Mind Palaceがない代わりに

ミュージカル観劇レポの保管庫です

【随時更新】トニー賞 パフォーマンスまとめ

録画見返す時用。公式動画はThe Hollywood Reporterしか上げてないっぽいし全部は上がってない

77th Tony Awards (2024)

1. Opening 

  • Ariana Debose - This Party's For You

2. Hell's Kitchen

  • The Gospel(Maleah Joi Moon & Company)
  • Authors of Forever(Kecia Lewis & Maleah Joi Moon)
  • Falling(Brandon Victor Dixon & Shoshana Bean)
  • Empire State of Mind (Part II) Broken Down(Company)
  • Empire State of MindAlicia Keys & Maleah Joi Moon & Jay-Z

3. The Who's Tommy

  • See Me, Feel Me(Ali Louis Bourzgui & Aliah James)
  • Pinball Wizard(Ali Louis Bourzgui & Local Lads & Company with Pete Townshend)

4. Merrily We Roll Along

  • Second Transition(Company)
  • Old Friends(Jonathan Groff & Daniel Radcliffe & Lindsay Mendez

5. Water for Elephants

  • Anywhere/Another Train(Grant Gustin & Stan Brown & Wade McCollum & Company)
  • The Road Don't Make You Young(Company)

6. Illinoise

  • The Predatory Wasp of the Palisades Is Out to Get Us!(Company)

7. Stereophonic

  • Masquerade(Will Brill & Juliana Canfield & Eli Gelb & Sarah Pidgeon & more)

8. Cabaret at the Kit Kat Club

  • Wilkommen(Eddie Redmayne & Company)

9. Special tribute to Chita Rivera

  • Spanish Rose - Bye Bye Birdie
  • All That Jazz - Chicago
  • Sweet Charity
  • Kiss of the Spider Woman
  • Amrica - West Side Story

10.  Suffs

  • Keep Marching(Shaina Taub & Nikki M. James & Company)

11. The Outsiders

  • Tulsa '67(Brody Grant & Sky Lakota-Lynch & Company)
  • Grease Got a Hold(Joshua Boone & Jason Schmidt & Daryl Tofa & Brent Comer & Greasers)
  • The Rumble(Company)

12. In Memoriam

  • What I Did for Love - A Chorus Line(Nicole Scherzinger

 

WOWOWスタジオ中継

1. ノミネート作品メドレー

  • Willkommen - Cabaret井上芳雄
  • Old Friends -- Like It Was - Merrily We Roll Along(宮澤エマ&井上芳雄
  • The Power of Love - Back to the Future: The Musical(宮澤&井上)
  • Empire State of Mind - Hell's Kitchen(宮澤&井上)

2. Electricity -『ビリー・エリオットリトル・ダンサー~』(春山嘉夢一ビリー&渡邉隼人マイケル)

 

76th Tony Awards (2023)

1. Opening

  • Ariana DeBose(Choreographed by Karla Puno Garcia)

2. New York, New York

  • Cheering for Me Now(Company)
  • New York, New York(Anna Uzele & Company)

3. Camelot 

  • C'est Moi(Jordan Donica)
  • The Lusty Month of May(Phillipa Soo & Company)
  • If Ever I Would Leave You(Jordan Donica)
  • Camelot (Reprise)(Andrew Burnap)

4. & Juliet

  • Roar(Lorna Courtney & Company)

5. Some Like It Hot

  • Some Like It Hot(NaTasha Yvette Williams  & Adrianna Hicks & J. Harrison Ghee & Company)

6. Into the Woods

7. Tribute to Lifetime Achievement Award winners Joel Grey and John Kander

  • Hot Honey Rag - Chicago(Ariana DeBose & Julianne Hough)

8. Parade

  • This Is Not Over Yet(Ben Platt & Micaela Diamond)

9. Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street

  • The Ballad of Sweeney Todd(Josh Groban & Annaleigh Ashford & Company)

10. A Beautiful Noise

  • Sweet Caroline(Will Swenson & Company)

11. In Memoriam

12. Kimberly Akimbo

  • Anagram(Victoria Clark & Justin Cooley & Company)

13. Shucked

  • Corn(Ashley D. Kelley & Grey Henson & Company)
  • Independently Owned(Alex Newell)
  • Somebody Will(Andrew Durand & Company)
  • Woman of the World(Caroline Innerbichler & Company)

14. Funny Girl

  • Don’t Rain On My Parade(Lea Michele & Company)

 

75th Tony Awards(2022)

1. Act One

  • Set the Stage(Darren Criss and Julianne Hough)
  • Mame - MAME(New York City Gay Men's Chorus)

2. Opening

  • This Is Your Round Of Applause(Ariana DeBose)

3. The Music Man

  • Seventy-Six Trombones(Hugh Jackman & Company)

4. MJ The Musical

  • Smooth Criminal(Myles Frost & Company)

5. Mr. Saturday Night

  • Stick Around(Shoshana Bean, Randy Graff, Billy Crystal, Chasten Harmon & Company)
  • Buddy's First Act(Billy Crystal, Randy Graff & David Paymer)

6. Company

  •  Company(Katrina Lenk & Company)

7. Girl from the North Country

  • Like a Rolling Stone(Mare Winningham & Company)
  • Pressing On(Jeannette Bayardelle & Company)

8. Stephen Sondheim Tribute

9. A Strange Loop

  • Intermission Song(Jaquel Spivey & Company)
  • Today(Jaquel Spivey & Company)

10. Spring Awakening Tribute

  • Touch Me(Original Cast of Spring Awakening

11. Paradise Square

  • Paradise Square(Joaquina Kalukango, Chilina Kennedy, Matt Bogart, Nathaniel Stampley & Company)
  • Let It Burn(Joaquina Kalukango)

12. In Memoriam

  • On the Street Where You Live - My Fair Lady(Billy Porter)

13. SIX

  • Ex-Wives(Adrianna Hicks, 

    Andrea Macasaet, Mallory Maedke(Dance Captain & Alternate), Brittney Mack, Samantha Pauly, Anna Uzele)

  • SIX(same cast)

14. Closing

  • This Is Your Round of Applause (Reprise)(Ariana DeBose)

 

掘って耕す ミュージカル『この世界の片隅に』5/18 S 感想

見てきました「片隅ミュ(かたすみゅ)」!

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作品・公演概要

ミュージカル『この世界の片隅に ※初演

原作: こうの史代の漫画『この世界の片隅に』(2007〜09年『漫画アクション』で連載)
音楽: アンジェラ・アキ
脚本・演出: 上田一豪
劇場: 日生劇場

公演に先駆けて、アンジェラさんは今年2月7日にデジタルシングルとして劇中歌「この世界のあちこちに」をリリース。4月24日にはアルバム『アンジェラ・アキ sings 「この世界の片隅に」』をリリースし、周作役の海宝直人さんが参加しています。

NHKラジオ『ウエンツ瑛士×甲斐翔真の妄想ミュージカル研究所』での情報によると、1年前からワークショップが開催されており、その時には既に楽曲が出来上がっていたとのこと。他の日本オリジナルミュージカルに比べると、だいぶ早めにある程度形になっていたようです。

早めから製作→楽曲の先行リリースという流れを日本オリジナル作品の初演で行えたのは、新規客層の呼び込みを目指す上で良い選択だったと思います。どれほど効果が出たかはわかりませんが、少なくとも非ミュージカルファン層は得体の知れないものにポンとお金は出さないと思うので。情報は多い方がいいと思います👍

 

キャスト

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浦野すず: 昆夏美
北條周作: 海宝直人
白木リン: 平野綾
水原哲: 小野塚勇人
浦野すみ: 小向なる
黒村径子: 音月桂
すずの幼少期: 嶋瀬晴
黒村晴美: 鞘琉那

白木美貴子
川口竜也
加藤潤一

+アンサンブル 14人

 

作品感想

原作は未読で、今月に入ってから、予習がてらアニメ映画の『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を鑑賞しました。

通常版と「さらいくつもの」どちらも見た友人によると、後者でフィーチャーされている白木リンのエピソードが通常版にはほとんどないそうです。ミュージカル版にはリンさんがしっかり出てくるので予習をしたい方には「さらにいくつもの」を見た方が良いかも。

さて、前置きが長くなりましたが作品の感想に入ります。

観劇後に抱いた率直な感想は「わるくない。わるくないけれど、なんだろう...?」。自分の気持ちを言語化して整理しつつ、日本オリジナルミュージカルの初演ということでレビューっぽく書いていきます。


音楽

作品のタッチと本質を捉えた音楽

音楽はやわらかく、心にすっと入ってくるような穏やかな音色が、漫画やアニメの温かみのあるタッチや瀬戸内海の雰囲気に合っていました。

この世界の片隅に』は第二次世界大戦時の広島県が舞台ということで重く悲しい題材を描くものの、地に足をつけて生きる人々の暮らしに焦点を当てた物語になっています。だからこそ、ほのぼのした場面やほっこりする場面も多く、そのギャップに大きな魅力があります。

こうした作品の魅力が、ミュージカル版では楽曲によってしっかりと表現されていました。特にそれを感じたのは防空壕を掘る場面。防空壕を掘るのは重労働ですし、掘らねばならぬような状況にあるのも辛いはずですが、この場面の音楽はポップで、しかもコミカルな踊りまでついています。

片隅ミュには派手な歌い上げのナンバーがあまりありません。それらしいのはすずさんの「端っこ」と径子の「自由の色」くらい。グランドミュージカルで活躍するキャストを揃えているので、ビッグナンバーを期待してしまう自分もいますが、作品の題材的にはなくて良かったと思っています。海宝さんが事前に歌っていた「言葉にできない」というソロ曲もカットになったようで、キャストの見せ場よりも作品の出来を優先していることがうかがえます。

 

J-POPらしさも"ミュージカル"らしさもある

楽曲はシンガーソングライターとして日本のポップシーンで活躍していたアンジェラ・アキさんが担当しています。「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」からストーリー性のある歌詞を書かれる方というイメージを持っていたので、ミュージカル作曲家になるために留学をするという情報を見て楽しみにしてきました。

片隅ミュの口ずさみやすく、耳当たりの良いメロディアスな主旋律はアンジェラさんのJ-POPでのキャリアからきたものだろうと思います。作品冒頭ではキャストの方々の歌い方にもポップスっぽい軽さがあって不安を感じたものの、昆さんを筆頭に作品が進むごとに感情が乗った「ミュージカル歌唱」になっていって良かったです。

メロディはJ-POPらしいのですが、その活用や楽曲の構成はすごく「ミュージカル」でした。モチーフの反復やリプライズの使い方も上手くて、きちんと分析したらきっとたくさんの気づきがあるだろうなと思います。

これまで何作品か日本の作曲家のミュージカルを見て来て、私は「J-POPっぽさ」を作品への没入を阻むマイナスな要素として捉えて来たのですが、こうして緻密な構成と作品内容に寄り添った歌唱スタイルと一緒になれば、魅力になるのだと気づくことができました。

 

脚本

脚本については腑に落ちないところがありました。1番は...

時系列を前後させたのはなぜ?

片隅ミュは大人になったすずさんの語りで始まり、そのすぐあとに彼女が右手を失い、伏せっている場面が続きます。そして右手を失う前のエピソードは、布団にいるすずさんと周作さん、すずさんとすみちゃんの会話を通した回想シーンとして位置付けられています。

この時間の行ったり来たりがなかなか激しくて、時系列がすごくわかりづらかったです。観劇直前に映画を見ていた私でもそう感じたので、この物語に初めて挑む人はもっと混乱したのではと思います。一応「昭和○○年○月」といった説明はあるものの、音声情報だけでは時系列の整理にあまり役立ちません。

とはいえ、時系列順にエピソードを並べたとすると「1幕に山場がない」という問題が発生すると思います。難しい問題です。これは漫画・アニメ原作ミュージカルの課題として私が頻繁に考えるポイントでもあります。

片隅ミュはこの問題を意識して乗り越えようとしたんじゃないかと思います。1幕冒頭の晴美ちゃんの未来を予感させる場面であったり、効果的に感じる時間の行き来もあった(後の展開を私が知っているから感情が高まったのかもしれないけれど)ので、必要最低限の行き来に抑えられたら良かったのかもなとも。

時系列の組み替えって、頭の中でバチっと繋がると感動が大きいけれど、1回の鑑賞でそれを起こそうとすると結構難しいですよね。

 

山場が「三角関係」でいいのか?

作品の情報解禁時に東宝公式が発表した「すずと周作と三角関係になる白木リン」という文言の『三角関係』の部分について、疑問の声が上がったのを覚えています。

私はそのときまだこの作品に触れたことがなかったので詳細はわかりませんでしたが、アニメ映画を見て「確かに『三角関係』というワードはちょっと引っかかるかもな」と思いました。リンさんのエピソードを三者による恋愛模様ではなく、すずさんとリンさん、2人の関係性の構築として私は受け取ったからです。

片隅ミュの1幕終わりは、すずさんとリンさんがお互いに相手と周作さんの関係を理解して、不穏な音楽が流れる中で対峙する場面です。ここに来て私はまさに「解釈違い」を起こしました。

もちろん片隅ミュでもお花見の場面を筆頭にすずさんとリンさんが心を通わせる素敵な場面はあるのですが、作品の大きな見せ場、ものによっては核ともなるような1幕の締めくくりが2人の対立を煽るようなものだったのには疑問が残ります。

 

演出・美術

ノートを開いたような和紙らしい質感のセットにすずさんの描いた絵が映し出され、その中をすずさんの出会った人たちが動くというのは「記憶の器として生きる」という物語のテーマとも合っていると感じました。

爆撃の描き方

見せ方の面で気になったのが、呉への空襲と広島への原爆投下の場面。意図したのかそうでないのかはわかりませんが、こうした「攻撃」の場面の演出は思ったよりも控えめでした。

実際にたくさんの死傷者を出した爆撃を派手な効果で盛り立てると、戦争を「エンタメ」として消費することになってしまうのかも、と考えたり、でももう少し緊迫感は出した方が作品としては締まるよな、と思ったり。劇場がもう少し小さかったからまた違った印象を受けるかもなとも考えたりしました。

 

舞台化・ミュージカル化の意義

生身の人間としての「白木リン」

私は生身の人間として白木リンが存在する「えぐみ」に舞台化の意義を強く感じました。アニメ映画では、かわいらしいタッチのイラストの効果でリンさんの境遇がマイルドになっていましたが、平野綾さんが目の前でリンさんを演じることで、貧しい生まれで(恐らく)娼館に売られ、火に包まれて亡くなった、そんな女性が「いたんだ」と心にずっしりきました。

リンさんがすずさんにスイカを分けてもらった日のことを繰り返し繰り返し歌うのも良かったです。幼き日に触れた優しさを胸に死にゆく日を想う姿は切なく、そして美しかったです。ナンバーのお陰でリンさんの心情が作品の核に明確に結びついていたように思います。

 

ミュージカル化の難点

音楽のところで「ビッグナンバーがない」ということを書きました。それは描く題材や作品の雰囲気からも思ったことですが、最終盤に径子が歌う「自由の色」を聴きながら改めて感じました。

このナンバーが歌われるのは作品の「結末」にあたるような場面で、ナンバーそのものの良さと音月桂さんの歌唱のエネルギーによってとても「ミュージカル的」に仕上がっていました。この場面をビッグナンバーにするのはミュージカル化においては「正解ど真ん中」なんだろうなとも思いました。

ただ、原作の(私は映画しか見ていませんが)台詞が情報の過不足なく、そして心を惹きつけるものであるがゆえに、歌という表現が素晴らしい場面を間延びさせてしまっているような感覚もありました。これは言葉や台詞に特徴のある(というか言葉や台詞が優れている)作品をミュージカル化するにあたっての難しいポイントなのかもしれないなと思います。

 

キャスト感想

皆さんパフォーマンスが素晴らしくて見応えがありました。気になるとすれば、歌が上手い人は饒舌に見えちゃうってところかな😂 

↑稽古場映像がちょうど昆×海宝×平野パターンでした🙏

昆すず

愛する昆ちゃん。いつだってミュージカルが上手い。私がこれまでに見た役では怒っていたり絶望していたり、控えめな役でもテンション自体はハイってことが多かったので、おっとりしたお芝居は新鮮でした。

のんさんの声のイメージが頭の中にしっかりあって最初はだいぶ混乱してしまった(四季の『アナと雪の女王』見た時も似たことが起きた)ものの、豊かな感情表現、アニメとの差異にはやっぱり「あの時代を生きた1人の女性」の実存感があって良かったです。

 

海宝周作

映画を見ながら、周作さんと海宝さんはちょっとビジュの雰囲気が近いな〜と思っておりました。どうしても海宝さんを見るとエキセントリックな音程の派手ソングを聴きたくなりますが、役には合っていたように思います!

昆ちゃんとのデュエットはやっぱり絶品。そして海昆ラバーとしては2人が喧嘩デュエット始めると盛りあがっちゃいます!いいぞ、もっとやれ!!

 

平野リン

平野綾ちゃんに白木リンをキャスティングした方!天才!!!!このミュージカルの1番のブッ刺さりポイントはここでした。完璧キャスティングすぎる。リンさんの魅力がこれでもかと表現されていました。

 

音月桂さんの径子も歌・お芝居共に素晴らしくて作品全体の魅力を底上げしていると感じたし、初めて拝見した小野塚さんの水原、小向さんのすみちゃんも声色でのキャラクター表現が巧みで感動しました。「思いがけず海軍(陸軍)の秘密に触れてしもた😆」とキャ😆のところ、2人ともほんとにこの絵文字みたいに目がくの字になっていて可愛すぎました〜🫶

 

本編の感想ではないけれど・・・

このプロダクションは、日本のクリエイターが日本語で日本を描くというまだまだ日本のミュージカル界で発展していない部分を「耕す」ようなものだったように思います。

この作品は最近の漫画・アニメ原作グランドミュージカルの流れに乗るものなのだけど、ミュージカル界隈各社が口を揃えて言う「新規客層の開拓」とは違う狙いがあったと思いたいです。

というのも『この世界の片隅に』の熱狂的なファンってあんまり見たことがなくて、どちらかというと多くの人に広く愛される良作のように見えます。その分原作ファンの獲得は難しい。そして公演序盤の売れ行きからもわかるように「日本オリジナル×日本が舞台」はミュージカルファンの手も他のグランドミュージカルほどは伸びにくかった感じがします。

それを分かった上で、きっちり時間をかけてワークショップをして、CDを出して、ブラッシュアップして、上演できたということを考えるとなんだかすごいことをやっている気がします。こういう道のりを経て、日本の観客が心を寄せられる大ヒット和ミュージカルが生まれいくんだろうと思います。

 

CROSS ROAD』『ゴースト&レディ』『この世界の片隅に』と今春は日本オリジナルミュージカル三昧でしたね!

 

【昆ちゃん関連】

 

【海宝さん関連】

 

平野綾ちゃん関連】

 

100年越しの初演に立ち会う『ゴースト&レディ』5/6 M 初日 感想

運良く抽選に当たりまして、初日に見てきました👻

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ちなみに皆さん、『ゴースト&レディ』の略称はどうしてます?私は「ゴスレ」で馴染んできたのでそれでいこうかなと思ってます!

作品・公演概要

ミュージカル『ゴースト&レディ』 ※初演
原作: 藤田和日郎による漫画『黒博物館 ゴーストアンドレディ
作曲・編曲: 富貴晴美
脚本・歌詞: 高橋知伽江
演出: Scott Schwartz(スコット・シュワルツ)
劇場: JR東日本四季劇場[秋]

原作者の藤田さんのTwitterから、四季と密に連携できていそうな雰囲気が感じ取れていたので安心していましたが、劇場にもアート作品の寄贈展示があったりして、良い関係が築けているんだろうな〜と思いました🙆‍♀️

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原作絵のパネルもありました。

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キャスト

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フロー: 谷原志音
グレイ: 萩原隆匡
ジョン・ホール: 瀧山久志
デオン・ド・ボーモン: 岡村美南
アレックス・モートン: ぺ ジェヨン
エイミー: 木村奏絵
ウィリアム・ラッセル: 内田圭
ボブ: 平田了祐

+アンサンブル 18人

 

作品感想(レビュー寄り)

原作未見かつ事前情報も見ない&読まないほぼ真っ新な状態で観劇してきました。初演作品の初日特有をわくわく感と緊張感を味わうのはすごく久しぶり(多分、FONSぶり?)。

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1幕があまり刺さらなくて「うーん」と思っていましたが、2幕は怒涛の追い上げで一気に引き込まれました。面白かったです!

作品の魅力は特に演出や照明といった見せ方の部分と愛着の湧くキャラクターにあったと思います。これまで見てきた漫画原作作品に比べて駆け足感や「出来事の羅列」感が薄かったのも良かったです。(今回は新作なのでいつもより批評っぽく書いてみようと思います)

 

演出・照明

舞台に「ゴースト」を出現させる演劇のイリュージョン

今作は、客電が落ちて暗転したところに上手からライトが持ち込まれ、それが鬼火となって漂った先にゴーストのグレイが出現する場面から始まります。暗いところに照明が当たって、何もないところからグレイが現れたように感じる簡単なトリックですが、これは「ゴースト」を舞台上に存在させるための1つ目のイリュージョンです。

浮遊するゴーストが登場するということで、今作には多くのイリュージョンが取り入れられています。その1つ1つも面白いのですが、これらのイリュージョンが作品の冒頭付近に多く見られ、最終盤の大掛かりなフライングアクションを除き、作品の中〜後半では鳴りを顰めるのも面白いと感じました。

作品冒頭ではグレイが馬車から空へと飛び出していくフライング、屋外から家の中への壁の通り抜けといった表現が取られます。対して中〜後半では、グレイが舞台袖から普通に歩いて登場して、歩いて捌けていくシーンが多くなります。

これができるのは、作品前半の複数のイリュージョンでグレイ=ゴーストの認識をしっかり作れているおかげで、私はそこに演劇の面白さを感じました。

 

新たなゴースト(というよりかは魂)が出てくる場面では、再びそれがこの世ならざる者であることを表すために丁寧な表現が取られます。

フローたちが介抱していた兵士が死の淵に差し掛かると、彼らの魂はベッドに寝ている肉体から離れて、舞台袖から差し込む光の方へと歩いていきます。

この場面では某双子芸人の「幽体離脱」ネタがチラついて一瞬笑いそうになりましたが、暗い舞台に差し込む光とそこに歩みを進める魂がとても美しいおかげで舞台から意識が離れずにすみます。

 

過去回想の凝った演出

グレイの過去パートの見せ方も魅力的でした。幼少期〜青年期は『ウィキッド』の「水に溶けるエルファバ」よろしく、布の後ろで演じる役者に背後から照明を当てて影絵のように描かれます。(話は逸れますが、フライングアクションには『リトル・マーメイド』を、回想シーンは全体的な雰囲気に『ノートルダムの鐘』(シュワルツ演出)も感じて、これまでの上演のノウハウが活かされているのかもしれないとも思いました。)

成長したグレイがロンドンへと飛び出す場面になると、布の真ん中から青年グレイを演じる役者が飛び出してきてグレイが影絵から実態になり、布も取り払われて劇場のセットが現れます。影絵が始まる前は布が他のセットに引っかかってもたついていましたが、劇場が現れる転換は見事で息を呑みました。

青年グレイが着ていたジャケットを現在のグレイに渡し、それを現在のグレイが着ることで回想シーンの主役がバトンタッチするのも楽しく、その後の剣術シーンまで見応えがあります。

 

題材・脚本・音楽

漫画原作を感じる「強い」キャラクター

1幕のストーリー展開にあまり魅力を感じなかった私を一気に作品の世界に引き込んだのは、1幕を締めくくる、敵役のゴースト、デオンの登場でした。

それはもちろん岡村美南さんのパフォーマンスやビジュアルに魅了されたからでもあります(詳しくは後半のキャスト感想に書きます🫶)が、属性てんこ盛りの強烈なキャラクターの登場は刺激的でした。登場シーンだけで1幕を閉められるような個性的なキャラクターを0から生み出すのはとても難しいと思うので、漫画原作の強みも感じます。

また、デオンの登場でゴースト同士の会話という新たな次元が物語に加わり、その中で明らかになる彼らの過去や想いを知ることでゴーストという存在により一層愛着が湧きます。

 

難所を補えていない音楽

1幕で描かれる、自らの信念を貫いてクリミアで活躍するフローとあれこれぼやきながらフローに付いていくグレイも愛おしくは感じます。ただ、ナイチンゲールの伝記的な要素が主軸の展開になるため、キャラクター間の関係性を楽しんだり、感情移入したりするにはやや物足りません。フローの置かれた状況を説明するために不可欠な要素ばかりなのはわかりますが、物語としての盛り上がりには欠けます。それから、ヴィラン的立ち位置のジョン・ホール周りについてはキャラクターもエピソードも「弱い」と感じました。アレックス&エイミーのところも表現方法によってはもっと面白く(絶望的に)なりそうだと思ったので、全体的に「人間パートが弱い」と言えます。

今作はミュージカルなので、ナンバーによって感情を盛り上げることができるかもしれません。でも1幕のナンバーはそこまでのパワーを持っていなかったように思います。

今作の楽曲はオーケストラ部分(伴奏という言い方でいいのか?)の魅力が強く、音源なのが勿体無いと感じるほどでした。けれどもナンバーのメロディはキャッチーではなく、あまり印象に残りません。歌詞についても、歌い手の感情が見えにくかったように思います。

物語が大きく動いていく2幕のナンバーには、絶望したフローによる激しいソロ歌唱曲を筆頭に感情を揺さぶられました。

 

中編の完結作品を選んで漫画原作の課題をスキップ

原作漫画の『黒博物館 ゴーストアンドレディ』は全2巻の作品。完結済みの中編作品を原作に持ってきたのが成功のカギだったと思います。

最近は漫画・アニメ原作のグランドミュージカルがたくさん製作されています。私も何作品か観劇しています。その時に感じたのが、何百話、何十巻にも渡るような長いストーリーを2時間半〜3時間に詰め込もうとしたことによる駆け足感や「出来事の羅列」感(感情や関係性よりもエピソードを盛り込むことが優先される)です。『SPY×FAMILY』のように連載が続いている作品では、ストーリーの着地点を用意するのにも苦労していたように思います。

『ゴースト&レディ』は、原作を選んだ段階でこのような漫画原作グランドミュージカルの課題をある程度スキップできています。

 

キャスト感想

谷原フロー

ずっと拝見したかった志音さんのパフォーマンスをついに、このタイミングで見られました!1幕はソプラノ寄りの音域が多くて「ビジュも声も美しいな〜」くらいだったのですが、2幕での業がゴリゴリに乗っかった絶唱で完全にノックアウトでした。最高。

フローの意志の強さが歌声で完璧に表現されているし、お芝居の端々にそれが「頑固さ」や「したたかさ」のような形で表れるのも見ていて楽しかったです。グレイとやり取りしている時の口角がたまらん。志音エビータを私にも見せてください・・・お願いします劇団四季様。

 

萩原グレイ

人間には到底できないことができる上位存在的なゴーストとして登場してから、フローとの掛け合いやデオンの登場による過去の暴露によって徐々に弱みが出て前に出てきて人間臭くなっていくお芝居が素晴らしかったです。愛おしくてたまらなかったです。「100年も経っちまった〜」の言い方、あれはほんとうにずるい!!かっこよすぎました!!!

そして、メイン2人の進む先が恋愛関係だとは思いもせずに見ていて1幕終盤あたりから「え?そういうこと?」と『ダディ・ロング・レッグズ』ぶりにざわざわした私でした笑 普段は恋愛じゃなくてもいいじゃん!と思いがちですが、ゴスレに関してはフローとグレイのもだもだがやたらかわいかったので恋愛要素も楽しかったです。やたら長いカテコも(なんとかしてほしいことに変わりはないが)、2人のハグとハート🫶ではわわ🥺✨ってなってました。

 

岡村デオン

舞台にいる間は常にオペラグラスで追いかけたくなるし、終演後は「美南様・・・」しか言えない妖怪になりました。かっこよすぎるよ!!!

こちらに稽古場写真があります。やば!!!踏んでる踏んでる!!!

男装をして生きてきた決闘代理人、死んだら女の姿のゴーストに、一人称は「僕」、納得できる「終わり」を求めている。デオンは設定からして属性てんこ盛りの強烈なキャラクターなのですが、そこに美南さんのパフォーマンスがかけ合わさってとんでもない魅力になっていました。

何よりも感動したのが「声」。宝塚の男役を思わせるようないつもより低めのトーンの声で発せられる台詞は耳に心地よく、それでいて心にも響いて、一瞬で虜になりました。ビジュアルも強くて(回想シーンの黒髪が特に)、韓ミュの『海賊』に出て!!Love at First Sightして!!!と心の中でうちわを振りました。

 

BTTFも楽しみですね😆⚡️

 

【スコット・シュワルツ×劇団四季関連】

劇団四季関連】

踊るヴァイオリニストと圧倒的な音楽の悪魔『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』4/28 M 感想

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2年前の初演時から気になっていたクロスロードに、気になり続けていた木内くんが出るということで行ってまいりました😈🎻

作品・公演概要

ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』
原作: 2012年初演の朗読劇『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』
原作・脚本・詞: 藤沢文翁
音楽: 村中俊之
編曲: 江草啓太
演出: 末永陽一
初演: 2022年 東京

劇場: シアタークリエ

 

キャスト

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アムドゥスキアス: 中川晃教
ニコロ・パガニーニ: 木内健人
アーシャ: 加藤梨里香
エリザ・ボナパルト元榮菜摘
コスタ/エクトル・ベルリオーズ: 坂元健児
アルマンド: 山寺宏一
テレーザ: 春野寿美礼
+アンサンブル 10名

 

作品感想

魅力を感じたところ

自分が天才でないとわかってしまう程度に才能のある青年ニコロが十字路の悪魔との契約により天才ヴァイオリニスト パガニーニになる物語。悪魔との契約に縛られ、世間からは称賛と憎悪を好き勝手に浴びせかけられたパガニーニが、それでもなお彼から離れない人たちとの関係を通して自分の道を選び取る姿が輝かしかったです。


序盤のニコロの苦悩には「才能を見極めるだけの才能」の話をしていた『ロックオペラ モーツァルト』のサリエリを思い出しました。芸術家が題材の作品でこの話が出てくると胃がキュッとなります。

 

今作でパガニーニと音楽の悪魔(初演時から皆さんが呼んでいた「アムちゃん」が可愛いと思うので私もそう呼びます)を取り巻く人物は主に、パガニーニを悪魔と捉えて攻撃したり蔑んだりする人々とパガニーニを1人の人間として愛する人々に分けられると思います。そして物語は「人間としてのパガニーニ」が輝く方向へ進む(コンサートでのテレーザとアムちゃんの応酬や100万曲目にそれがよく表れている)わけですが、それでもやっぱり「パガニーニは悪魔と契約している」という事実がベースにあるのが面白いと感じました。

パガニーニは「人間」として愛されるけど、彼は「(悪魔と契約した)人間」である。この物語には十字路で立ち止まり、悪魔と契約してしまった者も人間として愛すべきだと言い切る包容力がある気がします。パガニーニはアムちゃんとアーシャの間に入って取引を防ぎ、彼女に「十字路で立ち止まるな。お前の道は真っ直ぐだからそのまま走れ」と言うけれど、例えアーシャが十字路で止まったとしてもそのままのアーシャをこの物語は愛するんじゃないかなとも思います。パガニーニは「行こうか、地獄へ」と言いつつ最終的に階段を登る=天国へ行きましたしね。


そして作品の根幹となるアムちゃんが、どこまでも中川さん(以下あっきーさん)ロールなのも良かったです。キャスト感想はまた後ほど書きますが、音楽の悪魔が説得力をもって舞台上に存在するためにはあの音域、あの歌声、あの自由さが必要不可欠だったと思います。

 

腑に落ちないところ

見どころがたくさんあって楽しく観劇しましたが、ところどころ腑に落ちないところもありました。

 

まず、パガニーニの性格の一貫性が弱いように感じました。彼の表に出す/出さない性格自体が多面的かつ接する相手によって変わってくるというのはありますが、シーンごとに性格や態度がころころ変わりすぎる気がします。具体的な場面をあげるのは難しいものの、一緒に観劇していた友人もこの点について気になると言っていました。

登場人物の性格の一貫性に違和感があるとき、私は役者の責任にしがちなのですが、今回に関してはなんとなく戯曲の側にこの違和感の正体がある気がしています。「この場面があるからこの台詞が苦しい」みたいな、情緒の伏線やそれにより起こる感情の波も、題材とエピソードが良い分もっと作れるんじゃ・・・と思いますし、結末の光が強い分中盤でもっとどん底に叩き落とされたいとも思います。


それから気になったのがエリザに関するパート。アムちゃんはエリザを「魔性の女、ファムファタール。お前がこの男を堕落させた」と言うけれど私にはそうは思えませんでした。そもそもパガニーニは堕落しているのか?確かにギャンブルと酒が好きな様子はあるもののあまり深刻そうに見えませんでした。ストラディバリウスをすった話が出るのはアーシャとのややコミカルな場面ですし。

エリザが自ら言うように、パガニーニを死に追いやったという意味でなら理解はできます。エリザが仕事を取ってくるとパガニーニが演奏して寿命を縮めるということですよね。でもエリザに出会わなかったとしてもパガニーニは勝手に演奏して寿命を減らしていっただろうとも思えてしまいます。パガニーニ→エリザの感情もフィーチャーされない分、ここの2人の関係でなかなか感情が動いてこなかったです。

 

100万曲目について

パガニーニが「母の曲≒母のための曲」を演奏する

→アムちゃんはそれが「母のための曲」だと気が付かずに100万曲目として受理&契約終了

→アーシャに指摘されて100万曲目に「アムちゃんのため」でない曲が混ざったと知る

→契約が終了しているので「アムちゃんのため」以外で演奏したら周りの人間を苦しめるという脅しも実行に移せない

パガニーニは音楽のために命を売り渡し、アムちゃんは契約違反の音楽を楽しんでしまった→「人も悪魔も音楽の奴隷だ」

になるのかなと受け取りましたが、それで合っているのかはわかりません😂 お芝居の熱に乗せられて流されるまま「逆転」の高揚感に沸いちゃったけれど、終演後は「こういうこと・・・だよな?」とちょっと不安になりました。

 

超絶技巧の演奏を舞台でどう見せるか

今作ではヴァイオリンの演奏を弾き真似×ダンスで表現しています。これがミュージカル表現としては「全然あり」なのですが、作品序盤はなかなか慣れなくて違和感がありました。受け入れてしまえば、木内くんのダンスも綺麗なので楽しめます。

2022年の年始にクリエでヴァスコ・ヴァッシレフさんによる超絶技巧の24 Caprices for Solo Violinを聴いたときの記憶が鮮やかに残っているのも原因な気がします。パガニーニが楽器を構えると「聴きたい!」と思ってしまうんですよね。でもあまり弾き真似を長くしても滑稽だし、インスト曲を足しすぎると作品のテンポに影響しますしね。なくていいとも思います。

作曲家や楽器奏者をミュージカルの題材とする場合、演奏シーンをどう描くかは大きな課題なんだと思います。これまで見た作品がどうだったか思い出しながら今後も注視していきたい項目です。

 

キャスト感想

中川アムドゥスキアス

原作の朗読劇を全く知らない私ですが、当て書きにしか思えませんでした😂 楽曲は確実に当て書きですよね〜!1曲目からファルセットフル活用の全編女声キーはあっきーさん以外にできる人が思いつきません!凄まじい音域と多彩な歌声は人外の表現として大大大正解だと思います。

独特のテンポ感の台詞回しや自由気ままな振舞い、コロコロ変わる表情と声のトーンは「良い者」でも「悪い者」でもない(もしくはどちらでもある)、人間の感性に縛られない別次元の存在としての説得力がありました。パガニーニにジャケットを着せて身なりを整えてあげる場面で「ふんふん」言いながら気の済むまで整えるのをやめない感じとか、すごく人外っぽかったです。

 

木内パガニーニ

木内くんは2021年のレミゼでなぜか縁がなくてアンジョを見られず、見てきた友人が絶賛しているのを見て「来期こそ!」と思っているところに『ガイズ&ドールズ』があったけれど役柄的にあまりお芝居と歌を知ることができず・・・というところでやっと!しっかり拝見できました。

【公開当日追記】待って大嘘!スパミュで見てた!ソロはなかったしキャラ強めのモジャだったけど!!!

初めて見た木内くんは「ダンスの人」という噂通り、踊りも素敵でした。手足のポジションがきっちりしていて指先足先まで意識が感じられる綺麗な踊り方でした。振付の雰囲気とロングのウィッグが相まって宝塚の男役みも感じました。歌も丁寧なのですが、私は感情が歌を追い越しそうになるギリギリを攻める方々が好きなので、もうちょっと感情的に歌ってほしいな〜と思いました。声質などは好みなのでこれからも色んな役を聴いてみたいです。

ケンニティーニは全体的に可愛らしかったです。ジェノヴァでの内気な青年のイメージが強かったので、成功してからの横柄な態度も背伸びのように感じられました。教会での演奏場面での不適な笑み、アルマンドを困らせるときの悪戯な笑み、刺さりました。アーシャにぶん投げられ芸はダイナミックすぎて一瞬心配になりました😂 ナイスぶん投げられ!後半のベルリオーズやアーシャを助ける場面では「なんて光が似合う人なんだ!」と思いました。そうかいこの人がアンジョをやってたのか・・・来期続投ほんとに頼みますね。

そして階段で後ろから光を浴びながら振り返る姿を見て、邪な私には「木内アンリ」が見えてしまいました。ぜっっっっったい似合う。コットンクラブで君夢も歌ってるんですよね(動画に載ってた一部だけ何度も見てます😂)。帰宅してから「僕には親がいない〜」のところとかもシュミレーションしてしまいます。

 

加藤アーシャ

元気いっぱいで、真っ直ぐにパガニーニを見つめるリリーシャ。愛と生命力に溢れていて「これはパガニーニ先生も絆されますわ☺️」とほっこりしました。

梨里香ちゃんの歌声は今作でも冴え渡っていて素晴らしかったです。本当にかわいい声!そして上手い!!高い音まで美しくて大好きです。

 

他のキャストの方々もみんな役にハマっていて良かったです。特に春野寿美礼さんのテレーザにはお芝居でも歌でも心を掴まれました。カーサ・ノスタルジア😌✨

 

 

【作曲家ミュージカル関連】

 

 

【あっきー関連】

日本における『SIX: The Musical』の展開(随時更新)

ミュージカル『SIX』日本公演が発表されて「波」が来ている感じがあるので、日本での展開の様子を記録してみることにしました。来年の1月が待ちきれません!!

SIX: LIVE ON OPENING NIGHT (Original Broadway Cast Recording)

SIX: LIVE ON OPENING NIGHT (Original Broadway Cast Recording)

  • SIX, Toby Marlow, Lucy Moss, Adrianna Hicks, Andrea Macasaet & Brittney Mack
  • ミュージカル
  • ¥1681

 

  1. 清水美依紗I Don't Need Your Loveの歌唱動画をTwitterで公開(2023/04/04)
  2. 平野綾:《AYA HIRANO 2nd Billboard Live TOUR 2023 》のミュージカルメドレーでHeart of Stoneを歌唱(2023/07/09)
  3. 日本芸術大学学生:『日芸SIX』として全曲英語歌唱×日本語翻訳台本で上演(2023/11/03)
  4. 梅田芸術劇場: ミュージカル『SIX』来日公演を2025年1月に上演と発表(2024/04/06)
  5. プリンスアイスワールド: 飯野めぐみ・岡村さやか・和田清香によるEx-Wivesの日本語訳詞音源でスケーターがパフォーマンス(2024/04/27)
  6. ZIP!:『千と千尋の神隠し』ロンドン公演特集の「イギリスは少人数キャストの作品が多い」という説明の場面でSIXの画像が登場(2024/05/28)
  7. 『SIX』来日公演:スペシャルサポーター」に井上芳雄が就任と発表。男性俳優の起用に疑問の声が多数上がる(2024/06/17)

 

 

テイモアとハドソンのデザインに溺れる『ライオンキング』4/20 M 感想

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3年前、コロナ禍のゴールデンウィークに見て以来のライオンキングでした🦁

作品・公演概要

The Lion King
原作: The Lion King(1994年公開の映画『ライオンキング』)
音楽: Elton Johnエルトン・ジョン
詞: Tim Riceティム・ライス
作詞・作曲補: Lebo M(レボ・M)、Mark Mancina(マーク・マンチナ)、Jay Rifkin(ジェイ・リフキン)、Julie Taymorジュリー・テイモア、Hans Zimmerハンス・ジマー
脚本: Roger Allers(ロジャー・アラーズ)、Irene Mecci(アイリーン・メッキ)
初演: 1997年 ミネアポリス
         1997年 ブロードウェイ
         1998年 東京
         1999年 ウエストエンド

The Lion King: Original Broadway Cast Recording

The Lion King: Original Broadway Cast Recording

  • Various Artists
  • ミュージカル
  • ¥1731

 

ミュージカル『ライオンキング』
劇場: 有明四季劇場
オリジナル演出: Julie Taymor
初演日本版演出・オリジナル企画: 浅利慶太
日本語台本・訳詞: 浅利慶太
日本語台本協力: 藤田みどり
レジデント・ディレクター: 玉城任、布施陽由、荒木美保、西尾健治

 

キャスト

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シンバ: 島村幸大
ナラ: 空良
ラフィキ: 平田曜子
スカー: 北澤裕輔
ムファサ: 内海雅智
ザズ: 井上隆司
ティモン: 大塚道人
プンバァ: 深見正博
シェンジ: 田代美里
バンザイ: 池田英治
エド: 中村智志
サラビ: 川原晶絵
ヤングシンバ: 佐藤理人
ヤングナラ: 山下小都子
+アンサンブル 26名

 

感想

美しいデザインに溺れる

3年前は2階席後方で見て、1階席に座るのは今回が初めてでした。没入感がもの凄かったです!後方扉から大きな象やサイが通路を通って近づいてきて真横を通り、鳥が真上を飛び、前からはラフィキの歌声、2階からも歌声。全方向からパフォーマンスを浴びて多幸感に包まれました。なんて贅沢な空間なんでしょう😭

動物たちが近くを通る分、パペットの細かい構造や模様もよく観察できてそれも楽しかったです。前回も思ったけれど、私はやっぱりサイのデザインが好きです🦏

操る人間の存在感を有機的に活かしたテイモアのデザインとは反対に、Richard Hudson(リチャード・ハドソン)のセットデザインが人工的でモダンなラインなのは今回新たに気がついた面白さでした。舞台袖は直前的だし、プライドロックも無駄のない美しい曲線で構成されているんですよね。ディズニーの技術があればいくらでもリアルなサバンナを表現できるだろうに、あえて正反対の表現を取っているのが気になります。セットがシンプルな分、複雑なパペットが非常に際立っているのでそんな効果を狙っているのでしょうか。気にしながら見るととても美しいと思いました。

 

物語の価値観には疑問も

そして久しぶりに『ライオンキング』に触れて、この作品の提示する価値観への疑問を思い出しました。馴染みがありすぎて普段は意識に浮上しないものの、改めて見ると気になるところがいくつか。

1番引っかかるのは、プライドロックを出て特に何もしてこなかったシンバが王位につくことです。血縁・縁故主義がすごい。動物の世界を人間の王族に準えた物語なのでそうなるのは当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが気になり始めると気になりますね。放浪していたソーがその間にアスガルドを取り仕切っていたヴァルキリーに王位を明け渡したのを見た影響もあるかもしれません。今同じコンセプトでこの作品を作るとしたらナラが王位に着くかもなとか考えたりもします。

シンバが王として迎えられるのは血縁だけでなく「悪性を敷くスカーと手下のハイエナたちを退けたから」でもあるのですが、王としての器を示す機会が戦いにあるのもだいぶマッチョな世界ですよね。スカーが身体的に強くなくて「暴力は嫌いだ」と言いながら策略を巡らせていたことを考えると、そうしたヴィランをパワーで圧倒するのは果たして正しいのだろうかと考えてしまいます。

あと意外にこたえたのがムファサがザズーをクビにすると冗談で言う場面。ムファサが真剣な言い方をするのでザズーが本当にクビにされると思って慌てるのを笑うシーンなのですが、全然面白くないです・・・。王と従者という強烈な権力勾配がある中でのあのムファサの言動は完全にパワハラですよ。

そんなこんなで気になる価値観は多々あるものの、見ていてすごく感情が高まって感動する(私は主にストーリー面以外で)のもまた事実で、ロングランで愛され続けるのも納得でした。きっとこれからも長く上演されていって、価値観の移り変わりに合わせて『ライオンキング』へのアンチテーゼになる作品が生まれていくのかもしれません。

 

キャスト感想

島村シンバはお顔&メイク&声質の影響で柔和な印象でした。そのおかげで作品自体のマッチョイズムな性質が和らいでいたように思います。お芝居でもちょっと内気というか控えめな性格のシンバになっていて私的には受け入れやすかったです。太々しく粋がっていて等身大の少年感があった理人ヤングシンバからのギャップは感じつつも「ハクナ・マタタで育つとこうなります」と考えるとそれはそれで楽しかったです。

空良ナラはお顔立ちが可愛らしいのだけれど表情にナラのストイックさが表れていてそこがとてもツボでした。ナラが幼めだとスカーがナラを娶ろうとするグロさも際立って良いですよね。歌声もハリがあって素敵でした!

北澤スカーは歌が上手いし落ち着いた振る舞いがゴージャスでした。先月見たJCSのヘロデのイメージも相まってか、今回見ていてスカーにもクィアネスを感じました(多分メイクとか声のトーンとかから)。スカーというキャラクターのクィア性について調べてみたところ、「クィアコーディング」の例としてリトマのアースラと共に名前が上がっているサイトがありました。ヘロデとクィア性の結びつきと同様にまだ私の頭の中でも考えるための整理ができていないのですが、一旦今の状況を書き残しておきます。参考になる文献・サイト等があったら是非是非コメントかSNSでお声がけください。

それからパフォーマンスにすごく惹かれたのはシェンジ役の田代美里さん。台詞も歌もクリアかつ声量もあって聴いていてとっても楽しかったです!!!

 

最後に、有明四季劇場に行ったのは初めてだったのでその愚痴を笑笑 1階の6列目に座ったら、傾斜が少なめなのか前の人の頭が結構舞台にかかって、センター中腹から奥辺りが見えづらかったです。没入感は素晴らしかったけれど、低身長民はやはり後ろに下がるのが吉😢

 

劇団四季関連】

 

春の「屋比久知奈×梅田芸術劇場」は満足度が高い『VIOLET』4/14 S 感想

新年度1本目は『VIOLET』でした!

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昨年3月の『ジェーン・エア』に続き、春の「屋比久知奈×梅田芸術劇場」の満足度は高かったです。

作品・公演概要

Violet
原作: The Ugliest Pilgrim by Doris Betts(ドリス・ベッツ) (1969 Short story)
作曲: Jeanine Tesori(ジニーン・テソーリ)
脚本・作詞: Brian Crawley(ブライアン・クロウリー
初演: 1997年 オフ・ブロードウェイ
    2014年 ブロードウェイ
    2019年 オフ・ウエストエンド
         2020年4月 東京(中止)
         2020年9月 東京

Violet (Original Broadway Cast Recording)

Violet (Original Broadway Cast Recording)

1997年版は音源が出ていないんだ!という驚きとサットンがBWヴァイオレットだったんだ!という驚き。

 

ミュージカル『VIOLET』
劇場: 東京芸術劇場 プレイハウス
演出: 藤田俊太郎
翻訳・訳詞: 芝田未希

2019年に梅田芸術劇場とイギリスのCharing Cross Theatre(チャリングクロス劇場)が共同で企画製作して、日本とイギリスで上演したバージョンとは違う新演出版とのこと

 

キャスト

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ヴァイオレット: 屋比久知奈
ヤングヴァイオレット: 生田志守葉
フリック: 東啓介
モンティ: 立石俊樹
父親: spi
伝道師: 原田優一
老婦人: 樹里咲穂
ルーラ: 谷口ゆうな
ミュージックホール・シンガー: sara
ヴァージル: 若林星弥
リロイ: 森山大輔

+スウィング 2名

 

感想

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作品感想

思ったよりも「何も起こらない」作品(というか展開が予想しやすい物語)なのだけれど、ちょっとした台詞の中に人間の歪みや嫌な部分が滲み出るのが面白い作品でした。

この作品には「どうしようもないクソ野郎」は出てこない。(テレビ伝道師は例外かも)でもみんなちょっとずつ人を傷つける発言をして、それを反省する人がいればしない人もいて、その塩梅がすごく人間的だな〜と思いました。私は特にフリックの「お下がりなんて願い下げだ」とモンティの「彼女が苦しむとき、俺は側にいないからね」が好きでした。

 

主人公が見た目にコンプレックスを抱える少女で、恋愛関係を含む周囲の人との関わりの中で自らの行く道を見つけるというストーリーは同じくテソーリ作曲の『キンバリー・アキンボ』と共通しているし、『シュレック』も見た目による差別が描かれているので、テソーリの題材選びの核はこの辺りにあるのかな〜と考えたりもしました。『モダン・ミリー』はどうなんでしょう。

『VIOLET』では、ヴァイオレットの顔の傷は癒えないけれど傷を付けてしまった父を許すことで心の傷は癒えて前に進めるというように、当人の「気の持ちよう」的な着地点が用意されているのは、シュレックやキンバリーに比べると時代を感じるかも。フリックの「バスから降りてきたお前の顔を見せてやりたかったよ」という台詞はすごくよかったです。恋愛関係がヴァイオレットを癒すという展開にはなっていないところもありがたいですが、なんとなく「刺さりはしないな」という感じで、その理由はまだ私の中でも明らかになっていません。

 

音楽は「ここでそんなに長く歌わなくてもいいぞ」と思う場面がちょくちょくありつつも、スッと心に染みる楽曲が多くて良かったです。やはりOn My Wayが華やかで好きです。

 

 

演出の感想

人種表現の記録

昨年秋の『ラグタイム』では衣装の色味と髪型で白人・黒人・ユダヤ人を視覚的に表現した藤田さん。『VIOLET』では全く異なるアプローチで人種の描き分けに挑んでいました。今作は黒人分離政策が取られていた時代の映像が映し出される中、東さん(以下とんちゃん)演じるフリック、saraさんと谷口さん演じる女性の3人が舞台上に現れて、砂嵐のような音が鳴り響く中で悶え苦しむ場面から始まります。次にキング牧師の肖像が映し出され、公民権法の成立を観客が意識したところで3人は舞台を後にし、幼い日のヴァイオレットが現れます。

ヴァイオレットが現れるまでの場面はオリジナル版にはない要素で、日本での上演にあたってどうしてもわかりづらくなる物語の時代背景と作中で「誰が黒人なのか」を説明するプロローグのようになっています。

この説明のための一連のシーンは、予備知識を入れておらずまた世界史の勉強もおざなりになっている私が今作を見る上でとても助けになりました。ただ1本の作品として捉えると、冒頭にヴァイオレットの外側の世界が描かれることでヴァイオレットという1人の人間の物語としてのまとまりが弱くなってしまっているとも思いました。きっとヴァイオレットの登場に始まり、ヴァイオレットの場面で終わるのが美しい。でも説明しなくてはならないことがある。このジレンマですよね。

 

水と記憶

人種表現と併せて特殊だったのが回想の演出。冒頭の黒人の歴史を辿るプロローグではフリックが舞台上に現れると背景に水面が映し出されて彼の歩みに合わせて水の音がします。ヤングヴァイオレットが出てくる場面でも同様の演出が入っていて、水と回想を強く結びつけていました。

また、作品冒頭で床面にあった大きなリングがヴァイオレットを中心に天井に上がっていき、作品の最終盤で再び床面に降りてくるという演出は、井戸の底に沈んでいたヴァイオレット(Water in the Well)が水の外へと昇っていくのを表現しているようで、ここでも「水」がキーになっていました。

水の音の描写は所々くどく感じる場面もありましたが、水へのフォーカスとリングの上下でヴァイオレットの未来を明るいものとして描き出す試みは好きでした。

 

キャスト感想

適材適所キャスティングでみんな役にハマっていました。

屋比久ちゃんは本当に歌が上手い。いつも「ワールドクラスの歌声」だなと感じます。世界中の人に聴かせたいけれど日本で見られなくなるのは嫌だなとか考えちゃいますね🥺💕 屋比久ヴァイオレットのつっけんどんな物言いには、ぐるぐると頭の中で考えを巡らせた過程が透けて見えます。屋比久ちゃんの「期待を裏切られるのが嫌だから自分を卑下して何にも期待しないようにする」お芝居がとても好きです。

それから、新鮮だったのが立石くんのモンティ。これまでWキャストのあれこれでなかなか縁がなくて立石くんを見るのは今回が初めてでした。見た目のイメージからお芝居もきゅるっとした感じなのかなと勝手に想像していたところに、軽薄で勝手極まりないけれど一緒にいる間は本気でヴァイオレットを愛しているようにも感じられるモンティが現れて、すごく驚きました。とても良かったです!!!個人的に大ヒットでした🎯

わかりやすく表に出さないだけでヴァイオレットに心を向けているのがよくわかるspiパパ、熱くそして心の優しさが溢れ出ているとんちゃんフリックもどこからどう見ても胡散臭い原田さん(優ちゃん)伝道師もみんなみんな素敵でした。

それから素晴らしかったのがメンフィス&タルサの女性陣。谷口さんのRaise Me Upでの歌唱がとんでもなく素晴らしかったです。度肝を抜かれました👀

 

 

【ジニーン・テソーリ関連】

 

【屋比久ちゃん関連】

 

【藤田さん関連】