2021年にJCSを好きになってから、ずっっっと見たかったジャポ。遂に見てきました🤩
先週末あたりからキャスト変更があり、「こんなに楽しみなのに公演中止になったらどうしよう」と不安になっていましたが無事幕が開きました。カヤパが高井治さんに代わって飯田洋輔さん、ピラトが村俊英さんに代わって山田充人さんです。
作品・公演概要
Jesus Christ Superstar
作曲:Andrew Lloyd Webber(アンドリュー・ロイド=ウェバー)
作詞:Tim Rice(ティム・ライス)
ジャポネスクver.の感想
Overtureから「おもしろ〜!!」
大八車の方々が舞台上に現れ、布を顔にかけて「白衣スタイル」になる、一連の流れの厳かな雰囲気から一転、予想の斜め上を行くOvertureに「おもしろ〜!!」ってなりました。
和楽器を使ったアレンジが楽しいし、鼓のような音に合わせて大八車の向こう側から突然キャストが現れるのがとってもかっこよかったです。大八車の高いところにいるカヤパたちに民衆が突っ込んで行っては追い払われるっていう動きも好きでした。Overtureにおけるローマの圧政に苦しむ民衆の表現としては今まで見たプロダクションの中で1番好きかもしれません。
それにしても、大八車も合わせてとんでもない傾斜の八百屋舞台。ユダがゴロゴロ上から転がり落ち始めた時は何かと思いました。そしてこの傾斜の中でバキバキに踊るアンサンブルの皆さんがかっこよすぎますね。今回の公演、歌の火力がちょっと物足りない感じもあったんですけど、群衆のコーラスの厚みが素晴らしくて「流石、劇団四季だ!」ってなりました。
音楽も楽しい
和楽器を使ったアレンジがとても面白かったです。特にユダ死の鈴の音がとっても良かった。音楽でこの世とあの世の境目が出現したように感じさせる音楽が好きでした。
それはそうと、もっと和の雰囲気に寄せてもいいのにな〜と聴きながら思う箇所もあり、音源で確認したかったのに、音源は出してないんですね!?出して!!70周年を記念して出して!!
あと、全体にテンポが独特でしたね。基本は他の音源に比べると少しゆったりめで、喧嘩パートになるとすんごいスピードアップする。Strange Things MistifyingのWho are you to criticize her? のパートとかがやたら早くて、早口言葉みたいになっていました。正直あそこまで早くしなくてもいいんじゃ・・・と思うのですがどうなんでしょう。
あとは昨年『ノートルダムの鐘』を見た時にも思ったけど、生演奏で見たいよーーーーーーーー😢😢😢 音楽が強い演目はやっぱり生オケ生バンドで浴びてビリビリしたい。録音で音がペラペラになってしまっていたのが勿体無かったです😢
思っていたよりも違和感がなかったけれど「KAWAII」訳詞問題
岩谷時子さんの訳詞。
JCSに関しては原語から入っていて、以前四季版のGethsemaneの訳詞を見たときに結構違和感を覚えたのですが、本編を通しで見るとそこまで訳詞は気になりませんでした。演出と音楽が「和」に振り切れているからか、ですます調の訳詞もハマっているように思えました。
ただ1点、ちょっと「ふふっ」っとなってしまったのが、I Don't Know How to Love Himの「どうして あの人が 『かわいい』」という部分。予想外の『かわいい』に、頭の中で神永ジーザスが顔にラメをつけて「KAWAII」というサイネージの下に立っている謎のイメージが生成されました。そうか、ジーザスはかわいいのか。グレン・カーターのジーザスとかは、割ともろ「かわいい」って感じですけどね。神ジーザスは美人だと思っていたのでイメージの乖離が。
真面目な話、ここの部分の訳が「かわいい」になった経緯をとても知りたいです。日本語に訳すにあたって情報量を減らすにしても「かわいい」に集約されるかな〜不思議だ!私は岩谷さんがわからない。
あと「Don't you think it's rather funny? I should be in this position, I'm the one who's always been, so calm so cool, no lover's fool, running every show, he scares me so」の部分が「男も女も 愛したことさえ ないわ」になっているのも不思議でした。「女」はどこから出てきた?他の部分で「男」については語られているけれど、「女」の話はないんですよね。なので不思議に思いました。「他人に執着して来なかった」という文脈にしたかったのかもしれませんね。
それから、日本語の「愛している」と英語の「Love」のニュアンスの違いはすごく感じました。特にユダ死。日本語になると狭くて重くて直接的な感じがしますね。音数の関係もあるかもしれない。
ユダ周りの演出
ジャポネスクならではの演出はユダ周りで多かったように思います。
1番特殊に感じたのは、Damned for All Timeでの駆け込み、アップテンポになる前の部分。上手奥からユダがすり足で舞台をゆっくりと横切り、曲調が変わったタイミングからバタバタ走り始めます。ユダのすり足には日本の伝統芸能らしさを感じるとともに(すいません伝統芸能は詳しくないので適当言います)、「こっそり抜け出して」の密告という部分が強調されているように思いました。他のプロダクションだと、ユダがどこから駆け込んできたのかっていうのは舞台上で表現されないことが多いので、「抜け出す」ユダを見るのは新鮮でした。あと、銀貨を受け取ろうとしないユダを、カヤパとアンナスが片膝を立てた状態で両側から挟んで、肘でぐいぐい袋の方に押しやっていたのがめっちゃ面白かったです。わかるかな。できたら図解を足します。舞台の傾斜が激しいので、カヤパが投げた袋が客席に滑り落ちないか不安になっちゃった。
駆け込みの後は、下手奥から出てきたジーザスと上手手前でうずくまるユダが対峙するシーンがかなり長くとられていて、ジーザスはユダの裏切りに気が付いていて、ユダもまたジーザスが気が付いていることに気が付いていることを印象づけるような演出になっていました。ジーユダによっては、ここでなんとか分かり合えそうな気がしなくもないけれど神永ジーザスは純粋に裏切りに傷ついてしまって、心をさらに閉ざすので和解の道はありません。解散。
Judas' Deathも特徴的でした。ユダの死に方といえば首吊り自殺なわけですが、舞台上で首吊りの表現をするのは多分大変で、プロダクションごとに「ユダの殺し方」には特徴が出ています。2021年シアターオーブのコンサート版はThe Last Supperで決別する際にジーザスがユダにくれたスカーフを使っての首吊り、2022年韓国公演は縄での首つりでした。どちらも首にスカーフや縄を巻き付けた上でユダ役者自身がそれらを上に引っ張ることで死を表現していました。2012年アリーナ版はハーネスのようなものを使って結構リアルな「自殺」を描いています。そんな中、ジャポのユダ死はというと、なんだかとてもふんわりしています。鈴の音が楽曲に織り交ぜられてあの世とこの世が交錯するような異様な雰囲気の中、ユダが暴れまわるところまでは派手なのですが(ユダが舞台の傾斜を利用してゴロゴロ転がり落ちていてびっくりしました)、肝心の死に際は、大八車の奥に滑り落ちて行くだけ。これだとユダがどうなったのか初見の人にはわかりづらそうです。
Superstarは何よりもお坊さんソウルガールズですね!!!!曲が始まると上から3台のゴンドラが降りてきて、センターにユダ、上手にお坊さんガールが1人、下手にお坊さんガールが2人乗っています。お坊さんガールズの見た目のクセが強くて驚きでしたね。一緒に観劇友達とも「...お坊さん、すごかったね。」ってなりました笑 スパスタに向けてテンションが上がっている中で現れたお坊さんガールズに軽くキャパオーバーしました。
ちゃんとユダもかっこよかったんですけどね。ユダのスパスタ衣装は上裸に黒いパンツ、左半身には薔薇の装飾が付いていて上から下に向かって黒から白へのグラデーションになっています。
ユダが元気に(といっても割と現世に未練たらたら感万歳でした)歌っている間、ジーザスは十字架を運びながら舞台を一周。センターに戻ってきた辺りで、ユダが頭にかぶっていた茨の冠を下に投げ、役人がそれをキャッチしてジーザスの頭にかぶせます。この茨キャッチ演出がめっちゃ好きでした。
スパスタは楽しくて大好きなので、曲終わり一瞬で上にゴンドラが回収されていくのがさびしかったけれど、回収のスピード感に笑えてきてしまいました。もうちょい余韻をくれ!!
ジーザス周りの演出
竹でできた神輿に乗せられて運ばれるジーザスが愉快でした。しかも担ぎ手がジャンプしたりもしていて「ひぇ~怖そう~」って思いながら見ていました。それはそうと、ジーザスが群衆に囲まれる場面は、どこも舞台手前の民が身体をかがめたり床に転がったり、反対にジーザスを上にあげたりして、すごく「見やすく」舞台上が構成されていたのが印象的でした。
The Templeの表現も好きでした。舞台の真ん中に一本道を作って商人たちで賑わうイェルサレムを表していました。商人の小道具もとても凝っていて、ここでも「流石、劇団四季だ」ってなりました。特に動物を象った被り物をした商人が2人くらいいたのが(ちょっとライオンキング感もあり)とてもかわいかったです。
鞭打ちから磔までは、結構激しめ。鞭打ち中は数回打たれるごとに引きずり回されていて「ひでえ!!(楽しい!)」ってなっちゃいました。野次馬が鞭を打たれている最中のジーザスに触りにいったりもしていて、そのうちの1人が抱き着いて背中の布を開いたら傷まみれの背中が出てきました。ペイントも結構グロめ。他の場面でもカヤパが手を血に染める描写があったり、磔の時にしっかり手に釘を打ち付けるシーン(でかめの音あり)があったりして、ジーザスが激しくいたぶられるタイプの演出でした。
衝撃のヘロデ
人力車(で名称合ってる?)に乗って出てきた瞬間の衝撃の強さよ。他のキャラクターの衣装は色味を抑えてあったので、ヘロデの青いかつらと上半身いっぱいに入った入れ墨が「色彩の暴力!!!」って感じでした。かっこよかったな。それにしても、網タイツの上に廻しってすごい。しかも廻しの中から扇子が出てきたのも面白すぎました。これまで見た中で1番好きなヘロデかもしれない。もう、ただただびっくりしている間に楽曲が終わっていきました。ヘロデのシーンとしては「正解」っていう感じがします。楽しかった!!
ヘロデガールズは着物姿(花魁風?)で2人。とてもすらっとしていて身長が高く見えたので、男性役者さんかも?ヘロデ自体もちょっとクィアな雰囲気。ヘロデをクィアっぽく表現するプロダクションが多いのはなぜなのかとても気になります。クィア表象としては少し危ういようにも思うんですよね。この辺は私もいつかしっかり考えたいなと思いつつ、まだまだ判断材料が足りていないところですね。(もしまとまっている記事とかあったら読みたいな)
隈取りについて(わからないなりに)
ジャポネスク・バージョンの1番の特徴ともいえる「隈取り」。私には歌舞伎の知識がないのですが、ちょっとだけネットで調べて思ったことを書き残しておきます。
観劇中まず思ったのが「ユダは赤なんだ」っていうこと。私とてユダを悪役とは思っていないですけれど、JCSでは「悪役に仕立てられる存在」みたいなところがあるじゃないですか。なので、青ではなく赤なんだ、という驚きがありました。そして反対に「ピラトは青なんだ」という驚きもありました。ピラトもまた「悪役を引き受ける存在」であって、でも悪人ではないという意味でユダと近い感じもあると思うのですが、こちらは青なんですよね。不思議。ピラトには地位があるからでしょうか。
ジーザスの隈取りは「むきみ隈」ってやつに近い気がします。若くて色気のある役で使われるらしい。意味的にもそこそこ当てはまりそう。ユダはどれに当たるんだろう。
キャスト&キャラクター寄りの感想
稽古場写真が出たときに、私が「フィーバスばっかり」って言ったら、友人が「フィーバス・クライスト=スーパースターじゃん」って言ってきたのが忘れられない。
神永ジーザス
神永東吾さんのジーザス。前半は「静かで異様」っていう印象でした。神性が高いとは思わなかったけれど人間からは程遠くて、綺麗で、掴みがたくて、不思議なオーラに包まれていました。落ち着いていて感情が見えてきづらいのと、響きが特徴的な声質なので、そんな印象を受けたのかもしれません。
使命感を持って活動をしている様子で、The Temple でもできるだけたくさんの人に触れようとしているし「自分で治せ!」って言ってしまったことに対して落ち込んでいました。ただ民衆にはまるっきり興味がなく、担ぎ上げられていることに対しても割と無反応(そりゃあユダも怖くなりますよ)。
The Temple の「My time is almost through~」あたりからは、一気にジーザスの疲れと悲しみが表れてきて「かわいそうなジーザス」っていう印象が強くなりました。The Temple も結局1人でいるときに感情を出しているっていう感じなので、孤独で寂しそうなジーザスでした。The Last Supper では、みんなの前で感情を表に出すけれどそのときにはもう限界だし、もう手遅れっていう感じで。他のジーザスたちの中には、それなりにユダと心を通わせたり、分かり合えそうだったのに決裂してしまうようなジーザスも多いけれど、神永ジーザスの場合はユダに全く心を開いてくれる気配がないので、より一層孤独を深めているように見えました。神永ジーザスはユダの裏切りに普通に傷ついてしまっているんですよね。友達(だと神永ジーザスは思ってるけど佐久間ユダは思ってない)から裏切られたって思うから、余計に心を閉ざしてしまう。ユダと口論した後、叫びながら走っていってそのまましゃがみ込んじゃうジーザスがまじでなんかもうかわいそうで。心を開いてもらえない佐久間ユダもまたかわいそうで。救いがなさすぎる。神ジーはジーザス界で友達がいないランキング1位って感じよ。
歌唱面の話も。私は神永さんのフィーバスが大好きなんですけど「パリの人々よ こんなことを許すのか?」あたりが、音の高さ的にギリギリなのかなって思っていたので、ジーザスキーが出ることにまず驚きました。ファルセットでなんとか乗り越えているようなところもありましたが、強めにシャウトする場面も多く、ジーザス役者の喉の神秘を体験しました。
あと、さらさらストレートのかつらがやたら似合う。あれが似合う人類はなかなかいないと思います。素敵でした。それから死に際の寄り目が凄まじかったです。
佐久間ユダ
佐久間仁さんのユダ。目の前の問題にいっぱいいっぱいになっているようなユダで、Heaven On Their Mindsも「群衆が怖い」っていうのが強調されていてように思います。小心者なユダ。
そして、だいぶもだもだしていてよきユダでしたね〜。Everything's Alrightでジーザスがマリアに構われてる間、2人の周りをうろうろしてしまうもだもだ加減。そしてWhat's the Buzzでジーザスが「マリアが私のことを1番わかってる」って言った時のユダの「え?😢」っていう顔ね。ほんとに佐久間ユダは気の毒すぎる。神永ジーザスは多分佐久間ユダのことを友だと思ってるけれど、だからといって別に心を開いてくれるでもないので、佐久間ユダ的には友とか思うことすらないわけで、それでも自分が1番ジーザスのことをわかってるって思ってたのになんかポッと出のマリアが1番の理解者みたいになってるの辛いよね。。。
やたらもだもだしてるだけに「もっと気持ちを伝えてけよ!駆け込みの前に1回話し合え!?」って言いたくなるけれど、別に神永ジーザスは佐久間ユダがなんか言ったからって変わらんのよなごめんね。こんなに分かり合えないジーユダは初めて見たよびっくりよ。
Superstarは歌唱的にはロックでノリノリの割に別にはっちゃけてる感もなく未練たらたらって感じで「うわ〜死んでもなおもだもだしてやがる〜😂😂😂」って楽しくなっちゃいました。佐久間ユダは死んでからも「My Jesus〜My Superstar」とか言えないよな〜。かわいいね。
歌唱面の感想も。四季のJCSって古いYouTubeの動画を見てきた限り「ミュージカルっぽい」発声のイメージだったんですけど、佐久間ユダは結構ロック寄りだったので驚きでした。高音部はちょっと不安がありつつ(ひっくり返りそうで心配になる)、中低音のシャウトがめちゃくちゃかっこよくて、特にスパスタが素晴らしかったです。
他のキャラクターの感想も
歌唱が好みだったのは大森瑞樹さんのヘロデですね。音圧があって好きだったのとちょっとざらついてニュアンスのある歌声がかっこよかったです。ヘロデパートはほんとに圧巻のパフォーマンスでした〜!!あと、山田充人さんのピラトも好きでしたね。
江畑晶慧さんのマリアは上手かったけれど上の音がちょっと不安定だったのが惜しかったです。マリアパートが演出でもフィーチャーされていないのもあってか、あまりジーザスとマリアの関係性が見えてこなかったのが、やや気になりました。
飯田洋輔さんのカヤパはいい声すぎてびっくりしました。あと目を細めて口の端を釣り上げる悪役仕草が素敵です😌 流石にHosannaの下の音はきつそうでしたが急遽のご出演ですからね。あとそうだ、司祭何番かわかんないんですけど、This Jesus Must Dieで最初のフレーズを歌った司祭の方の声がとても好きでした!3人のうち誰!
そして、本城裕二さんのシモンナンバーが歌が上手くて楽しかったです〜!シモン贔屓の私としては大満足でした。
一昨年と昨年に続き、今年もJCSを見られてとっても幸せです。
神様、仏様、劇団四季様
イェルサレムバージョンのチケットもどうかご用意してください。
そして、ALW繋がりでエビータの再演も頼みますね。
あと、ほんとにしょーもないことを書くんですけど、今回のジーユダの衣装が昨今流行っているメッシュなお洋服に見えてきてちょっとじわじわきてました。黒いメッシュをゲットするとジャポユダ概念コーデできますね。
【7/19追記】
お絵かきしたから貼っちゃう🎨
【JCS関連】
ジーザスがマイケル・K・リー、ユダがペク・ヒョンフン、マリアがチャン・ウナ(敬称略)。鬼の歌唱力で殴られた昨年秋の韓国公演。分かり合えそうだったのにユダの拗らせ度合が高すぎて分かり合えかったパターン。私にぶっ刺さった公演。
一昨年の夏に私を狂わせていたJCSコン。ラミンユダが見られた唯一の国。
あと映像収録版とかの感想はここにある
【劇団四季関連】
白瀬さんのユダもいつか見てみたいな~
神永フィーバス回の鐘