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謎の目玉焼きに引っかかって良かった 月組『DEATH TAKES A HOLIDAY』6/27 S 感想

何も調べず、メインビジュアルの美しさ謎の目玉焼きに惹かれてチケットを取ったのですが、これは見られて良かったです。とっても素敵でした。

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男女の恋愛がメインプロットの物語には、あまり心が動かない傾向にある私ですが、今回の公演はなんだかすごく「良さ」を感じました。演者の皆さんの素晴らしいパフォーマンスに加えて、作品を覆った雰囲気や空気感の心地よさが、多分この「良さ」の正体なのだと思います。

ちなみに、公演期間が始まるまで今作がモーリー・イェストン作曲なことも知りませんでした。というかイェストンの存在を認識していなかった。『ファントム』『NINE』『グランドホテル』『タイタニック』このあたりみんなイェストンなんですね。後ろの2本は早く見てみたくて再演を心待ちにしている作品です。デスホリは2011年オフBW初演作品。期せずして比較的新しい作品に触れられたのも嬉しくて、これを書きながらもほくほくしてます。

 

安定感抜群の座組

月組さんを見るたびに感じるのが「誰が出てきても歌が上手い」ということ。「全てのミュージカル作品がそうであれ!」と常々思っていますが、普段観劇している界隈で歌唱面の不満がない座組って本当に少ない・・・書いていて悲しくなってきちゃいました。そんな中、月組さんは安定した歌唱で作品を届けてくれるので、私から絶大な信頼を得ています。

今回も1曲目のIn the Middle of Your Lifeから素晴らしいハーモニーと音圧でにっこにこになりました。7人であの音圧。月組さん、全体的にみんな声でっかくない?好き!

 

れいこさん無双状態

そんな声がでかくて歌が上手い方々を真ん中で引っ張る月城かなとさん(以下れいこさん)、めちゃくちゃ声がでかくて、めちゃくちゃ歌が上手い。

I Thought That I Could Liveがものすごかったよ。ゴージャスでハイカロリーな楽曲の魅力をこれでもかと浴びせられました。それでいて、ここまでの繊細なお芝居の流れも途絶えさせず、感情がしっかり乗っているのも最高でしたね。あ〜音源ください。オリキャスのCDだと上手いけれどなんか違うの!れいこさん死神の音源が今の私には必要。

あと、ここは蛇足だから読まなくていいけど、舞台中央で両膝を床について歌ったり、神に向かって歌ったりするれいこさんを見て「『フランケンシュタイン』やりません?」って思うなどしました。でも実際やるとしたらアンリかな。いやでもな、れいこさんは墓を掘らなさそう(大抵の人はそう)。なにはともあれ、美しい人が突然好みの動作するのはびっくりしますというお話。脱線終わり。

 

そして、お芝居も素敵なんですよね🥺✨

グラツィアの「私、世界で一番幸せよ」を受けての「僕は...世界で一番自分勝手な男だ」に完全にやられました。台詞の美しさはさることながら、れいこさんの声色と表情が素晴らしくて。なんとも形容し難い複雑な響きに心が引っ張られて胸が苦しくなりました。

コミカルなお芝居も上手い。冒頭の得体が知らなくて恐ろしい死神から、ランベルティ公爵と話していくうちに徐々に徐々に恐ろしさが剥がれていく。そして「ぶっちゃけ...」からの切り替えですよね。声の使い分けと間の取り方が天才的。

 

声がでかくて、歌が上手くて、芝居が繊細で、それから純粋にビジュが強い。いや、完璧すぎる。サーキ殿下の登場シーンのきらめきが強すぎる。殿下を迎え入れるランベルティ家の面々が代わる代わる歌う楽曲の説得力がすごいし(もちろん歌唱力も)、合間に入れる謎ダンスと謎ポーズでさえ決まってしまう。これまで、青年・少年っぽさが全面に出る役のれいこさんばっかり見てきたから、そんなガチの王子様ルックで出てこられると困る😳

 

青年らしさが際立つ死神

多分、これはれいこさんが演じるからこそ生まれてくる部分だと思う。なぜならオリキャスCDを聴いても歌声に青年らしさは感じられないから。そして死神が青年らしいからこそ私はこの公演を楽しめたんだと思う。

 

死神はグラツィアを連れて行く覚悟を決めたはずが、ランベルティ公爵との会話で揺らぎ、連れて行かない決心をした上で、結局連れて行く(グラツィアは自分で選び取っているけれど)と、方針が揺らぎに揺らぎまくっているのだけれど、二転三転する彼の覚悟に不信感を抱くことは無かったんですよね。それは多分、れいこさんの声やお芝居に含まれる「青年感・少年感」の強さのおかげ。

 

死神の決心が崩れるのが、ランベルティに「あったかもしれない、続いたかもしれない未来の命」を持ち出されたとき。それまで何を言われても突っぱねていた死神は突然しおらしくなり「連れて行くのはやめる」と言う。ここで、強権を振るうことなく、急に引き下がる死神はとても幼く見えて、彼がランベルティの発言に怖気付いて、考えを変える展開に説得力があります。青年らしさのおかげで「迷って当たり前」「揺らいで当たり前」の死神を愛せるんですよね。

 

死神とグラツィアのバランスで「私に優しい」仕上がりに

それから、死神という役がいわゆる「男性性」から遠ざかることで、結末が(私に)「優しい」仕上がりになっていました。

多分、死神が男性役者さんで、あの結末だったら、『グラツィア!そいつは全然事情を説明しないまま君を連れて行こうとした卑怯な男だぞ!いいのか!?』って思っちゃうんじゃないかな(例『ジェーン・エア』)。父親の庇護下(支配下とも言える)から別の男の元に移動するのか、とも。『エリザベート』も長らくラストシーンに納得できなくて、うんうん唸ってましたからね(ちなみにこちらはラブロマンス的な見方から逃れることで納得のいく解釈をできるようになりつつあります。)。

ストーリー的には「死神がグラツィアを『得る』」話に見えてきそうなのに、そうはなっていない。これは、パワーバランスが上手くいっていたからだと思います。れいこさんの繊細でやや幼さの残る死神と、海乃美月さん(以下、海ちゃん)のグラツィアのバランス。海ちゃんのグラツィアは活力に溢れていて、ラストにしても「旅立ちを自ら『選んだ』」という印象がありました。弱さを感じられる死神と活気があって自ら選択をする女性、このバランスが「私に優しい」仕上がりを生んでいました。

1920年代スタイルのドレスを見ながら、2013年映画版『華麗なるギャツビー』でデイジーの言っていた「かわいくておバカな女の子」を思い出しました。グラツィアは多分プロット的にはそれになり得るけれど、海ちゃんのグラツィアはそうではなかった。そこがとても好きでした。海ちゃん、歌唱も素晴らしくて本当に素敵だったな。高いキーのファルセットでも声量がすごい。

 

かわいい殿下から冷たい死神へ

1幕の殿下、かわいすぎましたよね~!!

深夜に溌溂とランベルティ家の扉を叩きまくるところから始まり(1つ前の公爵の部屋のシーンからのスピード感と、扉の巨大な影を映す演出がとても好き)、目玉焼きに大興奮するAlive!、ベッドで飛び跳ねるのも、メイドにキスされてあっさりメロメロになるちょろさもアリスとの絡みもかわいい。

そんなかわいいを積み重ねて、観客が彼が死神であることを忘れ、しっかりと殿下のことを大好きになった頃合いで、公爵に高圧的な態度を取る姿を見せて、「ああ、そうだ、こいつは死神なんだ」と思い出させるのが強いな~憎いな~と思いました。場を凍り付かせておきながら、何事もなかったかのように完璧な笑顔で屋敷を後にする殿下の圧倒的「人外感」にもやられました。

 

サイドプロットの恋愛模様も素敵

私は恋愛が主軸の物語は(以下略)なんですけど、今作は死神とグラツィア以外のキャラクターの恋愛パートもとても楽しく見られました。

突然婚約破棄されて落ち込むコラードとそんな彼を思い続けているデイジーのすれ違いデュエット What Do You Doはコミカルで楽しかったし、ダリオとエヴァンジェリーナの関係性はスローであたたかくて素敵だな~としみじみしながら見ていました。

グラツィア・アリス・デイジーの3人がそれぞれの思い人への気持ちを歌うFinally to Knowはかわいかったけれど、アリスが突然エリックと踊る感じになっていてびっくり。3組のカップルが踊る姿がディズニーのショーのプリンセスの場面っぽいな~と思うなどしました。

 

アリスが好き!!!!!

白河りりさん演じるアリスがめちゃくちゃ好きでした!!これまでにも何回か拝見してきたとは思うのですが、私はまだお顔とお名前が一致している方が少ないので「出会った」っていう感覚です。

Shimmy Like They Do in Pareeが華やかでとっても素敵だったんですよね。赤いキラキラのドレス。声の強さ。好き!殿下をお尻でどつくアリスもどつかれる殿下もかわいすぎてテンションぶち上りシーンでした。そしてそこから「本当は田舎出身なの」と打ち明けるところのかわいさも!

 

映像の使い方

今回、演出も好きでした。

特に映像の使い方が上手かったです。冒頭の時代背景の説明であったり、コラードがロベルトの死を振り返るRoberto's Eyesで映し出される「目」であったり、Losing Robertoでステファニーがロベルトの生前の姿を回想するシーンで舞台全体に映し出されるざらついた古いフィルムのようなエフェクトであったり。あと、洞窟の中のシーンでは雨が地面で跳ねる様子を床面に投影していたりもして、細やかなこだわりが感じられたのがとてもよかったです。素敵でした。

 

はじめての別箱公演観劇

でした。「宝塚を見に来てフィナーレがないなんて、ミラーボールがないなんて」と思っていましたが、むしろ今作に関しては「ない方が心地良い」。作品の性質上、余韻が残るまま劇場を後にできてよかったです。

あと、そもそもこの作品自体が別箱だからこそできる作品なのかもな~なんて思ったり。主演以外の歌の比重も大きいですしね。とにかく、目玉焼きに釣られて見に行って良かったです。

 

おまけ

今回はソワレ、というかジュルネ?だったのですが、マチネの終了時間と私の見る回の間の時間がとても短くて、オーブまでエスカレーターを上がっていく間に上から続々と観劇済みの方々が降りてきて、上がった先にもたくさん開場待ちをしている方々いて、人の多さに圧倒されました。オーブ周辺にこんなにたくさんの人がいるのは初めて見た気がする。これが宝塚。すごい。

あと今回、開演前の客席の静けさがとても好きでした。e+貸切公演だったので、e+の民に静かな人が多かったのかな。作品の世界に入り込みやすくて助かります。

 

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