Mind Palaceがない代わりに

来年には大学生じゃなくなるのでタイトル改めました。

圧倒的床面積でサッカーするALWミュージカル『ザ・ビューティフル・ゲーム』1/16 M 感想

作品としての観劇初めはALWのサッカーミュージカル⚽️

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晴香ちゃん× ALWってことでよく内容を知らないままチケットを取って「サッカーが主題なのかな〜?」なんて思っていたらアイルランド問題の話とのことだったので映画の『ベルファスト』を見て少し予習をしました。おかげで、ベルファストにおけるプロテスタント住民によるカトリック住民への攻撃や、IRAによる英国本土へのテロ行為の横行など当時の状況を少し把握した状態で観劇できました。

 

色々書いていくつもりだけど、結論ははっきりしていて、演者は良かったが作品自体が刺さらん&演出や美術、照明などがうまくいっていなくて気が散ってしまったって感じです。

作品・公演概要

The Beautiful Game
音楽: Andrew Lloyd Webber(アンドリュー・ロイド=ウェバー)
脚本・歌詞: Ben Elton(ベン・エルトン)
初演: 2000年 ウエストエンド

 

ミュージカル『ザ・ビューティフル・ゲーム
劇場: 日生劇場
上演台本・演出: 瀬戸山美咲
振付: Katie Spelman(ケイティ・スペルマン)
訳詞: 福田響志

 

作品感想

ベルファストでサッカー選手として活動しているジョンとその恋人メアリー (2人はカトリック) の恋愛模様をメインに描いていて、1幕終盤あたりからプロテスタント住民によるカトリック住民の無差別殺人、イングランドアメリカへの移住、IRAによるテロ行為などアイルランドを取り巻くテーマが本格的に絡んでくるような展開。

 

テーマ的には好きな感じなんですけど、お話があんまり面白いとは思えなくてうーんというところだったんですよね。多分ジョンとメアリーの恋愛パートが多くてカトリック住民が危機に晒されていることによる緊張感が伝わってきにくいこととかも要因な気がする。恋愛パートだけでなくサッカーシーンもあるし。日常から一転、命が脅かされるって場面もあるにはあるけれど、全体に日常と危機のコントラストの見せ方が微妙って感じでした。演出的なものもあるとは思うが戯曲自体もそうなんだと思います。

 

 

あとは、ジョンの政治的立場と作品の着地点がぼやっとしているのも気になりました。それによってジョンとメアリーにも共感しにくいというか。

まず、メアリーはカトリック住民に対する差別と暴力に抵抗するためにデモに参加したり署名活動をしたりしていている。対してジョンはメアリーの活動に興味を示さなくて、むしろ無駄だと考えているし、それを彼女に直接言ってしまうような人として描かれるので、なぜメアリーがジョンを好きでいるのかよくわかりませんでした。

そんなジョンはIRAメンバーになったトーマスの逃亡を助けた罪で逮捕され、刑務所の中IRA思想に染まり、一時はイングランドでのテロ行為の実行役になろうとするけれど、最終的には昔の自分を思い出し、メアリーの元に戻ります。IRAの思想は半ば洗脳のように刷り込まれたものであるからおいておくとして、元のジョンに戻って彼はこれからどう生きていくのでしょうか。

元々非暴力不服従を掲げて活動してきたメアリーは、2幕後半のIf This Is What We're Fighting Forでは「If this is how we fight our war, i don't want to win」、All The Love I Haveでは「Your son needs you, don't ignore him. Just to fight a war you cannot win」という歌詞を歌っていて、人の命が脅かされるような仕方での戦いは間違っているという立場は一貫していて共感できます。「a war you cannot win」という言葉は、戦いに勝つことを諦めているようでありつつ、プロテスタント側の暴徒の行いに対して暴力でやり返したときに生まれる「戦争」には勝つことができないし、そのような状況になってはならないという風にも解釈できるかなと思いました。だとすればメアリーは以前のように非暴力による抵抗運動を続けていくのかな〜。

 

ジョンは思い直して彼女と活動を共にするのかな。その辺を描いてくれたらまだ救いがあったように思うけれど、ジョンがユニフォームを息子に託して、冒頭のThe Beautiful Gameを皆で歌う様子を見ながら、何も変わらないまま作品の振り出しに戻ったような気がしてしまって、救いがないな〜と思ったり。あの状況でベルファストに住み続けるというのは1つの大きな選択であるとは思うし、その難しさはわかるけれど、大きな状況の変化が起こらない分、これからも歌っている人たちは暴行を受けたり、殺されたりするかもしれないんだよなと思うと辛いし、それが示唆されることなく無視されているのが結末として腑に落ちませんでした。まあでも、暴力行為はどこかの段階で止んでいるとはいえ、アイルランド問題は今でも進行中のものだから話の結末も用意しにくいっていうのがあるのかもな。

 

メアリーと対立する思想を持つのがトーマス。IRAの戦いは英国軍を勝たせないための戦いであり、戦いを次の世代に引き継ぐことができればそれがIRA側の勝利である、という考え方に関しては共感できる部分もありました。テロという方法は許すべきものではないけれど。六月の革命が暴動に終わったとしても二月革命がその意志を引き継ぐっていうのとも話としては近いものがありますし。

 

Wikipediaを読んでたら「The Beautiful Game」としてのあらすじと「The Boys in the Photograph」としてのあらすじの2パターンがあって、今回の上演は後者のあらすじの方でした。前者のバージョンでは、ジョンはトーマスを殺すし、IRAのミッションのためにイングランドに旅立つらしい。救いがないことこの上ないけれど、今回のバージョンのラストのもやっと感を思うと私は前者の方が好きかもしれないなと思ったり。

 

楽曲はALWなのにあんまり刺さらなかったんだけれど、曲中に突然曲調を変えたフレーズを挿入してくる感じがめちゃくちゃらしくて「うわーーーーロイドウェバー作品だーーーー!!!!」テンションが上がりました。

曲としてはGod's Own Countryが好きでした。メアリーとある女の子が同じコーラスを歌うけれど最後にはカトリックプロテスタントに分かれて違う歌詞を歌い始めるのがいい。同じ神を信じているのにどうして対立してしまうのかという虚しさが1曲に詰め込まれていました。


演出など見せ方についての感想

あんなに日生劇場の舞台の床面積を感じたのは初めてです。。。。そのくらい空間が有り余っていてなんだか悲しい気持ちになりました。予算足りなかったのかなって。サッカーシーンのためにそれなりのスペースが必要だと考えて、舞台の奥まで使うことにしたのかなと思うんですけど、だだっ広い素舞台(のような状態)に車が1台、演者が2人っていうシーンがあったりして、「どうしてそうなんたんだろう。他の作品ってどんな感じで舞台を使っていたっけ」と作品の内容やパフォーマンスに入り込めなくなる要因になってしまっていました。床面積が広いのが全部悪いわけではなく、帝劇ガイズとか韓国エリザのでっかい盆を使うシーンみたいに床面積を広げるのは好きなので、シーンの規模に合うように舞台を区切ることがいかに大切であるかを改めて実感しました。酒場と刑務所のシーンは良かったです!

 

あとこれは演出の問題か振付の問題かわからないのですが、キャストを横一列に並べる場面が多かったのもかなり気になりました。Overtureが終わってThe Beautiful Gameが始まる中、幕が上がるとキャストが横一列に並んでポーズを取っている様子や女性キャストが横2列に並んで客席正面を向き直立でコーラスする様子はなかなか奇妙でした。

 

ちなみにサッカーシーンは実際のボールを使ったり、照明でボールを表現したり、完全にエアーにしたり使い分けてました⚽️ これを書く前日に見たハイステ🏐もそんな感じだったので、舞台×球技はこのスタイルが定番なのかもしれませんね〜

 

キャスト感想

晴香・江理佳・梨里香のガールズトリオがとても素敵でした〜😌💕

かわいい☺️☺️☺️

3人とも安心と信頼です。素晴らしい。衣装もかわいかったし3人ともとても似合ってました。

特に江理佳ちゃんは、お名前は知っていたものの作品を見るのは初めてでした。いきいきしていてかっこよくてとっても素敵👀 クリスティンという役も江理佳ちゃんのことも一瞬で好きになってしまいました💘 パーティでトーマスがデルを追い出そうとした時に、怯まずトーマスに詰め寄っていたのがかっこよくてかっこよくて。しかもトーマスがとんちゃんでものすごいでかくて怖いんですよ!

 

晴香ちゃんもまたまた素敵でした😭 1幕のDon't Like Youの「だ〜いきらい!」で胸撃ち抜かれました💘 コミカルな曲は可愛いかったし、God's Own Countryのようなしっとりした曲やアカペラのIf This Is What We're Fighting Forは流石でした。酒場でバーナデットとジンジャーがキスするのを見て口をあんぐり開けて喜んでいたり、クリスティンと一緒にバーナデットの恋バナを聞き出してきゃっきゃしていたりする中で、メアリーの少しお姉ちゃん気質みたいなものが見えて好きでした。

 

梨里香ちゃんの透き通るような歌声はピュアなバーナデットとの相性も抜群でした。辛い展開が続く中、ジョンが刑務所にいる間メアリーとバーナデットが支え合って生きていたってわかることだけが救いでしたね。

 

ジョン役の小瀧さんもハマり役だったな〜と思います!ポップス・ロック寄りの歌唱が楽曲と合っていたし、少し粗めの歌い方がジョンの若さであったり青臭さであったりを演出していて、1曲目から「いいぞ!!」ってなりました。

自分で見たものやレポを読んだものから、今まではジャニーズの方のミュージカル出演、特にミュージカル初挑戦初主演には苦手意識があって避けてきたのですが (もちろん上手い方もいるのはわかっているし、実際坂本くんとか上手いな〜と思いました)、小瀧さんも歌えていたので事務所で括って避けるのはやめようと思いました。ちゃんと人ごとにリサーチします💪

 

とんちゃんのトーマスは威圧感がすごかったです!ちょっと背中を曲げて歩いているのが絶妙に怖い!!後半、バーでジョンと話すシーンではとてつもなくハードボイルドな渋いオーラを出していてびっくりしました😂

 

そんなこんなでキャスティングがハマっていて演者さんたちは素敵でした〜✨

 

ひとつだけ思ったのは、デュエットは特殊技能なんだな〜ということです。ジョンとメアリー、バーナデットとジンジャーのデュエットは声がぶつかってしまっていたのが気になりました。男性側がもう少し柔らかい音色で歌ってほしいなってところです。めぐさんがグリブラ「デュエットの極意回」で誰にでも声質合わせられるって言ってたのを思い出すなどしました。

 

オリキャスのCDがあるけれど、収録されていない曲がたくさん😢 カットされている曲的に「The Beautiful Game」のあらすじの方のバージョンな気がする。

The Beautiful Game

The Beautiful Game

  • THE COMPANY
  • ミュージカル
  • ¥255