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逆身長差のトランクキスが好き『アナスタシア』9/20 M 感想

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私がミュオタになったのが2021年で、初めからずっと晴香ちゃんのことは好きだったこともあり、「アナスタシアを見たかった」という想いが強かったので、遂に見られてとても幸せでした!!

作品概要

Anastasia
脚本:Terrence McNally(テレンス・マクナリー)
作詞:Lynn Ahrens(リン・アレンズ)
作曲:Stephen Flaherty(スティーブン・フラーティ)
初演:2016年 ハートフォード
   2017年 BW

Anastasia (Original Broadway Cast Recording)

Anastasia (Original Broadway Cast Recording)

劇場:東急シアターオーブ
演出:Darko Tresnjak(ダルコ・トレスニャク)※BWプロダクションのレプリカ公演
翻訳・訳詞:高橋亜子

日本での上演
2020年3月 初演 ※コロナで半分以上の公演が中止に
2020年11月~2021年2月 宝塚歌劇団で上演(非レプリカ+ディミトリのソロ曲追加)

 

日生劇場ではちょうど、同じくアレンズ&フラーティ作の『ラグタイム』が上演されていて、突然のアレンズ&フラーティ祭りが巻き起こっています。

 

キャスト

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アーニャ:木下晴香
ディミトリ:内海啓貴
グレブ:海宝直人
ヴラド:石川禅
リリー:マルシア
マリア皇太后麻実れい
リトルアナスタシア:戸張柚

 

作品の感想

2021年に宙組の公演を見て以来の『アナスタシア』でした。観劇前日の夜にアニメ映画版も見ましたが、どちらもはっきりとした記憶があるわけではありません(あの時はまだ観劇レポも書いていなかったので振り返れない。下手ド端前から2列目あたりで首を右に向けて観劇していたら、知らないうちに真横に仁王立ちのキキちゃんグレブがいてびっくりしたことはよく覚えてる)。なので、今回はほぼ初見のような気持ちで観劇しました。基本的には今回のバージョンが1番好きなのですが、アニメ版の「宮殿で下働きをしていた幼少期のディミトリがアナスタシアを逃がした」という設定が好きだったので、In a Crowd of Thousandsでときめききれないのが唯一惜しい点です。

 

LEDパネルを使用した映像背景

『アナスタシア』と言えば高精細のLEDパネルを使用した映像背景!!!とても綺麗でした。私はこれまで映像背景の使用をあまり好んではいなかったのですが(想像力が削がれる感じがするから、と口では言いつつ思い返してみるとただ映像がちゃちかったからかもしれないと最近は思っている)、ここまで美しい映像を出せるなら「ありだな」と思うに至りました。My PetersburgとかParis Holds the Keyとか背景のアングルがぐるーっと動いたりするとやや不自然に感じたりもしたのですが、アーニャたちがパリ(ほとんど)に着いた場面で一面に広がる花を付けた木々(桜みたいに見えた)やアーニャが宮殿での舞踏会を思い出す際に映し出される踊る幽霊がとても美しくてゴージャスでした。上手と下手にある窓枠のあるセットが回転して場面転換するときには、窓枠の背後の液晶に幕が降りるような映像を流して場面転換を上手く促していたのも良かったです(細かいし、上手く説明できないな・・・)。

 

翻訳と訳詞がいい

私はいつもMy PetersburgJourney to the Pastを聴くばかりで、あんまり今作の歌詞が頭に入っていたわけではないのですが、観劇しながら訳詞・翻訳の良さを感じていました。特にグレブの「A revolution is a simple thing」を「革命に感情はいらない」と訳していたのも良かった気がします。意味の幅は狭まるけれど今回の公演のグレブ(まだ海宝さんしか見ていないけれど)はこの言葉を中心に組み立てられている感じもあり、上手くはまっていると思いました。

My Petersburgの中で特に好きな「There's a boy growing up, Who was me, All I've been, All I'll be」のところは直前の訳がかさんでいて「俺は一人生きた」に集約されてしまいちょっと悲しかったですが。こればかりは仕方がないですね。文字数を使うレトリックは訳詞で真っ先に削られる運命です。。。

 

「Home, Love, Family」

アーニャは、かつて手にしていたはずのFamily(血縁の家族=ナナ)、Love(家族からの愛情)、Home(我が家)を求めるけれど、これらって最近の価値観では比較的「追い求めなくてもいいのかもしれない」とされているものだと思います。血縁の家族の絆をテーマにした作品は今ではディズニーと日本の民放ドラマくらいでしか見ない気がする(ディズニーは最近年の作品たちを見ていないのに擦ってごめんね。でもミラベルは家を出るべきだったと思ってるからさ)。

話が逸れたけれど、『アナスタシア』ではこれらの「追い求めなくてもいいのかもしれないもの」を追い求めることを肯定しつつ、物語の着地点を別のところに持ってきているのがバランスが良くて上手いなと。ナナとの再会と自分の過去を再び自分のものとしたことを喜びつつも、アーニャとして生きる中で築いてきた絆や愛をこれからの拠り所として選択するのが良いですよね。アナスタシアとしての人生とアーニャとしての人生が一直線に繋がった上でこの後も続いていく感じがとても好きでした。

それから「Home, Love, Family」のHomeとは意味が離れるけれど、祖国・故郷としてのHomeへの想いというものの描き方も好きでした。アーニャは「Home, Love, Family」を求めて、ディミトリとヴラドは革命政府からの追求を逃れるためにパリ行きを切望しているけれど、出発の前に思うことは祖国・故郷であるロシアに別れを告げる悲しさであるっていうことがStay, I Pray Youで丁寧に描かれていて良かったです。

ロシア革命そのものに恨みをぶつけることはしないけれど、革命の余波で幼い子どもを含む皇族が皆殺しにされたことの惨さはしっかり描いていることなども考えると政治的にもバランスの取り方が上手いかもしれません。物語も重すぎず軽すぎず、ファンタジーと現実の塩梅もちょうどいい。そういう意味で多くの人に広くおすすめしやすい作品だなと感じました。

 

キャスト感想

晴香アーニャ

やっと見られた「はるかーにゃ」!!!!幸せすぎました。アーニャ楽曲は高いキーが連続するようなところも多くて難曲揃いなのですが、流石晴香ちゃんでした。特にJourney to the Pastがさらにもう一段ギアが上がる感じで、歌いこまれてきたんだろうなという伸び伸びとした歌唱で素晴らしかったです。

歌がうまいのはもちろんなんですがお芝居も好きでしたね~!!優しいけれど率直で強くて頑固で、そして茶目っ気もあって(ダンス練習でディミトリの脛を蹴ってすっとぼけてるのが可愛すぎましたし、禅ヴラドも「ん~かわいい~」って言ってて笑いました)。暴漢たちをぶん殴って撤退させる場面、表情や動きに「可憐な女の子が頑張っている感」が全くなくて、晴香ちゃんの身長が高いことも相まってかナチュラルに強かったのも好きでしたね。野宿して国を渡ってきた説得力。

あと、リリーに会いに行くヴラドの蝶ネクタイを直してオフマイクで「素敵よ」って言いながら微笑みかけていたところとIn a Crowd of Thousandsでアーニャとディマがちょっと距離を置いてベッドに腰掛けるけれど、話をしていく中ではるかーにゃからディミトリに肩をドーンとぶつけて笑いあっていたところがかわいすぎでキュンでした。

晴香ちゃんが備えている気品があまりにも「かつては皇女として暮らしていた」という状況にぴったり合っていて最強のハマり役だったと思います。ビジュも最高でひたすらに「かわいい、好き、美」で頭が埋め尽くされてしまいました。どの衣装も似合っているけれど青いドレス姿のきらめきがすごい。

 

内海ディミトリ

こちらもやっと見られた「ディミよし」!とても素敵でした。内海さん、生で拝見したのは初めてだったのですが、高音のロングトーンもすんなり出ていて安定していました。

そして巷で話題の「幼馴染感」もめっちゃわかりました。何がそれを生み出しているのかはいまいちわからないんですけどね。。。それなりにやんちゃな感じもありつつひたすらに人の好さと優しさが前面に出ているところかな~。とっても素敵でした。淡い恋心でピュアですごくクリーンな感じがしました。かわいかったですディミよし。幼馴染感があるからこそディマが「皇女様」って跪くところの切なさが増していました。

We'll Go from Thereで電車に足をかける姿も映えていてかっこかわいかったです。ペテルブルクの女の子たちにもきゃっきゃ散々からかわれてかわいがられていそうな気配がありましたよ。あとホテルでパジャマのズボンを履いてやや浮かれモードのディマがめっちゃかわいい。トランクキスも晴香ちゃんの身長が高くて2人の身長差が元々ない分、トランクの分はるかーにゃが上からかがむようにキスしていて、その構図が大変好きでした。

 

はるよし(初めて呼んだ)の最高フォト貼っときますね。見た瞬間「んぎゃー」って言っちゃった😂

 

海宝グレブ

まじで信じられないくらい歌が上手いですね。これまで聴く機会の少なかった中低音の厚みと深みを楽しみつつ、楽曲終盤のロングトーンの安定のバズーカを浴びられて幸せでした。ただやっぱり海宝さんの高音バズーカが恋しくなってきますね!もっと上の音も聴かせて〜!って!来週海宝ディマも観劇予定なのでわくわくが止まりません。

敵役ポジションの海宝さんを見るのが初めてだったのでそこはとても新鮮でした!!人間らしい葛藤に満ちていてよかったです。基本的にはかっちりしていて職務を全うする忠実な将官なのに、曲中で「革命に感情はいらない」の部分になると必ず目を赤くして涙を浮かべていて、そこに彼の少年時代からのトラウマが感じられました。アーニャと対峙して「撃てない」と膝から崩れ落ちてしまうところも良かったです。そして海宝グレブは本編のあと、うまくもろもろを割り切って新たな人生を歩んでいけそうだなと思いました。海宝クリスのどうしようもない病み方を目撃したあとだと、グレブはまだまだ健康的な心を持ってるぞと思えました。

あとアーニャと初めて会ったときに速攻でお茶に誘って、執務室にアーニャが来たときには部下の前なのに思わず早口ハイテンションで話しかけてしまうグレブがかわいかったです。潔癖っぽいのに厳重注意されるガールズに顎クイしていて笑いました。

 

禅ヴラド

禅さんの才能が大爆発でした~!!!歌も踊りもお芝居も満載、これぞ私が見たかった禅さん!!茶目っ気たっぷりでひたすらにかわいいんだけれど、それだけではなく、宮廷に入り込んでいただけの物事を見極める力がある切れ者な雰囲気も覗かせるキャラクターに仕上がっていてとても素敵でした。禅さんヴラドが出てきて歌うたびに顔がほころんでしまいました。ひげもじゃも似合ってましたよ。

観劇後一夜明けて真っ先に思ったことは「禅ヴラドの音源は残りますかね?」でしたよ。

 

マルシアリリー

Land of Yesterdayで悪女オーラを放つ強い姿を見せたあと、The Countess and the Common Manでヴラドとのかわいい絡みを見せられて、ギャップにやられました。とっても素敵でした。

ナナに「私あの人(ヴラド)嫌いなのよ」と言われた後、一回「彼にも良いところが~」って擁護したら睨まれて「彼はクズです!!」ってバッサリ言い切るところがとっても好き!!!

 

麻実さんナナは台詞の重厚感が素晴らしかったんですけど歌がちょっと独特で。。。音と歌詞がもったり滑るのがな~もうちょいクリアに歌ってほしいかもです。

 

こんなにもメインキャストが役にハマっていて、美術も良くて、もちろん楽曲も素晴らしくて、愛しいキャラクターばかりの作品珍しいな~と思います。来週の公演も『ラグタイム』も楽しみで仕方がないです!!

 

OBCディマのデレクもハンサムで好きなんですけど、アーロンがワークショップで歌ったIn a Crowd of Thousandsの音源を久しぶりに聴いたらはちゃめちゃに甘くてやばかったです。みなさんぜひ。

 

【晴香ちゃん関連】

 

【海宝さん関連】

 

【禅さん関連】