私の愛する『SIX: The Musical』を手掛けたアーミデージさんが演出ということで観劇してまいりました!それにしても今年は仏ミュ祭りでしたね。
作品・公演概要
Le Rouge et le Noir, l'Opéra Rock
原作: スタンダール『赤と黒』
音楽: Zazie、Vincent Baguian、Sorel、William Rousseau
プロデューサー: Albert Cohen(アルベール・コーエン)
初演: 2016年 パリ
2023年 大阪(星組・日本初演)
フレンチロックミュージカル『赤と黒』
劇場: 東京芸術劇場プレイハウス
演出: Jamie Armitage(ジェイミー・アーミテージ)
振付: Alexzandra Sarmiento(アレクザンドラ・サルミエント)
上演台本・訳詞: 福田響志
キャスト
ジュリアン・ソレル: 三浦宏規
ルイーズ・ド・レナール: 夢咲ねね
マチルド・ド・ラ・モール: 田村芽実
ムッシュー・ド・レナール: 東山光明
ラ・モール侯爵: 川口竜也
ジェロニモ: 東山義久
ムッシュー・ヴァルノ: 駒田一
他10名+スウィング1名
感想
階級闘争の物語としての軸
スタンダールを読んだことがなくて『赤と黒』の物語に触れるのは今回が初めてでした。回ってきた事前情報ではジュリアンとルイーズの不倫がフィーチャーされていたので「恋愛がメインでしかも不倫もの」と及び腰になっていたのですが、実際に見てみると確かにそういった要素は強いものの階級闘争の物語としての軸がしっかりあって面白かったです。
下層階級から上流階級に成り上がるために聖職者を目指すけれど結局恋愛に振り回されるジュリアン、貧しい者から金を吸い上げている汚い存在として描かれるけれど、人道的・倫理的に汚いことでもとにかく「行動」しないと立ち行かない焦りと葛藤を抱えている中産階級のレナールやヴァルノ、下層階級の男と結婚する娘を自分の名誉のために遠ざけるけれどなんだかんだジュリアンを騎士に任命するような甘さと余裕がある上流階級のラ・モール侯爵、それぞれが不安や悩みを抱えながら別階級の人間たちへの憎しみを募らせてひしめき合っている様子が丁寧に描かれていました。
その上でラストにジュリアンの「貧しく生まれるという罪を犯しました」という台詞があって、状況としてはジュリアンが自分の運命と死刑を受け入れる場面ではあるものの、台詞の言葉は抗議のメッセージとしてまた別の響きを持って残るような感覚がありました。
1幕はジュリアンとルイーズの関係が唐突に進展するのとジュリアンの独白がややもったりするのが気になったけれど、2幕からはジェロニモがいい具合にジュリアンに絡みながら物語を推し進めてくれるのと、ジュリアンとマチルドの恋愛模様が「心理戦」として描かれるのもあって見やすかったです。
仏ミュらしくかつこじんまりした音楽・演出
『LUPIN』で期待した仏ミュ節を浴びられなくて消化不良を起こしていたところだったので、今作で仏ミュ特有のビート感、謎のキラーフレーズ(ルイーズとエリザが歌うDing dongとか)、ミュ俳優殺しの謎のハイトーン、突然現れる情熱のダンサー等々を味わえて幸せでした。ここのところ「仏ミュらしさがない(LUPIN)」とか「仏ミュでやればよかった(ベートーヴェン)」とか本当に仏ミュの話ばっかりしてたからね。
特にダンスについては「話の規模的に群衆も出てこないだろうしどうなるかな」と思っていたのは完全に杞憂で、情熱を持っているキャラクターが歌っているときには勝手に出てきて踊りまくってらしたので楽しかったです。しかもジュリアン役の三浦宏規くんがバリバリに踊れる人なので、ダンサーを引き連れてジュリアンが踊りながら歌うみたいな場面もあって良かったです!
それから今年10月に『レベッカ』を見て、小さめの規模の物語を豪華なオーケストレーションで仕上げると音楽自体がかっこよくても物語に対して仰々しすぎるように感じてしまうなと感じたのだけれど、『赤と黒』に関しては「仏ミュ感」はしっかり出しつつもナンバーが短めだったり、音楽があまり物語の規模とかけ離れないようなバランスになっていて、それが心地よかったです。
舞台セットもシンプルで大きなセット転換もないのだけれど、照明のバリエーションが豊富で凝っていて見ごたえがありました。ヴァルノ氏の歌唱場面で空間がちょっとゆがむような効果を使っていたり(『呪いの子』のタイムターナーのシーンみたいなやつ!)、ジュリアンが絶望する場面で手持ちのライトを使っていたりと意外性があって楽しかったです。それからナンバーが始まると絵画がかかった御屋敷の壁だったはずの部分が透過されて舞台の奥で演奏しているバンドメンバーのシルエットが浮かび上がる演出になっていてとてもかっこよかったです!
ジュリアンの斬首の場面、無音の中で赤い花びらがぱらぱらとステージに降ってくるのは拍子抜けな感じもあるけれど静かな演出で落ち着いた作品の雰囲気に合っていたかも。
全体に物語の規模、音楽、ステージングがちょうどいいバランスで組み合わさっていて心地良かったです。表題曲のDans le noir je vois rougeはすごく耳に残っていて鬼リピしています。ちょっとフィギュアスケートのプログラムにしやすそうな曲じゃない???
キャスト&キャラクター感想
三浦ジュリアン
成り上がりたいという気持ちはあるのだけれど結局女性に心を奪われて望みを果たせないジュリアンの「甘さ」みたいなものが三浦くんの幼めの顔立ちだったり柔らかい声だったりに合っていて良かったです!アップダウンの激しい曲や突然出現するハイトーンを歌いこなして、ダンスもたくさん踊っていてすごいな~と思いながら見ていました。やっぱりミュ俳優は超人。
マチルドの部屋に窓から入るシーン、舞台の真ん中で前のめりに転んだかと思ったらサッと立ち上がって「すっころんでしまうところでした」って言ったのがちょっと面白すぎました。しかも芽実マチルドが「すっころんでしまっていましたわよ」って返したのも面白すぎる笑笑 怪我がなさそうでよかったよ。※12/23追記: フォロワー情報により、こちらのシーンはアドリブじゃないということがわかりました😂 どゆこと😂😂😂
ねねルイーズ
もう少し歌い上げ系の得意な方が良かったかもしれないと思う楽曲もあったけれど、全体的にねねちゃんの清廉さと可愛さのおかげでルイーズに嫌悪感を抱かなくなる配役マジックが炸裂していました。ルイーズの寝室にいるジュリアンを隠すためにレナール氏の襟首を掴んでぶん回し、仕上げに頬にキスをしてレナール氏を追い払うルイーズが好きでした。不倫疑惑がレナール氏の耳に入ったあとの「私を篭絡したなんて吹聴して私の名誉を傷つけるあの貧民を追い出してください」(不倫の完全否定&自分の安全の確保)→「給料は払って。うちは金払いが悪いなどと言いふらされては困る」(ジュリアンの給料を保証)→「遠くへやるためにパリの秘書の仕事に送りましょう」(ジュリアンの仕事を保証)っていう対応も鮮やかでかっこよかったです。
芽実マチルド
ピンクの照明の中、ピンクの派手なドレス(しかもウエストの部分がカットされている)姿で現れた瞬間「仏ミュぢからが強すぎる!!!」とテンションが爆上がりしました。スカートを翻して、時にはあくびもしながら「退屈なの~」と歌うマチルド、めちゃくちゃ良かったです。ジュリアンと知り合ってからの面倒くさいお嬢様ムーブもかわいかった!!!ジュリアンへの「窓から出て行ってくださる?」が最高でしたね。
それから今作は上手いおじ様枠が充実しておりまして、川口さんのソロや駒田さんの人を馬鹿にした笑い声を存分に楽しめるパートもあって楽しかったです。
それで~『SIX』は梅芸が買ったと見ていいですかね。配役頼みますね。まずはここまで日本ミュ界を牽引してきたバチバチに歌えてかっこいいお姉さま方で見たいですからね!?!?そして再演辺りで芽実ちゃんブーリンはお願いします。
『CHICAGO』のCell Block Tangoが好きな人はもれなく刺さるかと思いますので、日本公演が決まった暁には皆さんお願いします。今年春の韓国公演ががら空きで心配になっている女より。
私が行った回は「お見送り」なるものがありまして、終演後のキャストさんたちにお見送りされて帰りました。江理佳ちゃんのミニライブで初の接触イベに恐怖したところだったので緊張しつつも「今回は手を振るだけだから大丈夫・・・」と挑んだのですが、やっぱりダメだ!!!!
まず1人目が川口さん。「こんなに年の離れた大人の方に両手で手を振っていい・・のか?」みたいに思ってしまって縮こまりながら手を振ったら川口さんの側もちょっとぎこちなさめだった笑笑笑 2人目が芽実ちゃん。流石慣れてらっしゃってちょくちょくお客さんに話しかけながらぶんぶん手を振ってらしたので、私もいい感じに手を振れました。そのままの勢いで3人目の三浦くんと4人目の東山の兄さんにも振ろうと思ったのですが、なんだかまた気恥ずかしくなって小さく手を振りました笑
結論:「お見送り」でも変に緊張する!
【仏ミュ関連】