ジャポのチケットが激戦だったので取れるか不安でしたが抽選に当たって観劇できました!!ジーユダの関係が熱くて見ていてとても辛くなりました。これだからJCSは楽しいですよね~!!
作品・公演概要
Jesus Christ Superstar
作曲: Andrew Lloyd Webber(アンドリュー・ロイド=ウェバー)
作詞: Tim Rice(ティム・ライス)
初演: 1971年 ブロードウェイ
1972年 ウエストエンド
1973年 東京(劇団四季)
ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』[エルサレム・バージョン]
劇場: 自由劇場
初演日本版演出: 浅利慶太
訳詞: 岩谷時子
レジデント・ディレクター: 荒木美保
キャスト
ジーザス・クライスト: 神永東吾
イスカリオテのユダ: 佐久間仁
マグダラのマリア: 江畑晶慧
カヤパ: 高井治
アンナス: 一和洋輔
司祭1: 正木棟馬
司祭2: 中橋耕平
司祭3: 真田司
シモン: 柴田鴻洋
ペテロ: 辻雄飛
ピラト: 田島亨祐
ヘロデ王: 北澤裕輔
+24人
週の頭の時点ではユダが吉岡慈夢さんだったのですが、火曜日に確認したら佐久間さんに代わっていました。こうしてジャポに続いて『フィーバス・クライスト・スーパースター』(友人のこの言葉が忘れられないでいる😂)になりました。
エルサレムver.の感想
客席に入った瞬間、目の前にそり立つ坂に驚きました。八百屋舞台とかいう次元ではない急斜面ですね。写真だとわかりにくいけれど、砂地の雰囲気がリアルで群衆が派手に動くと土埃が起こるんではないかと思えました(起きないけど)。
Overture
Overtureの前にシモンナンバーの冒頭と同じファンファーレがあって「あれ?間違った音源が再生された?」と肝が冷えました。ジャポではなかった気がしますが他にもこういったプロダクションはあるのかな? 個人的にはズーンとする不穏なOvertureの冒頭が好きなのでそこから始まってほしいなと思いました。
Overtureが始まると舞台上が徐々に明るくなって砂の上に寝ころんでいた群衆がうようよと蠢き出します。これが結構気持ち悪くて楽曲の不穏な雰囲気と合っていて良かったです。ぞわぞわしました。
あと印象的だったのが鞭打ちと同じメロディになる部分でユダが苦しみを表現するところ。ユダ死も同じメロディなのでユダの苦しみを先出しするのはわかるのですが、ユダが音楽に合わせて身体を強張らせるように苦しみを表現していて、ユダが鞭に打たれているように見えて面白かったです。ユダはTrial Before Pilateの前に死ぬけれど、鞭に打たれるジーザスを想像しながら死んでいったのかもなと思わされました。
演出の記録と気になる照明
エルサレムver.はJCSの上演には付き物のアナクロニズムを排していて、それ自体は新鮮ですが、物珍しい演出は少なめです。シモンナンバーで神輿に乗せられるジーザスとか、舞台の真ん中に商売人たちが一本道を作るThe Templeとか、Blood Moneyでユダを挟んでグイグイ銭袋の方に押しやるカヤパとアンナスとか、ジャポで面白いなと思った演出がそのまま残っているところもありました。
ヘロデはアラブっぽい白くて布の量が多めの装束に金色の装飾品を付けていて、同じくアラビア風のへそ出し衣装を着た女性を4人侍らせていました。ジャポのヘロデほど強烈なビジュアルではないし侍っているのも全員女性なのですが、メイクは特徴的で、ヘロデにクィア性を見出そうとする流れは感じられました。前回の観劇から半年経ったけど、ヘロデのクィア解釈が多くのプロダクションで見られる理由が私にはわからない。有識者、世界のプロダクションの流れと共に教えて!!
ユダ死は巷の噂通り演出が・・・エルサレムver.のユダは流砂に飲み込まれるように砂に開いた穴の中に落ちていきます。それ自体は視覚的に好きだったのですが、その前にユダ役者に穴の位置を知らせるためなのか赤いスポットライトで穴のできる位置が照らされるのが世界観に合わなくて気になりました。司祭パートでも砂地に角ばった白い照明を照らすのはあんまり美しくないなと思ったんですよね。あとジャポもだけれど四季のユダ死は「自殺」として表現されないのが不満です。
鞭打ちは数回ごとにジーザスが引き回されていて、そこに群衆が走り回ったり石を投げつけていたりもしてなかなかにしっちゃかめっちゃで混沌とした雰囲気が良かったです。ジーザスの背中の傷はジャポから引き続きグロめ。
Superstarは上手中腹から十字架を背負って出てきたジーザスが舞台前方を通ってセンターに戻ってしばらく持ち上げられていました。頭が斜面の下向きになっているので頭に血が上りそう。スパスタのユダは上から出てくることが多いので、洞窟状になった上手手前から出てきてびっくりしました。ユダの衣装はパンクみたいだけれど特定の時代は感じさせないような衣装になっていてここでもアナクロニズムを回避しているようでした(Twitterで『北斗の拳』って書いている方がいて「確かに!!」って思いました)。ソウルガールズは網みたいなのを被っていて髪の毛が外に見えなくなっていました。ジャポに引き続きツルッとした頭です。
最後に十字架を土の中に埋めて立てるのは1番の驚きでした。まじまじと立てるところを見てしまいました!すごい!!釘を打たれたジーザスの手と足からは血が流れていて、その後の場面で手からポタポタと地面に血が流れおちていたのがリアルで恐ろしかったです。
ジーザス&ユダの感想
ジャポのときと同じキャストも多かったわけですが、全体的に歌唱力が爆上がりしていて楽曲を音楽的にすごく楽しめる公演になっていました!!!(ジャポはハイキーや低音のところになると少し心配で身構えて観劇していたのですが、今回は安心して見られました)特に本当にジーザスとユダの関係性が激熱で大満足でした。
神永ジーザス
前回は完全に「佐久間ユダかわいそう・・・」って思いながら見ていたのですが、今回は逆で「神永ジーザスかわいそう・・・」ってなりながら見ました。同じキャストでここまで変わるのは面白すぎます!
今回は神永ジーザスが要所で見せる人間らしさがすごく目に焼き付いたんですよね。序盤の神永ジーザスは本当に無表情で冷たさを感じるくらい「静」で、ジャポでもそこに人間離れした雰囲気を感じたのだけれど、今回はそれが綻ぶ瞬間が明確に見えました。
まず、マリアとの場面。Everything's Alrightでマリアに寄りかかられているときからおやおやという感じはあったけれど、EAリプライズでは「このジーザスは完全にマリアに惹かれてるな」と思いました。神の子モードは剥がれ落ちていて、なんでもない人間だったらジーザスはこのままマリアと恋愛関係になりたいのかもな~とも。私はマリアと恋愛関係にならないジーザスが好きなので、今回こういう解釈で受け取ってしかもそれが嫌ではないのはなんだか新鮮でした。
それからすごかったのがGethsemane。とんでもない熱量でした。声を荒げながら身体を動かしながら歌う姿は「静」のジーザスからはかけ離れていて、「静」の姿は神永ジーザスが神の子モードの中に本当は人間的で熱い心を閉じ込めた状態なのかと思い至りました。
この激熱のGethsemaneのきっかけになるのが「ユダまで奪われたことへの怒り」だったのも激熱だったんですよね。マリアに恋愛的に惹かれている割に神にぶち切れるきっかけはユダなの。これが今回のジーユダの拗れ方。佐久間ユダは神永ジーザスの中での自分のポジションをわかってないし、恋愛的にマリアに惹かれるジーザスを見るのが耐えられない。
The Last Supperの「I must be mad thinking I'll be remembered〜」での神永ジーザスの狼狽え方と怒り方からして神永ジーザスは多分使徒たちと(というか友人たちと)肩を並べて「普通に」生きたかったんだろうなっていうのが見えて、人の輪に入ることができない上にさらにユダまで自分の元を去るとわかっている状況。エルサレムver.でもやっぱりBlood Moneyのあとに銀貨の入った袋を握ったユダとジーザスが対峙して睨み合う時間が長く取られていて、そこで神永ジーザスの心が抉られるのが見えるんですよね。神永ジーザスはユダが去ることに深く傷ついているけれど、ユダが去らねばならぬことは理解していて「Hurry, you fool〜」のところでユダの腕を掴む姿には動きが優しいとかではないのだけれどなぜかユダへの思いやりがあるんですよね。なので「Go!!」を絶叫して走り出して床に倒れて項垂れてしまう姿が本当に傷ましくて・・・。そんなジーザスにもう一回吹っかけてくる佐久間ユダよ。ねえ、きみはジーザスの真心をわかってる???ジーザスが起きててほしかったのは他のどの使徒でもなくユダなんだぜ😭😭😭 JCSを見るとすぐ「今すぐ腹を割って話し合え!?」となりがちだけど、今回のジーユダのすれ違い方に関してはもうどうしようもないという感じもありました。
Gethsemaneを歌い切って、The Arrestで「Put Away Your Sword」を力強く歌い切ってからは(これも他の人の命を巻き込まないために見えた)、また完全に神の子モードで感情をシャットアウトした神永ジーザスに戻っていくのだけれど、熱い人間だとわかってしまった分それを見るのが余計辛くて😭
歌唱面での進化も大きくて歌声に凄みがありました。高音(シャウトもファルセットも)の安定感も増していましたが、今回は中低音の深みが刺さりました。いい声。音として心地良いけれど言葉がグッと重く飛んでくるような感じもありとても好きでした。あと安定にビジュが強い。
佐久間ユダ
前回見た時もロック歌唱寄りの歌唱がかっこいいなと思ってましたが、今回それがさらに進化していてシャウトの安定感もあって素晴らしかったです!!!ユダとしてのお芝居がとても好みの方向性だし、ビジュも好きだったところに歌の爆発力もとなるとぶっ刺さり案件でした。ジーザーーースの声量がものすごかったよ。びっくりして思わず笑ってしまうくらい!!
歌声の進化に伴ってジーザスへの態度がでかくなって、ジャポのときのぴえん顔🥺でジーザスの周りをうろうろしていたユダに比べるとだいぶふてぶてしいユダになっていたのも面白かったです。HOTMにはこれまでジーザスを支えてきた自負とジーザスに認められたいという想いを感じました。なのでStrange Thing Mystifyingもそこまで私情に引っ張られずに真っ当な意見をぶつけているように見えなくはないのだけど、結局ジーザスがユダじゃなくマリアの前でだけ人間臭い言動を見せるのが嫌だし許せないというのが隠しきれてないのが佐久間ユダのかわいいところですね。両手と膝を地面につけてマリアから離れるように乞うのもよい!
態度が大きくなったとしても佐久間ユダからは善良さが滲み出ていて、感情に「暗さ」がないのも面白いです。先々のことを考えてトータルの犠牲を少なくするよりかは目の前の人を放っておけずに咄嗟に助けようとする人間に見えて、その必死さがこの作品のユダの行動に合っているな~と思います。そして今回は序盤で見られたプライドの高さみたいなものがI Don't Know How to Love Himリプライズに繋がっていくのも感じたりとキャラクター造形に一貫性があってすごく見ごたえがありました。Superstarもノリノリの強強だったので「吹っ切れタイプか!My Jesus My Superstarか?」(2022年韓国版の話をいつもする)と思いきや、十字架を背負ったジーザスが後ろを通ると振り返ってその顔をじーっと見つめていて、そこに重い未練を感じました。強くなってもやっぱりもだもだしてる佐久間ユダは本当にいい!!
あとカテコが完全に今回のジーユダを象徴していて笑ってしまいました。まず、レベランスの後にスパスタの音楽がかかったので、もう1回歌うのかなと思いきやキャストみんなで踊りだしてびっくりました。皆さん完全にはっちゃけているわけでもないのでまあまあシュールです。劇団四季なのでレベランスが何回も繰り返されるわけですが、マリア・ジーザス・ユダの並びから袖に捌けるときに神永さんが毎回江畑さんの手を取って下手に捌けて行って、佐久間さんは毎回1人で上手に捌けていくんですよ。神永ジーザスがあまりにもかわいそうだったので、今回はかなりそっちに同情しながら観劇したわけですが「神永ジーザス!!そういうところ!!」って心の中で突っ込みながら見送ることになりました。それにしてもとてもハードな舞台なのでカテコはさっくり1回で終わらせて演者さんを休ませてあげてほしいです。
完全にジーザスとユダにコミットした感想になりましたが、他のキャストの方も素晴らしかったです。高井カヤパの低音が良くて久しぶりに音楽的に楽しめる司祭パートを見たなっていう満足感がありました。アンナスはもう少し声が重い方が好みですが一和さんのヒーローボイスは多分私の好きなタイプな気がするので他の演目でも見てみたいです。それからすごかったのがシモンの柴田さん!!声量がものすごくてのけ反りそうになりました!!!これからの活躍にも注目したい歌声でした。
【神永さんと佐久間さん関連】
【JCS関連】
2021年から年1回はJCSを見る機会に恵まれていて本当にありがたい。ローテーション的に来年こそはBunkamuraさん、ジーザスコンの開催をお願いしますね?!