来日公演を積極的に持ってきてくれるBunkamura、本当にありがたいです。てなわけで行ってきましたWSS!楽しかったです〜!
プロダクションについて
2022年にミュンヘンでスタートしたインターナショナルツアーの公演。この後は、バンコク・モナコ・パリと周っていくみたい。2024年のスケジュールも発表されていてかなりの長期ツアーですね。
BB Promotions
演出:Lonny Price(ロニー・プライス)
振付:Julio Monge(フリオ・モンヘ)
舞台美術:Anna Louizos(アンナ・ルイゾス)
BroadwayWorldに今回の公演についての記事が上がってました。演出やセットは今回のツアーにあたって新たにつけられたものみたいです。
当日のキャスト
トニー:Jadon Webster(ジェイドン・ウェブスター)
アニタ:Kyra Sorce(キラ・ソルチェ)
ベルナルド:Antony Sanchez(アンソニー・サンチェス)
リフ:Taylor Harley(タイラー・ハーレイ)
感想
華々しさや意外性は少なめだったものの堅実な公演で、作品そのものの力の大きさを感じられました。演じ方も概ねスタンダードな中、マリアの強さが全面に出るようなバランスになっていたのが私好み。ほんとにメラニーさんのマリアがとても良かったです。
ちなみに、ちょっと偉そうな言葉を並べたスタートになってしまいましたが、舞台版は今回が初見でした。映画は2本とも見ているので私の中のキャラクター像は映画準拠かなと思います。ただ映画を見たのもだいぶ前なので、ほぼほぼ頭の中で煮凝りになった感じのやつがベースです。
まずは、バーンスタインの音楽を生オケで浴びられたのがとても嬉しかったです。先日観劇したJCSが、折角面白い音楽なのに音源で音がペラペラになってしまっていて、生演奏のありがたみを改めて感じたところだったので。生演奏の迫力や演者の歌との一体感はもちろん、開場中にオケの方々のアップの音が聴こえてくるのもまた好きなんですよね。今回も開演前にAmericaの練習が聴こえてきたりして。そういう楽しさも含めて私は生オケが好きです。
話は変わりますが、今回、開場中に結構たくさんの人がオケピに群がっていたのが新鮮でした。帝劇などではあまり見ない光景なので「客層の違い」かもしれないですね。これがWSSの作品力。私も小さいときたまにバレエの公演に連れて行ってもらうと毎回オケピを覗きにいっていたな〜となんだか懐かしくなりました。来日公演は『コーラスライン』『CHICAGO』と動員に苦戦している印象がありましたが、今回のWSSはかなり埋まっているように感じました。これまたWSSの作品力なのかもしれません。
原語上演なのでソンドハイムの詞も楽しめました。改めて聴くとMariaの詞ってすごい。
Say it loud and there's music playing
Say it soft and it's almost like praying
天才だ。
それからジェローム・ロビンスの振付を感じられたのも楽しかったです。真似をしたくなるようなアイコニックな動きも多くて、見ていると踊りたくなってくるけれど、実際に踊れと言われたら絶対に嫌😂 2時間くらいのレッスンで楽しく真似したいですね。
踊りが印象に残ったパートは、Dance at the GymとCool。Dance at the Gymのマリアとトニーのパート、両手を広げて踊る特徴的な振付が映画で見た時にはピンと来なかったのだけれど、舞台で見るととてもかわいく感じました。
Coolは2021年版映画ではトニーとリフの場面に変わっていたので「こんなに踊る場面だったのか!」と新鮮な驚きがありました。髪を振り乱して踊るガールズもかっこよかったです。
冒頭やAmericaはもう少し動きがバチっと合ってきたらもっと良いって感じでした。かっこよかったですけどね。
マリアが主役の物語
WSSはソロ曲のバランスを見てもトニーが主役、いいところでW主演っていう感じだと思うのですが、今回のプロダクションではマリアが全体を引っ張っていくような印象で、それがとても好きでした。
メラニーさんのマリアは「現実にいそうな」マリアに仕上がっていたように思います。理想化されていない感じがとても素敵。I Feel Prettyで奇声を発しながら騒ぎます。最高にかわいいし、親近感が湧きます。歌唱も声楽系のファルセットという感じではなく、感情を乗せた中音部が際立っていました。私的には「新しいマリアだ」と感じました。
A Boy Like That / I Have a Loveでもアニータに全く押されずに、むしろかなり強く歌声で押し返して、意志の強さを見せてアニータを納得させていました。「oh, no Anita no」の圧たるや。高い音なのに叫ぶように歌っていて、表情も額に血管が浮かんで見えてきそうな気迫で、とにかく強かったです。かっこよかった!ここでこれでもかと見せられるマリアの覚悟とそれを見たアニータの覚悟が物語の核になっていました。
この物語はJetsの最悪の行いで希望が崩れ去るっていうイメージが強いけれど、今回の公演ではトニーとマリアが引き裂かれることの苦しみよりもマリアとアニータの覚悟が無に期すことの虚しさが前面に出ていました。ここは2021年映画版的だな〜とも思います。
そもそもTonightの時点で既にマリアが場を仕切っているのよね。トニーがマリアにぐいぐい迫るっていう見え方もあり得る中で、むしろマリアがトニーを制しているような感じで。
ラストもトニーの遺体に触ろうとする警部に「触らないで!」と怒鳴る気迫が物凄かったし、全身から怒りが飛び出していて、そのまま神のことも睨みつけに行くんじゃないかと思うくらいでした(流石に睨みつけにはいかなかったけれども)。
マリアのことばかり書きましたが、ジェイドンさんのトニーも良かったです。ファルセットが柔らかくてとても綺麗でした。私はロミオとかトニーとかに対しては当たり強めなんですけど(そもそも恋愛が主軸の物語が刺さらない人間ってのもある)、ジェイドントニーの柔らかさとメラニーマリアとのパワーバランスが相まって楽しく鑑賞できました。
私はJetsを許さない
親WSSの2021年映画版を見た時、Jetsがアニータを襲うシーンがあまりにも恐ろしくて胸糞が悪くて、慄いている間に気づいたら映画が終わっていたという経験をしたんですよね。今回もまた同じシーンでへこみました。私にとってWSSのクライマックスはあそこですね。嬉しくないクライマックス。胸糞マックス。映画よりは舞台の方が距離が遠くなる分、恐ろしさも弱まるかと思いましたが、むしろ生身の人間が目の前で襲われているというまた別の恐ろしさも生まれていて、どちらも怖いことに変わりありませんでした。特にテーブルに寝かされたアニータの上に、Jetsがメンバーを持ち上げて乗っけようとするのが最悪すぎて。あれくらいのことが起きないとアニータと覚悟は揺らがないよなとも思うので、作劇上は「正しい」と思うのだけれど、やっぱり辛いですね。いつ見てもJetsを嫌いになります。リフが先に死んでいることが救いだよ。リフのことを嫌いになりたくない。
それはそうと、今回の舞台でも2021年映画版と同じように、グラツィエラたちがドアや窓を外からバンバン叩いてアニータを襲う男たちを止めようとしていたのには心を掴まれました。そろそろ彼女たちがドアを破ってアニータを救い出して、男たちを打ち捨てる展開があってもいいんじゃないかしら。
特徴的なSomewhere
演出面で印象的だったのがSomewhereでした。チノからベルナルドが死んだとの知らせを受けて動揺するマリアの部屋にトニーがやって、2人で逃げるべく家を飛び出すと、オレンジ色で塗られた布が降りてきて、その布をバックにシーンが展開されます。そこでは人種の分け隔てなく皆が踊るのだけれど、リフとベルナルドが現れると決闘が始まってしまいます。この布の背景の頼りなさが2人の夢の脆さと重なっていていいな〜と思いました。あと、決闘の再現では真ん中で闘うリフとベルナルドを他のメンバーが丸く囲ってぐるぐる回りながら煽っていてその動きもまた好きでした。刺されたリフとベルナルドからは赤いリボンが出てきて、それも面白かったです。
それから演出面だと、Tonight (Quintet) でアニータがお風呂に入っているのも好きでした。
そんなこんなで楽しい公演でした。
リア友と繋がっているインスタでWSSのポスターをあげたら、非ミュオタの友達から「今度見るよ!」っていう連絡も2件ほどもらってほくほくしました。私の周りに限らず、この公演をきっかけにミュージカルの世界に近づく人がたくさんいるかもしれませんね☺️
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原語で観劇できる機会は貴重なので、来日公演は逃さずにキャッチして行きたいです。
次は『ONCE ダブリンの街角で』かな。元の作品を知らないからちゃんと調べよう。
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2021年映画版の感想がここにあって
1961年映画版の感想がここにある。
動画配信サイトにあんまりなくて困っていたんだけど、海外遠征の時に飛行機の中で見られたんだよね。懐かしい。