Mind Palaceがない代わりに

来年には大学生じゃなくなるのでタイトル改めました。

英語と鹿児島弁のダバディ『オデッサ』1/8 S 感想

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ネタバレがおじかったで初日に行って参りもした!シックなポスターとは裏腹にコメディ色が強うて、くすっす笑いながら見っことになっとはたまがりやった。台詞劇ん感想を書いたこっがなかで(多分🤔)うまっいっかわかりもはんが書いていっ。

(方言翻訳アプリってあるのかなと調べてみたら行き当たった「恋する方言変換」というサイトを使って鹿児島弁に変換してもらいました。文面を見ると私の頭の中では鯉登少尉の声で再生されます。)

 

作品・公演概要

舞台『オデッサ ※初演
作・演出: 三谷幸喜
音楽・演奏: 荻野清子
劇場: 東京芸術劇場 プレイハウス

 

キャスト

柿澤勇人
宮澤エマ
迫田孝也
ナレーション: 横田栄司

会場アナウンスは三谷さんが薩摩弁と日本訛りの英語で行っていました。

 

感想

◆どこまでがネタバレかわかりませんが、何も気にせずに書くので劇場で観劇予定の方は読まないことをおすすめします。

劇場でこんなに笑ったことはないっていうくらい笑ってしまいました。ゲラではなし、観劇中はあまり感情が外に出ないタイプなのですが一回吹き出しちゃったらもう止まらないっていう感じでしたね。

三谷さんの舞台を生で見たのは今回が初めて。映像で『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』は見たことがあったのですが、ピアノの温かい音色やワンシチュエーションで進む物語、笑いあり謎解きありで登場人物に愛着が湧いていく展開など同作を思い出すような部分も多かったです。ちょっとした細かい伏線の回収も見事でした。

舞台はテキサス州オデッサ。殺人容疑をかけられた日本人旅行者 児島(迫田さん)と取り調べをする日系人の警部 カツコ(宮澤さん、以下エマちゃん)のやり取りを留学中の日本人の青年 スティーブ(柿澤さん)が通訳するというシチュエーションで、英語、標準語の日本語、鹿児島弁が入り乱れます。

はじめ、警部(日本語を話せない)とスティーブのやり取りが日本語の標準語で表現されたので「今作では日本語の標準語=英語なのか?」と思いきや、児島(英語を話せない)とスティーブ2人の場面では鹿児島弁が登場し、警部を含めた3人の場面になると「英語=英語」に切り替わって舞台の背景に字幕が映し出されるようになっていました。警部とスティーブによる英語台詞には字幕が付くのですが、それがただの和訳ではなくてシーンに合わせて絶妙にフォントや表示方法にネタが仕込まれているのも楽しかったです。多言語の表現については『バンズ・ヴィジット』を見てから興味を持っていたのでるんるんでした。

物語の核は、事件に関わりがないのに罪を被ろうとする児島を逮捕させないために、英語と日本語の2つの言語を使えるスティーブが他2人がどちらかの言語がわからないのをいいことに会話をいじくりまわして勝手に捜査を進めていくところ。見ながら「ダバディだ!!」ってなりました。エマちゃんと迫田さんがトルシエで柿澤さんがダバディ。(サッカーは詳しくないけれどなぜかダバディさんの話は両親からたくさん聞いた)。

警部には「蕎麦」の話、児島には「SoVA (Situation of Violence Action)」の話をさせて、蕎麦作りと犯行の様子をあたかも1つの話題を共有しているかのように思わせるスティーブの場面が特に面白かったです。はじめは鹿児島弁で取り調べ内容以外の話をしてしまうスティーブと児島を警部が訝しむという構図だったのが、スティーブと警部が親しくなるほどに渾身の自白を前に笑い合う警部とスティーブを児島が訝しむという構図に変化していくのも楽しい。

全体の流れも面白いけれど細かいネタも面白くて何度も噴き出してしまいました。舞台上をゴロゴロ転がるアルマジロから、警部とスティーブの『ゴースト』パロ蕎麦作りまで観客も大爆笑でした。私はスティーブが働いていたホテルのプールにあった「DogとChinaはお断り」という看板に落ち込んだけれど、ここでいう「China」は中国人ではなくて「陶器」のことであったと警部によって明かされるという場面が好きでしたね。

笑える要素以外にも、日本人移民の母親とポーランド人移民の父親を持つカツコがアメリカで生きる苦しさが描かれたり、名前とアイデンティティを巡る議論があったり、言語の壁による差別が描かれたりもしたのですが、全体的に笑いの要素に飲み込まれているような感じで、そこまでグサッと刺さったりハッとさせられたりというところはありませんでした。とにかく台詞量が多いところに多言語が入り乱れるので、私が受け取ったものを考える隙がなかったというのもあるとは思いますが・・・

そしてやはりあてがきだけあって、作品がキャストの魅力を引き出しているところも好きでした。3人とも役があまりにもハマってました。児島とスティーブに心を許す前と後でギャップが激しいエマちゃん警部がとてもツボでした。目をきらきらさせて蕎麦の話をする警部がとんでもなくかわいかったです。迫田さんの人好きのする雰囲気と低音ボイスのギャップもすごかった。三谷幸喜はギャップを引き出すのが上手いのかも。そして三谷さんは柿澤さんのことを「雨の日に捨てられた子犬みたいな目をしている」と思っているんですね。それにめっちゃ笑いました。英語話者のエマちゃんと鹿児島弁話者の迫田さんに挟まれて、両方の言語で膨大な量の台詞を展開した柿澤さんはすごかったです。三谷さんと柿澤さんの組み合わせ、とても好きなのでこれからもたくさん見たいです。

 

家に帰って父(舞台は見ない。一昨年私を含めて家族で『鎌倉殿の十三人』にドはまりしていた)に、蒲殿と実衣ちゃんと実朝が出てる三谷さんの舞台観てきたよ~と話したらとてもうらやましがられました。

 

 

【柿澤さん関連】