでした。信じられないくらい洗練されていて、素晴らしい音圧に手足がビリビリしました。ワールドツアーに聖子姐さんや屋比久ちゃんも参加してくれたらいいのに~。

R「2013年に優さんと日本の『レ・ミゼラブル』を見たよね。もう11年前?!』
Y「(通訳)もう『じゅういち』年前になりますね」
R「『じゅうに』?」
Y「『じゅうに』means twelve. 『じゅういち』」
R「日本版も素晴らしかった。日本語の響きが好きだよ。『♬ 愛してる、愛してる、愛してる』」
Y「Go Ahead. Go Ahead」

次はラミンと城田さんが初めて2人で歌った曲をラミンのギター演奏と共に、という話に。弾き語りをするための機材が必要、というところでラミンが「脚が痛いから座りたいな~アーーーーール!」と声をあげます。アールが出てくると「椅子とマイクスタンドを」と指示してアールはしぶしぶといった様子で舞台袖へ。しばらくして、台車に椅子を乗せたアールが再登場。頭にはヘルメットを被っていて笑いました

ReminderWorlds' Apartを聴きながら、ラミンの歌声はゴージャスなミュージカル楽曲にも似合うけれど、カントリーの落ち着いた曲調にもとても合うな~としみじみ感じました。Worlds' Apartは、コロナ禍中に2人がそれぞれ歌声を録音したものを編集して合わせて公開した、思い出の楽曲だそうです

youtu.be

2曲歌い終わって、スタンドマイクと椅子が不要になるとラミンが再びアールを呼び付けます。椅子を左右それぞれの手に持たせて、最後にその間に橋渡しをするようにマイクスタンドを乗せていました。城田さんは「これ結構重いんですけど」と困惑気味でした。それらを持って上手に捌けていくアール。私は上手側に座っていたので良く見えなかったのですが、会場から笑い声が上がると、城田さんが「こちら側の方は見えないと思うんですけど、今、アールが袖のところに引っかかっていて、やっと横向きになって入っていけました」と解説してくれました。もたつくアールさんを見て、ラミンが城田さんに耳打ちして、城田さんが耳打ちを返すと「『早く行け!...ございます』」とラミン。城田さんはラミンはなんにでも「『ございます』を付ける癖があります」と言っていました。

会場が笑いに包まれたまま、すぐさま闇広のイントロが始まったので驚きました。安定のラミントートに城田ルドでしたが、サビのパート入れ替えはなし。歌い終わると会場は熱気に包まれました。普通にラミンのトート見てみたいですよね、本役で。

I'm All Aloneではアールが2階のバルコニーに登場。客席側でラミンとブラッドリーがやいのやいの言いながら歌うのも面白かったです。

R「『ウィキッド』好きな人~! ブラッドリーは出てたよね」
B「フィエロでね」
R「あ~Dancing Through Life!」
ブラッドリーが華麗なターン
R「Woooooo~『ウィキッド』のデュエットと言えばあれだよね」
B「For Good」
R「今回は素晴らしい女性たちがいるから、彼女たちにお任せしよう」

聖子姐さんとアメリアのFor Good良かったです~。曲を通して2人が心を通わせていくような感覚があって、誰かと仲良くなりたくなったらとりあえずFor Goodを歌うべきだと思いました。それにしても昨年5月の『DIVA』コンで聖子姐さんのグリンダは珍しいのでは?とか思ったけれど、今回もグリンダでしたね。確かにイメージはグリンダの方が近いか。

ここからは『オペラ座の怪人』祭り。イタリアのリユニオンだし、ファントム3人もいるし!と思っていたら、城田さんはまさかのクリスティーヌ楽曲できてびっくりしました。全編を通して城田さんは高い音、女声のアルトくらいのキーがとても綺麗だな、と思っていたのでHomeとても合っていました。

ブラッドリーとアメリアのAll I Ask of Youは熱くて、作品が孕んでいる父権的な部分への目くばせを強く感じたBWイタリア版の中に位置するとどんな風だったのだろうかという想像を掻き立てられました。2人とも声量と圧が物凄いので巨獣大乱闘系クリスティーヌ&ラウルですね。

そして物凄かったのが、アールのMOTNです。序盤から全身の神経が鼻の先に集中するような感覚があって、本当に耳と心を研ぎ澄ませて歌声を堪能しました。特に「soar~」の繊細な響きに心を持っていかれました。本当に凄かったです。ここで一気に会場中の人がクリスティーヌになってしまったと思います。

続くラミンのTil I~もまたとてつもなかったです。好きなラミンの歌声の全部乗せみたいな曲なので生で聴けて本当に嬉しかったです!!!前半の低音から心を鷲掴みにされていて、後半にかけて音が高くなって盛り上がっていくと、息もできなければ瞬きもできないという感じでした。願わくば「My Christine」から歌ってほしいですけど!!!!!!!

ラミンの圧巻の歌唱で会場が熱気に包まれたままに歌われたFrom Now Onもとても楽しかったです。

 

とても楽しいコンサートでした。やっぱり来日コンサートは逃さず通おうと思います!どこだったか忘れてしまって書き忘れましたが、アールが上手に向かって「ラミン・カリムルー!」と呼びかけたけれど返事がなく、下手から出てきたラミンがそのままアールに後ろからハグしていたのが可愛かったです。すぐにまた来てくださいね。

 

【ラミン関連】

 

【来日コンサート】

 

廣瀬グレイドンのコメディセンスが大爆発『モダン・ミリー』7/27 M 感想

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2022年公演も気になってはいたけれど行けなかったので、初モダンミリーでした〜👠 観劇後ずっとGimme Gimmeばかり聴いてます!

作品・公演概要

Thoroughly Modern Millie

原作: Thoroughly Modern Millie (1967 American musical film)
音楽: Jeanine Tesori(ジニーン・テソーリ)
詞: Dick Scanlan(ディック・スキャンラン)
脚本: Richard Morrisリチャード・モリス)& Dick Scanlan
初演:  2000年 サンディエゴ
          2002年 BW
          2022年 東京(2020年は全公演中止)

Thoroughly Modern Millie (Original Broadway Cast Recording)

Thoroughly Modern Millie (Original Broadway Cast Recording)

  • Original Broadway Cast of Thoroughly Modern Millie
  • サウンドトラック
  • ¥1833

 

ミュージカル『モダン・ミリー※改訂版世界初演

劇場: シアタークリエ
演出・翻訳: 小林香
訳詞: 竜真知子

 

キャスト

ミリー・ディルモント: 朝夏まなと
ジミー・スミス: 田代万里生
トレヴァー・グレイドン: 廣瀬友祐
ミス・ドロシー・ブラウン: 夢咲ねね
チン・ホー: 大山真志
ジー・ヴァン・ホスミア: 土居裕子
ミセス・ミアーズ: 一路真輝
ミス・フラナリー: 入絵加奈子
バン・フー: 安倍康律

+アンサンブル 11人

 

作品感想

プロットは大味でもミュージカル表現は絶品

2組のカップルの恋の行方を追うメインプロット、「愛か金か、愛に決まっているだろ」という強烈なメッセージ、そしてなんだかんだ全てが丸く収まる大団円は、2000年代初頭の作品にしてもだいぶ「古典的」な感じがします。1967年の映画からの要素が強いのでしょうか。ジュリー・アンドリュース主演ということなので、近いところ見て確かめようと思います。

靴を片方だけ盗られるミリーだったり、そんなミリーを「カンザス」と呼ぶジミーだったり、細かい描写はとても面白いんですけどね、ストーリー面での新鮮さはあまり・・・という感じ。

ただ、歌やダンス、ミュージカル表現の魅力はとてつもなかったです。

ホテル・プリシラの「誰かがタップの練習をしたせいでタップを踏まないと動かないエレベーター」は衝撃的でした🫨 そんな発想どこから出てくるんでしょうね〜!1幕でキラキラのミリーとドロシーがタップを踏むだけでも楽しいのに、2幕のドロシー救出の場面ではミリーがジミーとグレイドンを率いて3人でタップを踏むのには本当に驚きましたし、大興奮でした(この場面の朝夏まなとさん、以下まぁ様のドヤ顔も最高👍)!

机に座った速記者たちがタイプライターの音を足元のタップで表現するのも素晴らしい👏👏👏 『メリリー・ウィー・ロール・アロング』のOpening Doorsにも通ずるな〜と思いました。

飲んでいたクラブが検挙されたあとのマグショット撮影の場面もとっても好きでした。1人1人とハッちゃけたポーズで写真を撮って捌けていくパーティ客と、撮影を待ちながら話すミリーとジミー、とても良かった~!

楽曲も好きでした。やっぱりなんといってもGimme Gimme・・・曲自体は素晴らしいのですがこの公演ではあまり目立っていなかったのが残念。というのも肝心の「Gimme Gimme」というフレーズが訳詞によって無くなってしまうんですよね。訳詞問題は本当に難しい!そして歌唱面も・・・という感じだったので。この辺りはキャスト感想でまた。

観劇後、OBCを聴きながらこの「Gimme Gimme」というフレーズとJimmyという名前、なんならMillieも掛かるな〜と思いました。作品通して言葉遊びになっているのかも?

 

中国人の描き方についての対応

今回の上演ではブロードウェイチーム側からの要望でミセス・ミアーズの役どころに変更が加えられ、歌や台詞も大幅に変わっていたようです(そして改訂版の世界初演にあたるそう)。一路真輝さんがブログで書いていました。

新「モダン・ミリー」 | 一路真輝オフィシャルブログ Powered by Ameba

今回の「モダン・ミリー」再演は、
アタクシ演じる(ミセス・ミアーズ)の
役柄が大幅に変更になる為、
ディックさん、マイケルさん緊急来日
ミアーズ関連の台詞、歌詞、音楽!
ほとんどが変わります!
(略)
栄光と歴史あるブロードウェイ作品の改訂版を、
世界で初めて演じさせて頂ける!
こんな名誉な事はないです。
しかとプレッシャーと向き会い、
楽しい作品になるよう精進します。

私は元のバージョンを見ていませんがWikiのあらすじには、ミセス・ミアーズは元女優で香港の白人奴隷売買組織のために働いていて、孤児の少女たちを誘拐、東洋に出荷している、と書かれています。そして少女たちの愚かさをThey Don't Knowというナンバーで嘲笑するようです。

対して改訂版のミセス・ミアーズは、ドロシーの持っている高額な手形を見て、彼女の誘拐を企み始める...という役どころになっています。誘拐で金を儲けようとするという本質は変わらないままなので「白人奴隷売買」という部分を嫌った形かと思いましたが、どうやら詳しく読んでいくと旧バージョンはミセス・ミアーズが「中国人のふり」をするらしく、そういった描写を取り除くための改定だったようです。

そもそもこの作品の「中国人描写」はアジア人のステレオタイプを助長するとして批判の的になっていたようです。確かにミセス・ミアーズの話す英語を解さずにドタバタ喜劇要因の役割を担うチン・ホーとバン・フーは見ていてあまり気持ちのいいものではないかな・・・というところでした。アジア系がプリンシパルを張る機会の創出になっていただろうとは考えられますが、出られればいいというものでもないですしね。

かといって「こうだったら良かったのに」という展開も思い浮かばず。ドロシーの愛を勝ち取るチン・ホー、ラジオで磨いた能力で仕事を得るバン・フーは物語の着地点としてはそれなりに納得のいくものですし。やっぱり少し前の時代の作品と向き合うのは難しいです。嫌ではないですし、古い作品に触れる機会があるのはありがたいことですが。

 

演出・キャスト感想

やっと小林香さんの演出を見られる!と張り切っていましたが、どうやら2021年の『マドモアゼル・モーツァルト』で見ていたらしい!今回の『モダン・ミリー』を見て、今春の『王様と私』も見たかったな・・・と思いました。

今回の公演はクリエの限られた空間の使い方が巧みでした。3階建てのセットの2階にバンドを置くのが華やかでいい。

それにメインのお芝居は1階で進めつつ、3階にグレイドンのオフィスを置くことでニューヨークの摩天楼をイメージしやすくなるし、金持ちと結婚したいというミリーの上昇志向とも重なるし、すごく「理にかなった」セットになっていると感じました。

1階が一面回転扉になっていて瞬時に場面を切り替えられる+人の出入りも賄えるのもいいし、ホテル・プリシラの場面では2階・3階も客室ドアの描かれたセットが出てきて驚きました(最初はこの場面転換に全く気付かず、「いつの間にドアが?」とびっくり)。

 

配役も作品にハマっていました!

まぁ様ミリーは思い切りの良さと溌溂とした雰囲気が輝いていました。あの明るさは天性のものなのでしょうか。オーバーになりすぎないけれどコミカルでポップなお芝居で作品の楽しさが増し増しになっていました。後半のジミーとグレイドンを引き連れて突っ走るミリーがとっても可愛かった〜!!!↓ここ特に!!

事前に聞いていた通り、喉の調子は良くなさそうでそこは残念でした。特にGimme Gimmeは物足りなくて・・・。この曲との出会いが2022年オーブガラコンのケイシー・リーヴィ歌唱だったのでね。

そして全体的に訳詞はハマっていたように思うけれど、この曲はやっぱりキャッチーすぎて難しいな・・・というところです。話は逸れますが最後のスタンザ、やばいですよね。

I want it
Here I am, St. Valentine
My bags are packed, I'm first in line
Aphrodite, don't forget me
Romeo and Juliet me
Fly, dove! Sing, sparrow!
Gimme fat boy's famous arrow
Gimme, gimme that thing called love!

おしゃれすぎる。Romeo and Juliet meって!なに!!!!

万里生ジミーは「感じの悪いアウトローな役」をやるのは珍しいな〜と思いながら見ていると段々いつものお坊ちゃま感が出てきて(ミリーのオフィスに押しかけてくるところが特に!)、種明かしのところで「いや、配役がネタバレのやつかい!!」と笑ってしまいました。これまで風変わりな役で見ることが多かったので、クラシカルなミュージカル楽曲で久し振りに歌声を聴き、改めて「上手いな〜」と聴き入りました。What Do I Need with Loveの最後の伸ばしで珍しく声が掠れていたので少し心配。あとダンスは苦手とよく言っているイメージがあったので『カム フロム アウェイ』に続きしっかり踊っているのに驚きました!大変😂

ねねドロシーは出てきた瞬間からあまりの可愛さに卒倒しそうになりました。圧倒的美。衣装チェンジをするたびに可愛さを更新してきて困りました。ピンクのスパンコールのグリンダみたいなドレスが最高に似合っていました。ソプラノキーの楽曲も軽々歌いこなしていて良かったです。犬になったグレイドンを飼い慣らしている感じもたまらん。リフトされている時のポジションも完璧でした!

土居マジーも素敵でした〜😌✨ とてもチャーミングで温かくてキラキラしていて、スターとしての風格と周りの人たちにとっての「よき友人」らしさのバランスがとても良かったです。そしてやはり歌声が美しい。

一路ミセス・ミアーズも改変でキャラクター解釈が難しいだろうなと思いましたが、コミカルなお芝居の上手さを感じました。『ブラッド・ブラザーズ』のときからコメディで見てみたいと思っていたので嬉しかったです。

そしてそしてタイトルでも言及しました廣瀬グレイドンですよ!!初演時から噂には聞いておりましたが、本当にコメディセンス大爆発でした。台詞のちょっとした言い方や間の取り方が天才的すぎて兎に角笑えました。ビシッと決まったスーツ姿とちょっと窄めた口元、ドロシーに一目惚れした後の残念すぎる挙動不審ぶりのギャップがとんでもなく面白かったです。

↓この口😂😂😂

翻訳コメディでこんなに笑えることってあるんですね😂 キャスティングした方グッジョブすぎます!

 

今年上半期はテソーリ祭りでした!私はね『Fun Home』が見てみたいよ。よろしく頼みます各所👍

 

観客として「試されている」感覚『ラフヘスト~残されたもの』7/26 S 感想

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タイトルの意味もわからぬまま、ふと思い立ってチケットを買いましたが、「Les gens partent mais l’art reste ─ 人は去っても芸術は残る」の「ラフヘスト」だったのですね。好みのテーマでした。

作品・公演概要

 라흐헤스트(l'art reste)

音楽: 문혜성(ムン・ヘソン)정혜지(チョン・ヘジ)
脚本・詞: 김한솔キム・ハンソル
製作: 홍컴퍼니ホンカンパニー)
初演: 2022年 ソウル

 

ミュージカル 『ラフヘスト~残されたもの』 日本初演

劇場: 東京芸術劇場 シアターイース
演出: 稲葉賀恵
日本語上演台本: オノマリコ
訳詞: オノマリコソニン
企画: avex live creative、conSept
製作: 製作委員会

avex live creativeとconSeptの共同企画プロジェクト「belle waves」の作品第1弾とのことです。 

 

キャスト

キム・ヒャンアン: ソニン
キム・ファンギ: 古屋敬多
イ・サン: 相葉裕樹
ピョン・トンリム: 山口乃々華

 

作品感想

観客として「試されている」感覚

そして、内容も調べずにふらっと劇場を訪れて、時代背景の説明がないままに(ないことでマイナスにはならない)目まぐるしく時と場所が移り変わる物語を浴びて「試されているぞ」という感覚がありました。

今作ではピョン・トンリムとイ・サン、キム・ヒャンアンとキム・ファンギ、2組のカップルの物語が交差していきます。トンリム&サンは京城に暮らしていますが、作中に(私の聞き逃しでなければ)「京城」や「ソウル」という言葉は登場せず、年代も明らかにはされません。「イ・サンという詩人が生きた時代」というところから時代背景を理解することが求められます。

本当に恥ずかしいことに、そして傲慢にも、まともに歴史を学んでこなかった私はトンリムの「三越デパートのタイルみたい」という例えやサンの「東京に行く」という発言、「芥川賞」「千疋屋のメロン」といったワードなどから時代を推察することになりました。今年は『ファンレター』も見る予定ですし、絶対に日本による韓国植民地化の歴史を学ばねばならぬと感じています。

時間の前後については、頭の中で完璧に組み立て直そうとすると結構大変なので、「考えるな、感じろ」精神で2組のカップル、そしてトンリム&ヒャンアンの交流に集中した方がいいかもしれません。

 

ミュージカル表現の「こなれ」感

どんな場面で歌うのか、1曲の中でどれだけの時間経過を表現するのか、といった判断が絶妙で、ミュージカル表現が「こなれている」な〜と感じました。

特に好きだったのは序盤のトンリムとサンの距離が近づく場面。カフェで出会った2人が歌う「角砂糖コロリン、コロリン、コロリン、コロリ」のところは、オリジナリティ溢れる表現の巧みさに痺れました。恋愛関係に発展する前の微妙なぎこちなさのある「歩こうか〜」のところも良かったです。

私はミュージカルのラブソングにおいて「具体性」と「オリジナリティ」を重視しています。それが芸術家を描く物語なら尚更、日常の端々にその人らしさを宿らせて欲しいと思うので、そこのところが満たされていて素敵だと感じました。日本オリジナルミュージカルにもこんな「こなれ感」が出てきてほしいな〜とも。

 

「芸術家の妻」視点は珍しいかも

今作は詩人イ・サンと画家キム・ファンギという2人の芸術家を夫としたピョン・トンリム(改めキム・ヒャンアン)を主人公とした「芸術家の妻」目線の物語です。

芸術家を描くミュージカルというと男性の芸術家を真ん中に据え、彼らと関わった女性たちを周りに置いて話を展開させるものが多いので、その点『ラフヘスト』は新鮮に感じました。

サンと一緒になるべきか悩むトンリムに対し、ヒャンアンは「一人で辛い夜をたくさん過ごすことになったとしても、輝いていた記憶だけを抱きしめるのよ」と言い、過去の自分の背を押します。

トンリム(ヒャンアン)の姿勢からは、芸術家の夫を支え「耐え忍ぶ」妻というような印象も少し受けました。ただ、彼女自身も随筆家・美術評論家としてのキャリアを持ち、最終的には画家にもなることで「芸術家」としての性質を強めていくので、古臭くはならない、絶妙なバランスになっています。

また、芸術家を描く作品にしては激情に駆られるような派手なシーンは少ない(特にファンギパート)のは意外でした。淡々と続く日々を生きる人間らしさのある芸術家の描き方が良かったです。

全体的に脚本の巧さを感じましたが、最後のトンリム&ヒャンアンの「名乗り」は蛇足かなと思います。

 

公演感想

久しぶりに「小さい劇場」で「少人数ミュージカル」を見られて心が満たされました。

キャストの方々のパフォーマンスも安定していました。私はソニンさんの感情が歌と競り合うような表現が好きなので、今作でもそこの部分が堪能できて嬉しかったです。そして相葉さんは、突然ファルセットが差し込まれるトンデモ楽曲を軽々と歌いこなしていて流石でした。

古屋さんは以前Flower Drum Songで見た時に、ポップスっぽい音の揺らし方と洋画吹替っぽい台詞回しがあまり合わず・・・というところだったのですが、今回は声質や歌声がファンギのピュアな魅力とハマっていていい感じでした。山口さんも歌い方が天真爛漫なトンリムにぴったりで、彼女の作るトンリムがすぐに好きになりました。終盤の歌い上げは、もっと作品をまとめ上げる力が欲しいと感じました。

あと今回気になったのが、舞台セットを手動で回したあと固定するための「安全装置」?みたいなものがあって、演者がそれを操作するたびにガッチャン!と大きな音がすること。小劇場なのですごく響く😂

 

【韓国ミュージカル関連】

 

ソニン関連】

 

礼真琴の「夢を見させる笑顔」に溶ける 星組『BIG FISH』6/1 S & 6/9 M 感想

とっても楽しみにしてきた『BIG FISH』見られました😭 とても素敵な作品&公演でした😭😭😭

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作品・公演概要

Big Fish
原作: Big Fish: A Novel of Mythic Proportions (1998 novel) , Big Fish (2003 movie)
音楽・詞: Andrew Lippa(アンドリュー・リッパ)
脚本: John Augustジョン・オーガスト
初演: 2013年 シカゴ(トライアウト)
                      ブロードウェイ
    2017年 ウエストエンド
                       東京

Big Fish (Original Broadway Cast Recording)

Big Fish (Original Broadway Cast Recording)

  • アンドリュー・リッパ
  • サウンドトラック
  • ¥2037

 

星組公演 ミュージカル『BIG FISH』

劇場: 東急シアターオーブ
潤色・演出: 稲葉太地
訳詞: 高橋亜子

 

キャスト

エドワード・ブルーム: 礼真琴
ウィル・ブルーム: 極美慎
サンドラ・ブルーム: 小桜ほのか
サンドラ(若かりし頃): 詩ちづる
ヤング・ウィル: 茉莉那ふみ
ジョセフィーン: 星咲希
カール: 大希颯
エーモス・キャロウェイ: 碧海さりお
ドン・プライス: 蒼舞咲歩
魔女: 都優奈
ジェニー・ヒル白妙なつ
ジェニー(若かりし頃): 鳳花るりな
ザッキー・プライス: 夕陽真輝
ベネット: ひろ香祐
人魚: 希沙薫

 

感想


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映画は小学生か中学生のときに1度見たことがあったけれど「よかった」ということしか覚えていなかったので、1回目の観劇と2回目の観劇の間に久しぶりに見ました。映画もやっぱり素敵でした。涙腺の固い私にしては珍しく泣きました🥹

礼真琴の「夢を見させる力」

そして私は気がついてしまいました。「礼真琴≒ユアン・マクレガーじゃん!ということに。

『BIG FISH』はエドワードが語る数々のファンタジックな物語で構成されていて、演者はその現実離れした世界に観客を引き込むための力を求められます。それを難なくやってのける俳優の筆頭がユアン・マクレガーです。

ユアンは『ビッグ・フィッシュ』でも『ムーラン・ルージュ!』でも、浮世離れした華々しい世界の語り手を演じています。そして彼の笑顔と声には観客に「夢を見させる」魔法のような力があると、私は感じています。ハチャメチャな超展開が起こったとしてもユアンがカメラにぱぁっと笑顔を向けると、観客側は喜んで受け入れざるを入れない、そういう意味では観客の心を思い通りに動かす「強制力」があるとも思います。

そんな「夢を見させる力」が、礼真琴さん(以下こっちゃん)の笑顔もありました。

エドワード・ブルームという人は多くの人を魅了するけれど、常識の通じない自分勝手な人です。結婚式ではウィルとの約束を破ってジョセフィーンの妊娠を公表した上に反省もしない。

現代パートのエドワードはいつも自分の昔話を語り続ける「老害」に近いです。(ただ、映画では年老いたエドワードをアルバート・フィニーが演じていて、その「老害」的な部分が強調されていたのに対し、宝塚版では老けメイクのこっちゃんがそのまま老エドワードを演じることで、どこか憎み切れないチャーミングさが生まれています)

エドワード「俺がいたら緊張してホームラン打てないだろ?」
ウィル「サッカーの試合だよ」
エドワード「...サッカーなんかスポーツじゃないよ」
のところなんかも酷いです。彼は決して自分の非を認めません。そして作品自体もエドワードの考え方や行いを肯定するような形で終わります。

今作の主軸になるのは、自分の人生を夢物語のように語るエドワードとそんな「自分語り」と父の不在に傷ついてきた息子ウィルの対立です。この対立は、これまで語られてこなかった父の功績「アシュトンの救出(映画ではスペクターの救出)」をウィルが知ることでやや和らぎ、そのあとは死に際のエドワードの願いを叶えるためにウィルが壮大な「父の死の物語」を作り上げることで、大団円のハッピーエンドに向かいます。ただ、結末において幼少期のウィルの抱えた不安や悩みにエドワードが、そして脚本が寄り添うことはありません。

こうしたエドワードの欠点、それからストーリー自体のエドワードへの甘さに柔らかく蓋をして、観客の目をくらませ、クライマックスまで突っ走らせる、そんな力がこっちゃんの笑顔とお芝居、そしてトップスターとしての魅せ方にはありました。こっちゃんのパワーと宝塚のスターシステムのフル活用といった具合で、ここに宝塚歌劇団で『BIG FISH』を上演する意味が詰まっていたと思います。

こんな風に書くと、この作品の結末を好きではないように見えてしまうかもしれませんが、私はこの作品が好きですし、クライマックスでは珍しく泣きそうになってしまいました。特に、父の話ほどは大きくないカールと父の話通りの見た目のままの魔女が葬式に現れるところが。

ちなみに、私にとって「夢を見させる」力の持ち主といえば、もう1人、アーロン・トヴェイトがいます。『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』のオリジナルクリスチャンです。

そして私は観劇中に気がつきました。「礼真琴≒ユアン・マクレガー」「ユアン・マクレガー≒アーロン・トヴェイト」つまり「礼真琴≒アーロン・トヴェイト」・・・こっちゃんはMR!でクリスチャンを演じるべきでは!?!?!?!?

観劇後ずっと、Elephant Love Medleyで頬杖をつく礼クリスチャンを妄想しては暴れています。版権が厳しいことはわかっているから妄想上演で我慢するけれど、せめてYour Songを歌う礼真琴を見たい。何卒。

 

久しぶりに出会った最高のラブデュエットと「良い趣味の悪趣味」

「デュエットならラブデュエットより喧嘩デュエット派!」な私の胸に久しぶりに突き刺さったのが、エドワードとサンドラが歌うTime Stops

このナンバーはカールと共にキャロウェイのサーカスにやって来たエドワードが、ちょうどオーディションを受けていた「アラバマの子羊」のパフォーマンスを目撃し、サンドラに一目惚れする場面で歌われます。

アラバマの子羊」のキュートでアップテンポなダンスと楽曲が、一気にゆっくりになり、ゆったり流れる時間の中でエドワードが1人、サンドラへの想いを歌い出すのがとてもロマンチック。エドワードの視線に気が付いたサンドラのバースがエドワードのメロディから近すぎず遠すぎない変形になっているのも美しいです。

あと私が好きなのが、曲の最終盤で1番盛り上がる「I'd live forever in this moment / If I could stop」のあとに一拍、息を呑むような完全な無音があって本当に時が止まったように感じるところです。

これを書きながら、こんなにもナンバーと演出が強固に結びついたものって案外珍しいかも?と思うなどしました。ミュージカルという表現媒体の面白さを感じる1曲です。

楽曲を手がけたアンドリュー・リッパの作品は、昨年12月に『ジョン&ジェン』で初めて触れました。その時も感じましたが、緻密に音楽で物語を推し進めていきつつ、観客の感情もガッツリ揺さぶりにくるところが好きです。『アダムス・ファミリー』も聴いてみようかな。

 

全編通して好みの曲は多かったのだけれど、そんな中でも特に心に刺さったもう1曲はShowdown

死期が迫り、家のベッドで安静にしているところにウィルがやってきて、アシュトンの家について詰められたエドワード。そのあとで彼が見る夢の中には直前までテレビで見ていたウエスタン映画の人々とカウボーイ姿のウィルが出て来て・・・という場面で歌われるこの楽曲がとても面白かったです。

Showdown

Showdown

  • Bobby Steggert & Norbert Leo Butz
  • サウンドトラック
  • ¥255

口元に笑みをたたえつつ、検事のように病床のエドワードを責めるウィルと「首吊りの刑がある〜」と陽気に歌うコーラス隊に、BWリバイバル演出版『ピピン』で感じたような「趣味の良い悪趣味」を感じて興奮しました。

 

「舞台映え」の意識と失われた円環構造

原作小説は読んでいないのですが、せっかく同時期に映画とミュージカルを見たので、ちょっとした比較を書き残します。

映画

大魚→魔女(幼少期の話)→アシュトン(巨人カール)→スペクター(人魚、裸足の少女ジェニファー・ヒル、詩人)→サーカス(狼男キャロウェイ団長)→サンドラとの結婚→朝鮮戦争?への出征(双子)→銀行強盗(詩人)→大雨と水没(人魚)→スペクターの買戻し(ジェニファー・ヒル)→死(大魚

ミュージカル

人魚・アラバマストンプ→魔女(幼少期の話)→アシュトン(ジェニー・ヒルと巨人カール)→サーカス(狼男キャロウェイ団長)→サンドラとの結婚→大戦?への出征(吹き矢)→ウエスタンの夢(ウィル)→アシュトンの水没と移住の援助(ジェニー・ヒル)→死

基本は映画の流れと近いものの、ところどころ「舞台映え」を意識した改変があるようです(どちらが原作小説を踏襲しているのかわかりません)。特にアシュトン(スペクター)の危機は舞台版では視覚的にわかりやすい形になっていました。

それからアラバマストンプであったり、The Showdownであったり、ミュージカルという表現手法と物語の持つファンタジックな世界観を掛け合わせた場面が追加されていて舞台で上演するミュージカル作品向けアダプテーションとしての「巧さ」を感じました。

ただ今回の上演に関して言えば、舞台上をスイセンで物理的に埋め尽くせないのは少し寂しかったです。階段状になった箱の壁面が開くとスイセンが敷き詰められていて、あとは映像とアーチで表現するというのは少し「苦肉の策」という感じがしました。作品に対する劇場のデカさと予算の厳しさを感じてしまいました。

そして私がいった6/1は、ドンにエドワードが殴られる場面でこの階段部分の壁面が一か所開いてしまい、中のスイセンが見えてしまうというハプニングがありました。ドンの取り巻きボーイズがなんとか修復しようとしていたのですが、無理でそのまま1つひらっきぱなしのまま芝居が続きました笑

 

それから1番気になったのが、タイトルである大魚(ビッグ・フィッシュ)の作中での存在感がミュージカルでは小さいところです。映画では、老エドワードが釣りをしている→若いエドワードが釣りをしている→大魚は泥棒の生まれ変わりという噂があるから結婚指輪を餌に釣り上げる→本当に欲しいものを釣り上げるには指輪を渡すこと(サンドラへのプロポーズを示唆する結婚式スピーチ)といった形で大魚の話題が作品冒頭に出てきます。そして作品最終版、ウィルはエドワードの死を「これまで出会った人たちに見守られる中、大魚になって湖に放たれる」という筋書きで語ります。大魚はエドワードが若かったときから存在するが、その正体は老エドワードの死後の姿であるという矛盾する円環構造になっているわけです。

対してミュージカルでは一応、作品冒頭、Overtureが流れる中で舞台上に大魚が泳ぐ映像が映し出されはするものの映画のように詳しく話が出てくることもなく(映画では老エドワードがバスタブに浸かって「水がないと生きられない」と発言するような伏線もある)、エドワードの死と大魚の結びつきも強調されません。

映画では魔女とジェニファー・ヒルをへレム・ボナム=カーターが1人で演じることで、魔女の円環構造も強調されています。エドワードが幼少期に出会った魔女の幼少期にスペクターで出会い、再び街に戻ってくると彼女は成長していて、後に魔女になると予想できます。

この不思議な時間の矛盾がミュージカルでは弱まっていました。もちろん幼少期に出会った魔女があのときと変わらぬ姿でエドワードのお葬式に現れるという展開は用意されているのですが。「パパの物語の中で、綺麗な人はみんなママなんだ」というミュージカルの台詞には時間の矛盾はないけれど、ファンタジーの現実が混ざり合うエドワードの物語を示す意味では同じ類のお洒落さを感じたりもしました。

 

キャスト感想

こっちゃんの感想は先述しましたので、他の方を。それにしても星組さん本当に歌唱レベルが高くて幸せでございます。

特にすごかったのが娘役さんたちです。小桜ほのかさんと詩ちづるさんのWサンドラが役にぴったりはまっていていて素晴らしかったです。

詩ちづるさんの子羊が可愛すぎて完全に視線を奪われました。1つ1つの動きがどこを切り取っても可憐で、表情や関節の動かし方にミニーちゃんを感じるところに舞空瞳さん(ひっとん)っぽさも感じます。Time Stopsの歌声も素晴らしく、このビジュの強さ、この踊りの可憐さで歌まで良いなんて・・・と恐れおののいております。RRRのシータも素晴らしかったので今後の作品も楽しみです。

小桜ほのかさんのサンドラには涙腺をやられました。アップテンポだったり壮大だったり派手な楽曲が多い作品の中でしっとりしたバラードを担うのは難しいと思うのですが、小桜さんのI Don't Need a Roofは心から聞き入ることができました。彼女のお芝居と歌声は作品全体に深みを与えていたと思います。エドワードとの距離感もすごくよかったんですよね。サンドラはエドワードを否定しないし、彼を心から愛しているけれど、彼を妄信しているように演じてしまうと「変な女」に見えてしまうと思います。小桜さんのサンドラからは、エドワードのホラ話を心から楽しみながらも自分の考えをしっかり持った1人の人間としての人格が感じられてとても好きでした。お芝居も歌も本当に上手すぎます!!

それから今回びっくりしたのが魔女役の都優奈さん。ハイカロリーな難曲を歌い上げていて、何者!?!?となりました。星組の娘役さんたちすごすぎます。男役の皆さんも「誰が歌っても上手い」状態で驚きました。

そして、極美慎のウィルですね〜!安定にビジュが鬼鬼鬼。かっこよすぎます。ソフトで朗らかな感じのお芝居なので初めからそこそこエドワードと上手く行きそうでは?と思いつつ、そんな彼でも譲れないものがあるのは幼少期に傷ついてきた辛さがあるからかな・・・とも思ったり、解釈するのも楽しかったです。

何よりThe Showdownでの口の片端を釣り上げる余裕の笑みに完全にやられてしまいました。あれは反則!!!

 

 

昨年6月の月組『DEATH TAKES A HOLIDAY』といい、宝塚×オーブ×版権はかなり私の心を潤してくれています🫶

 

最近、観劇レポの執筆が遅くなっていて良くないな~と思っています。フルタイムで働き始めて時間がなくなったのもあるけれど、(幸運にも?)言葉をこねくり回すような仕事に就いたもので、仕事後や休日に言葉を紡ぎ出す気力が湧かない・・・。鉄は熱いうちに打ちたいのですが。

 

星組関連】

 

【随時更新】トニー賞 パフォーマンスまとめ

録画見返す時用。公式動画はThe Hollywood Reporterしか上げてないっぽいし全部は上がってない

77th Tony Awards (2024)

1. Opening 

  • Ariana Debose - This Party's For You

2. Hell's Kitchen

  • The Gospel(Maleah Joi Moon & Company)
  • Authors of Forever(Kecia Lewis & Maleah Joi Moon)
  • Falling(Brandon Victor Dixon & Shoshana Bean)
  • Empire State of Mind (Part II) Broken Down(Company)
  • Empire State of MindAlicia Keys & Maleah Joi Moon & Jay-Z

3. The Who's Tommy

  • See Me, Feel Me(Ali Louis Bourzgui & Aliah James)
  • Pinball Wizard(Ali Louis Bourzgui & Local Lads & Company with Pete Townshend)

4. Merrily We Roll Along

  • Second Transition(Company)
  • Old Friends(Jonathan Groff & Daniel Radcliffe & Lindsay Mendez

5. Water for Elephants

  • Anywhere/Another Train(Grant Gustin & Stan Brown & Wade McCollum & Company)
  • The Road Don't Make You Young(Company)

6. Illinoise

  • The Predatory Wasp of the Palisades Is Out to Get Us!(Company)

7. Stereophonic

  • Masquerade(Will Brill & Juliana Canfield & Eli Gelb & Sarah Pidgeon & more)

8. Cabaret at the Kit Kat Club

  • Wilkommen(Eddie Redmayne & Company)

9. Special tribute to Chita Rivera

  • Spanish Rose - Bye Bye Birdie
  • All That Jazz - Chicago
  • Sweet Charity
  • Kiss of the Spider Woman
  • Amrica - West Side Story

10.  Suffs

  • Keep Marching(Shaina Taub & Nikki M. James & Company)

11. The Outsiders

  • Tulsa '67(Brody Grant & Sky Lakota-Lynch & Company)
  • Grease Got a Hold(Joshua Boone & Jason Schmidt & Daryl Tofa & Brent Comer & Greasers)
  • The Rumble(Company)

12. In Memoriam

  • What I Did for Love - A Chorus Line(Nicole Scherzinger

 

WOWOWスタジオ中継

1. ノミネート作品メドレー

  • Willkommen - Cabaret井上芳雄
  • Old Friends -- Like It Was - Merrily We Roll Along(宮澤エマ&井上芳雄
  • The Power of Love - Back to the Future: The Musical(宮澤&井上)
  • Empire State of Mind - Hell's Kitchen(宮澤&井上)

2. Electricity -『ビリー・エリオットリトル・ダンサー~』(春山嘉夢一ビリー&渡邉隼人マイケル)

 

76th Tony Awards (2023)

1. Opening

  • Ariana DeBose(Choreographed by Karla Puno Garcia)

2. New York, New York

  • Cheering for Me Now(Company)
  • New York, New York(Anna Uzele & Company)

3. Camelot 

  • C'est Moi(Jordan Donica)
  • The Lusty Month of May(Phillipa Soo & Company)
  • If Ever I Would Leave You(Jordan Donica)
  • Camelot (Reprise)(Andrew Burnap)

4. & Juliet

  • Roar(Lorna Courtney & Company)

5. Some Like It Hot

  • Some Like It Hot(NaTasha Yvette Williams  & Adrianna Hicks & J. Harrison Ghee & Company)

6. Into the Woods

7. Tribute to Lifetime Achievement Award winners Joel Grey and John Kander

  • Hot Honey Rag - Chicago(Ariana DeBose & Julianne Hough)

8. Parade

  • This Is Not Over Yet(Ben Platt & Micaela Diamond)

9. Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street

  • The Ballad of Sweeney Todd(Josh Groban & Annaleigh Ashford & Company)

10. A Beautiful Noise

  • Sweet Caroline(Will Swenson & Company)

11. In Memoriam

12. Kimberly Akimbo

  • Anagram(Victoria Clark & Justin Cooley & Company)

13. Shucked

  • Corn(Ashley D. Kelley & Grey Henson & Company)
  • Independently Owned(Alex Newell)
  • Somebody Will(Andrew Durand & Company)
  • Woman of the World(Caroline Innerbichler & Company)

14. Funny Girl

  • Don’t Rain On My Parade(Lea Michele & Company)

 

75th Tony Awards(2022)

1. Act One

  • Set the Stage(Darren Criss and Julianne Hough)
  • Mame - MAME(New York City Gay Men's Chorus)

2. Opening

  • This Is Your Round Of Applause(Ariana DeBose)

3. The Music Man

  • Seventy-Six Trombones(Hugh Jackman & Company)

4. MJ The Musical

  • Smooth Criminal(Myles Frost & Company)

5. Mr. Saturday Night

  • Stick Around(Shoshana Bean, Randy Graff, Billy Crystal, Chasten Harmon & Company)
  • Buddy's First Act(Billy Crystal, Randy Graff & David Paymer)

6. Company

  •  Company(Katrina Lenk & Company)

7. Girl from the North Country

  • Like a Rolling Stone(Mare Winningham & Company)
  • Pressing On(Jeannette Bayardelle & Company)

8. Stephen Sondheim Tribute

9. A Strange Loop

  • Intermission Song(Jaquel Spivey & Company)
  • Today(Jaquel Spivey & Company)

10. Spring Awakening Tribute

  • Touch Me(Original Cast of Spring Awakening

11. Paradise Square

  • Paradise Square(Joaquina Kalukango, Chilina Kennedy, Matt Bogart, Nathaniel Stampley & Company)
  • Let It Burn(Joaquina Kalukango)

12. In Memoriam

  • On the Street Where You Live - My Fair Lady(Billy Porter)

13. SIX

  • Ex-Wives(Adrianna Hicks, 

    Andrea Macasaet, Mallory Maedke(Dance Captain & Alternate), Brittney Mack, Samantha Pauly, Anna Uzele)

  • SIX(same cast)

14. Closing

  • This Is Your Round of Applause (Reprise)(Ariana DeBose)

 

掘って耕す ミュージカル『この世界の片隅に』5/18 S 感想

見てきました「片隅ミュ(かたすみゅ)」!

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作品・公演概要

ミュージカル『この世界の片隅に ※初演

原作: こうの史代の漫画『この世界の片隅に』(2007〜09年『漫画アクション』で連載)
音楽: アンジェラ・アキ
脚本・演出: 上田一豪
劇場: 日生劇場

公演に先駆けて、アンジェラさんは今年2月7日にデジタルシングルとして劇中歌「この世界のあちこちに」をリリース。4月24日にはアルバム『アンジェラ・アキ sings 「この世界の片隅に」』をリリースし、周作役の海宝直人さんが参加しています。

NHKラジオ『ウエンツ瑛士×甲斐翔真の妄想ミュージカル研究所』での情報によると、1年前からワークショップが開催されており、その時には既に楽曲が出来上がっていたとのこと。他の日本オリジナルミュージカルに比べると、だいぶ早めにある程度形になっていたようです。

早めから製作→楽曲の先行リリースという流れを日本オリジナル作品の初演で行えたのは、新規客層の呼び込みを目指す上で良い選択だったと思います。どれほど効果が出たかはわかりませんが、少なくとも非ミュージカルファン層は得体の知れないものにポンとお金は出さないと思うので。情報は多い方がいいと思います👍

 

キャスト

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浦野すず: 昆夏美
北條周作: 海宝直人
白木リン: 平野綾
水原哲: 小野塚勇人
浦野すみ: 小向なる
黒村径子: 音月桂
すずの幼少期: 嶋瀬晴
黒村晴美: 鞘琉那

白木美貴子
川口竜也
加藤潤一

+アンサンブル 14人

 

作品感想

原作は未読で、今月に入ってから、予習がてらアニメ映画の『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を鑑賞しました。

通常版と「さらいくつもの」どちらも見た友人によると、後者でフィーチャーされている白木リンのエピソードが通常版にはほとんどないそうです。ミュージカル版にはリンさんがしっかり出てくるので予習をしたい方には「さらにいくつもの」を見た方が良いかも。

さて、前置きが長くなりましたが作品の感想に入ります。

観劇後に抱いた率直な感想は「わるくない。わるくないけれど、なんだろう...?」。自分の気持ちを言語化して整理しつつ、日本オリジナルミュージカルの初演ということでレビューっぽく書いていきます。


音楽

作品のタッチと本質を捉えた音楽

音楽はやわらかく、心にすっと入ってくるような穏やかな音色が、漫画やアニメの温かみのあるタッチや瀬戸内海の雰囲気に合っていました。

この世界の片隅に』は第二次世界大戦時の広島県が舞台ということで重く悲しい題材を描くものの、地に足をつけて生きる人々の暮らしに焦点を当てた物語になっています。だからこそ、ほのぼのした場面やほっこりする場面も多く、そのギャップに大きな魅力があります。

こうした作品の魅力が、ミュージカル版では楽曲によってしっかりと表現されていました。特にそれを感じたのは防空壕を掘る場面。防空壕を掘るのは重労働ですし、掘らねばならぬような状況にあるのも辛いはずですが、この場面の音楽はポップで、しかもコミカルな踊りまでついています。

片隅ミュには派手な歌い上げのナンバーがあまりありません。それらしいのはすずさんの「端っこ」と径子の「自由の色」くらい。グランドミュージカルで活躍するキャストを揃えているので、ビッグナンバーを期待してしまう自分もいますが、作品の題材的にはなくて良かったと思っています。海宝さんが事前に歌っていた「言葉にできない」というソロ曲もカットになったようで、キャストの見せ場よりも作品の出来を優先していることがうかがえます。

 

J-POPらしさも"ミュージカル"らしさもある

楽曲はシンガーソングライターとして日本のポップシーンで活躍していたアンジェラ・アキさんが担当しています。「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」からストーリー性のある歌詞を書かれる方というイメージを持っていたので、ミュージカル作曲家になるために留学をするという情報を見て楽しみにしてきました。

片隅ミュの口ずさみやすく、耳当たりの良いメロディアスな主旋律はアンジェラさんのJ-POPでのキャリアからきたものだろうと思います。作品冒頭ではキャストの方々の歌い方にもポップスっぽい軽さがあって不安を感じたものの、昆さんを筆頭に作品が進むごとに感情が乗った「ミュージカル歌唱」になっていって良かったです。

メロディはJ-POPらしいのですが、その活用や楽曲の構成はすごく「ミュージカル」でした。モチーフの反復やリプライズの使い方も上手くて、きちんと分析したらきっとたくさんの気づきがあるだろうなと思います。

これまで何作品か日本の作曲家のミュージカルを見て来て、私は「J-POPっぽさ」を作品への没入を阻むマイナスな要素として捉えて来たのですが、こうして緻密な構成と作品内容に寄り添った歌唱スタイルと一緒になれば、魅力になるのだと気づくことができました。

 

脚本

脚本については腑に落ちないところがありました。1番は...

時系列を前後させたのはなぜ?

片隅ミュは大人になったすずさんの語りで始まり、そのすぐあとに彼女が右手を失い、伏せっている場面が続きます。そして右手を失う前のエピソードは、布団にいるすずさんと周作さん、すずさんとすみちゃんの会話を通した回想シーンとして位置付けられています。

この時間の行ったり来たりがなかなか激しくて、時系列がすごくわかりづらかったです。観劇直前に映画を見ていた私でもそう感じたので、この物語に初めて挑む人はもっと混乱したのではと思います。一応「昭和○○年○月」といった説明はあるものの、音声情報だけでは時系列の整理にあまり役立ちません。

とはいえ、時系列順にエピソードを並べたとすると「1幕に山場がない」という問題が発生すると思います。難しい問題です。これは漫画・アニメ原作ミュージカルの課題として私が頻繁に考えるポイントでもあります。

片隅ミュはこの問題を意識して乗り越えようとしたんじゃないかと思います。1幕冒頭の晴美ちゃんの未来を予感させる場面であったり、効果的に感じる時間の行き来もあった(後の展開を私が知っているから感情が高まったのかもしれないけれど)ので、必要最低限の行き来に抑えられたら良かったのかもなとも。

時系列の組み替えって、頭の中でバチっと繋がると感動が大きいけれど、1回の鑑賞でそれを起こそうとすると結構難しいですよね。

 

山場が「三角関係」でいいのか?

作品の情報解禁時に東宝公式が発表した「すずと周作と三角関係になる白木リン」という文言の『三角関係』の部分について、疑問の声が上がったのを覚えています。

私はそのときまだこの作品に触れたことがなかったので詳細はわかりませんでしたが、アニメ映画を見て「確かに『三角関係』というワードはちょっと引っかかるかもな」と思いました。リンさんのエピソードを三者による恋愛模様ではなく、すずさんとリンさん、2人の関係性の構築として私は受け取ったからです。

片隅ミュの1幕終わりは、すずさんとリンさんがお互いに相手と周作さんの関係を理解して、不穏な音楽が流れる中で対峙する場面です。ここに来て私はまさに「解釈違い」を起こしました。

もちろん片隅ミュでもお花見の場面を筆頭にすずさんとリンさんが心を通わせる素敵な場面はあるのですが、作品の大きな見せ場、ものによっては核ともなるような1幕の締めくくりが2人の対立を煽るようなものだったのには疑問が残ります。

 

演出・美術

ノートを開いたような和紙らしい質感のセットにすずさんの描いた絵が映し出され、その中をすずさんの出会った人たちが動くというのは「記憶の器として生きる」という物語のテーマとも合っていると感じました。

爆撃の描き方

見せ方の面で気になったのが、呉への空襲と広島への原爆投下の場面。意図したのかそうでないのかはわかりませんが、こうした「攻撃」の場面の演出は思ったよりも控えめでした。

実際にたくさんの死傷者を出した爆撃を派手な効果で盛り立てると、戦争を「エンタメ」として消費することになってしまうのかも、と考えたり、でももう少し緊迫感は出した方が作品としては締まるよな、と思ったり。劇場がもう少し小さかったからまた違った印象を受けるかもなとも考えたりしました。

 

舞台化・ミュージカル化の意義

生身の人間としての「白木リン」

私は生身の人間として白木リンが存在する「えぐみ」に舞台化の意義を強く感じました。アニメ映画では、かわいらしいタッチのイラストの効果でリンさんの境遇がマイルドになっていましたが、平野綾さんが目の前でリンさんを演じることで、貧しい生まれで(恐らく)娼館に売られ、火に包まれて亡くなった、そんな女性が「いたんだ」と心にずっしりきました。

リンさんがすずさんにスイカを分けてもらった日のことを繰り返し繰り返し歌うのも良かったです。幼き日に触れた優しさを胸に死にゆく日を想う姿は切なく、そして美しかったです。ナンバーのお陰でリンさんの心情が作品の核に明確に結びついていたように思います。

 

ミュージカル化の難点

音楽のところで「ビッグナンバーがない」ということを書きました。それは描く題材や作品の雰囲気からも思ったことですが、最終盤に径子が歌う「自由の色」を聴きながら改めて感じました。

このナンバーが歌われるのは作品の「結末」にあたるような場面で、ナンバーそのものの良さと音月桂さんの歌唱のエネルギーによってとても「ミュージカル的」に仕上がっていました。この場面をビッグナンバーにするのはミュージカル化においては「正解ど真ん中」なんだろうなとも思いました。

ただ、原作の(私は映画しか見ていませんが)台詞が情報の過不足なく、そして心を惹きつけるものであるがゆえに、歌という表現が素晴らしい場面を間延びさせてしまっているような感覚もありました。これは言葉や台詞に特徴のある(というか言葉や台詞が優れている)作品をミュージカル化するにあたっての難しいポイントなのかもしれないなと思います。

 

キャスト感想

皆さんパフォーマンスが素晴らしくて見応えがありました。気になるとすれば、歌が上手い人は饒舌に見えちゃうってところかな😂 

↑稽古場映像がちょうど昆×海宝×平野パターンでした🙏

昆すず

愛する昆ちゃん。いつだってミュージカルが上手い。私がこれまでに見た役では怒っていたり絶望していたり、控えめな役でもテンション自体はハイってことが多かったので、おっとりしたお芝居は新鮮でした。

のんさんの声のイメージが頭の中にしっかりあって最初はだいぶ混乱してしまった(四季の『アナと雪の女王』見た時も似たことが起きた)ものの、豊かな感情表現、アニメとの差異にはやっぱり「あの時代を生きた1人の女性」の実存感があって良かったです。

 

海宝周作

映画を見ながら、周作さんと海宝さんはちょっとビジュの雰囲気が近いな〜と思っておりました。どうしても海宝さんを見るとエキセントリックな音程の派手ソングを聴きたくなりますが、役には合っていたように思います!

昆ちゃんとのデュエットはやっぱり絶品。そして海昆ラバーとしては2人が喧嘩デュエット始めると盛りあがっちゃいます!いいぞ、もっとやれ!!

 

平野リン

平野綾ちゃんに白木リンをキャスティングした方!天才!!!!このミュージカルの1番のブッ刺さりポイントはここでした。完璧キャスティングすぎる。リンさんの魅力がこれでもかと表現されていました。

 

音月桂さんの径子も歌・お芝居共に素晴らしくて作品全体の魅力を底上げしていると感じたし、初めて拝見した小野塚さんの水原、小向さんのすみちゃんも声色でのキャラクター表現が巧みで感動しました。「思いがけず海軍(陸軍)の秘密に触れてしもた😆」とキャ😆のところ、2人ともほんとにこの絵文字みたいに目がくの字になっていて可愛すぎました〜🫶

 

本編の感想ではないけれど・・・

このプロダクションは、日本のクリエイターが日本語で日本を描くというまだまだ日本のミュージカル界で発展していない部分を「耕す」ようなものだったように思います。

この作品は最近の漫画・アニメ原作グランドミュージカルの流れに乗るものなのだけど、ミュージカル界隈各社が口を揃えて言う「新規客層の開拓」とは違う狙いがあったと思いたいです。

というのも『この世界の片隅に』の熱狂的なファンってあんまり見たことがなくて、どちらかというと多くの人に広く愛される良作のように見えます。その分原作ファンの獲得は難しい。そして公演序盤の売れ行きからもわかるように「日本オリジナル×日本が舞台」はミュージカルファンの手も他のグランドミュージカルほどは伸びにくかった感じがします。

それを分かった上で、きっちり時間をかけてワークショップをして、CDを出して、ブラッシュアップして、上演できたということを考えるとなんだかすごいことをやっている気がします。こういう道のりを経て、日本の観客が心を寄せられる大ヒット和ミュージカルが生まれいくんだろうと思います。

 

CROSS ROAD』『ゴースト&レディ』『この世界の片隅に』と今春は日本オリジナルミュージカル三昧でしたね!

 

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100年越しの初演に立ち会う『ゴースト&レディ』5/6 M 初日 感想

運良く抽選に当たりまして、初日に見てきました👻

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ちなみに皆さん、『ゴースト&レディ』の略称はどうしてます?私は「ゴスレ」で馴染んできたのでそれでいこうかなと思ってます!

作品・公演概要

ミュージカル『ゴースト&レディ』 ※初演
原作: 藤田和日郎による漫画『黒博物館 ゴーストアンドレディ
作曲・編曲: 富貴晴美
脚本・歌詞: 高橋知伽江
演出: Scott Schwartz(スコット・シュワルツ)
劇場: JR東日本四季劇場[秋]

原作者の藤田さんのTwitterから、四季と密に連携できていそうな雰囲気が感じ取れていたので安心していましたが、劇場にもアート作品の寄贈展示があったりして、良い関係が築けているんだろうな〜と思いました🙆‍♀️

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原作絵のパネルもありました。

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キャスト

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フロー: 谷原志音
グレイ: 萩原隆匡
ジョン・ホール: 瀧山久志
デオン・ド・ボーモン: 岡村美南
アレックス・モートン: ぺ ジェヨン
エイミー: 木村奏絵
ウィリアム・ラッセル: 内田圭
ボブ: 平田了祐

+アンサンブル 18人

 

作品感想(レビュー寄り)

原作未見かつ事前情報も見ない&読まないほぼ真っ新な状態で観劇してきました。初演作品の初日特有をわくわく感と緊張感を味わうのはすごく久しぶり(多分、FONSぶり?)。

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1幕があまり刺さらなくて「うーん」と思っていましたが、2幕は怒涛の追い上げで一気に引き込まれました。面白かったです!

作品の魅力は特に演出や照明といった見せ方の部分と愛着の湧くキャラクターにあったと思います。これまで見てきた漫画原作作品に比べて駆け足感や「出来事の羅列」感が薄かったのも良かったです。(今回は新作なのでいつもより批評っぽく書いてみようと思います)

 

演出・照明

舞台に「ゴースト」を出現させる演劇のイリュージョン

今作は、客電が落ちて暗転したところに上手からライトが持ち込まれ、それが鬼火となって漂った先にゴーストのグレイが出現する場面から始まります。暗いところに照明が当たって、何もないところからグレイが現れたように感じる簡単なトリックですが、これは「ゴースト」を舞台上に存在させるための1つ目のイリュージョンです。

浮遊するゴーストが登場するということで、今作には多くのイリュージョンが取り入れられています。その1つ1つも面白いのですが、これらのイリュージョンが作品の冒頭付近に多く見られ、最終盤の大掛かりなフライングアクションを除き、作品の中〜後半では鳴りを顰めるのも面白いと感じました。

作品冒頭ではグレイが馬車から空へと飛び出していくフライング、屋外から家の中への壁の通り抜けといった表現が取られます。対して中〜後半では、グレイが舞台袖から普通に歩いて登場して、歩いて捌けていくシーンが多くなります。

これができるのは、作品前半の複数のイリュージョンでグレイ=ゴーストの認識をしっかり作れているおかげで、私はそこに演劇の面白さを感じました。

 

新たなゴースト(というよりかは魂)が出てくる場面では、再びそれがこの世ならざる者であることを表すために丁寧な表現が取られます。

フローたちが介抱していた兵士が死の淵に差し掛かると、彼らの魂はベッドに寝ている肉体から離れて、舞台袖から差し込む光の方へと歩いていきます。

この場面では某双子芸人の「幽体離脱」ネタがチラついて一瞬笑いそうになりましたが、暗い舞台に差し込む光とそこに歩みを進める魂がとても美しいおかげで舞台から意識が離れずにすみます。

 

過去回想の凝った演出

グレイの過去パートの見せ方も魅力的でした。幼少期〜青年期は『ウィキッド』の「水に溶けるエルファバ」よろしく、布の後ろで演じる役者に背後から照明を当てて影絵のように描かれます。(話は逸れますが、フライングアクションには『リトル・マーメイド』を、回想シーンは全体的な雰囲気に『ノートルダムの鐘』(シュワルツ演出)も感じて、これまでの上演のノウハウが活かされているのかもしれないとも思いました。)

成長したグレイがロンドンへと飛び出す場面になると、布の真ん中から青年グレイを演じる役者が飛び出してきてグレイが影絵から実態になり、布も取り払われて劇場のセットが現れます。影絵が始まる前は布が他のセットに引っかかってもたついていましたが、劇場が現れる転換は見事で息を呑みました。

青年グレイが着ていたジャケットを現在のグレイに渡し、それを現在のグレイが着ることで回想シーンの主役がバトンタッチするのも楽しく、その後の剣術シーンまで見応えがあります。

 

題材・脚本・音楽

漫画原作を感じる「強い」キャラクター

1幕のストーリー展開にあまり魅力を感じなかった私を一気に作品の世界に引き込んだのは、1幕を締めくくる、敵役のゴースト、デオンの登場でした。

それはもちろん岡村美南さんのパフォーマンスやビジュアルに魅了されたからでもあります(詳しくは後半のキャスト感想に書きます🫶)が、属性てんこ盛りの強烈なキャラクターの登場は刺激的でした。登場シーンだけで1幕を閉められるような個性的なキャラクターを0から生み出すのはとても難しいと思うので、漫画原作の強みも感じます。

また、デオンの登場でゴースト同士の会話という新たな次元が物語に加わり、その中で明らかになる彼らの過去や想いを知ることでゴーストという存在により一層愛着が湧きます。

 

難所を補えていない音楽

1幕で描かれる、自らの信念を貫いてクリミアで活躍するフローとあれこれぼやきながらフローに付いていくグレイも愛おしくは感じます。ただ、ナイチンゲールの伝記的な要素が主軸の展開になるため、キャラクター間の関係性を楽しんだり、感情移入したりするにはやや物足りません。フローの置かれた状況を説明するために不可欠な要素ばかりなのはわかりますが、物語としての盛り上がりには欠けます。それから、ヴィラン的立ち位置のジョン・ホール周りについてはキャラクターもエピソードも「弱い」と感じました。アレックス&エイミーのところも表現方法によってはもっと面白く(絶望的に)なりそうだと思ったので、全体的に「人間パートが弱い」と言えます。

今作はミュージカルなので、ナンバーによって感情を盛り上げることができるかもしれません。でも1幕のナンバーはそこまでのパワーを持っていなかったように思います。

今作の楽曲はオーケストラ部分(伴奏という言い方でいいのか?)の魅力が強く、音源なのが勿体無いと感じるほどでした。けれどもナンバーのメロディはキャッチーではなく、あまり印象に残りません。歌詞についても、歌い手の感情が見えにくかったように思います。

物語が大きく動いていく2幕のナンバーには、絶望したフローによる激しいソロ歌唱曲を筆頭に感情を揺さぶられました。

 

中編の完結作品を選んで漫画原作の課題をスキップ

原作漫画の『黒博物館 ゴーストアンドレディ』は全2巻の作品。完結済みの中編作品を原作に持ってきたのが成功のカギだったと思います。

最近は漫画・アニメ原作のグランドミュージカルがたくさん製作されています。私も何作品か観劇しています。その時に感じたのが、何百話、何十巻にも渡るような長いストーリーを2時間半〜3時間に詰め込もうとしたことによる駆け足感や「出来事の羅列」感(感情や関係性よりもエピソードを盛り込むことが優先される)です。『SPY×FAMILY』のように連載が続いている作品では、ストーリーの着地点を用意するのにも苦労していたように思います。

『ゴースト&レディ』は、原作を選んだ段階でこのような漫画原作グランドミュージカルの課題をある程度スキップできています。

 

キャスト感想

谷原フロー

ずっと拝見したかった志音さんのパフォーマンスをついに、このタイミングで見られました!1幕はソプラノ寄りの音域が多くて「ビジュも声も美しいな〜」くらいだったのですが、2幕での業がゴリゴリに乗っかった絶唱で完全にノックアウトでした。最高。

フローの意志の強さが歌声で完璧に表現されているし、お芝居の端々にそれが「頑固さ」や「したたかさ」のような形で表れるのも見ていて楽しかったです。グレイとやり取りしている時の口角がたまらん。志音エビータを私にも見せてください・・・お願いします劇団四季様。

 

萩原グレイ

人間には到底できないことができる上位存在的なゴーストとして登場してから、フローとの掛け合いやデオンの登場による過去の暴露によって徐々に弱みが出て前に出てきて人間臭くなっていくお芝居が素晴らしかったです。愛おしくてたまらなかったです。「100年も経っちまった〜」の言い方、あれはほんとうにずるい!!かっこよすぎました!!!

そして、メイン2人の進む先が恋愛関係だとは思いもせずに見ていて1幕終盤あたりから「え?そういうこと?」と『ダディ・ロング・レッグズ』ぶりにざわざわした私でした笑 普段は恋愛じゃなくてもいいじゃん!と思いがちですが、ゴスレに関してはフローとグレイのもだもだがやたらかわいかったので恋愛要素も楽しかったです。やたら長いカテコも(なんとかしてほしいことに変わりはないが)、2人のハグとハート🫶ではわわ🥺✨ってなってました。

 

岡村デオン

舞台にいる間は常にオペラグラスで追いかけたくなるし、終演後は「美南様・・・」しか言えない妖怪になりました。かっこよすぎるよ!!!

こちらに稽古場写真があります。やば!!!踏んでる踏んでる!!!

男装をして生きてきた決闘代理人、死んだら女の姿のゴーストに、一人称は「僕」、納得できる「終わり」を求めている。デオンは設定からして属性てんこ盛りの強烈なキャラクターなのですが、そこに美南さんのパフォーマンスがかけ合わさってとんでもない魅力になっていました。

何よりも感動したのが「声」。宝塚の男役を思わせるようないつもより低めのトーンの声で発せられる台詞は耳に心地よく、それでいて心にも響いて、一瞬で虜になりました。ビジュアルも強くて(回想シーンの黒髪が特に)、韓ミュの『海賊』に出て!!Love at First Sightして!!!と心の中でうちわを振りました。

 

BTTFも楽しみですね😆⚡️

 

【スコット・シュワルツ×劇団四季関連】

劇団四季関連】