Mind Palaceがない代わりに

ミュージカル観劇レポの保管庫です

日本ミュージカル界の壁が少しずつ取り払われたら良い『レ・ミゼラブル』1/19 M 感想

@帝国劇場

f:id:yadokarinko:20250204004616j:image

今期2回目のレミゼに行って来ました!
前回の感想はこちら⇩

キャスト

f:id:yadokarinko:20250119212439j:image

ジャン・バルジャン: 飯田洋輔
ジャベール: 小野田龍之介
ファンテーヌ: 昆夏美
エポニーヌ: 屋比久知奈
マリウス: 中桐聖弥
コゼット: 敷村珠夕
テナルディエ: 染谷洸太
マダム・テナルディエ: 谷口ゆうな
アンジョルラス: 岩橋大
グランテール: 深堀景介

ガブローシュ: 中井理人
リトル・コゼット: 内夢華
リトル・エポニーヌ: 鞘琉那

+23名

 

感想

アンサンブルとプリンシパルの壁

前回観劇に続き、今回も楽しみで仕方がないキャストが集まった公演だったわけですが、今回特に楽しみにしていたのは、染谷テナルディエ岩橋アンジョルラスですよね〜!!

これまでのレミゼでは学生役で出演していて、他の作品でもアンサンブルを担うことが多かったお二方が、今回プリンシパルとして起用されたのはとても喜ばしいです。

3〜4年前にこの界隈にやってきた私ですら、この嬉しさ、長年お二人を、そして日本のミュージカル界を見守って来た方々におきましては、感動もひとしおなのではないでしょうか🥹 熱い!!

日本のミュージカル界では、大手主催によってアンサンブルとプリンシパルの間に打ち立てられた壁が厚く高く、プリンシパルに挑戦したい実力のあるアンサンブルの方々に機会がなかなかない、という話は漏れ聞こえて来ます。

「フルオーディション」と銘打たれていても、蓋を開けてみればアンサンブルとプリンシパルはオーディションが別枠、プリンシパルは確認ばかりのオファー型オーディション、なんてこともざらだとも・・・

まあ、ただでさえ観客が先細り続けている舞台界隈ですから、主催側が元々人気のあるキャストで固めてチケットセールスを安定させたいというのもわかります。

今どき、作品のパワーだけでチケットが売り切れる作品なんてほとんどな・・・レミゼがあるじゃないか〜というわけですね!

今後もレミゼにはフルオーディションでの新たな才能の発掘&アンサンブルの方々の積極的なプリンシパル起用を進めてもらいたいです。

現状、チケットも売れすぎて需給のバランスがおかしいわけですし、例えば上演期間を長くして、最近韓国のEMKがやっているみたいにターム制にしてキャストを入れ替えながらやる、なんてのも手かもしれなくないですか?

 

※ここに書くのも憚れるくらい胸糞が悪いので詳しくは控えますけれど、以前、私の所属していたゼミに東宝の社員になったOBが来て、演劇部門の話を聞かせてくれたことがあったんですよ。

その人がミュージカルアカデミー出身者やアンサンブル役者の気持ちを踏み躙るようなことを言った上で「プリンシパル役者が足りない」とか抜かしてたんですよ。私はそれがずっと許せずにいます。

日本のミュージカル界のど真ん中で働く人の認識がそんなところにあることに(そしてそれをなんの悪びれたなく口にして問題ないと思っていることに)、酷く落胆し、怒りを覚えました。

そんなこともあったなかで、今回のレミゼのキャスティング。演劇部門の方針と一社員の考え、並べて語るのも変だとは思うものの、ほんの少しだけ胸のすく思いです。

 

キャスト感想

例に漏れず初見キャストから。

まずは飯田兄バルジャン。「お兄ちゃんファントム」を見逃してしまったのでちゃんと見るのは初めて?な飯田さん(一応『アンマスクド』では聴いてたけど!)を、まさかレミゼで見られるとは!

「逃げた〜」「生まれ変わるのだ〜」は、もうひと超えパンチがほしいかも、と思いつつ、中低音がとんでもなく良い声でレチタティーヴォ的なパートにぎっしりどっしり音が詰まっているのがとても好きでした。

あと飯田バルはプロローグでずっと丸っとしてるのがかわいい。動揺して銀器の入った袋をボトッと落としてしまうところもかわいい。不思議と小動物感がありますね。

「善くある」のが自然なバルジャンだとも思いました。光夫バルの場合は意識的に「善くあろう」と努力しているようにも見えます。佐藤バルも楽しみです〜!

 

昆ファンテはやっぱり小野田ジャベに並び3期目の貫禄〜🫶 昆ちゃんは感情を剥き出しにして歌うのがとんでもなく上手いよな、と改めて感じました。もう大好きです!!

At the End of the Dayではファンテの立場の弱さを丁寧に表現しながら、夢やぶれてでぶわぁっと客席を感情の波に巻き込んで、波止場では直球の絶望と怒りを叩き込んでくれて、病院でのささやかな救いまで、昆ちゃんのお芝居に心を鷲掴みにされて引っ張られ続けました。何度でも書くけど「ミュージカルが上手すぎる」!

 

染谷&谷口テナ夫妻!染谷くんは前述の通り、谷口さんは前期見逃していたようで、初めて見られました。

巷では染谷テナは「カッコ良すぎてジャック・スパロウ」と言われていましたね、確かに!カリスマ性があって、街の人たちにも尊敬されていそう。どんな出鱈目を言ってもみんな信じてしまうんだろうな〜と宿屋の皆さまの様子を見て笑っちゃいました。

側転をしたり、センターのテーブルの上で突然三点倒立をしたり、アクロバティックなのも面白かったです!汚くも華麗に生きるテナルディエは新鮮でした。

谷口マダムも口ではああ言っているけど、なんだかんだそんな染谷テナに絆されていそうな雰囲気があり、プリプリ怒っているように見えて可愛かったです。

アンジョは次の段落で!!

 

not初見組の感想も。

小野田ジャベは月初に比べて低音の響きが格段に上がっていて痺れました。ついつい、見慣れてきて忘れがちですが、ジャベールという人は、自分が定めるところの正義を全身全霊をかけて盲信しているというところが「狂人」なんだよな、と改めて突きつけられるような狂信と葛藤と崩壊でした。小野田さんの演じる葛藤は本当に絶品ですよね〜。また『ミス・サイゴン』のクリス見たいな!

顔をクシャっとしながら、自分の正義とバルジャンという存在の間で苦しむ姿はどこか愛らしかったです。新たな概念に出会ったときの赤子的な? なんか今期レミゼみんな可愛い説あります???小野田ジャベから放たれている「あいつはドジ」の説得力も一体なんなんでしょう。歩き方?走り方? 

 

そして今期も屋比久エポは天才だ〜🙌🙌 前期も「エポニーヌという役が、OMOという曲が屋比久ちゃんの一部になっているんだな」と感じたわけだけれど、その一体化の度合いがさらにアップしていました。本当に「喋るように歌う」の絶妙なバランスの極限に達しているようなパフォーマンスに夢中になりました。

対マリウスでは「かわいくない女」を演じることに徹していて、そこが愛らしく、そしてせつなくもありましたし、とても新鮮でした。マリウスの前でだけ、わざと声を低くして、表情もドヤっとして、可愛らしさを削ぎ落とす屋比久エポ・・・そこが可愛すぎる。

(翌週に見たときには結構真っ直ぐに三浦マリウスに愛情を見せていたので、「かわいくない女」仕様の屋比久エポって対中桐マリウスだけだったりするんですかね〜いや〜「かわいくない女」してる屋比久エポがかわいそかわいすぎて情緒めちゃくちゃになりました!!)

歌唱力は安定のバズーカで、ワールドツアーに参加してもらって世界中の人に見てもらいたいな、と思うと同時に、海外公演が増えたら私が見られないじゃない!と思うなど。

そういえば、波止場のエポ娼婦の位置が変わってますね? 前回、ルミーナエポ娼婦を「バルコニー→Lovely Ladies最上手」で探したら別の娼婦であれ?となりまして。今回エポ娼婦は「中段の高いところ→客に抱っこされて下手に運ばれる→上手に戻ってきて1番端で壁に寄りかかる→Lovely Ladiesではセンター」という動線ですね。パンツスタイルの衣装が特徴で、ついつい目で追ってしまいます。

 

中桐マリウスはやっぱり上手い!歌が上手い!芝居がいい!ミュージカルが上手い!Look Downのしっかりした演説からコゼットに出会ったあとの有頂天具合のギャップが激しいのがいいですよね〜。音域も広くて「私は戦おう〜」の伸びにも余裕があって🙆‍♀️ 今後大活躍していくんだろうなと期待です!

 

敷村コゼットは少し高音がキンキンする感じがありつつも、安定して上手いです!

中井ガブは舌が回りきらないところもあるくらいで、本当に等身大の子供なので「こんなに小さな子が・・・」という悲壮感が大きかったです。

 

岩橋アンジョは仲間への愛が強い

Look Downの「築け今バリケード」からかなりこえがでていて、伸びも良くて、流石やっぱり上手いなとるんるんでした。

お顔立ちが優しく(そしてブラウスの袖もゆったりしていて?)柔らかい印象がありつつも、自分に厳しく堅実な考え方をしそうな「堅物感」もあり、そして、他の学生たちとの心の距離も近いような、そんなアンジョだったと思います。

1人1人の仲間の気持ちを思いやりながら活動している感じは、やっぱりフイイとして生きてきた経験が滲み出た結果なのかも!とも。

数えてみたところ、私はこれまで10人のアンジョルラスに出会ったようなのですが、人間離れした神性がある人、豪傑のような人、キラキラしたカリスマ性のある人、周りに祭り上げられた人、色んなタイプがいる中で、最も「周りの学生たちの近くにある」アンジョルラスでした。

だからこそ、愛する仲間たちを引き連れて死に赴く決断をしなくてはならない、そのことがいっとう重く彼の肩にのしかかった「市民は来ない」でした。

岩橋アンジョはちゃんと「覚悟してきた」アンジョ。それでもお芝居の随所で見せた仲間への愛が効いてきて、責任を感じながら、しかし大義のために心に鞭を打って、愛する仲間たちと共に命を投げ出す、叫びながらの「自由を!」に繋がっていくのがとても良かったです。

ちなみに結婚式では参加者と一緒に踊りたくて仕方がない様子で、ニコニコしながら手を振り上げて輪に入ろうとしては給仕長に止められていました。