Mind Palaceがない代わりに

来年には大学生じゃなくなるのでタイトル改めました。

グランドミュージカルで無視される現実に目を向ける『いつか〜one fine day 2021』6/18 S 感想

人間味のある愛おしい台詞回しに、美しいけれど決して綺麗すぎないストーリー、演劇特有の社会への発信力とそのメッセージをより親しみやすく真っ直ぐ届けてくれる音楽。

昨年末にミュージカルにハマって以来、いわゆるグランドミュージカルと言われるようなミュージカルしかみる機会がなかったので、今回このような作品に巡り会えたことがとても嬉しいです😭 

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さて、何から書いたらいいものか。

タイトルにも書いたことから書こうかな。

グランドミュージカルの多くの作品は、悲劇を扱うにしても、(うまく言い表しづらいんだけど)、理想的な世界や人物を描いていて、そこが魅力的なのは確かなんだけど、そのマジョリティの思う「理想の世界」を描くために、その際に本作で言えば「マイノリティ」といわれる人たちを排除する傾向があると思う。健康な身体とヘテロ規範の人々の世界って感じが強い。全然作品数みれてない私が言うのもなんだが、それにしたって特に日本ではそれを強く感じる。あまり向き合おうという意志を感じられなかったり。だから、2時間の作品で、視覚障がいから末期医療、軽くだけど同性愛を扱ってくれることにまずとても感動した。

真摯に向き合っているのを感じるからこそ、トモがタマキに告白するシーンで笑いが起きたのはちょーーーーーー解せぬ。まじでなんだったんだ。その後の「ようこそマイノリティの世界へ」はトモが少し自虐的に笑いをとるようなおちゃらけた言い方をしてたから笑うのわかるけど、告白は唐突ではあったが真っ直ぐな真面目なものだったの。ああそう、あんたらにはゲイの告白は笑えるもんなんだ。って呆れた。その後、「種の保存に背きながら足立区議会に殴り込みに行こう、あの議員白石っつうんだよ」(ニュアンス)って言い放ってくれるトモはまじで私にはヒーローに見えました。同じトモとタマキの場面で、社会に出てみたら「怪人や宇宙人はいなかった」という話。これも面白くて、ただ倒すべき「敵」のような人間はいなかったと受け取った。今ままで政治家と癒着してて横暴な上司だったクサナギがテルに娘の病気を打ち明けて彼なりに励ましてくれるシーンが前にあるからね。私は思想的に相容れない人間を敵とみなしてしまいがちだからはっとさせられた。

 

視覚障がいについて私に知識量がないので今回の舞台で初めて知ったことも。逆にもし、ここはほんとはありえない!ってとこあったら教えてね。私はこの世のあらゆることを映画や舞台、小説などのフィクションから知ることが圧倒的に多いので、やっぱり知る機会、という意味でもあらゆる人間がレプリゼントされるべきなんだよなと常々思う。母に会いに行ったエミが多分驚かすために入り口で白杖を閉まって美容室に入るところ、声で行くべき方向を探り、椅子に座ろうとするけれど椅子の脚にぶつかるっていうシーンが印象に残ってる。それから、エミに「男なんていなくなればいい」(ニュアンス)と思わせた男たちに対してはらわたが煮え繰り返る。エミが理由を可愛い子で目が見えないから的ことを言っていてそういうクソ男を思って怒りに震えた。あと、歌を習いにきたエミとトモが曲を作るシーンは全人類に見せたいわ。障がいを持つ人たちに笑顔でいることを強要したり、「若いのに可哀想ね」なんて声をかけたり、ほんとうにそういう人がたくさんいるんだろうな。しかも自分が彼らを傷つけていることにも全然気づいていないんだろうな。やっぱこのシーンでもトモはヒーローだよな。ただ、「顔を思い浮かべて」って言っちゃうのは、どんなにいい人でもそこまで気は回らなかったか!ってとこある。

 

延命治療についての描写は昨年倫理学の授業で考えたり、実際祖母が緩和ケア病棟に入ってその後亡くなったってのもあって考えてたりしたので結構パーソナルに感じながらみてました。「嘘くさいな〜でもちょっと嬉しい!」って素直に気持ちを表現して楽しそうなマキが治らない治療の辛さから死を望むというのがみていてとても辛いけれど、きっとリアルなんだろうなと。私の祖母も死の間際には痛みが酷くて殺してほしいと暴れたので薬を打って眠らされていました。本人にしか知り得ない苦しみに対して他人が「生きろ」だとか「がんばれ」とか言うのはさらなる苦痛なのかも。この状態にさらに、エミは植物状態だから自殺さえできないんだというのがまた・・・息を止めて自殺しようとしたけれど鼻呼吸が止まらないんだと笑うエミが頭から離れない。

 

ここまで内容面を書いてきたけどミュージカルというポイントからも感想書いとく。

これまで邦訳ミュージカルばっかりみてきたから初めから日本語で作られたミュージカルをみるのが新鮮でした!やっぱり単語とメロディの相性がどことなくいい気がする!!

あとみなさん歌がとてもうまい〜!藤岡さんは声質が線系なので聴きやすいし高音うまいし聴いてて楽しすぎました。JCSコン、ヘロデなんですね💕💕💕 楽しみすぎます!Come on! King of the Jews〜が聴けちゃうのね。皆本さんは高いキーの曲でも満面の笑みでばちばちに歌えるのかっこよすぎる。そして西川くんは高い音にあがっていっても声質が切り替わらずずっと強く地声ぽく出るのがすごいなーと!

 

まだまだ何か思い出したら追記するけど、とても素敵な作品に出会えたことを嬉しく思います。

 

 

原作はこちらの映画ということでこれもみてみます。