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バランスがnot for meな『スリル・ミー』木前ペア 9/28 J 感想

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ミュオタ3年目、ついに今回のスリルミで「再演のターン」に突入しました!感慨深い!!

作品・公演概要

Thrill Me: The Leopold & Loeb Story
脚本・音楽・作詞:Stephen Dolginoff(ステファン・ドルギノフ)
初演:2003年 ニューヨーク ミッドタウン・シアター・フェスティバル
   2005年 オフBW

ミュージカル『スリル・ミー』
劇場:東京芸術劇場 シアターウエス
演出:栗山民也
翻訳・訳詞:松田直行

日本での上演は、2011年の初演から7回目(数え方が難しくて怪しい)。

キャスト

私:木村達成
彼:前田公輝
ピアニスト:落合崇史

 

感想

わたしは木前ペア、あんまりしっくりこなかった民なのでそんな感想になります。

2021年のにろまりとそんふくは楽しかったので作品自体は好きな部類に入ると思うのですが・・・

なぜ刺さらなかったのか理由を探っていきたいので色々考えながら書いていきますが、役者さん本人や木前ペアを楽しんだ人、同じ公演を楽しんだ人の気持ちを否定する気は全くないので悪しからず。

 

そんなこんなでぐるぐる考えてたんですけど、結局のところバランスの問題なのかもというところに着地しました。

わたしはスリルミの醍醐味はパワーバランスにあると思っています。序盤の彼の私に対する支配力が強ければ強いほど、それが少しでも揺らいだ時の緊張感や99年に向かう逆転が活きると思うんです。彼には私が抗えない絶対的な魅力と支配力がないといけない。

でも木前の場合、序盤から達成私が前田彼よりも強いんですよね。前田彼は台詞のトーンも歌唱もセーブ気味で省エネモードなところに、私を支配していたいみたいな気持ちも特に見えなかったので、台詞も歌声も欲もバカでかい達成私にパワーバランスで負けていました。

そしてわたしは最後まで前田彼のことを理解できないままでした。「前田彼は達成私のこと好きすぎ」みたいな感想も読んだけど、私にはそうは見えなくて。でも利用してやろうとか面白いから側に置いておこうみたいな私を下に見たような表現も少なくて、彼の存在にもやがかかったような状態で観劇していました。知っている彼の台詞と歌がそのまますーっと入ってくるような。

「自分だけいい子になって逃げる 裏切りだ」のところとか、各彼の特徴が出て大好きなフレーズなのですが、今回は感情が伝わってこなくて・・・。

感情が抑えめなのが特徴と言えるかもしれないけれど、超人でヒャッハーするところなんかは奇声を発しながら笑っていたりもして、そこの落差もわたしにはよくわからなかった。

 

しかも達成私の提案や助言もすんなり受け入れてしまいそうだし、なんなら1人で周りの人たちを見下しながらすーんと生きていけそうな感じもあるんですよね(孤独を感じない)。そうなってくると、前田彼が達成私を手元に置いておきたがる気持ちがわからないし、高圧的でも支配的でもない彼にどうして達成私が従ってしまったのかという謎が生まれる。彼の言うことを聞かずに私が抗議したとしても、彼の方なすんなり折れてくれそうな関係だったよ。そうなると達成私はなんで前田彼のことを好きなんだろう、どこを好きなんだろうとも思えてくる。前田彼という人がわからないまま話が進んでいくので、達成私のどでかいもろもろの先にもやがかかって真ん中に大きな穴が開いたようなスリルミでした。

 

あとは好きだったところと印象的だったところを書き残して終わります。

・達成私は前田彼が近寄ってきたらすかさず距離を詰めて身体を寄せにいっててちゃっかりしてる。前田彼は私を退けるときドーンとか押さないでスッって腕を退けるだけだから優しい。Everybody Wants Richardで通せんぼされたときもスッて腕を外したから達成私は自力でゆっくり床に倒れてた笑

・触ってくださいを拒否られたあとに「お~い!」っていう高校生みたいなトーンの抗議が入ってたのが良かった

・ナイフで指を切るところも私がちゃっかり彼に抱きついてて笑っちゃった。まじで隙あらばなんよ。

・契約書の「これで2人は完全な絆で~」の入りの達成私の声がバカでかくて面白かった。嬉しかったんやろな。

・達成私は彼のやりたいことに自分が付き合ってさえいれば、何かあっても大事がおこっても対処できると思ってそうだし、眼鏡落とし作戦も分岐点の1つ、オプションの1つだったんだろうと思いながら見てた

・超人たち、達成私の「もう戻れない~」は完全に眼鏡作戦の開始に対してだと思った。脅迫状の「見捨てないよ」は(君の親も)だった。「完璧だ」も眼鏡作戦に対してで、「ここからはうまく演技をしないとな」みたいなニュアンスに感じた。

・俺と組んでで達成私は顔をくしゃくしゃにする。前田彼は髪を耳にかける

・99年の顔がやばい怖さ。笑顔がいきすぎて怖い。彼のことを馬鹿にして煽っているようにも見える表情

・99年の心底幸せそうな笑顔からシャワー室での彼の死の話をするにあたって顔がぐーっと辛い表情に変わるのがよかった。達成私にとっての「傷」って前田彼に先に死なれたことなんだよな。

 

 

【スリルミ関連】

 

【達成関連】