地獄系ミュージカルを主食としており、コメディ作品はいつも楽しめるか不安になるのですが、そんな心配は杞憂でした。とても楽しかった!!ちなみに私はシュレック関連作品に触れるのは今回が初めてでした。
作品感想
作品自体も面白かったんですが、その前に「普段からこういう配役で作品を見せてくれーーーー」という気持ちが爆発しました。みなさん歌唱力は当たり前に高いし、キャラクターの表現も素晴らしい。spiさんはご自身でも「日本でシュレックやるなら俺しかいないんじゃないかと思っていた」とおっしゃていた通りのハマり役でしたし、ドンキーの吉田さんは台詞のハイテンションなテンポ感も歌唱も素晴らしい。そして私は福田さんのフィオナが大好きでした。歌もお芝居も最高なんですよ。
その役を演じるのに必要なものを備えている人がきっちり配役されている、というのは本来であれば当然なはずですが、残念ながらそれができていない作品が私が見た中には多くあります。集客力とか事務所の力とかいろいろあるんでしょうけど、観客(少なくとも私)が見たいのは今回のようなキャスティングなんですよ!!!今回の公演は全キャスト完全オーディションの形を取っているそうです。
私が今作で好きだったところは「ありのままでいいんだ」という話で終わらずに「変わるべきは私ではない、周りこそが変わるべきなんだ」という価値観を打ち出しているところです。「ありのままでいい」というテーマは大切だけれどだいぶ世の中にあふれてきていると思うのですが、「お前らこそが変われ!俺を受け入れろ!」と直接訴えかける作品はまだ少ない気がします。変わり者だと排除されてきたおとぎ話の登場人物やシュレックたちがこのテーマを歌い上げる様子は見ていて爽快でした!こういう主張が子どもたちが触れやすいアニメーション原作のミュージカルでなされるのは大事ですよね。ボブミュも政治的ですごかった。
登場人物たちはみなコンプレックスを抱えていて、シュレックは自身の種族、フィオナは性格と呪い、ファークアード卿は見た目、(ドンキーはしゃべるロバという特殊な存在だけれどコンプレックスには思っていないか笑)、それをまず自分で受け入れること、それができた者は相手のコンプレックスを受け入れることができるし、自分を受け入れてくれる相手にも出会えるという話になっているのもよかった。ファークアードは自分のコンプレックスを受け入れられなかったし、排除された側の苦しみを知りながら自分もまた排除する側に回ってしまった人として描かれているのもいい。
今作は教訓に満ちているけれど、それを全面に押し出し過ぎないという点でもよかったな~と思います。
舞台美術は本型の背景と書き割りのセットに映像を投影する形。チープな印象ではあるけれど、作品が始まってしまえばアニメーションらしい物語の世界観にも合っていていい味を出していました。
最後に、ドラゴン役の須藤香菜さんの歌唱が最強で心を鷲掴みにされたことを書き残しておきます。これからあらゆる公演のキャストが発表される度にお名前を探すことになりそうです!!!!!
書き忘れていた、今回、台詞中の拍手や曲中の手拍子がやたら多かったのが少し気になった。盛り上げるのはいいんだけれど、曲が終わりかけているタイミングで手拍子が始まってしょんぼり終わったり、逆に盛り下げているような気がしないでもない瞬間が多かった気がする。
ブリリア見え方・聞こえ方の記録
今回はご縁があって、1階H列サイドブロックで観劇しました。サイドブロックであることや前が両方女性だったこともあり視界的な問題は特になく、スピーカーの真ん前なので音響面もそこまで気にならなかったです。いつもは聞き取れない大人数で歌う曲の歌詞もおおむね聞き取れました。
アフト
印象に残ったところを書き残します
ハンドマイクがなかなかちゃんと機能しない状況を受けて
spi「地声で行くかーーーーーー!」
かっこよかったです笑
spiさんがオーディションを受けた経緯について
幼いころからスポンジ・ボブやカートゥーンネットワークのアニメーションを見て育った経験などがあり、「自分しかいないでしょ」となったそうです。
好きなシーンについて
吉田さんはドラゴンの登場シーン。頭と羽のパペットを演者さんが動かしているのを観客の想像力で補完してドラゴンを出現させるというところが好きだそうです。私もああいったシーンは好き!
spiさんは3世代のフィオナが塔から助け出される日を待ち続ける楽曲、I Know It's Todayのシーンで稽古場で見たときには思わず泣いてしまったそう。
私もこのシーンがとても好きでしたー!!
この記事を書くにあたって曲名が知りたくて今OBCを見たらフィオナを演じたのがサットン・フォスターだと知りびっくり!この後音源聴いてみようと思います~