Mind Palaceがない代わりに

来年には大学生じゃなくなるのでタイトル改めました。

怜子に夢中『バイオーム』6/10 M 感想&考察

1幕中盤から「リーディングとは?」ってくらい誰も台本持ってないんよ。成河さんの「3週間も稽古期間あるなら覚えません?」発言の結果なんですかね〜。好き〜。

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そして、こういう怒りがギチギチに詰められた作品は好きです✨

自分たちの悩みにばかりかまけて生活の苦しい人々を助けない金持ちたちへの怒り、カツ丼食べながらどうでもいい話を何時間も話す議会で居眠りする政治家たちへの怒り、子を産むメスとして扱われる女の怒り・・・色んな怒りが込められていたな。

 

以下、ネタバレあり感想・考察→キャスト感想→ブリリア学生席ガチャの話と進みます。多分思い出しながらちょくちょく追記すると思います。

 

▪︎ シェイクを選ぶ怜子が持つ華

私が今作で最も好きなのは怜子が学とケイスケの精液をシェイクしてやったと言い放つシーン。彼女にとっては学が数年ぶりに寝室に来たことも彼女自身の誘いに乗ってケイスケが寝室に来たことも両方とも「最悪なこと」だとしている。メスとして扱われることへの不満と怒りを抱えつつも真っ向からそれを男たちにぶつけたり、あるいは反対に逃げたりするのではなく「シェイク」という道を選ぶ壊れ様。彼女自身に何の救いもない道を自ら選び取り、さらには学のことも彼女の感じる地獄に引き摺り込みたいと思っている。この壊れ方の方向性よ。

しかも怜子は自分がメスとして利用されることに嫌悪感を抱きながらも、ケイスケのことはオスとしてしか見ていないしオスとして利用する。そして彼のことはもちろん庭師として見下している。

彼女はエゴを振りかざすことにも人を見下すことにも何の抵抗も感じていないだろうし、彼女にとってはそれが当たり前。当たり前に人の上に立つというのは克人が自身や学にはない「華」として挙げた内容でもある。あくまであの家で生まれ育った者だけに備わるもの。

 

▪︎ クロマツを切り倒す怜子

もちろんキャストの重なり的に、庭の古株であるクロマツのように、古株として一族に根付いているフキを切り倒すことでフキの目から解放されたいみたいな意味は確実にある。

ただ、クロマツ以外は外国の植物で後から植えられているという状況が気になって。一族の構成を考えると、克人と学は婿養子、フキは小間使い出身、野口は庭師の家系とみな外部から来た人間。それに対して怜子とルイは生まれた時からあの家の人間であって、怜子がクロマツにそしてルイがクロマツの芽に重なる部分もあるのではないかなと。怜子とクロマツを重ねるならば、クロマツ伐採は自殺とも重なるな。野口の手を借りての伐採と野口の使う殺虫剤での自殺。ここでも利用される野口。手段として扱われる野口。

 

▪︎ 殺虫剤=フキの愛情なのかも

フキの愛情や母性は怜子にとっては「見張られている」恐怖として彼女を狂わせた。守るためのものが毒になるという意味ではフキから怜子への感情は殺虫剤と言えるかもしれないし、怜子は全てを知った上で殺虫剤=フキの愛情を受け入れながら死んでいったとも考えられる。


▪︎ ケイとはなんなのか

怜子に夢中だったもので、ルイについては考えが深まっていないのだけれど、この物語を考える上でケイについて考えないわけにいかないな。

フキの元に現れたケイが「おばあちゃんのケイ」と言うことやこれまでのルイ&ケイと別の衣装で出てくることからルイのケイとフキのケイは別なんだと思う。ルイが落下時に自分が下になってケイを守ったという旨を話すので、ルイのケイが現世に残ったのかとも考えはしたけれども。

2人が別のケイだとすれば、それはフキやルイが欲したものなんだと思う。怜子によればルイは学校で浮いているし、両親との関係も複雑だし、心を許せる相手を求めていたはず。そうして生まれたケイが野口の家の孫ってのもまた面白い。実際にはルイとケイは対等な関係で話しているけれど、ルイはたびたびケイの身分の話題に触れて、ケイが自分の所有物であるというようなことを言う。まだ子どもだからよくわかっていないというのもあるとは思うけれど、そこに悪意はなくて、その意味では怜子と同じく人の上に立つのが当たり前の人間として育っているともいえるのかな。

また話が逸れた。

フキのケイは自らの孫。怜子が産んだルイは本来、フキの孫なんだけれど自分の孫として接することはできない。だからルイの姿をしたケイなんだろうな。

 

◆キャスト寄り感想

演者さん全員めちゃくちゃ良かったんよな。ハマり役だった!!


考察でも怜子のことばかり書いてるところからもわかると思うけれど、花さん演じる怜子に引き摺り込まれながら観劇していた感じだったんですよね。

シシィやリトプリの薔薇のときも思ったけど、エゴの強さと上品さや気品のバランスが絶妙で、好きにならずにはいられない。

しかも花さんの子ども演技大好きだからクロマツの芽も嬉しかった🌱


そんな魅力のある怜子に対して、ともえさんというキャラクターをぶつけてきたのも面白すぎた。はじめはわけのわからない花療法にクスッと笑えたりするんだけれど、のちに彼女自身も自分のやっていることが怪しい占い師まがいだと自覚を持っていることがわかる。全ては女手一つで我が子を養うためなんだと。今作は全体を通して、笑えた場面がどんどん笑えなくなっていくっていう展開が多かったな〜とこれを書きながら思った。

話が逸れたけれど、ともえさんについて。子どものために日々身を粉にして働く彼女にとっては、怜子の悩みなんて何を言ってるんだって話で。それを怜子本人にぶつけてしまえるところや子どものためならば割り切って怪しい花療法士をやるところだったり、怜子にはないさっぱりした真っ直ぐさがある。彼女の怒りによって怜子の苦しみに観客が飲み込まれすぎず、いい距離感で作品を見渡すことができる気がする。安藤さんのさっぱりしていて強いともえさん好きだったな〜


古川さんもね、ほんとオタクが当て書きしたんかみたいな役どころでよかったよね。野口可哀想だったね。利用されてビンタされて。怜子に夜の出来事を「最悪なこと」呼ばわりされた時の動揺と傷ついた顔よ。可哀想に。薔薇は立ち姿美しすぎて。見事なコントラポスト。


成河さん学の例のリモート不倫シーンやばすぎたんだけど。ルイのこと追い出そうとしてるから嫌なやつなのかと思いきや存外いい父親なのかもって思わせてからの「変だから脱いだ方がいいよ」だよね。あのシーンのセリフ、定番ぽいのとオリジナリティが入り混じっている感じがものすごい気持ち悪かったんだけど〜 牛柄とかオリジナリティ🐮 それがセコイヤになると一気にキリッとしてかっこいいからな流石。

 

麻実さんの重厚感、野添さんの恐ろしい克人とコミカルな盆栽の行き来、勘九郎さんの8歳演技もみんなみんなよかったな。

 

◆ ブリリア学生席ガチャ

身バレ必至ですが、3階上手側バルコニーの先頭壁側でした。背もたれに背をぴったり付けると舞台上手前方が少し欠ける。ただそこまで手すりや視界は気にならず、後ろに席もないので少々前のめれば視界はそこそこ良好かつ舞台に近いのでなかなかよかったです。音響も大丈夫でした。

ただ1点、足元がめちゃくちゃ狭い😂 右側にいくにつれて足元のスペースが狭まっていて、左足は余裕だけれど、右足は前方の壁にぶつかるので椅子の下に収納する感じ。足の小さい私でもこれだったので足のサイズの大きい男性なんかはかなり窮屈かもしれない。