素敵な悪趣味は嫌いじゃない『ピピン』9/3 M 感想

大きなうねる人影が映し出されたかと思うと徐々に縮んでいき、影と入れ替わるようにリーディングプレイヤーが登場、Magic To Doを歌い始める。オープニングナンバーの演出にここまで心を掴まれたのは初めてかもしれない。それくらい高揚しました。かっこよすぎる。

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Magic To Doという楽曲自体もとても好き。BNMC2020の映像でクリスタル・ケイちゃんが歌っているのを見て素敵だな〜と思っていたけれど、扮装や振付込みで見てさらに好きになりました!ずーっと頭に流れてるし、成り切って動きも真似しながら歌っちゃう〜デュルリッドゥ〜。一気に引き込まれる素晴らしいオープニングナンバー。スティーブン・シュワルツってやっぱり天才なんだな。

ちなみに今回の公演のMagic To DoはPlayBillが映像に残してくれている。それもフルで、大感謝。

 

そんなこんなで最高の始まり方をするピピンですが、この作品を好きなのかどうなのかは自分でもいまいちわからない。ただ確実に言えるのはこういう悪趣味は嫌いじゃないな〜ってこと。

1番の悪趣味ポイントはやっぱり、西ゴート族の首をゴルフクラブでかっ飛ばすかのように見せるリーディングプレイヤーのシーンですね。うへぇって感じだけれど、あまりにも絵面がいい。あれはお洒落な悪趣味。しゃべる首とピピンが仲良く会話するところなんかもなかなかに衝撃的なビジュアルではありますよね。

バトルシーンを背景にLPと2人のダンサーが呑気に踊っていたり、「The Flesh」は結構派手に過激だったり、キャサリンとの情事でうまくいかんピピンを応援させられたり。思い返すとどんどん出てくる。最後のなんて悪趣味そのものだけれど嫌な悪趣味じゃないんだよね。いい悪趣味。

The Finaleについても、うわーー(引)ってなりますね。困惑するピピンをよそに楽しげなサーカスを繰り広げる御一行が怖い。そして満たされるには炎に飛び込むThe Finalしかないという。戦いでも性欲発散でも政治でも芸術でも信仰でも普通の生活でも満足できないならば、もう炎に飛び込む華々しい死以外には残されていないだろうってわけ。迷える若者にとってはとても残酷ですよね。ああそうなのかもしれないと思ってしまう。観た人たちの記憶に残り続けるという意味でも一生忘れられない。今作ではピピンが普通の生活を取るからそれ自体が推奨されているわけではないけれど、迷える若者の誰もが考えてしまう華々しい死を迷える主人公に強要してみせるっていうのが面白いです。そして、ピピンが普通の生活を選び取ったとしてもそれを教訓のように突きつけるのではなく、LPの導きを求めてしまうテオを描いて終わる。素敵な皮肉でした。

 

私はやっぱりリーディングプレイヤーが好きでしたね。不思議な存在。

物語が始まったときには、ピピンをそして観客を導く役割を担っていたはずなのに物語が進むにつれてそれが崩れていく。あれ?この語り手、様子がおかしいとなるのが、キャサリン役にダメ出しをし始めるところかな。第四の壁を破壊してくるLPは誰よりも観客を気にするはずなのに私たちが見ている目の前でキャサリン役に口出しをし始める=私たちに向けて上演している劇を破壊し始める。LPからすればキャサリン役が劇を台無しにし、破壊していると怒っているんだろうけれどね。そこでこれまで私たちを導いていたはずの存在に突然無視されるような感覚を覚えます。ピピン役もコントロールが効かなくなって劇が崩壊し始めるとLPは怒ってセットも衣装もオーケストラも取り払って劇を完全に破壊してしまう。誰よりも観客のそばにいて劇の完成度を追い求めていたLPが劇を完全に壊す。それがとても面白かったです。LP、なんて魅力的な役どころなんでしょうね。

 

この感想を書きながらも、これまで見たミュージカルではかなり難しい部類に入る作品だよなと思う。歴史上の人物であるピピンが自分を見つける旅を見守るのか〜と思いながら楽しいサーカスをにこやかに見ていると、思いのほかストーリーが抽象的なことに驚かされる。しかもその抽象的なストーリーを掴もうとしている最中にも舞台上では刺激的なサーカスやダンスシーンが繰り広げられるからそちらにも気を取られて考える時間を与えてくれないし。

人が何を思って見ていたかなんてわからないし、気にする必要もないのかもしれないけれど、私が見ていた回ではFinalの時点でも客席がサーカスを純粋に楽しむように手拍子を入れていたんですよね。。。ピピンを炎に飛び込ませたいリーディングプレイヤー脳の人が多かったのか?そんなことはない気がする。お話は気にせず純粋にサーカスを楽しんでいる観客が多かったのかもしれないな。

 

パフォーマンス面の話も少し。キャストの皆さん、とても素敵でした。

クリスタル・ケイちゃんはやっぱり素敵。若干声質がオーブとの相性悪いかなというのがありつつもエンターテイナー力の強さを感じた。身体の動かし方も美しくて私は終始リーディングプレイヤーに目が釘付けでした!これからもミュージカルたくさん出てほしいなーん。

ウィンくんはもう少し声量欲しいな〜とも思うけれど、道に迷うまっすぐで心優しいピピンは共感しやすくてよかったな。

片足バランスしたりナイフで刺されたと思ったら死体ごと消されたり、なかなか普段では見られないキーヨを見られたのも楽しかったですね。

キャサリン役の愛加さんもルイス役の岡田さんもハマっていてよかったな。そして、おそらく初めましてだったファストラーダ役の霧矢さんも素敵だった。歌唱もお芝居もよかったけれど、ダンスがとても好みでした!!!!!身体をどう見せるべきかを心得ている方のダンスだと思いました。

そして、バーサ役の中尾さん。エアリアルフープでのアクロバット。凄すぎる。あれはかっこいいわ。

 

全体としてアクロバットやイリュージョンは結構不安定なのでソワソワしました。失敗も多かったし。こればかりはいくら練習したとしてもうまくいかないこともあるのだろうし、仕方ないですね。誰も怪我することなく最後まで掛け抜けられることを祈っています。

 

Magic To Doの動画を漁っていたら2021年にWEで上演されたピピンの動画を発見。こちらは2013年BW版とは打って変わってヒッピールック。とても気になるのに今のところ見つかったのはこの動画とWE LIVEのみ。

このプロダクションはLPが男性ですね。

 

【9/13 追記】

PlaybillがCorner of the Skyの映像もあげてくれてる!

やっぱりレプリカ公演だからこそなのかな