Mind Palaceがない代わりに

来年には大学生じゃなくなるのでタイトル改めました。

春の「屋比久知奈×梅田芸術劇場」は満足度が高い『VIOLET』4/14 S 感想

新年度1本目は『VIOLET』でした!

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昨年3月の『ジェーン・エア』に続き、春の「屋比久知奈×梅田芸術劇場」の満足度は高かったです。

作品・公演概要

Violet
原作: The Ugliest Pilgrim by Doris Betts(ドリス・ベッツ) (1969 Short story)
作曲: Jeanine Tesori(ジニーン・テソーリ)
脚本・作詞: Brian Crawley(ブライアン・クロウリー
初演: 1997年 オフ・ブロードウェイ
    2014年 ブロードウェイ
    2019年 オフ・ウエストエンド
         2020年4月 東京(中止)
         2020年9月 東京

Violet (Original Broadway Cast Recording)

Violet (Original Broadway Cast Recording)

1997年版は音源が出ていないんだ!という驚きとサットンがBWヴァイオレットだったんだ!という驚き。

 

ミュージカル『VIOLET』
劇場: 東京芸術劇場 プレイハウス
演出: 藤田俊太郎
翻訳・訳詞: 芝田未希

2019年に梅田芸術劇場とイギリスのCharing Cross Theatre(チャリングクロス劇場)が共同で企画製作して、日本とイギリスで上演したバージョンとは違う新演出版とのこと

 

キャスト

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ヴァイオレット: 屋比久知奈
ヤングヴァイオレット: 生田志守葉
フリック: 東啓介
モンティ: 立石俊樹
父親: spi
伝道師: 原田優一
老婦人: 樹里咲穂
ルーラ: 谷口ゆうな
ミュージックホール・シンガー: sara
ヴァージル: 若林星弥
リロイ: 森山大輔

+スウィング 2名

 

感想

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作品感想

思ったよりも「何も起こらない」作品(というか展開が予想しやすい物語)なのだけれど、ちょっとした台詞の中に人間の歪みや嫌な部分が滲み出るのが面白い作品でした。

この作品には「どうしようもないクソ野郎」は出てこない。(テレビ伝道師は例外かも)でもみんなちょっとずつ人を傷つける発言をして、それを反省する人がいればしない人もいて、その塩梅がすごく人間的だな〜と思いました。私は特にフリックの「お下がりなんて願い下げだ」とモンティの「彼女が苦しむとき、俺は側にいないからね」が好きでした。

 

主人公が見た目にコンプレックスを抱える少女で、恋愛関係を含む周囲の人との関わりの中で自らの行く道を見つけるというストーリーは同じくテソーリ作曲の『キンバリー・アキンボ』と共通しているし、『シュレック』も見た目による差別が描かれているので、テソーリの題材選びの核はこの辺りにあるのかな〜と考えたりもしました。『モダン・ミリー』はどうなんでしょう。

『VIOLET』では、ヴァイオレットの顔の傷は癒えないけれど傷を付けてしまった父を許すことで心の傷は癒えて前に進めるというように、当人の「気の持ちよう」的な着地点が用意されているのは、シュレックやキンバリーに比べると時代を感じるかも。フリックの「バスから降りてきたお前の顔を見せてやりたかったよ」という台詞はすごくよかったです。恋愛関係がヴァイオレットを癒すという展開にはなっていないところもありがたいですが、なんとなく「刺さりはしないな」という感じで、その理由はまだ私の中でも明らかになっていません。

 

音楽は「ここでそんなに長く歌わなくてもいいぞ」と思う場面がちょくちょくありつつも、スッと心に染みる楽曲が多くて良かったです。やはりOn My Wayが華やかで好きです。

 

 

演出の感想

人種表現の記録

昨年秋の『ラグタイム』では衣装の色味と髪型で白人・黒人・ユダヤ人を視覚的に表現した藤田さん。『VIOLET』では全く異なるアプローチで人種の描き分けに挑んでいました。今作は黒人分離政策が取られていた時代の映像が映し出される中、東さん(以下とんちゃん)演じるフリック、saraさんと谷口さん演じる女性の3人が舞台上に現れて、砂嵐のような音が鳴り響く中で悶え苦しむ場面から始まります。次にキング牧師の肖像が映し出され、公民権法の成立を観客が意識したところで3人は舞台を後にし、幼い日のヴァイオレットが現れます。

ヴァイオレットが現れるまでの場面はオリジナル版にはない要素で、日本での上演にあたってどうしてもわかりづらくなる物語の時代背景と作中で「誰が黒人なのか」を説明するプロローグのようになっています。

この説明のための一連のシーンは、予備知識を入れておらずまた世界史の勉強もおざなりになっている私が今作を見る上でとても助けになりました。ただ1本の作品として捉えると、冒頭にヴァイオレットの外側の世界が描かれることでヴァイオレットという1人の人間の物語としてのまとまりが弱くなってしまっているとも思いました。きっとヴァイオレットの登場に始まり、ヴァイオレットの場面で終わるのが美しい。でも説明しなくてはならないことがある。このジレンマですよね。

 

水と記憶

人種表現と併せて特殊だったのが回想の演出。冒頭の黒人の歴史を辿るプロローグではフリックが舞台上に現れると背景に水面が映し出されて彼の歩みに合わせて水の音がします。ヤングヴァイオレットが出てくる場面でも同様の演出が入っていて、水と回想を強く結びつけていました。

また、作品冒頭で床面にあった大きなリングがヴァイオレットを中心に天井に上がっていき、作品の最終盤で再び床面に降りてくるという演出は、井戸の底に沈んでいたヴァイオレット(Water in the Well)が水の外へと昇っていくのを表現しているようで、ここでも「水」がキーになっていました。

水の音の描写は所々くどく感じる場面もありましたが、水へのフォーカスとリングの上下でヴァイオレットの未来を明るいものとして描き出す試みは好きでした。

 

キャスト感想

適材適所キャスティングでみんな役にハマっていました。

屋比久ちゃんは本当に歌が上手い。いつも「ワールドクラスの歌声」だなと感じます。世界中の人に聴かせたいけれど日本で見られなくなるのは嫌だなとか考えちゃいますね🥺💕 屋比久ヴァイオレットのつっけんどんな物言いには、ぐるぐると頭の中で考えを巡らせた過程が透けて見えます。屋比久ちゃんの「期待を裏切られるのが嫌だから自分を卑下して何にも期待しないようにする」お芝居がとても好きです。

それから、新鮮だったのが立石くんのモンティ。これまでWキャストのあれこれでなかなか縁がなくて立石くんを見るのは今回が初めてでした。見た目のイメージからお芝居もきゅるっとした感じなのかなと勝手に想像していたところに、軽薄で勝手極まりないけれど一緒にいる間は本気でヴァイオレットを愛しているようにも感じられるモンティが現れて、すごく驚きました。とても良かったです!!!個人的に大ヒットでした🎯

わかりやすく表に出さないだけでヴァイオレットに心を向けているのがよくわかるspiパパ、熱くそして心の優しさが溢れ出ているとんちゃんフリックもどこからどう見ても胡散臭い原田さん(優ちゃん)伝道師もみんなみんな素敵でした。

それから素晴らしかったのがメンフィス&タルサの女性陣。谷口さんのRaise Me Upでの歌唱がとんでもなく素晴らしかったです。度肝を抜かれました👀

 

 

【ジニーン・テソーリ関連】

 

【屋比久ちゃん関連】

 

【藤田さん関連】

 

【🇰🇷韓国観劇記3-2】エポニーヌの帽子が鍵に『レ・ミゼラブル』12/15 S 感想

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2022年冬、渡韓2本目はレミゼでした〜🇫🇷

作品・公演概要

Les Misérables

原作: Victor Hugo "Les Misérables"ヴィクトル・ユゴーレ・ミゼラブル』)
原案・脚本・フランス語版歌詞: Alain Boublil(アラン・ブーブリル)
音楽・脚本: Claude-Michel Schönberg(クロード・ミシェル・シェーンブルク)
歌詞: Herbert Kretzmer(ハーバート・クレッツマー)
初演: 1980年 パリ(フランス語ver.)
         1985年 ロンドン
         1987年 東京
         2012年 ソウル

Les Misérables (Original 1985 London Cast Recording)

Les Misérables (Original 1985 London Cast Recording)

 

뮤지컬 〈레미제라블〉

劇場: 블루스퀘어 신한카드홀(BLUE SQUARE 新韓カードホール)
公演期間: 2023年11月30日~2024年3月10日
主催: Les Misérables Korea. inc

ロンドンで上演中の公演と同じ演出のレプリカ公演

 

キャスト

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ジャン・バルジャン: 민우혁(ミン・ウヒョク)
ジャベール: 카이(KAI)
ファンティーヌ: 린아(LINA)
マリウス: 윤은오(ヨン・ウンオ)
コゼット: 이상아(イ・サンア)
エポニーヌ: 김수하(キム・スハ)
アンジョルラス: 김진욱(キム・ジンウク)
グランテール: 신은총(シン・ウンチョン)
ガブローシュ: 최지훈(チェ・ジフン)
テナルディエ: 육현욱(ユク・ヒョンウク)
マダム・テナルディエ: 김영주(キム・ヨンジュ)

+アンサンブル 19名(グランテを上にプリンシパルに混ぜたので18名)
+スウィング 5名

ちょっと待って!!!このキャスト一覧を書いているのが10月末なんですけど(気が早い)、グランテがウンチョンくんで現在、爆沸きしてます!!!!昨年韓国JCSのシモンくんでとっても上手くてロックでパワフルで最高だったお方ですよ。その方のグランテが見られると・・・楽しみすぎるんだがーーーー!!!

(過去の私の自我パート終わり)

キャスケは相互フォロワーの贔屓のウヒョクさんバルジャン、『フランケンシュタイン』の映像で知ってからCDなども聴いているKAIさんのジャベで絞って、あとは他の演目との公演日時の兼ね合いで決めました。エポがお二方とも見たくて困っていたのですが、日時でスハちゃんになりました。

 

チケット購入までのあれこれ

『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』(以下、SOML)のための渡韓が確定していたところにレミゼもやっているということで「絶対に見る」という話になりました。先にSOMLのチケット販売があったので予約して、レミゼのキャスケが出るのを待っていました。が、なかなか出ない。発表があったのは10/16で公演の2ヵ月前でした。チケット発売日時は10/20 14:00。ちょうど私は10/9から10/20まで欧州旅行に行っていて、発売時間は帰りの飛行機の中でした。即完していないことを祈りつつ、成田空港に着陸して降機するまでの待ち時間に「Interpark Global」を開いたところ、まだチケットがありましたので、3階最後列のチケットを取りました。お値段は90000ウォン+手数料の3000ウォン/枚。ブルースクエアの3階席はかなり高さがあって舞台からは結構遠いので、帝国劇場のB席に5000円で座っていた私からすると約9000円はちょっと高いな〜と思いました。どこの国もチケット代の高騰はシビアですね。

 

いざ、劇場へ

この日のマチネはSOMLを斗山アートセンターで観劇していたので、そこから電車で한강진(漢江鎮・ハンガンジン)駅に移動しました。

そしてやってまいりました、ブルースクエア!

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寒すぎたので駅直結の地下の入口から入ってしまったのですが、チケットの引き取り窓口は地上階ですし、受け取ったついでに外観も撮影しました。2022年秋の初渡韓時、初韓国観劇がブルースクエアでの『エリザベート』だったので、再びこの青い劇場を見て胸が高鳴りました。

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リトルコゼットのフラッグはもちろんかわいいんですけど、アンジョルラスのビジュアルがこうしてドドーンと貼ってあることにテンションがぶち上りました。かっこいい!!!

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ちなみに劇場の地下にあるカフェではKAIさんのお誕生日を祝うイベントが開催されていました。まさかのお誕生日公演だったんですね、めでたい。

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劇場内のデコレーションも素敵でした!でっかい首領!!

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フォトロケーションは砦と

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まさかのジャベ橋でした😂 皆さんはオシャレなポーズを取ったりしていたのですが、私たちは手持ちの折り畳み傘を使ってジャベの真似っこをしてみました。撮影のために並んでいるお姉様方に「わぁ〜お!」って言われてめちゃくちゃ恥ずかしかったです😂

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ミュザンもありましたよ。椅子とテーブルがあったのでここではマリウスごっこもしました。

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感想

特に狙ったわけではないのですが、東京(2021年)→ロンドン(2022年)→ソウル(2023年)と毎年レミゼを見られていて幸せです。今年は帝劇公演に加えてワールドツアー?もあるはずなので楽しみです〜

今回はキャスト感想中心で軽く書き残しておきます。(というのも観劇から4か月ほど経って記憶が曖昧になってしまったので・・・)

まず、ウヒョクバルジャン。「いい男」すぎます。オペラグラスで見た瞬間「え、かっこよ」ってなってしまいました。独白の高音の圧がもう一押しって感じだったので「おや?」とも思ったのですが、Bring Him Homeのファルセットがあまりにも優しくて美しくて心に染みわたりましてすっかり好きになりました。宿屋でのテネ夫妻とのやり取りにスマートさとそれに起因する余裕が見えたのも素敵でした。

KAIジャベはちょっと気品が溢れすぎな感じはありました。歌がとんでもなく上手くてStarsが簡単な曲に聴こえてくるほどなので、その点での満足度は高かったんですけどね。

今回のレミで特にぐっと来たのはスハエポウンオマリウスでした。スハちゃんのエポもまたOn My Ownがすごく簡単な曲に聴こえるくらい、楽曲に対して余裕の歌唱力を持っていて圧倒されました。声質も好き。テナを追い払う場面の気迫も物凄くて、強くてかっこいいエポでした。惚れました。ミュオタになった時期的にスハちゃんのキムが見られなかったのが残念でなりません。

日本のレミゼでは基本的にエポのモンペをしている私なので観劇時にマリウスへの当たりが強くなりがちなのですが、今回はその辺りがフラットになったのか久しぶりに「マリウスってかわいいな~」と思いながら観劇していました。プリュメで柵にサッと乗り上げる姿とかにいちいち心を奪われました。ウンオさん、お顔も可愛くてオペラグラスで追いかけがちでした。

そしてジンウクさんのアンジョも大変かっこよかったのですが、韓国レミはアンジョへのフォーカスが弱めな感じがしました。というよりかグランテールにあんまり焦点が当たらないのでその分アンジョの解釈も深まってこないんですよね。これは私が3階席から見ていて細かい芝居を見られていなかったからかも・・・と思いつつ、今回のグランはガブとの結びつきが強く描かれていてニコイチ感があり、Drink with Meのグランパートでもアンジョにそこまで突っかかっていませんでした。それでも気絶したマリウスの上で最後にハグをして分かり合ったのは確認できたので良かったですが。

アンジョとグランの関係が薄い代わりに砦を支配していたのは「エポの帽子」でした。詳しい順番がちょっとあやふやなのですが、恵みの雨でエポが亡くなったあとグランテが帽子を拾ってガブに渡す(エポに駆け寄ろうとするガブをグランテが押さえていたのも印象的でした。マリウスと二人の世界で幸せそうに笑うエポをそのまま旅立たせようとするグランテの気遣いを感じつつ、実の姉の死に際に駆け寄らせてやりなさいよと思う自分もしました)⇒DWMかガブ死でグランテがアンジョを責めるようにエポの帽子をアンジョの胸に突きつける⇒アンジョがうなだれるマリウスに帽子を渡すという流れがあったように思います。エポの帽子が犠牲の象徴としての役割を果たしているのがわかったので、犠牲者を出してしまったという罪悪感に押しつぶされそうになりながら戦う学生たちが順々に死んでいく姿が見ていてとても辛かったです。レミゼ自体が久しぶりだったこともあり、目の前で学生たちが死んでいくのに耐えられず、心がずたずたになっていく感覚を久しぶりに味わいました。

 

さて、2024-25年の日本版レミゼはどんな砦になるでしょうか。なかなかキャストが発表されないのが気がかりですが楽しみですね!!

 

レミゼ関連】

 

【韓国観劇関連】

 

【🇺🇸BW観劇記1-5】デレク・クレナのクリスチャンが見たくて『Moulin Rouge! The Musical』3/18 S 感想

ブロードウェイ観劇旅行5本目は『ムーラン・ルージュ!』でした。

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↑プレイビルを持って写真を撮ったら前にいたおふたりがいい感じにブレてロマンスビジュアル風になった😂

作品・公演概要

Moulin Rouge! The Musical
原作: Moulin Rouge! (2001 jukebox musical film)
音楽監督オーケストレーション・アレンジ・追加歌詞: Justin Levineジャスティン・レヴィン)
脚本: John Loganジョン・ローガン
演出: Alex Timbers(アレックス・ティンバース)
初演: 2018年 ボストン
    2019年 ブロードウェイ
    2022年 ウエストエンド
         2023年 ソウル
                      東京
劇場: Al Hirschfeld Theatre(アル・ハーシュフェルド劇場)
オープン日: 2019年7月25日

Moulin Rouge! The Musical (Original Broadway Cast Recording)

Moulin Rouge! The Musical (Original Broadway Cast Recording)

  • Original Broadway Cast of Moulin Rouge! The Musical
  • サウンドトラック
  • ¥1833

 

キャスト

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クリスチャン: Derek Klena(デレク・クレナ)
ティーン: Oyoyo Joi(オヨヨ・ジョイ)(Satine Alternate)
ハロルド・ジドラー: Boy Georgeボーイ・ジョージ
トゥールーズロートレック: André Wardアンドレ・ウォード)
モンロス公爵: Dylan Paul(ディラン・ポール)(Swing)
サンティアゴ: Gabe Martínez(ゲイブ・マルティネス)
ニニ: Sophie Carmen-Jones(ソフィー・カルメン=ジョーンズ)
ラ・ショコラ: Jacqueline B. Arnold(ジャクリーン・B・アーノルド)
アラビア: Tasia Jungbauer(テイシア・ジャンバウアー)
ベイビードール: Nick Martinez(ニック・マルティネス)(U/S)
ピエール: Raúl Contreras(ラウル・コントレラス)(Vacation Swing)

+14人

デレク・クレナは2022年5月~2023年1月、2023年4月~7月末に続いて、2024年2月6日から3期目の登板中。同日にボーイ・ジョージがジドラーでデビューしていました。洋楽の知識が少なくて知らなかったのですがCulture Clubカルチャー・クラブ)という有名なバンドを率いたスターだったのですね!カテコでジドラーがたっぷり歌うし観客も爆沸きしていたので何かと思ったら、カルチャー・クラブの曲をメドレーで歌っていたらしい!そりゃあ沸くわな!!!

そして嬉しかったのが、2022年の来日『CHICAGO』でヴェルマだったソフィー・カルメン=ジョーンズがニニだったのこと!情報が出たときに嬉しく思ったのですがすっかり忘れていたのでプレイビルを開いて新鮮に驚いてしまいました😂

 

チケット購入までのあれこれ

この日のソワレがMR!になるまでには紆余曲折あったのですがその辺りは長くなるのでまた旅行記にでも。

まだソワレの演目が決まっていない状況でアル・ハーシュフェルド劇場の前を通ったので、試しにチケットの状況を聞こうという運びになったのですが、マチネの開場中でボックスオフィスが休止中でした。私もマチネに『キンバリー・アキンボ』が控えていたのであまり時間はない。とはいえボックスオフィスが開くのを待とうかな〜と思いつつ、ふと「今って誰が出ているんだ?」と気になって劇場の装飾を見るとクリスチャンがまさかのデレクでした👀 デレクがバックするという情報は掴んでいましたが日程まで気にしていなかったのでびっくり!セキュリティのお姉さんに「今日の夜はデレク出ますか?」と聞くと「スケジュールされてるよ」と教えてくれたので、じゃあチケットを買おうということになりました。

なるべく早く買いたかったのでTodayTIXのアプリを見てみると1階席後方が1席ぽつんと$154で出ているのを見つけて購入しました。これまで購入したチケットの最高額がロンドンのMR!だったのですがそれを上回りました😂 ただこの週末はどの作品もチケット代がかなり高騰していて完売だらけだったので、1階席でこの価格はラッキーでした✨

 

いざ、劇場へ

1人だったのと開演前にDrama Book Shopに立ち寄ったのもあって写真があまりないですが、かわいいおじさんのサイネージだけは写真に収めていました。そしてお目当てのデレク。


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劇場内はやっぱり真っ赤!象さんの横にポールダンスゾーンみたいなのがありました。

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感想

MR!の観劇は4回目。OBCは大好きだけど演目としては別に・・・って言っている割に3カ国目でした。私のMR!に対する考えは概ねこの3本の記事に書いてあるので今回は省略です。

日本のMR!も楽しかったですが、客席も舞台も狭くてギチギチでサティーンのブランコが天井から出てきて、出演者たちが客席サイドの通路を駆け抜けていき、カンカンでパイロがぐるんぐるん火花を散らすMR!は景気が良くていいなと思いました。専用劇場の強みに圧倒されます🤩 

久しぶりの原語での観劇ということで、観客の反応も少し意識しながら観劇していました。前日の『BTTF』の観客たちの熱狂ぶりがすごかったので、MR!もすごいだろう・・・と思いきや予想よりは落ち着いていて驚きました。初演からだいぶ経って「知っている曲を登場人物が歌う」のに慣れたのか?と思いつつ、でも終演後のSDの空き具合も考えるとシアターゴアーだらけというわけでもない気はするんですよね。ただガガとシーアはめっちゃウケてました。ドッカンドッカンというほどではないもののしっかり笑いは起きていて、Fireworksとかは笑い少なめ。作中の状況を問わず「知っている曲が歌われる状況」を笑っていたロンドンに比べて物語の内容に沿った笑い方をしている気がしました。観劇時期が2年近くずれているので単純に比べるのは難しいですが、ロンドンがお酒を飲みながらの観劇可だったことなども影響しているのかな。

そしてお目当てのデレクはやっぱりとてもかっこよかった~!!!!ビジュの強さがものすごかったです。立ち姿が絵になりすぎますし、デレクが舞台にいるとずっと顔面を見つめてしまいます😂 そんなデレクのクリスチャンはすごく真摯で対等に真っ直ぐにサティーンと向き合おうとしている感じがありました。私はクリスチャンという役を「ちょっぴりウザい」と思っている(それも含めて好きでもあるんですけどね!?)し、作中におけるクリスチャンの言動もやや突飛だと考えていますが、デレククリスチャンで見るMR!はその辺りの部分が弱まっているように感じました。その上でクレバーすぎず、重すぎず、大人すぎずな塩梅が丁度よくて、言語化がすごく難しいんですけど「いいな~」と思えるクリスチャンでした。デレクのクリスチャンはデカいけれど大型犬じゃないんですよ。すごく人間。でも人間の嫌なところはあんまりなくて、いやもうそれはデレクがハンサムだからなのかもしれないんですけど、客席で恋に落ちてしまいましたね。

ありがたいことにElephant Love Medleyの動画があります。ハンサムなのにかわいいの本当にずるいんだよな!!!!まじでやばい。本当にやばい。

youtu.be

歌はやっぱりアーロン版に慣れすぎているので違和感がありましたが(デレクは音の捉え方が前ノリで音を上げるときもすごい早いタイミングでパッと上げるのでそれに慣れるのに時間がかかりました)、El Tango De Roxanneのラストもがっつり音上げしてくれるし、高音まで声量があって聴きごたえ抜群でした。何よりも中低音の深みが良すぎる・・・。ビジュがこんなにかっこいいのに歌声もかっこいいなんて。夢が詰まりすぎです。魅力が渋滞です。ちょっと一回Sympathy for the Dukeも歌ってみてほしい。絶対かっこいいと思うんですよね。

デレクのことばかり書きましたが、オヨヨサティーンは爆発力があってきらめいていたし、ボーイ・ジョージのジドラーは切れ者感全開でちょっとヴィランっぽい風格がかっこよく、ロートレックサンティアゴも素晴らしく上手くてテンションがぶち上りでした。やっぱりここ2人が低音でしっかり支えてくれるとクリスチャンパートが光りますね(日本版は素敵だったけれど低音がちと弱かった)。それからソフィー・カルメン=ジョーンズのニニは期待通り最高でした。ヴェルマを演じた俳優による強強で高飛車なニニの「Sister」は刺さりまくりでした。

そんなこんなでとても楽しい『MR!』観劇でした~!ちなみにデレクは足上げめっちゃ低いです笑

 

SDの記録

席は下手側、SDは上手側だったので「まあ無理だろうな」と思いつつ、一応早歩きでSDに向かうと全然まだ人がいなくて1列目に入ることができました。しかも1分ほどでデレクが出てきて、私がいるサイドから応対してくれました。そんなこんなで終演後5分ほどでデレクからサインをもらい、そしてセルフィーまで取ってもらえました🥺✨


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スウィーニーのSDのもみくちゃ具合に比べると本当にあっさりファンサを貰えてしまったのですが、あとになってからじわじわ興奮が大きくなってきてホテルに帰ってからが多分興奮のピークでした。デレクのインスタを遡って恐竜の着ぐるみを着ているハロウィンのポストを見て転げまわりました。

2023年度はラミン・カリムルー、マーク・ザイベルト、アーロン・トヴェイト、サットン・フォスター、デレク・クレナと私の憧れのスターたちの舞台を一気に観劇できてとても濃い年でした。次は今回の旅行で見られなかったジョナサン・グロフ、それからジェレミー・ジョーダンを見るのが目標です。エヴァ・ノブルザダもずーっと見たいと思っているのでギャツビーが1期前だったら良かったんだけど・・・。まあ、これからのミュオタ人生の楽しみだと思っておきます!!

 

 

【ジュークボックスミュージカル関連】

 

オールスターキャストのごった煮はアリだった『カム フロム アウェイ』3/22 M 感想

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作品・公演概要

Come From Away

音楽・詞・脚本: Irene Sankoff(アイリーン・サンコフ)& David Hein(デイヴィッド・へイン)
初演: 2015年 サンディエゴ
    2017年 ブロードウェイ
    2019年 ウエストエンド

Come From Away (Original Broadway Cast Recording)

Come From Away (Original Broadway Cast Recording)

  • ‘Come From Away’ Original Broadway Cast
  • サウンドトラック
  • ¥1528

 

ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』 ※日本初演
劇場: 日生劇場
演出: Christopher Ashley(クリストファー・アシュリー)
翻訳: 常田景子
訳詞: 高橋亜子

ブロードウェイ公演のレプリカ版

 

キャスト

ダイアン: 安蘭けい
ニック: 石川禅
ケビンT: 浦井健治
ボブ: 加藤和樹
ジャニス: 咲妃みゆ
ボニー: シルビア・グラブ
ケビンJ: 田代万里生
クロード: 橋本さとし
ビバリー: 濱田めぐみ
ハンナ: 森公美子
ビューラ: 柚希礼音
オズ: 吉原光夫

スタンバイ 4名

 

感想

2021年に収録された舞台映像をApple TVで見て以来のCome From Awayでした。やっぱり面白い!!!細部は結構忘れていたので心臓外科医とかブラジャーを見せる乗客とかすごい笑いました。

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母国語で楽しめる幸せ

1曲目のWelcome to the Rockから一気に引き込まれて、ハイペースで繰り広げられる台詞と流れるように組み込まれる楽曲が心地よくてとても好きな演目です。情報量が多い分、母語で上演を見られる贅沢さも感じました。高橋亜子さんの訳詞は流石で、原語詞をすっかり覚えてしまっているMe and the Skyもすっと頭に入ってきました。どう訳すかな~と気になっていた「American Airlines had the prettiest planes」は「アメリカンエアライン 憧れだった」になっていました。好きだった「the prettiest planes」は消えてましたが文字数的に仕方ない。もっとちゃんと訳詞の味も楽しみたいのでなんらかの形で訳詞が残ってくれると嬉しいですね。この作品の歌詞を日本語で聴いていると、国内の自然災害の記憶と頭の中でリンクするような瞬間もあり、翻訳上演の意義が強く感じられました。

亜子さんのTwitterにはこんな投稿も。亜子さんの訳詞制作裏話はいつも面白くて好きです。

https://x.com/ako_takahashi/status/1771553581147230254?s=46&t=0q_MRc-VuglC34PSZduEaA

カムフロムアウェイの「I'm an Islander, I am an Islander」の訳詞ですっごく悩んだ話をさせて。

「I'm an Islander, I am an Islander」
「そう 我らこの島の民」

このフレーズ、全編を通して何度も出てきて、島人であることの誇りも語ってるから何とか良い日本語にしたいと必死でしたが…

これ、M1で最初に出てくるとき、2つのグループに分かれて歌っていて、男性陣が「Welcome to the Rock」と歌う、その最後の「Rock」にかぶって女性陣が「I'm an Islander」って入ってくるんです。
で、男性陣が歌に加わってくるのが「I am an Islander」からなんですけど、このときの「I」は「そう われらこの しーまのたみ」の1個目の「の」です。
譜面通りに歌うと、男性陣は「のしーまのたみ」って歌うことになるんです。

それじゃ駄目だから別の言葉に…と思っても、「の」の音のあとに八分休符があるので、例えば「の」の音から始まる歌詞にしようとして「そう 我らは 島の民だ」にしたとしても…
「そう 我らはし(休符)まーのたみだ」
となって「島」という言葉が分割されてしまう。
日本語では1つの音符で言える言葉はないので、この譜面通りにはどうしても作れない💦
まだ四分音符なら感嘆符が使えるんですけど(最初の「そう」はまさにそれ)
ここは八分音符なので万事休す

さんざんこれを悩んだ末に、音符を足すいくつかのパターンとそれぞれの訳詞を出して、音楽監督の甲斐先生にご相談し、男性陣の入りを一つ前の音符からにしてもらいました。
だからこの部分、男性陣は「このしーまの民」から加わってます。
英語の歌詞で言うと1個目の「Islander」の「er」の音から入ってます。
 
通常、レプリカ公演だとこういうことは事前に海外と相談できないので、譜面通りに何とか訳詞するか、とにかく音符を増やしちゃって、あとで交渉するかなんですけど、稽古前に海外チームと打合せできないことも多いので(今回もそうでしたが)稽古に入ってから「なんじゃこりゃ?」とか言われて「いや、カクカクシカジカで…」と説明することもあります。
説明しても海外の方は日本語がどういう言語なのか全然ご存じないので、なんで???って感じになることも多いです。

今回は海外チームが来る前に事前の歌稽古があったので、音監が甲斐先生で本当に良かったです。本稽古に入ってからの調整では全然遅かった。
他にもいくつかこういう音符の変更をしていただいてます。
Prayer の「主よ 願い叶えたまえ」の「主」の音も本当は無いです🎵

 

めぐさんのMe and the Sky

そして私はめぐさんのビバリー・バス機長をとてもとても楽しみにしていたのでMe and the Skyのイントロから目がうるうるになってしまいました。大好きな楽曲が素晴らしい歌声の持ち主に届いた喜び!(日本では最高の楽曲があったとしても実力のあるミュージカル俳優によってパフォーマンスされるかどうかはわからないのでね🙄) めぐさんのMe and the Skyはビバリーのこれまでの人生が映像として見えてくるような歌唱でした。特に「Then suddenly the wheels lift off〜」の部分では機体が徐々に宙に浮き、コックピットの窓の外に見える景色が遠ざかっていく様子がめぐさんの表情や目線によって完全に「見えました」。高音も安定していて流石。38 Planesリプライズの「USA〜」もばっちりで、めぐさん機長で本当に良かった😭と思いました。

しかも終演後にふと気になって調べたら、めぐさんはちょうど51歳らしく、そこにもビバリーとの繋がりを感じてさらに嬉しくなりました。ミドルエイジ女性が花形のミュージカル作品は少なすぎる気がしているので、こうしてかっこいい役が素晴らしい俳優さんによってパフォーマンスされて、愛されていくのは若い世代の役者にとっても嬉しいんじゃないかなと作品の外側にも希望を感じました。Me and the Skyはこれからたくさんの俳優さんに歌い継がれていってほしい!めぐさんビバリーは人当たりが良くて、おじさんパイロットたちに呆れながらも揉めずにそれなりに切り抜けていそうな雰囲気があったので、好戦的なビバリーも今後見てみたいな〜とも思います。

そんなことを考えていたら3月24日に和音美桜さんがコンサートでこの曲を歌ったとか!聴きたかった〜!!この勢いでミュージカルコンサートの定番に定着してほしいです🫶

 

「オールスターキャスト」ならではのごちゃごちゃ感

さて、情報解禁時は物議を醸した「オールスターキャスト」での上演ですが、実際に見てみると「これはこれでいい」と思えました。日本ではアンサンブルとプリンシパルのオーディションが別れていたりそもそもプリンシパルがオファーで決まることが多かったりと、アンサンブルからプリンシパルに挑戦できる機会が少ない状況で、技術の高いアンサンブルの方々も多いこともあり「全員がアンサンブル的に複数の役を演じる今作こそ、普段アンサンブルを務める方々に任せてほしかった」という意見が多く見られました。私もその気持ちは大きかったですし、こうして作品が愛されるようになったからには今後はそういった形で作品が展開されていけば嬉しいなと思っています。

それはそれとして、今回の「オールスターキャストCFA」もまた良かったです。主役級を務めてきた12人の俳優さんたちはこれまでの経歴を見ても、声楽、劇団四季、宝塚、新感線、クンツェ&リーヴァイ方面、キャメロン・マッキントッシュ方面とバックグラウンドが幅広く、それに伴って歌い方や踊り方の違いも大きかったです。この個性豊かな方々が集まったごった煮状態が、言語・国籍・人種・宗教の違う人たちが突然一堂に会することとなる作品にはハマっているように感じました。ユニゾンでは聴き馴染みのある12の歌声が混ざり合わずに耳に届き(万里生さんの元気なスーパー強ボイスが飛んでくる先陣を切って飛んでくる😂)、ジャンプのタイミングや動きにも音の中で微妙なズレが見える。でもナンバー、作品としてのまとまりはしっかりとあるというのはこのメンバーで上演したことの魅力だったと思います。

特に好きだったのは禅さんニックと安蘭けいさん(以下とうこさん)ダイアンのパート。2人の生む絶妙に気まずい空気感が素晴らしかったです。私はとうこさんのビジュがかっこいいものの微妙に「普通」からは外れた言動をしがちでそれでいて思いっきりの良いところもある役柄が好きな人間なので今回のダイアンのお芝居も好きでした。「私はバナナアレルギー。水疱瘡にかかったことはありません」の言い方と表情が絶妙すぎるのさ。そして禅さんのロマンスパートが見られる幸せよ。こういうのをもっと見たいんだよ各所!!!

スペイン語を話す体育教師(光夫さん)とハンサムなパイロット(和樹さん)に口説かれる妄想が止まらないめぐさんアネットもよかったな〜。きゃーー😆って感じの表情がかわいかったです。咲妃みゆさん(以下ゆうみちゃん)のウォルマート店員も言葉では形容し難いのですが面白さがすごかったです。台詞の言い方とほんの少しだけ背中を丸めた姿勢が最高すぎる。

あと柚希礼音さん(以下ちえさん)のビューラがとても良かったです。『FACTORY GIRLS』を見たときにも感じた、ちえさんのお芝居における包容力と人に寄り添う心の表現がビューラの役にぴったりハマっていました。大正解キャスティング!!

そして私は橋本さとしさんが好きですわ〜。台詞のリズムや言い方、間の取り方、発声、動作、表情、何をとってもあまりにも「良すぎる」。『サムシング・ロッテン!』のノストラダムスとか『アダムス・ファミリー』のゴメスとかに間に合いたい人生だったよ〜!!

 

日生劇場のロビーがデコレーションされていたのも良かったです✨ 観劇した日の思い出が写真として残ることって、SNSでの発信にも繋がるし、観劇人口の拡大には1つ大事な要素なんじゃないかな〜と個人的には思っているのです。

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【ブロードウェイ演目関連】

 

神の子モードに押し込められた可哀そうな人『ジーザス・クライスト=スーパースター』[エルサレム・バージョン]3/7 M 感想

ジャポのチケットが激戦だったので取れるか不安でしたが抽選に当たって観劇できました!!ジーユダの関係が熱くて見ていてとても辛くなりました。これだからJCSは楽しいですよね~!!

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作品・公演概要

Jesus Christ Superstar
作曲: Andrew Lloyd Webber(アンドリュー・ロイド=ウェバー)
作詞: Tim Riceティム・ライス
初演: 1971年 ブロードウェイ
    1972年 ウエストエンド
    1973年 東京(劇団四季

Jesus Christ Superstar (Original Broadway Cast)

Jesus Christ Superstar (Original Broadway Cast)

 

ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』[エルサレム・バージョン]
劇場: 自由劇場
初演日本版演出: 浅利慶太
訳詞: 岩谷時子
レジデント・ディレクター: 荒木美保

 

キャスト

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ジーザス・クライスト: 神永東吾
イスカリオテのユダ: 佐久間仁
マグダラのマリア: 江畑晶慧
カヤパ: 高井治
アンナス: 一和洋輔
司祭1: 正木棟馬
司祭2: 中橋耕平
司祭3: 真田司
シモン:  柴田鴻洋
ペテロ: 辻雄飛
ピラト: 田島亨祐
ヘロデ王: 北澤裕輔

+24人

週の頭の時点ではユダが吉岡慈夢さんだったのですが、火曜日に確認したら佐久間さんに代わっていました。こうしてジャポに続いて『フィーバス・クライスト・スーパースター』(友人のこの言葉が忘れられないでいる😂)になりました。

 

エルサレムver.の感想

客席に入った瞬間、目の前にそり立つ坂に驚きました。八百屋舞台とかいう次元ではない急斜面ですね。写真だとわかりにくいけれど、砂地の雰囲気がリアルで群衆が派手に動くと土埃が起こるんではないかと思えました(起きないけど)。

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Overture

Overtureの前にシモンナンバーの冒頭と同じファンファーレがあって「あれ?間違った音源が再生された?」と肝が冷えました。ジャポではなかった気がしますが他にもこういったプロダクションはあるのかな? 個人的にはズーンとする不穏なOvertureの冒頭が好きなのでそこから始まってほしいなと思いました。

Overtureが始まると舞台上が徐々に明るくなって砂の上に寝ころんでいた群衆がうようよと蠢き出します。これが結構気持ち悪くて楽曲の不穏な雰囲気と合っていて良かったです。ぞわぞわしました。

あと印象的だったのが鞭打ちと同じメロディになる部分でユダが苦しみを表現するところ。ユダ死も同じメロディなのでユダの苦しみを先出しするのはわかるのですが、ユダが音楽に合わせて身体を強張らせるように苦しみを表現していて、ユダが鞭に打たれているように見えて面白かったです。ユダはTrial Before Pilateの前に死ぬけれど、鞭に打たれるジーザスを想像しながら死んでいったのかもなと思わされました。

 

演出の記録と気になる照明

エルサレムver.はJCSの上演には付き物のアナクロニズムを排していて、それ自体は新鮮ですが、物珍しい演出は少なめです。シモンナンバーで神輿に乗せられるジーザスとか、舞台の真ん中に商売人たちが一本道を作るThe Templeとか、Blood Moneyでユダを挟んでグイグイ銭袋の方に押しやるカヤパとアンナスとか、ジャポで面白いなと思った演出がそのまま残っているところもありました。

ヘロデはアラブっぽい白くて布の量が多めの装束に金色の装飾品を付けていて、同じくアラビア風のへそ出し衣装を着た女性を4人侍らせていました。ジャポのヘロデほど強烈なビジュアルではないし侍っているのも全員女性なのですが、メイクは特徴的で、ヘロデにクィア性を見出そうとする流れは感じられました。前回の観劇から半年経ったけど、ヘロデのクィア解釈が多くのプロダクションで見られる理由が私にはわからない。有識者、世界のプロダクションの流れと共に教えて!!

ユダ死は巷の噂通り演出が・・・エルサレムver.のユダは流砂に飲み込まれるように砂に開いた穴の中に落ちていきます。それ自体は視覚的に好きだったのですが、その前にユダ役者に穴の位置を知らせるためなのか赤いスポットライトで穴のできる位置が照らされるのが世界観に合わなくて気になりました。司祭パートでも砂地に角ばった白い照明を照らすのはあんまり美しくないなと思ったんですよね。あとジャポもだけれど四季のユダ死は「自殺」として表現されないのが不満です。

鞭打ちは数回ごとにジーザスが引き回されていて、そこに群衆が走り回ったり石を投げつけていたりもしてなかなかにしっちゃかめっちゃで混沌とした雰囲気が良かったです。ジーザスの背中の傷はジャポから引き続きグロめ。

Superstarは上手中腹から十字架を背負って出てきたジーザスが舞台前方を通ってセンターに戻ってしばらく持ち上げられていました。頭が斜面の下向きになっているので頭に血が上りそう。スパスタのユダは上から出てくることが多いので、洞窟状になった上手手前から出てきてびっくりしました。ユダの衣装はパンクみたいだけれど特定の時代は感じさせないような衣装になっていてここでもアナクロニズムを回避しているようでした(Twitterで『北斗の拳』って書いている方がいて「確かに!!」って思いました)。ソウルガールズは網みたいなのを被っていて髪の毛が外に見えなくなっていました。ジャポに引き続きツルッとした頭です。

最後に十字架を土の中に埋めて立てるのは1番の驚きでした。まじまじと立てるところを見てしまいました!すごい!!釘を打たれたジーザスの手と足からは血が流れていて、その後の場面で手からポタポタと地面に血が流れおちていたのがリアルで恐ろしかったです。

 

ジーザス&ユダの感想

ジャポのときと同じキャストも多かったわけですが、全体的に歌唱力が爆上がりしていて楽曲を音楽的にすごく楽しめる公演になっていました!!!(ジャポはハイキーや低音のところになると少し心配で身構えて観劇していたのですが、今回は安心して見られました)特に本当にジーザスとユダの関係性が激熱で大満足でした。

 

神永ジーザス

前回は完全に「佐久間ユダかわいそう・・・」って思いながら見ていたのですが、今回は逆で「神永ジーザスかわいそう・・・」ってなりながら見ました。同じキャストでここまで変わるのは面白すぎます!

今回は神永ジーザスが要所で見せる人間らしさがすごく目に焼き付いたんですよね。序盤の神永ジーザスは本当に無表情で冷たさを感じるくらい「静」で、ジャポでもそこに人間離れした雰囲気を感じたのだけれど、今回はそれが綻ぶ瞬間が明確に見えました。

まず、マリアとの場面。Everything's Alrightでマリアに寄りかかられているときからおやおやという感じはあったけれど、EAリプライズでは「このジーザスは完全にマリアに惹かれてるな」と思いました。神の子モードは剥がれ落ちていて、なんでもない人間だったらジーザスはこのままマリアと恋愛関係になりたいのかもな~とも。私はマリアと恋愛関係にならないジーザスが好きなので、今回こういう解釈で受け取ってしかもそれが嫌ではないのはなんだか新鮮でした。

それからすごかったのがGethsemane。とんでもない熱量でした。声を荒げながら身体を動かしながら歌う姿は「静」のジーザスからはかけ離れていて、「静」の姿は神永ジーザスが神の子モードの中に本当は人間的で熱い心を閉じ込めた状態なのかと思い至りました。

この激熱のGethsemaneのきっかけになるのが「ユダまで奪われたことへの怒り」だったのも激熱だったんですよね。マリアに恋愛的に惹かれている割に神にぶち切れるきっかけはユダなの。これが今回のジーユダの拗れ方。佐久間ユダは神永ジーザスの中での自分のポジションをわかってないし、恋愛的にマリアに惹かれるジーザスを見るのが耐えられない。

The Last Supperの「I must be mad thinking I'll be remembered〜」での神永ジーザスの狼狽え方と怒り方からして神永ジーザスは多分使徒たちと(というか友人たちと)肩を並べて「普通に」生きたかったんだろうなっていうのが見えて、人の輪に入ることができない上にさらにユダまで自分の元を去るとわかっている状況。エルサレムver.でもやっぱりBlood Moneyのあとに銀貨の入った袋を握ったユダとジーザスが対峙して睨み合う時間が長く取られていて、そこで神永ジーザスの心が抉られるのが見えるんですよね。神永ジーザスはユダが去ることに深く傷ついているけれど、ユダが去らねばならぬことは理解していて「Hurry, you fool〜」のところでユダの腕を掴む姿には動きが優しいとかではないのだけれどなぜかユダへの思いやりがあるんですよね。なので「Go!!」を絶叫して走り出して床に倒れて項垂れてしまう姿が本当に傷ましくて・・・。そんなジーザスにもう一回吹っかけてくる佐久間ユダよ。ねえ、きみはジーザスの真心をわかってる???ジーザスが起きててほしかったのは他のどの使徒でもなくユダなんだぜ😭😭😭 JCSを見るとすぐ「今すぐ腹を割って話し合え!?」となりがちだけど、今回のジーユダのすれ違い方に関してはもうどうしようもないという感じもありました。

Gethsemaneを歌い切って、The Arrestで「Put Away Your Sword」を力強く歌い切ってからは(これも他の人の命を巻き込まないために見えた)、また完全に神の子モードで感情をシャットアウトした神永ジーザスに戻っていくのだけれど、熱い人間だとわかってしまった分それを見るのが余計辛くて😭

歌唱面での進化も大きくて歌声に凄みがありました。高音(シャウトもファルセットも)の安定感も増していましたが、今回は中低音の深みが刺さりました。いい声。音として心地良いけれど言葉がグッと重く飛んでくるような感じもありとても好きでした。あと安定にビジュが強い。

 

佐久間ユダ

前回見た時もロック歌唱寄りの歌唱がかっこいいなと思ってましたが、今回それがさらに進化していてシャウトの安定感もあって素晴らしかったです!!!ユダとしてのお芝居がとても好みの方向性だし、ビジュも好きだったところに歌の爆発力もとなるとぶっ刺さり案件でした。ジーザーーースの声量がものすごかったよ。びっくりして思わず笑ってしまうくらい!!

歌声の進化に伴ってジーザスへの態度がでかくなって、ジャポのときのぴえん顔🥺でジーザスの周りをうろうろしていたユダに比べるとだいぶふてぶてしいユダになっていたのも面白かったです。HOTMにはこれまでジーザスを支えてきた自負とジーザスに認められたいという想いを感じました。なのでStrange Thing Mystifyingもそこまで私情に引っ張られずに真っ当な意見をぶつけているように見えなくはないのだけど、結局ジーザスがユダじゃなくマリアの前でだけ人間臭い言動を見せるのが嫌だし許せないというのが隠しきれてないのが佐久間ジーザスのかわいいところですね。両手と膝を地面につけてマリアから離れるように乞うのもよい!

態度が大きくなったとしても佐久間ユダからは善良さが滲み出ていて、感情に「暗さ」がないのも面白いです。先々のことを考えてトータルの犠牲を少なくするよりかは目の前の人を放っておけずに咄嗟に助けようとする人間に見えて、その必死さがこの作品のユダの行動に合っているな~と思います。そして今回は序盤で見られたプライドの高さみたいなものがI Don't Know How to Love Himリプライズに繋がっていくのも感じたりとキャラクター造形に一貫性があってすごく見ごたえがありました。Superstarもノリノリの強強だったので「吹っ切れタイプか!My Jesus My Superstarか?」(2022年韓国版の話をいつもする)と思いきや、十字架を背負ったジーザスが後ろを通ると振り返ってその顔をじーっと見つめていて、そこに重い未練を感じました。強くなってもやっぱりもだもだしてる佐久間ユダは本当にいい!!

 

あとカテコが完全に今回のジーユダを象徴していて笑ってしまいました。まず、レベランスの後にスパスタの音楽がかかったので、もう1回歌うのかなと思いきやキャストみんなで踊りだしてびっくりました。皆さん完全にはっちゃけているわけでもないのでまあまあシュールです。劇団四季なのでレベランスが何回も繰り返されるわけですが、マリア・ジーザス・ユダの並びから袖に捌けるときに神永さんが毎回江畑さんの手を取って下手に捌けて行って、佐久間さんは毎回1人で上手に捌けていくんですよ。神永ジーザスがあまりにもかわいそうだったので、今回はかなりそっちに同情しながら観劇したわけですが「神永ジーザス!!そういうところ!!」って心の中で突っ込みながら見送ることになりました。それにしてもとてもハードな舞台なのでカテコはさっくり1回で終わらせて演者さんを休ませてあげてほしいです。

 

完全にジーザスとユダにコミットした感想になりましたが、他のキャストの方も素晴らしかったです。高井カヤパの低音が良くて久しぶりに音楽的に楽しめる司祭パートを見たなっていう満足感がありました。アンナスはもう少し声が重い方が好みですが一和さんのヒーローボイスは多分私の好きなタイプな気がするので他の演目でも見てみたいです。それからすごかったのがシモンの柴田さん!!声量がものすごくてのけ反りそうになりました!!!これからの活躍にも注目したい歌声でした。

 

 

【神永さんと佐久間さん関連】

 

【JCS関連】

2021年から年1回はJCSを見る機会に恵まれていて本当にありがたい。ローテーション的に来年こそはBunkamuraさん、ジーザスコンの開催をお願いしますね?!

2023年 個人的ミュージカル大賞

トニー賞や月刊『ミュージカル』の年間ランキングを眺めながら「私も観劇したミュージカル作品を色んな観点から評価してみたいな」と思うようになりまして、今年からやってみることにしました!

私が観劇した作品の一覧はアーカイブ記事に載っています。日本での観劇がメインなので日本国内の公演から選出しています。

元々好きだった作品ばかりを選んでも面白くない(というか毎年同じランキングになるかもしれない)ので、選ぶときには「新鮮な驚きがあったかどうか」を目安にしました。見ている作品やキャストに偏りはありまくりなので100%個人の趣味です。皆さんのミュージカル大賞も見たい👀

 

 

作品賞

※初見作品の中から作品そのものと公演全体のクオリティを考えて選定

ディミトリ~曙光に散る、紫の花~

 

『バンズ・ヴィジット』

『DEATH TAKES A HOLIDAY』

スクールオブロック

 

 

再演賞

※既によく知っていた作品の中から作品そのものと公演全体のクオリティを考えて選定

『1789 -バスティーユの恋人たち-』

 

『ジキル&ハイド』

『アナスタシア』

『生きる』

 

 

楽曲賞

ジーザス・クライスト=スーパースター』[ジャポネスク・バージョン]

作曲: Andrew Lloyd Webber
作詞: Tim Rice
邦楽器編曲: 西川啓光

 

『1789 -バスティーユの恋人たち-』
作曲:Dove Attia、Rod Janois、Jean-Pierre Pilot、Olivier Schultheis、William Rousseau、François Castello、Benoît Poher、Laurent Delort、Louis Delort、Silvio Lisbonne、Manon Romiti、Elio
作詞:Dove Attia、Vincent Baguian

 

『赤と黒』
音楽: Zazie、Vincent Baguian、Sorel、William Rousseau

 

『ウィキッド』※殿堂入り
作詞・作曲: Stephen Schwartz

 

 

脚本賞

マリー・キュリー

천세은(チョン・セウン)

 

『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』
原作: 並木陽『斜陽の国のルスダン』
脚本: 生田大和

 

 

演出賞

『生きる』

宮本亞門

 

 

『ジーザス・クライスト=スーパースター』[ジャポネスク・バージョン]
日本初演版演出: 浅利慶太
レジデント ディレクター: 荒木美保

 

 

装置デザイン賞

『太平洋序曲』

美術: Paul Farnsworth

 

『ジェーン・エア』
美術: 松井るみ

 

『ジーザス・クライスト=スーパースター』[ジャポネスク・バージョン]
美術: 金森馨
美術監修: 土屋茂昭

 

『アナスタシア』
セットデザイン: Alexander Dodge

 

『ベートーヴェン』
セット/映像デザインディレクター: 오필령(オ・ピリョン)

 

 

衣装デザイン賞

『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』

加藤真美

 

 

オーケストラ・バンド賞

『ジキル&ハイド』

音楽監督: 甲斐正人
指揮: 塩田明弘

 

主演俳優賞

愛希れいか『マリー・キュリー』

月城かなと『DEATH TAKES A HOLIDAY』

礼真琴、舞空瞳『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』

柿澤勇人『ジキル&ハイド』

田代万里生『ジョン&ジェン』

 

 

助演俳優賞

石川禅『アナスタシア』

矢崎広『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』

瀬央ゆりあ『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』

伊礼彼方『キングアーサー』

有沙瞳『1789 -バスティーユの恋人たち-』

堂珍嘉邦『アナスタシア』

 

 

ライジングスター賞

豊原江理佳『ザ・ビューティフル・ゲーム』(映画『リトル・マーメイド』日本語吹替)

小林亮太『キングアーサー』

永田崇人、こがけん『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』

藤森蓮華『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』

遥海『ラグタイム』

※既にご活躍されている方ばかりですが、2023年に観劇した作品の中で輝いていて、私の中で「出会った」感覚があった方々を選出しました

 

歌唱賞

塚本直『ラグタイム』

伊礼彼方『キングアーサー』

原田真絢『東京ローズ』

※観劇中の私が思わず目を見開いてしまうような歌唱を見せてくれた方々

 

 

アンサンブル賞

『太平洋序曲』

 

 

 

【🇺🇸BW観劇記1-4】倫理観が迷子なのが笑いどころ『Kimberly Akimbo』2/18 M 感想

ブロードウェイ観劇4本目は『キンバリー・アキンボ』にしました!

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昨年のトニー賞の記憶も新しい作品をブロードウェイで見られるのはとても嬉しかったです(作品賞取ってすぐ閉まってしまうものも多いみたいだし)。

作品・公演概要

Kimberly Akimbo
原作: Kimberly Akimbo by David Lindsay-Abaire(デヴィッド・リンゼイ=アベアー)(2000 play)
作曲: Jeanine Tesori(ジニーン・テソーリ)
脚本・作詞: David Lindsay-Abaire
演出: Jessica Stoneジェシカ・ストーン)
初演: 2021年 オフ・ブロードウェイ
         2022年 ブロードウェイ
劇場: Booth Theatre(ブース劇場)
オープン日: 2022年11月10日
クローズ予定日: 2024年4月28日

Kimberly Akimbo (Original Broadway Cast Recording)

Kimberly Akimbo (Original Broadway Cast Recording)

  • David Lindsay-Abaire, ジャニーヌ・テゾーリ & Kimberly Akimbo Original Broadway Cast
  • サウンドトラック
  • ¥2139

 

キャスト

キンバリー: Victoria Clark(ヴィクトリア・クラーク)
セス: Justin Cooleyジャスティン・クーリー)
バディ: Jim Hogan(ジム・ホーガン)(Standby)
パティ: Betsy Morgan(ベッツィ・モーガン(Standby)
デブラ: Bonnie Milligan(ボニー・ミリガン)
デリア: Olivia Elease Hardy(オリビア・エレーズ・ハーディ)
マーティン: Fernell Hogan(ファーネル・ホーガン)
アーロン: Michael Iskander(マイケル・イスカンデル)
テレサ: Nina White(ニーナ・ホワイト)

昨年のトニー賞主演女優賞のヴィクトリア・クラークと助演女優賞のボニー・ミリガンで見られました!やったー!!

 

チケット購入までのあれこれ

日曜日は多くの劇場のボックスオフィスオープン時間が10:00ではなく12:00でした。そうなると朝活全力観光勢の私と友人には困りものでした。別行動していた友人が12:00から『BTTF』のラッシュチケットをゲットしたその足でブース劇場に向かってくれてとてもありがたかったです。

昼公演の$40のラッシュチケット狙いでしたが、まさかの全席完売。でも$40で立ち見席を売ってくれるとのことだったので購入してもらいました。キンバリーの立ち見については公式サイトにもPlaybillのサイトにも記載がなかったのでラッキーでした。

 

いざ、劇場へ

ブース劇場のある通りは劇場街の中でも特に劇場が密集していて、マチネ公演の入場待ちの列が入り乱れて大混雑状態でした。

立ち見席からの眺めはこんな感じ。

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『ハデスタウン』の立ち見では、身体の前にある手すりへの寄りかかりが禁止でしたが、こちらは寄りかかり可能でした。そもそも形状も手すりというよりは肘置きのようで、素材もベルベットでリラックスできるものでした。

2階席が舞台の上方にかかりますが、今作はキャストのパフォーマンスが1階部分で展開されるので問題ありませんでした。セットの2階部分にはバンドがいました。

 

感想

これまでの海外観劇では、映像収録版や映画版、日本語の翻訳上演を見ていたり、音源や戯曲に触れていたり、原作を知っていたりっていう状態だったのですが、今作は真っ新な状態での観劇でした。演目自体が派手ではなく、物語の規模感も小さめなので、細かい会話に編み込まれた登場人物たちの心情やくすっと笑える場面を汲み取れるか結構不安でしたが、案外いけました。子どもたちの合唱ソングになると途端に歌詞が聴き取れなくなるみたいなことは起きますが、他の場面ではリラックスしつつしっかり内容を楽しめた気がします。嬉しい!!

 

通常の4〜5倍のスピードで歳を取る病気を患っていて、その病気の患者の平均寿命である16歳を迎えたキンバリーと彼女の機能不全気味の家族、学校の同級生たちとの関係を描いた作品で、舞台はニュージャージー。1曲目のSkater Planetから「But we'd rather be here skating / In "New Jersey"」というフレーズで爆笑起こるなどローカル色も強めでした。観劇しながら「大都市と隣接しているけれど何もないといわれがち」という点で、ニュージャージーは日本の埼玉県みたいな位置付けなのかなと思って調べてみたら、そういう言説が結構出てきました。

 

キンバリーの両親は次女の出産を控えていて、キンバリーを傷つけようと思っているわけではないけれど言葉や行動の端々に「次の子は『普通』であってほしい」と考えていることが見えてしまうような状況。しかも父親はアルコール依存気味、母親も家庭に献身的ではなくてキンバリーがMake a Wish Foundationへのお願いを考えていて行き着くのが「簡単な家庭料理のあるテーブルを3人で囲みたい。1日だけでも『普通の人たち』みたいに」なのがまた。確かに直前の場面で夜遅くに帰宅したキンバリー(それも酒のせいで父親がお迎えに3時間も遅れた)は、ソファでシリアルを食べていたんですよね。その辺りが本当に綿密に計算された作品で好みでした。

 

しかもメインプロットがこんなにしんどいのに笑いどころは満載。特にキンバリーの叔母であらゆる犯罪に手を染めているデブラが出てくる場面は衝撃と笑いの連続でした。デブラがこれまでの犯罪歴を振り返るBetterは歌詞の内容が面白いし、歌っている内容が酷いのにボニーの歌がやたら上手いのも笑えるし、歌い上げる背景で『ドリームガールズ』の練習をしているキッズ4人の歌声がコーラスになるのも面白いしで爆笑でした。そんなデブラによって持ち込まれるサイドプロットが「みんなで郵便ポストから小切手を盗んで金を手に入れよう」なのがメインプロットから考えると予想外すぎて笑笑笑 デブラの前ではあらゆる倫理観が死滅するので、作品の冒頭から「好きな人は別の人を好き」っていう一方通行状態でもだもだしていたキッズ4人を捕まえて「Gay, Straight, Gay, Straight」とバサッと言ってしまうのも普通なら「え!!アウティング!」って怒る案件なのになぜか笑えて不思議でした。ゲイへの差別が少なくなってきているアメリカ、あるいはニューヨークだからこそ「笑い」に昇華できるのかもしれないなとも思ったり。「あいつはアセクシャルだ」ってのが笑いになる作品もあるのかな、見たいな。

あと私が好きだったのはパティが生まれてくる赤ちゃんに向けたビデオを撮影しながら歌うHello, Darling。「あなたが生まれてくるのを楽しみにしているよ」みたいな話で始まったのに、「私はもうすぐ死ぬかもしれないし、死んだあとで私について嘘をみんなが言うかもしれないからそうしたらあなたが私の名誉を守ってね、そのためのビデオだよ~」っていう内容になっていくのが面白かった。これまた予想外すぎる。繰り返しの使い方もおかしさを倍増させていたし、曲自体にちょっとソンドハイムっぽさもありました。テソーリはソンドハイムと親交が深かったらしく納得です。

 

楽曲では今作を代表するAnagramがやはり印象的でした。アナグラムの得意なセスがキンバリー・ルヴァッコ(Kimberly Levaco)の名前でアナグラムを組んでいく楽曲で、Levacoの綴りを説明したキンバリーが「O」という文字を言った後にセスへの気持ちを「Oh」というフレーズを繰り返すことで表現していくのがオシャレでした。セスへの気持ちを歌うキンバリーの横で夢中でアナグラムに取り組むセスがかわいくてほっこりする場面でした。

 

終盤の展開も好き!

物語はキンバリーの具合が悪くなって入院するところから加速します。死の淵まで近づくキンバリーですが、小切手を引き換える役目を遂行すべく退院して、現金を手に入れて「これで家族旅行に行ける」と揚々と家に帰るとキンバリーの部屋が赤ちゃん用の部屋に改装されています。この場面があまりにも辛くて心がずたぼろになりました。キンバリーの「理想の娘ではなく、今の私を見て見送ってほしい」という言葉を受けて両親は心を入れ替えたような顔をして彼女の手を取りますが、きっとこの先もこの両親は理想と現実の差に苦しみ、それを隠そうとしつつも上手く隠さずにキンバリーを傷つけるんだろうなと思ってしまいました。なので作品がキンバリーとセスが2人で世界を見て回るという展開に落ち着くことにほっとしました。キンバリーがこれから生まれてくる妹にメッセージを残すのも素敵だし、動画を切り忘れてセスとのキスが録画してしまうのもかわいかったです。

キンバリーとセスは盗んだ小切手でロードトリップの時間を得て、キッズ4人も『ドリームガールズ』用のキラキラのブルーの衣装をGetし、なんのお咎めもなしです。やっぱり倫理観がすごい笑笑

 

 

Shrek: The Musicalもリンゼイ=アベアー×テソーリの作品だったんですね!!これを機にブログ内に「J.テソーリ」のタグを作りました。

今年4月に上演される『VIOLET』もテソーリ作品ということで楽しみです!

 

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