韓国発の2人ミュージカルでずーっと見たかった『海賊(해적)』をついに見てきちゃいました〜🏴☠️
もともと「2人ミュージカル」が好きなのですが、今作はそこにジェンダーフリーキャスティングという方式が加わっていて、女女、男男、男女、どの組み合わせでも上演できると聞いて、ずっと見たい!と思い続けてきた作品でした。
「当日のキャスト」っていう項目までは、ネタバレなし(何をもってネタバレというかにもよるが)でいこうと思うので、回避したい方は「感想」パート入る前で離脱してくださいな。
いざ、劇場へ
劇場があるのは大学路!劇場街になっているということでずっと訪れたいと思っていた憧れの場所です。
『海賊』が上演されていたのは서경대학교 공연예술센터 스콘 1관(西京大学公演芸術センター スコーン1)。西京大学のキャンパスにあるわけではないので要注意ですね。
スコーン2では『The Tale April Fools』という作品を上演していました。
Interparkで購入したチケットを引き換えるべく写真左側のチケットブースに並ぶと、こちらはスコーン2のブースだったらしく「地下に降りて」と言われました。
建物に入るとエレベーターはとても並んでいたので、階段を使って地下に。どこまでも続いていくように思える階段を黙々と降りていくと、地下3階に劇場の入り口がありました。
チケットブースで予約画面を見せて無事チケットを受け取り、横の物販を見ると、翌日の11日が千穐楽ということもあってか、ほぼ全部品切れでした。OSTとかあったら買ってくれば良かったな(なぜかSpotifyで聴けたはずのOSTが聴けなくなってて困り果ててるので)。
さっそく入場しようとすると、係員の方が何やら韓国語で注意事項を言ってくれている模様。わからなかったけれど「撮影禁止」の案内かな〜と思いながら、気まずい笑みを浮かべて劇場内に入り、自席を目指していくと、後ろから別のスタッフの方が追いかけてきてくれて、日本語で「カーテンコールのみ撮影できます」と教えてくれて、そのまま席までの案内もしてくれました。ありがたいです。おかげさまでカテコばっちり撮影できました😌✨
作品概要&あらすじ
公式サイトを和訳アプリにかけて少し付け足しただけのものですが、日本未上陸なので一応。
初演:2019年
脚本・作詞:이희준(イ・ヒジュン)
作曲:박정아(パク・ジョンア)
あらすじ
海賊が出入りする港町に住むルイス。海賊だった父親が亡くなった後、ルイスの元に父親の友人だったと言うキャプテン・ジャックが現れる。ジャックは遺品や遺言の有無を尋ね、ルイスは何もないと答えるが、父親のみすぼらしい遺品の1つが宝島への地図であることに気がつく。ルイスは「自分を連れていかなければ、地図について教えない」と主張。ジャックは渋々ルイスを海賊船に乗せて出航することになる。
宝島「ローズアイランド」に向かう途中、ジャックは立ち寄った酒場の店主アンに「船に乗せて欲しい」と頼まれる。ジャックとの射撃勝負に勝ったアンは「アンソニー」として船に乗ることに。
航海を続けていると、ジャックの船が別の海賊船に襲われる。1人の剣士が乗り込んできて、アンがそれを迎え撃つ。「マルコ」と名乗る剣士とアンは戦闘を通して惹かれ合い、アンが再び名を尋ねると剣士は「マリア」と名乗り「メリーと呼んでほしい」と言う。アンもまた自分の本名を彼女に告げ、メリーを仲間に迎え入れる。
こんな感じで、ローズアイランドを目指す海賊たちの愛と友情を描いた作品になっています。アンとメリーの出会いの戦闘場面は「Love at First Sight」という楽曲です!戦いながら恋に落ちます👏👏👏
当日のキャスト
ルイス/アン: 정동화(チョン・ドンファ)
ジャック/メリー: 김대현(キム・デヒョン)
この日はマチネが男男回、ソワレが女女回だったので迷ったのですが、飛行機で早朝4時に韓国に着いて夜まで体力が保つかわからなかったので、マチネにしてみました。
実際に過ごしてみると、旅行ハイが起きているのか意外に体力面は大丈夫だったので、次回はマチソワいけるかもです。再演があったら女女回も絶対見たい!
そんなこんなでキャストについては特に調べずに取ったのですが、2人ともめちゃくちゃ上手くて大好きになりました。後から調べたら、デヒョンさんは『女神様が見ている』『ブラック メリーポピンズ』『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』など私が見たことのある韓ミュにたくさん出演されていました。経歴に『ブラザーズ・カラマーゾフ』もあったよ。TLで人気のブカマ、私も早めに履修したいな🥺
ドンファさんは、私の愛するSOMLでアルヴィンを演じてらっしゃるそう!年末年始の公演にも出ますかね〜出てほしいな〜。既にSOMLは見に行く気満々なので。あとは『スリル・ミー』で「私」も「彼」も演じてる。わかる。笑顔の柔らかい感じが「私」だし、真顔になったら「彼」なんよ。
感想
言語の壁は予習と読解力で超える
私は韓国語が全くわからない状態なので、今回はあらすじを最後まで読んでから臨みました。(ネットに作品全部のあらすじを楽曲ごとに日本語でまとめて公開してらっしゃる方がいて、とても助かりました🙏)そんなこんなで、台詞パートがわからないさみしさはありつつも、楽曲・歌声・表情からしっかり感情の波を受け取って、かなり楽しむことができました。これがミュージカルという表現媒体の面白さでもありますよね。言葉の壁を越えやすい。
演じ分けというよりは「4役いる」感覚
男女を演じ分けることへの不安とその解消
今作は1人2役制になっていて、それぞれの役者が男性キャラクターと女性キャラクターを演じ分けます。今回の公演では、ドンファさんがルイス(男)とアン(女)、デヒョンさんがジャック(男)とメリー(女)を演じています。アンとメリーは男装した女海賊なので、男性キャストで上演するときには、男装の女性を演じる男性俳優という風に、かなりねじれた状態になるわけです。
私は観劇前、男性が女性役を演じることに対して、ちょっとした不安を感じていました。男性が舞台上で男性役と女性役を演じ分けるためには、女性役を演じるときに「女性らしさ」を纏うほかないのではないか。(女性俳優の場合は逆に「男性らしさ」を纏う)そうしたアプローチを楽しめるだろうか、と。
例えば、女性俳優がユダを演じる場合、おそらくその俳優は「ユダは男性だから『男性らしい』動き方をしよう、脚を外に開いて歩幅を大きくして・・・」みたいなアプローチはしないと思うんですよね。(宝塚ではそれが求められるね)ただ、男と女を「舞台上で演じ分け」なければならないとなると、差を生み出すために『女性らしさ』『男性らしさ』みたいな部分に頼るしかなくなるのではないかと考えて不安になっていました。
でも、実際に観劇してみると、その辺りについてのひっかかりはありませんでした。多分、漠然と「男性俳優が演じる女性役」と捉えるしかなかったアンとメリーについて深く知っていくことで、「舞台上で女を演じる」が「舞台上でアンを演じる/メリーを演じる」に変わったのが大きいのではないかと感じています。ルイスは若くていきいきしていていつも目をきらめかせている。アンは人生経験が豊富で落ち着いているように見えて熱い。この2人の人物を演じ分けられれば良いわけで、性別を演じ分ける必要はないんですね。
舞台上での演じ分け
演者さんたちは2つのキャラクターを演じ分けるときに、髪型やベースの服はそのままジャケットや小物だけを付け替えます。今作では2人しか演者がいないので、1人がパフォーマンスしている間にもう1人が舞台袖で変身します。2人ミュージカルで演じ分けというと『ダブル・トラブル』が連想されますが、今作に関しては「ギリギリの早替えを楽しむ」という感じはありません。
1枚目からジャック&アン、2枚目がルイス、3枚目がメリー
大規模な衣装替えやカツラを使っていないのに、声の響きや纏うオーラで2つの役が明確に演じ分けられていくことに感動しました。言葉として伝わってるかな。誇張や記号化に頼らずに役を組み立てているところがとても素敵なんです。「演じ分けている」というより、「4人のキャラクターがそこにいる」感覚がありました。
アンとメリーの話をさせてくれ
アンとメリーのパートが良すぎたので、その話をしたくてたまらないです。
決闘しながらの女女デュエット
まず「Love at First Sight」の話を。ミュージカルにおいて女女デュエットって少ないじゃないですか。母数が少ないので、女女が喧嘩しながら歌うデュエットは当然とても少ない(良作は多いんですけど)
そして、男男喧嘩デュエットに「命を奪い合う」シチュエーションが多いのに対して、女女喧嘩デュエットの中にそういった楽曲はほとんどないのが気になっていて。(ちなみに私はこれまで出会ったことがないと思う。もし、お心当たりがある方はコメントください!)。とういうか、デュエットでなくとも女女で「命を奪い合う」展開自体がミュージカルにあんまりなくない?決闘があるとなると時代ものになるし、そうなると女は戦わない時代になってしまうから?そんな中での「Love at First Sight」ですよ!
歌詞の内容自体は「一目惚れ」の方に寄っているものの、アンとメリーがガッツリ剣を交えながら歌っていてめちゃくちゃかっこいいんだ!!!女女のこんなにかっこいい戦闘シーンをミュージカルで見る機会がなかったし、戦いながら恋に落ちる展開はそりゃあ最高なんよ。
アンはメリーの中に「ずっと探してきた戦いの神」を見つけ、メリーはアンの中に「忘れてしまった情熱」を見て、恋に落ちていきます。
ミュージカル界隈、女女の決闘もないけれど女女カップルが主軸で描かれる作品もあんまりなくない?『The Prom』くらいしか思いつかない。クィアなミュージカル、だいたい男男カップルの話かドラァグの話だよねって中での『海賊』。ほんとに稀有な作品。なんかそれが嬉しすぎて、アンとメリーの決闘が始まった瞬間うるうるしちゃいました。
それと同時に「私もミュージカルという愛するフィールドで描かれたいな〜」という想いが強まりました。韓国のクリエイターさん、Ace/Aroの出てくるミュージカルも作ってくれないかな〜🥺🥺🥺
主催のコンテンツプランニング公式YouTubeに1曲丸々動画が上がってる。ありがたすぎる。しかも、私の心をかっさらっていったドンファさんのアンですよ。
帰ってきてからずーっとこれ見てるし、この感想記事を書くのに手間取っているのも動画を見ちゃうせい。
デヒョンさんメリーとドンファさんアンもバチバチにかっこよかったんですよ。それはそうと女女キャスト回も見たいー!!!!
女女回も動画見つけました。かっこよい😭
シャッター音がものすごくて、プレスコールの日に撮られたっぽいので違法撮影ではないと思うけど、ダメそうだったら消します。
アンのバックグラウンド
ジャックに対して「私が勝ったら船に乗せろ」と射撃勝負を挑み、圧倒的な腕を見せて船に乗る権利を勝ち取るアンがかっこいい。「Stella Maris」で「星を撃ち抜く」演出も美しくて、すぐにアンの虜になってしまいました。ジャックの気持ちわかるわかる。
でも、アンは私生児で戸籍を手に入れるために結婚していて、夫は彼女が航海に出ることを許さない。そんなアンが裁判にかけられた結果とった行動が「自殺したふり作戦」。海に飛び込んで「死んだてい」で周りの人たちを騙して船に乗るんですけど、そのときの飛び込み方がものすごいカラッとしていて好きでした。
共闘と別れ
「アンとメリーの共闘シーン」があるのも熱い!決闘も共闘も女女では珍しいんだよね。もっと増えてくれ。
海賊ハンターが船に乗り込んできたときに、背中を預けあって戦う2人がもうはちゃめちゃにかっこよくて。劣勢になる中、ぼろぼろになりながら互いをかばい合って戦う姿も最高でした。
そして、敗戦からの獄中お別れシーンです。アンは父親が保釈金を出してくれることになったけれど、メリーと一緒に死ぬために牢屋に戻ってくるんですよね。でもメリーはアンが自分と一緒に死ぬことを許さず、生きるように説得します。それを受け入れて、アンが牢を去る直前、鉄格子(ないのに見える)越しにメリーにキスをしようとするんですけど、それをメリーが避けるんですよ!!!そこがまじで切なすぎて「うわああああああ」ってなりました。アンもメリーもきっと色々思うところはあって、その2人の「心の痛み」みたいなものが一気に流れ込んできて胸が苦しくなりました。キスを避けた/避けられたあとは、2人ともしばし固まって何かを嚙み締めたのち、固いハグをして、そしてアンは走って出ていきます。そしてメリーは1人、処刑されます。
普段の私なら、2人で処刑される展開を望むような気もするんですけど、あの場面で「生きること」を選択できるところがアンらしいと思うし、彼女のそういうところ、生き抜いていくの強さみたいな部分がとても好きなので、「あああ~好き!」と思いながら見てました。
キャストごとの感想
キム・デヒョンさん
デヒョンさんは、歌が強強で好きでした。音圧がものすごい。私は今回1番後ろの列で鑑賞したんですけど、ものすごい圧で音が突き刺さってきたので前の方の人は身体に穴空いてると思います。ロックな楽曲とも相性が良くて、ほんとに素敵でした。
ジャックとメリーの演じ分けも上手かったな~。ジャックは、かっこつけようとするけれど決まり切らないところや心の柔らかさが見え見えなところがとても愛らしかったです。コミカルな動きやお芝居もかわいくて、たくさん笑いとってたから私も理解したかったよー!!!!
反対にメリーは「静」っていう感じで、落ち着いていて影のあるところがかっこよかったです。ちょっとした衣装と小道具の変化だけで、全くの別人を表現できるのがやはりすごい。ジャックとは声色を変えていたけれど、それでもしっかり音圧でびりびりさせてくれるところも好きでした。
チョン・ドンファさん
ドンファさんのルイスが1曲目を歌うのを見ながら「こんな歌上手い若手俳優さんいる韓国うらやましいな〜」とか思ってたけど、ドンファさん全然若手じゃなかった。デヒョンさんとドンファさん同期だった。若者演技がうますぎて😂
ルイスのときの「へにゃ」っとした笑顔はかわいすぎるし、アンのときのキリッとした表情はかっこよすぎるし、どっちも素敵で困りました。歌声も好みなんですよね。音の響きは軽めなんだけど、声に宿るニュアンスがめっちゃ刺さって、感情をぎゅっと掴まれる感じがする。大丈夫かな、もしドンファさんのアルヴィンでsoml見たら、私どうなることやらだな。
あと、ルイス/アン役者は2回「残される側の芝居」を見せることになるんですよ。そこでやられちゃった部分もあるよね。私は『フランケンシュタイン』の「君の夢の中で」とか『ノートルダムの鐘』の「Someday」とかが大好きなんですよ。処刑台に立つジャックを、幸せな記憶を抱きしめながら、なんとか笑顔で歌を歌って見送るルイスと、処刑されるのを待つメリーを牢に残して、色んな感情を抱え込みながらその場を去るアン。両方ともあまりにも良すぎました。
韓国ミュージカル、見れば見るほど素敵な俳優さんに出会えてしまうから困る。すぐ渡韓したくなってしまう。ほんと困る。
そんなこんなで、作品もパフォーマンスもとても好みな作品でした。日本でもぜひ輸入して上演してほしいわ。玲奈・ちゃぴ・ソニンあたりの「Love at First Sight」が見たいし、万里生さん・達成あたりにルイス/アンやってほしい。ぜったい似合う。アミューズさん!よろしく!
主催の콘텐츠계획(コンテンツプランニング)のインスタを覗いたら、出演者のみなさんのめちゃくちゃかわいい写真が大量に投稿されてました。下の方にある2ショビジュアルもいい。心が10秒チャージされるのでおすすめです。
https://instagram.com/kontentz_planning?igshid=MmJiY2I4NDBkZg==
ドンファさん、どの写真もあざとかわいくて笑う。前回のSOMLのインスタも、アルヴィン役者さん3人の写真が並んでる中で1人だけばっちりウインクしてるんだよな😉 陽キャ感。
女女ペアの写真もめちゃくちゃ可愛いし、ほんとありがたいインスタだ〜!!
【韓国観劇記2】